〜あらすじ〜

ヴァル・ファスクの創世神を名乗るメベト・ヴァル・ファスクの率いる新生ヴァル・ファスクの特殊部隊 メシア隊に白き月をあっさりと占拠された皇国軍は建前でも降伏宣言を出さざるを得ず、事実上現在まともに活動できているのはタクト・マイヤーズが率いる戦艦エルシオールと天使達だけだった。皇国軍のシヴァ女皇はタクト達に白き月の奪回を命じ密かに動かしていたのだ・・・ところが出発の前日、タクトは行方不明となり、レスターを司令代行にしてエルシオール艦隊はロクな編成準備もできずに出発する事になった。リコとカズヤは紋章機が動かない為に、戦艦の中で待機するのみで、ショックを受けたミルフィーユはテンションが上がらず本来の力を発揮できないでいた。

そんな最悪の状況の中で敵との初戦闘が始まった。しかし、敵機は一機。しかも敵機はタクトと共に行方不明になっていた七番機とタクトだった。七番機は人型の戦闘機へと改造されており、困惑する天使達を苦しめたが、ミルフィーユの活躍により、七番機の生け捕りに成功する・・・

しかし、タクトの救出と同時にミルフィーユは意識不明の状態になってしまった・・・現在戦闘が可能なメンバーはタクト、ミルフィーユ、カズヤ、リコを除いた天使達である。主力が戦闘不能な上にメンバーのテンションも下がりぱなっしの最悪の状況だった・・・そんな中、天使達はまたしても敵の襲撃を受けるのだった・・・

最強最悪の敵の襲来とも知らずに・・・

 

第一章 

ブラック・アウト

 

(一体、何が起きようとしているんだ・・・)

エルシオールのブリッジでレスターは頭を捻っていた。

ネオ・ヴァル・ファスクによる白き月の強奪及び皇国軍の敗北。

そして、指揮官タクトとエースのミルフィーユは意識不明の状態・・・

そしてそんな最悪なコンディションの中での敵の襲来・・・

頭痛の種は尽きない・・・

「紋章機、全機配置完了しました。」

敵は今までに経験した事のない人型の戦闘機の集団。

「敵から通信が入ってきてます。」

「アルモ、モニターに出せ!」

「了解、モニターでます。」

モニターに映ったのはどこか見覚えのある美青年だった。

全員の顔が驚愕に変わる。

「ば、馬鹿な・・・・エオニア・トランスバールだと・・・!?」

そう、通信をいれてきたのはかつて黒き月にそそのかされ復讐に走り自滅した・・・

かの廃太子エオニア・トランスバールであった。

長かった髪はばっさりと斬られていた。昔の優美さはなく、その姿はパイロットそのものである。

「久しぶりだなエルシオールの諸君・・・私を覚えているか?」

「生きていたのか・・・?」

そう、彼はクロノ・ブレイク・キャノンにより消えた筈なのだが・・・

「私は一度死に蘇った・・・それだけの事だ・・・」

「それだけの事って・・・!」

カンフーファイターのパイロット、ランファは信じられない者を見るかのように眺める・・・

「私がどうやって蘇ったなどお前達には関係の無い事だろう?それよりも今、重要なのは今のこの現状をどう打破することの方が重要ではないのか?」

エンジェル隊のリーダーフォルテは蘇った敵にはっきりと返答した。

「呆れてものが言えないねぇ・・・今度はヴァル・ファスクの残党に魂を渡してまで復讐にこだわるなんてね・・・」

「・・・悪いが私はあくまで命令に従っているだけだ。復讐などもはやどうでもいいことなのだよ・・・」

「なんだって・・・?」

「そうそう俺達は“侵略”しに来ただけなんだよ。オバさんよぉ・・・」

今度は見慣れない金髪の男が通信に割り込んできた。まだあどけなさが残る顔つきだが

その目は異様な眼光を放っている

「誰だ?お前は・・・!?」

「ふふふ、いいぜ?答えてやるよ“レスター”。」

「お前は俺の事を知っているのか・・・?」

「ああ、お前らの事ならなんでも知っているぜ?くっくっくっ!!タクトの知っている事なら全てな・・・

「何だと・・・?」

「・・・まぁ、いずれ分かるさ・・・俺はメベト様直下の特殊部隊メシア隊のシリウスだ。」

「シリウスでっすて!?」

「どうした?ランファ、何か知っているのかい?」

「ほら覚えてない?あのリウスの皇子よ!」

「そういえばミルフィーさんに救出されたあの皇子様ですわね・・・でも何故、リウスの皇子が・・・」

「あんた何でそんな奴等とつるんでいるのよ!?」

「るっせぇ!このアマァ!そんなのお前等を殺したいからに決まってんだろうが!!」

「なんでっすて・・・!」

「やめろ、シリウス・・・命令を忘れたのか?」

「ち!分かっている!奴等を殺せばいいんだろうが!?」

「シリウス!勝手にステルスを解除するな!」

「・・・見るがいい!俺の“ゼックイ”を・・・」

新しく出現した戦闘機は他の戦闘機とは違い、カラーリングは紫と金の装飾、何よりもその外付けの大きな爪と周囲を徘徊している6機のフライヤーが特徴的だった。恐らくはゼックイと呼ばれる量産人型戦闘機をカスタマイズした機体だろう。特性は近、中距離強襲型と言うべきだろうか・・・

「・・・まったく・・・シリウスめ・・・」

続いてエオニアのゼックイが姿を現した。エオニア専用ゼックイの特徴はその巨大な盾と巨大なビームライフルらしきものだろう。装甲も厚めに装備されており後方支援型の機体だと言うことが一目で分かる。

「くそ・・・どうやらカスタマイズされているらしいな。」

「おい、サブ共・・・メインのタクトはどうした?もしかして殺しちまったのか?あ、あははははは!」

「やはりタクトを誘拐してけしかけたのは貴様等か!?」

「そんな馬鹿げた質問に答えたくはないが、もしそうだと言ったらどうするんだよ?オイコラ・・・?」

「あまり挑発するな・・・俺達は命令通りに動けばいい・・・」

「・・・へいへい・・・“あの人”に言われた通りに動けばいいんだろう?おら、かかって来い・・・戦闘開始といこうぜ!」

メシア隊が動くと同時に紋章機達も動き始めた。

「エルシオールは暗礁区域に隠れておいで、あたし達であの部隊を蹴散らしてやるからね!」

「フォルテ・・・頼む、そして他のメンバー達も・・・。」

「フォルテさん!僕達も出撃してみせますから!」

「おう!任しときな!カズヤあんた達が出てくるまでは私達が引き受けたからね!」

「オラァーー!!無視してんじゃねぇぞ!コラァーーー!!」

シリウスのゼックイがアッという間に距離を詰めてきていた。フォルテは弾幕で牽制するがシリウスは全て交わしていく。

「チィ!なんて機動性だい!」

シリウスの機動性は今までのどんな高速機よりも早かった・・・

「フォルテさん!援護しますわ!」

ミントの計4機のフライヤーがシリウスに向かっていくが・・・シリウスは計6機のフライヤーで応戦し、ミントのフライヤーを相打ち覚悟で全て潰した。

「フライヤーが落とされましたの!?」

「甘いんだよ!これじゃ白き月の警備隊の奴等の方がよほど手ごたえがあったぜ?まぁ、すぐに逃げ出しやがったがなぁっ・・・!!」

一方他のメンバーはエオニアと量産ゼックイの相手をしていた。

「ち!こいつらこちらの旋回時をみはらかって攻撃してきやがる!」

「親分!後ろなのだ!!」

アニスの後方よりゼックイがビームサーベルもどきで斬りかかってきた。

「何やってんのよ!集中しなさいよ!」

そのゼックイをランファのアンカークローが撃破した。

「わ、わりぃ・・・って!姉さん!下から!!」

「ち!」

ランファは下から迫ってきたゼックイを振り切ろうと前線から離れようと加速し始めたが・・・

「悪く思うなよ・・・」

それを見ていたエオニアはその巨大なビームライフルの照準をランファに向けていた。

「ランファ殿!狙われている!」

リリィの忠告と同時にエオニアのビームライフルが発射された。

ゴウッ!という轟音と共に巨大なビームがランファ目がけてこの宇宙を駆けていく。

「いくら威力があったて当たらなければただのへなちょこよ!」

ランファは機体を上昇させビームを上手く回避した。

「・・・やるな、ランファ・・・しかし・・・」

「誰か忘れちゃあいねぇか!?」

フォルテ達を振り切ったシリウスが今度はそのシンボルマークの爪でランファに襲い掛かった!

「ちぃ!」

間一髪で回避したものの左のアンカークローを持っていかれた。

「ち!今度は外さねぇぞ・・・!このアマ!!う、うお!?」

再び斬りかかろうとしたシリウスに何者かがレールガンを撃ち込んだ。6番機のちとせである。

「や、野郎!!」

「シリウス、どけ!」

即座にシリウスがその場所から離れ、紋章機達もその場から離れると、またエオニアのビームライフルがその宙域をなぎ払った。

「まずい・・・こちらの戦力が意図的に分散されている。特にフォルテとミントが量産機に捕まって合流できない・・・!」

敵はこの混戦の中、紋章機の戦力分散をやってのけたのだ。

(ち!さすがは奇襲とはいえ白き月を少数で占拠したことだけはある。ちゃんと作戦を立ててやがる・・・!)

レスターは頭をかきむしりながらフォルテとミントの紋章機の修復の命令を出したが、ヴァニラもナノナノもしっかりとゼックイにマーキングされていて駆けつけられない状態だった。

「クロスキャリバーとブレイブハートは依然として動かないのか!?」

極限状態の中ではレスターも気が気ではない・・・

「はい!リコさんとカズヤさんが何度エンジンをかけてもこれぽっちも動きません!」

「くそぉ・・・このままじゃ二人が落とされる!しかし、帰艦させようものなら敵機まで引き連れる事になる・・・!一体どうすればいいんだ!!」

レスターが頭を抱え込んだその時、懐かしい声が聞こえてきた。

 

「レスター、俺も戦闘に加わるぞ・・・発進させてくれ!」

「タクト!お前、大丈・・・」

「時間がないんだ!フォルテとミントが危ない!」

「わ、分かった!頼んだぞ!タクト!」

「ああ、ハッチを開けてくれ!後は自分で何とかする!」

タクトの七番機が発進体勢に入る。その白いボディは神聖な輝きを放っている・・・先の戦闘とは違い、ボディの色が黒から白へと変わっているのだ。まるで呪いを解かれたかのように・・・

「出れるぞタクト!しかしその機体はこちらからは射出できん、自力で何とかしてくれ!」

「了解!七番機、タクト・マイヤーズ出る!!」

そして、氷点下の闇に一つの光る星がその姿を現し、二人の元へと向かっていく・・・

「す、凄い早さだ・・・!」

その七番機の速さにレスターは思わず感嘆してしまった。

一方、フォルテとミントは大量の量産機のゼックイを次々と撃破していった。しかし、撃墜数に反比例して機体の損傷は増えていく・・・

「ミント!ここはあたしに任せて補給してきな!フライヤー無しじゃこれ以上は無理だ!」

「何をおっしゃってるのですか?フォルテさん一人では撃墜されてしまいますわよ!」

「しかし、このままじゃあ共倒れになるだけさねぇ・・・!」

「いえ!何が何でも二人で皆さんと合流いたしますわ!」

「くっくっくっ!だったら二人仲良くあの世に行けやぁーーっ!!」

二人の後方にまたシリウスのゼックイが出現した。

「チィ!」

二人は距離をとろうとするがシリウスのゼックイの機動性は高く、グングンと距離を縮めていく・・・

「はははは!このデスクローでミンチにしてやるぜ!!」

シリウスが爪で二人に襲い掛かろうとした瞬間、白い紋章機が間に割り込んできた。

「ち!誰だ!コラァ!!」

シリウスが邪魔者を鬼のような形相で見つめる。

「二人は補給に戻ってくれ、こいつは俺が引き受ける!」

「あん?舐めてんのかぁ・・・コラァ・・・!」

「タクト!目が覚めたのかい!」

「相変わらずはらはらさせてくれますわね。タクトさん・・・」

「ゴメン・・・遅くなった・・・」

タクトの七番機がシリウスのゼックイと対峙する。

「!?ほう・・・!誰かと思えばタクトか!?」

シリウスは何故か嬉しそうに声を弾ませる。その声には親密ささえ感じられる・・・

「・・・お前はシリウスだな・・・?」

「ああ、覚えてくれていたとは光栄だな・・・」

「何故、ヴァル・ファスクに従っているんだ?」

「何故だと・・・?決まっているだろう、お前を殺すためさ!」

「何故だ?俺が何かお前に恨まれる事をしたのか?」

「知らぬは本人なりか・・・お前は知るよしもあるまいなぁ・・・だが、これだけは言っとくぜ・・・俺にはお前を殺す正当な理由がある・・・!!

シリウスのゼックイが爪(デスクロー)を構える。

「覚えておけ“お前を殺すのはこの俺だ”と言う事を・・・俺がお前を殺すのは運命だとな・・・そして、運命には逆らえないという事だとな・・・これは神の意思だという事を忘れるなよ。」

「神の意思・・・メベトの事か?」

「さぁなぁ・・・どちらにしろ今この場で引導を渡してやる!!」

シリウスが爪でタクトに襲いかかる。

「・・・このまま大人しく殺されるわけにはいかない!」

使い方は体が覚えている・・・

七番機の手に黄金色の粒子状の剣が現われる。

「ひゃあああーーーー!!」

タクトはシリウスの爪を剣で受け止め、ゼックイを蹴り飛ばした。

「ぐお!?」

バランスを崩したシリウスにタクトは追い討ちで斬りかかるが・・・

「やりやがったな!!」

シリウスは周囲に配置していた4機のフライヤーで反撃に出る。

フライヤー達は七番機の周囲を飛び交いながらビームを発射していく。

「・・・そこだ!!」

タクトはフライヤーの動きを冷静に観察し、迫ってくるフライヤーを切り払った。

「何だとぉ!?だがなぁ!!」

シリウスは再びその俊敏さを生かしてタクトに襲いかかった。

「見える!」

シリウスの動きを見切ったタクトはゼックイの左手のデスクローを切断した。

「ぐあああーーー!!こ、この野郎!!」

「シリウス、離れろ!」

「!」

二機が離れた後にその宙域を巨大なビーム砲がなぎ払った。

「タクト・マイヤーズ・・・私を覚えているか?」

「エオニア!?お前はあの黒き月との戦いで・・・」

「確かに私は一度死んだ・・・しかし、“ある方”によりクローニングされ再び生を授けられたのだ・・・」

「そ、そんな事が・・・あるわけがない!」

「信じる信じないはお前の好きにするがいい・・・だがお前はもうすぐ“その方”と会い、その強さを見せつけられるだろう・・・」

「あの方とは誰だ!?」

「その目で確かめるがいい、確かめられるのならばな・・・シリウス、撤退するぞ。」

「何!寝ぼけてんのか?タクトはまだ生きているんだぞ!?」

「タクトの出撃をするまでの牽制が“隊長”からの命令だぞ?」

「・・・ち!了解した・・・タクト・・・今度こそ八つ裂きにしてやるからな!!」

「待て!逃げるな!」

タクトの言葉を無視して二機はドライブ・アウトしていった・・・

「・・・逃がしたか・・・もうすぐそいつと会うだと・・・?」

タクトは言い知れぬ不安にかられながらもエンジェル隊と合流し、残りのゼックイを撃破していった。

「残った敵機全機の撃破を確認した。これより帰艦する。」

「了解」

「・・・ふぅ・・・まったく一時はどうなるかと思ったぞ・・・」

レスターが安堵のため息をついた瞬間、エルシオールの後方にドライブ・アウトの反応をキャッチする。

「何!?まだいたのか?」

ドライブ・アウトを確認しても敵機の反応はない、モニターにもレーダーも依然として正常なままだ・・・

「レスター、何があったんだ?」

タクトはさっきのエオニアの言葉が気になってレスターに報告を求めた。もしかしたらあいつが来たのかと思ったからだ・・・

「エルシオールの後方にドライブ・アウトの反応をキャッチしたんだが敵機の反応が全くないんだ。」

「まさか、ステルス・ジャマーをかけているんじゃないのか!?」

「いや、ステルスの反応もない・・・気のせいなのか・・・?」

(挿入イメージ曲 ブレス・オブ・ファイア 后 ̄鵑じ討喟

エリュオン戦の音楽ですがこれが死神のメシアのイメージ曲です。音楽がぴったりと合いますので曲を知っている方は死神のメシアの出現時には頭の中で曲を思い出しながら読んで見てください!)

(そんなに簡単に見破られたらステルスの意味がないからな・・・)

タクト達はいまだに気付いていない・・・

死神が自分達を見ている事に・・・

(タクト・・・俺を感じるか?)

「!誰だ!?」

「ちょ、ちょっと、どうしたのよ、タクト!?」

「いや、今誰かが俺を呼んだ気がする。」

「はぁ?もう、しっかりしてよね、タクト。」

「ご、ごめん、ランファ・・・やはり気のせいか・・・?」

(・・・少し遊んでやろう・・・)

次の瞬間、カンフーファイターの右のアンカークローがビームで吹き飛ばされ、機体は回転しながら吹っ飛んでいく。

「きゃあぁぁぁぁーー!」

「ランファ!?」

「だ、大丈夫・・・でも・・・紋章機が・・・」

幸い機体には損傷は無かったが、両方のアンカークローを失ったカンフーファイターはもはや戦力外だった・・・

「くそ!やはり敵が潜んでいるのか!?・・・レスター!」

「ココ!レーダーは!?」

「依然、レーダーには敵機の反応ありません!」

「そんな馬鹿な事があるか!」

「本当です!!」

(やれやれ・・・宇宙服も着ずに戦場に出てくるなどとはな・・・ましてやブリッジのクルーがな・・・少し、分からせてやるか・・・)

死神はステルスを解除した。

「!我が艦、六時の方向に(後方)に敵機反応!」

「何だと!?」

「な、何だ・・・あ、あれは・・・!?」

タクト達は信じられないものを見ていた。エルシオールの後方に潜んでいたのは黒い紋章機だった・・・しかし、タクト達が驚いたのはそれだけでは無い・・・その外装はほぼラッキースターに酷似しているのだ。

「な、なによあれ・・・!?あれはラッキースターじゃない!!」

「お待ち下さい!格納庫には依然ラッキースターが待機しておりますわよ!」

「ならばアレは敵の紋章機というわけかい・・・こいつは手強いよ・・・」

「まずい!このままじゃエルシオールを撃墜されてしまう!あの黒い紋章機を止めるぞ!」

タクト達はそのままエルシオールの後ろに現われた黒いラッキースターに勇敢にも向かっていく・・・

無謀にその紋章機が最強最悪の敵とも知らずに・・・

(悪いが、ブリッジの奴等に少し教育してやらねばならないのでな・・・)

黒い紋章機は軽々とエルシオールの防火線をかわしていく。

「な、なんて速さだ!ロックオンができないなんて!」

やがて死神の紋章機がブリッジの真正面に陣取った。

「!!」

ブリッジのクルー達はその時死を覚悟した。

(安心しろ、“リコとカズヤがいる内は撃墜はしない・・・”

その時、ブリッジの強化ガラスに“5つの小さい穴”が開いた。

小さな穴に酸素が吸い込まれていく・・・

「まずい!全員、ブリッジから出るんだ!!」

ブリッジのクルー達は慌ててブリッジを放棄し、避難した。

(これで、エルシオールは動けまい・・・今度からは宇宙服を着てからブリッジに入りな・・・)

「くそ!エルシオールのブリッジがやられた!全員無事らしいが、もう、エルシオールは動けない!」

「ち!やってくれたわね!」

スペルキャスターのテキーラは忌々しげに舌打ちをした。

そして、黒い紋章機がエルシオールを背景にタクト達の方を向いた。

「・・・お前は誰だ!?ヴァル・ファスクの者か!?」

(・・・ったり前だろうが・・・間抜けな質問してないで早くかかってこねぇか俺は敵なんだぞ・・・)

「その紋章機は何だい!?」

「ちょっと!質問に答えなさいよ!」

次の瞬間、各紋章機に敵機から音声のみの通信が入ってきた。

「やかましい・・・ピーピーわめいてんじゃねぇ・・・」

声は若い男のものだった。

「お前は一体誰なんだ!?」

「まぁ、いい・・・自己紹介といこう、俺はネオ・ヴァル・ファスクのメベト様直下の特殊部隊メシア隊の隊長“死神のメシア”だ。」

「し、死神のメシ・・ア・・・?」

な、何だ?この感覚は・・・俺はこいつの事を知っているのか・・・

久しぶりだな・・・タクト・・・この時をひたすら待ち続けた・・・」

「俺はお前なんか知らない!」

この本能的に伝わってくる嫌悪感・・・こんなのは初めてだ。

「知らなくても結構だ。俺だってお前の事が何より嫌いなんだからよ・・・ここで殺してやる・・・徹底的になぶり殺しにしてやるぜ・・・」

何万年も待ち続けたのだからな・・・この時を・・・

「・・・お前は人の心が読めるのか?」

「できるが、今のはお前の目を見ただけだ・・・」

「・・・互いに思っている事は同じだな・・・」

こいつが嫌いだ。

「さてさて・・・この紋章機の名前は“GRA−000 アルフェシオン”だ。」

「GRA-000ってまさか・・・」

「そうだ、この機体こそ最初の紋章機・・・紋章機のオリジナルだ。」

「どこで手に入れたんだ?そんな機体を・・・」

「それはあの世で考えてくるがいい・・・ああ・・・お前らの自己紹介はいらねぇぞ・・・どうせ皆殺しにするんだからな・・・」

「言ってくれるねぇ・・・タクト、あの紋章機は間違いなく手強いよ!」

「ああ!みんなあの紋章機を撃墜するぞ!!エルシオールに被弾させないようにあいつをエルシオールから引き離すんだ!」

タクト達はメシアのアルフェシオンに向かっていく。

「おいおい・・・俺の背後に何があるのかわからないのか?」

メシアは再びステルスを発動させ、アルフェシオンが視界とレーダーから消えた。

 

ブラック・アウト

 

「消えた!!」

タクト達は知るまい・・・メシア隊の配置と役割を・・・切り込み、接近戦担当のシリウスのゼックイ・・・超遠距離からの後方支援、援護防御担当のエオニアのゼックイ・・・そして、この死神のメシアの隊長機アルフェシオンは奇襲専用の戦闘機・・・否、欠点のない超万能型の最強の戦闘機だという事を・・・

「うあぁッう!!」

「リリィ!?」

リリィの紋章機イーグルゲイザーを3つのビームが貫いた。爆散こそしなかったがブースト面を確実に撃ち抜かれてしまい、もはやイーグルゲイザーは全く動かない・・・

「く・・・!今のはフライヤーか!?」

リリィを襲ったものはアルフェシオンのインビシブル・フライヤー・・・フライヤーでありながら単体でクロノドライブ機能やステルス機能を持ち、追尾機能も所持していて、その上、威力も高いという反則的な兵器である。出力も調整が可能で敵機の急所を正確に撃ち抜く事も可能である。普通の人間に回避できる攻撃ではない・・・アルフェシオンのメイン火器である。

 

「まずは一機撃墜だ・・・これで俺の総撃墜数は999,999,996機になった・・・もうすぐでフィーバーだな・・・」

「くそ・・・!奴はどこだ・・・!?」

タクトは頼りにならないレーダーを見るのをやめて、この宙域を肉眼で死神の姿を探すが、依然として死神は姿を現さない。

 

ブラック・アウト

 

それは死神の舞・・・人の目では捉えきれない隠れ身の技である。死神は己に気付かない獲物に狙いを定める。その速度は40000の距離を一秒で駆け抜けるほどの速度・・・誰がそんな事に気付こうか・・・

(少しは動け・・・馬鹿め・・・)

「あ!」

三匹目の獲物ハーベスターと四匹目の獲物ファースト・エイダーがイーグルゲイザーと同じ末路を辿った。

「ヴァニラ!ナノ!?」

「俺のフライヤー達は狙った獲物は逃がさないぜ・・・」

「くそぉ・・・!一体どこに潜んでいるんだ・・・!?」

(ち・・・時間があまりないな・・・仕方ない・・・)

ステルスを解除したアルフェシオンがタクト達の目の前に現われた。

「おい、俺はここだぜ。」

「あいつ、あんな所に!」

タクト達はすかさず死神へ全弾発射の反撃にでた。最前線にいたタクトと死神の距離は約8000、凄まじい数のビームと実弾が死神目がけて向かってきていた。

「・・・そんな遅い弾に当たるのはあまりにも間抜けだ・・・」

なんと死神はその火線を回避するのではなく、火線と同じ方角、つまりは後方に反転して同じ方向に逃げていく。

「な!?」

信じれない事に死神の紋章機はタクト達の総攻撃の弾速よりも速い速度で逃げていったのだ!

「は、速い・・・!」

(20%ぐらいしかスロットルを開いてないんだがな・・・)

死神を追跡する弾達が一つの的に塊のように集まる。

(本当はここで避けてもいいんだが、それでは“セミナー”にはならん・・・それに避けるのも面倒だしな・・・)

死神はビームが実弾を追い越す前にフライヤーで実弾を爆破した。一つの実弾の爆発が誘爆を引き起こし、連鎖して爆発を広げていき、ビームの粒子が爆風により軌道を曲げられてしまった。

「覚えておけ、高機動のドッグ・ファイトで実弾やビームを一つの的にまとめて撃つのは素人のやる事だ・・・」

「こ、こいつ・・・・・・強い!!」

この強さは・・・今までの敵とは桁違いだ!こっちの攻撃がまるで当たらない!

一方、エルシオールでは宇宙服を着たレスター達がクロノ・ブレイク・キャノンの発射準備に入っていた。

「タクト・・・待ってろよ・・・!」

(クロノ・ブレイク・キャノンの発射まであと1分04秒か・・・)

もっともこの死神はそれすら読んでいたのだが・・・

「皆!エルシオールの射軸から離れるんだ!」

(その、逃げ方がすでに間違いなんだよ・・・ばれるだろうが・・・)

友軍機の離脱を確認した上でレスターはクロノ・ブレイク・キャノンを発射した。

(アルフェシオン、少し我慢してくれ・・・“あいつの為だからな”

皇国軍最強兵器のエネルギー砲が死神を呑み込む・・・筈だったのだが・・・

「う、嘘だろ・・・?」

タクトははっきりと見た。クロノ・ブレイク・キャノンが黒い紋章機のところで止まってしまっているのを・・・

・・・やがてクロノ・ブレイク・キャノンの放射が終わった。

「おいおい随分と余裕だな?こんな優しい攻撃じゃあ、このアルフェシオンにはかすり傷の一つもつかんぞ・・・?」

タクト達の前には無傷のアルフェシオンがいた。

「馬鹿な!」

「まさかネガティブ・クロノ・フィールドを装備しているのか!?」

ネガティブ・クロノ・フィールド・・・かつてヴァル・ファスクのオ・ガウヴに装備されていたクロノ・ブレイク・キャノンを防いだ強力なバリアである。

「このアルフェシオンにはあんな欠陥品ではなくAS・フィールド(絶対領域)というものがある。それにな、俺はさっきそのASフィールドを解除してたんだよ。だから言ったろ?こんな優しい攻撃じゃあ、このアルフェシオンにかすり傷の一つもつかないってな・・・」

「な、なんて奴だ・・・」

成す術を無くしたレスターは膝をつきながら呆然とつぶやいた・・・

「だからってあきらめてたまるか!!」

「いや、あきらめな・・・」

次の瞬間七番機以外の紋章機のエンジンが停止した。停止した各紋章機の画面にはGRA-000と表示されていた。

「な、何よどうなってんのよ!?」

「エンジンが止まった!?」

「ふぅ・・・冥土の土産に教えてやるよ。別にネガティブ・クロノ・ウエーブを発生させたわけではない・・・わかるか?俺が命令したからだ・・・正確に言えばこのアルフェシオンもその量産機達も“俺が開発したものだからだ”。一部の機体を除いて量産機はオリジナルたるこのアルフェシオンの命令には逆らえないのさ・・・」

「そ、そんなでたらめ信じるものか!!」

「そう思いたけばそう思うがいい・・・どちらにしろお前等が死ぬのには変わりないのだからな・・・」

「お前は俺が倒す!」

「面白い・・・やれるものならやってみろ・・・小僧が・・・」

七番機がアルフェシオンに接近しようとするとアルフェシオンはまたしてもステルスを作動させる。

 

ブラック・アウト

 

またしてもアルフェシオンが闇に消えた。タクトは防御をしながら周囲を警戒するので精一杯だった・・・

「タクトよ・・・最初に言っておく・・・

“俺は守る為に壊す者・・・そしてお前は壊す為に守る者”・・・

この意味をいずれお前は知る事になるだろう・・・」

「俺が壊す為に守る者だと・・・?」

「一つ教えといてやる。“これから先も生き残りたければ”直感を磨く事だ・・・」

「さ、さっきから何を言っているんだ・・・?」

「お前、今、自分の機体にどれくらいのフライヤーに囲まれているのかわかるか?」

「何・・・?」

「やれやれ・・・」

死神のメシアがフライヤーのステルス機能を解除して、アルフェシオンのフライヤーの数を見せ付けた・・・

「な!?」

七番機の周囲には約40機あまりのフライヤーが配置されていた。

「シリウス達との交戦中から配置していたのだが気付かなかったのか?俺にはこの程度の芸当は動作もないことなんだよ。」

「く・・・!」

タクトは背水の陣の覚悟で死神がいるかもしれない所に突進していった。ここにいれば直感的に蜂の巣にされると思ったからだ。

「おい、どこに行く?こっちだこっち。」

「!」

タクトが後ろを振り向くと死神が嘲笑うかのようにそこにいた。

いつの間にかフライヤーは消えていた。恐らくはステルスを作動させたのだろう。

「あの場所から逃げたのは賢いが、優秀なパイロットではないな・・・」

死神が再び姿をくらました。

 

ブラック・アウト

 

「こ、こいつ!!」

死神は明らかに遊んでいた。

まるでお前など相手ではないと言わんばかりに・・・

「お〜い、俺はこっちだぜ?」

「このぉ・・・!」

タクトが再び姿を現した死神に向かおうとするが、死神はすぐに姿をくらます。

「言っただろう?生き残りたければ直感を磨けと。」

死神の声が聞こえた瞬間、一発のフライヤーのビームが七番機の足を撃ちぬく。

「ぐわぁーー!!」

「大袈裟だな・・・お手本は見せた筈なんだがな・・・お前達の量産機のような飛行形態は先程のように直線に強く、旋回に弱い。先程のゼックイ達を見て気付かなかったか?人型タイプは直線への速度は今ひとつだが旋回などの細かい動作は得意なんだよ。せっかく“改造してやったんだから”もう少しはその機体を使いこなせよ・・・」

「うるさい!!」

「まぁ、ここは学校じゃねぇからなぁ・・・ならばそろそろ“戦闘”を始めるか・・・見せてやるよ、アルフェシオンの真の姿をな。」

次の瞬間、飛行形態をとっていたアルフェシオンが見る見る内に七番機と同じ人型に変形していく、足りないパーツはナノマシンで構成されていく。変形はあっという間だった。付け入る隙などがなかった。

「俺は変形というのにあまり執着がないのでな、一番効率よく変形できる手段を考えた。それがさっきの“ナノマシン変形”だ。」

「遊んでいるのか!?」

「いや、自慢さ・・・ちなみにこいつには高性能なナノマシンが付着しているからダメージなどあっという間に修復してくれる・・・」

人型になったアルフェシオンは両手に七番機が所持していた粒子状の剣と同様の剣が現われる。漆黒の色をした光の剣が二本。

「さて、俺を倒せないとあそこの大事な天使共のコクピットを撃ち抜かなければならなくなる。」

「!!」

「今までも奇跡とやら生き抜いてきたんだろう?ならば今回もその奇跡とやらで俺を倒したらどうだ?ははははは・・・」

「この野郎・・・」

タクトの目が本気で敵意を放つ・・・

「コクピットを撃ち抜かれた天使がどんな悲鳴を上げるか、楽しみだ・・・なぁ・・・タクト・・・」

死神の挑発にタクトの恐怖が怒りへと変わっていく。

「ふざけんじゃねえぇぇーーー!!」

七番機は猛然とアルフェシオンに向かっていくが、死神は再び姿をくらました。

 

ブラック・アウト

 

「ち!」

「威勢がいいのは認めるが蛮勇と英雄は違うぜ?」

「うるさい!」

「おお、怖い。」

「こ、このぉ・・・!」

タクトは必死に死神の姿を探すが、依然として死神は見つからない・・・

「疲れただろう?あきらめて大人しく死ねよ。」

「誰があきらめるものか!誰かが大人しく殺されるものか!!」

「じゃあ・・・抗いながら死ね・・・ミント、よく見とけよフライヤーの本当の使い方を教えてやる。」

七番機を数々のフライヤーが狙撃する。あるものはディレイをかけてあるものはフェイントをかけ、七番機を蜂の巣にする。その様はまさにフライヤーダンスだった。

「あきらめるものかぁーーー・・・!!」

「タ、タクト・・・っ!クロノ・ブレイク・キャノンの再チャージを急げ!!」

「しかし・・・」

「ここで大人しく殺されたいのか!?俺達はまだ死んでいないだろう!やるんだ!アルモ!!」

「りょ、了解・・・!」

「レスターさん!レスターさん!聞こえますか!?」

「カズヤか?どうした!?」

「御願いします!僕をラッキースターに乗せてください!」

「馬鹿を言うな!お前では動かせないだろう!?」

「ブレイブ・ハートとクロスキャリバーはエンジンすらかかりませんが、ラッキースターはまだわかりません!それにこのままじゃタクトさんがやられるだけです!!」

「・・・む・・・わかった・・・急げよ!!」

「了解!」

(タクトさん・・・待っていて下さい!)

 

アルフェシオンの鬼のようなフライヤーの嵐により七番機のダメージはどんどん増えていく。死神のフライヤーはまるで悪魔に仕えるサーヴァント(使い魔)のように忠実に無駄無く動いていく

「く・・・!」

「本当にタフな機体だぜ・・・だが、機体の能力に助けてもらってるような奴はパイロットの資格はないぜ。」

(さて、そろそろか・・・)

死神はエルシオールがクロノ・ブレイク・キャノンの再エネルギーチャージをしている事に気付いていた。

「さぁ、撃てよ・・・」

アルフェシオンがエルシオールの真正面に現われる。

「!よしクロノ・ブレイク・キャノン発射!!」

エルシオールのクロノ・ブレイク・キャノンが再び死神に向かっていく。

「あきらめない・・・か・・・俺はな、実力もないカスがそういう事を思っているのがどうしても我慢できない性分でな・・・二度と軽々しく撃てないように最大の恐怖を与えてやるぜ。」

アルフェシオン胸部が開き、開いた装甲板の裏にはダイヤモンドみたいなもので作られたミラーが・・・リフレクター(反射板)があった。

「ま、まさか・・・!」

そう、この死神がこんな大掛かりな攻撃を回避できないわけがない。つまり、死神には切り札があるということだ。

クロノ・ブレイク・キャノンはアルフェシオンにヒットし、リフレクターに吸い込まれたいくように消滅した。

「・・・あ・・あ・・・」

レスターは開いた口がふさがらなかった。

「・・・素人が・・・時にはあきらめる事も肝心だぜ。」

アルフェシオンの胸部のリフレクターが紫電を発生させ始める・・・

「せっかく“頂いた”エネルギーだ、ありがたく使わせてもらうぜ。」

「まずい!!」

タクトは急いでアルフェシオンに向かって突進していく。

直感的にアルフェシオンがとてつもなく強力な攻撃をエルシオールに仕掛けようとしているのが予想できたからだ。

「ヤメロオォォォーーーーーーー!!」

タクトは叫びながらアルフェシオンに向かっていくが・・・

「デス・ブラスター・キャノン発射・・・」

死神は非情にもエルシオールに向けてアルフェシオン最大の火器を発射する。

デス・ブラスター・キャノン・・・それは漆黒の巨大なエネルギー砲。

巨大なエネルギー砲がエルシオールの頭上をかすめてエルシオールを揺らす。

「うわあぁぁぁーーーーー!!」

ブリッジのクルー達も篭からこぼれ落ちたボールのようにバウンドしていく。

やがて桁違いのエネルギー砲は通過していった。

(ふむ、リコとカズヤに怪我はないな・・・)

「レスター!大丈夫か!?」

「止めとけ、聞くだけ無駄だ・・・死んではいないが、このエネルギー砲は正相を逆相に変換する作用もある。位相が逆転すればモーターも逆回転する、ポンプやベルコン関係の設備はもはや完全にやられちまっている・・・通信関係の基盤もモーターの過負荷により流れた過電流により、焼ききれちまったぜ。以上、被害の結果報告終わりだ。」

「貴様!よくも!!」

タクトが死神との距離を詰め右手のサーベル斬りかかるが、死神は軽々と同じく二刀流のサーベルで受け止めた。

「お前じゃあ・・・戦いにすらなんねぇんだよ。」

死神は余っていたもう一つのサーベルで七番機の右手を切断し、フライヤーで七番機の足と頭を吹き飛ばした。

「ぐああああーーーーー!!」

死神は悠然と大人しくなった七番機を眺めていた。

「おいおい・・・そんな実力でよく守るなどと言えたものだな。」

死神は小馬鹿にした口調で敗者を弄ぶ。

「俺はお前とミルフィーの事を最初からずっと見てたんだぜ?今までお前がどうやって戦い抜いてきたは知っている・・・」

「・・・な、何が言いたい・・・?」

「お前の価値とは何だ?」

「俺の価値だと・・・?」

「お前の価値とは戦術が巧みな事か?しかし、今回、お前は俺の戦術にまんまと掛かり、母艦をがら空きにした・・・俺はアレだけ時間があれば余裕で母艦を撃墜できたんだぞ?だからお前の頭は悪いって事だ・・・」

タクトは歯軋りしながら死神の話を我慢して聞く。

そして、危機挽回の機会をうかがっている。

「そういえばお前ってだらしないが優しくて正義感が強いとか言われているらしいな?それで?・・・それがどうした・・・?何か役にたったか?俺との戦いで・・・」

「く・・・!」

「正義なんてものほど都合のいいものは無い・・・大抵が宗教や国同士の争いで大義名分として使われるだけだというのにな・・・」

「違う!正義があるからこそ秩序が保たれるんだ!」

「それじゃあその正義とやらは誰が、何を基準にして決めているんだよ・・・多数決で人数の多い意見の方が正義とやらになるのかよ?大体お前達が掲げてきた正義なんてその場その場の状況と気分と先入観で決めたぐらいのものじゃねぇかよ・・・」

「何・・・?」

「ゲルンを倒した後でNEUEに接触・・・復興支援などという正義を掲げながら実際的には植民地支配と何も変わらない・・・」

「それは違う!NEUEは!!」

「お前がそう思っても皇国軍以外の勢力は軍備の増強としか取らないだろう。」

「だからお前達は攻撃をしかけてきたと言うのか!?」

俺の場合は少し違うがね・・・メベト様の目的はそういう事だろう・・・」

「・・・どういう事だ?」

いずれ分かる事さ・・・それよりもお前に聞こう・・・お前にとって守るものとは何だ?・・・分かりやすく言おう。お前が守るのはミルフィーかそれとも正義か?」

「両方だ!」

「両方?どっちか一つしか選べない場合はどうするつもりだ?」

「何でどっちか一つなんだよ!?」

「あったまの悪い奴だな・・・お前はミルフィーを助ける為なら正義を破る事も辞さないのかと聞いているんだよ・・・答えな・・・」

「両方に決まっている・・・!!」

そうかい、そうかい・・・こいつは本物の馬鹿だな・・・

「面白いやつだなぁ・・・お前は・・・守ろうとする意思はありますがその為の努力はありません。って奴だろう?

世の中、何でも気持ちだけでどうにかなるのなら世の中はお前みたいな夢想家で溢れかえっちまうぜ・・・少なくとも軍人の・・・男の考えでは無いな・・・そもそも努力無しで戦いに勝とうなどとはムシがよすぎすだろう?大体お前は今まで何をしていたんだ?俺のような敵に対してどう対処するつもりだったんだよ?デスクワークと頭使うだけで軍人だとでも思っていたのか?あのジーダマイヤー達のようにデスクワーク専門の軍人になりたいのなら止めはしないがな・・・」

「だ、だまれ・・・」

「いやだね、お前みたいに根性が無いくせに口だけが立派なんていう男は生きてる価値も無いんだよ・・・資源の無駄だ。お前に比べれば守る意思が無くても実力のある奴の方がまだ価値があるぜ。何故なら実力は努力無しでは身に付くものでは無いからな。」

「俺だって・・」

「やかましい。全ては結果なんだよ。守り切れなかったら、勝てなかったら、死んだら意味がねぇだろうが。それにお前の努力など努力の域にまで達していねぇんだよ。」

「く・・・」

「いいか?男の価値てやつは己の限界地点でどれだけの底力を発揮できるか、つまりは根性の領域で決まる。強い根性の前では正義感や理屈などは紙切れ以下の価値しか無い・・・口で解決しようなんていうのは自分の実力に自信がない弱者の逃げ道だ。つまりは、日頃から根性をいれて努力して実力を付けろという事だ。限界を超えようと精進する事が真の努力と言う奴だ。この世界は弱肉強食、強き者のみが生き残る事が許されるのだからな・・・」

「・・・・・・」

「今のお前に司令官をやる資格はないんだよ。」

 

時は死神がデス・ブラスター・キャノンを発射する直前にさかのぼる。

カズヤはラッキースターのコクピットで難儀していた。

「御願いだ!動いてくれ!このままじゃ皆がやられてしまう・・・!」

ラッキースターのエンジンはすでにかかっている、しかし、エンジンの回転数が始動可能の域まで達していないのだ。

「どうして、動いてくれないんだ・・・!?」

カズヤは頭を抱えてうずくまったその時、格納庫が激しい揺れに襲われた。

「う、うわあぁぁーーーー!?」

揺れが治まると格納庫の証明が消え、格納庫はパニックになっていた。

カズヤはアプリコットが心配になり、クロスキャリバーへ通信しようとするが依然、クロスキャリバーもブレイブハートもその機能を停止している。モニターには依然としてGRA-000としか表示されていない。

「こ、このままじゃ・・・皆が・・・!」

(神様おねがいします!一度でいいから僕に力を貸してください!!)

この時カズヤが祈った神こそが災いの種だとはカズヤが知る由も無い。

カズヤが手を組んで祈った時、ラッキースターのエンジンの回転数が限界区域まで上がった・・・まさに困った時の神頼みである。

エンジン始動の音に、メカニック達がラッキースターに注目する。

「や、やった!」

しかし、カズヤは素早く、状況に応じた行動を始めた。

「皆さん!ラッキースターが出ます!全員が格納庫から出た後、手動でハッチを開いて下さい!」

一方、タクトは死神の痛烈な攻撃にさらされていた。もはやコクピット以外で被弾しなかった場所はない・・・

 

「本当にタフな機体だな・・・だが不死身というわけではない・・・タクト、これで終わりにしてやる・・・」

アルフェシオンがリフレクターを開き、再びデス・ブラスター・キャノンのチャージを始める。

「さぁ・・・最後は最大出力といこうか・・・」

「く・・・」

まさにタクトが絶体絶命のピンチの時、死神が絶好の機会の時、そこに救世主が現われた。

(・・・ふ、やっと“本命”がきたか・・・)

「ラ、ラッキースター・・・?ミルフィーなのか・・・?」

「タクトさん!大丈夫ですか!?」

「カ、カズヤ!?ど、どうして君がラッキースターに?」

タクトが驚くのも無理はない、本来、一番機ラッキースターは高性能の代わりにパワーのバランスが非常に悪い。それ故にパイロットを極端に選ぶ、現在この機体を乗りこなせるのはミルフィーユだけである・・・

「わかりません・・・しかし、動いてくれたのならこいつを倒すまでです!!」

カズヤが死神の姿を肉眼で確認する。

(やはり、“タクトを”助けに来たか・・・)

「お前が死神のメシアか!?」

「その通りだよ、カズヤ・シラナミ・・・それでいきなりで悪いが、君は乗る機体を間違えた・・・」

「何・・・?」

この零番機とその一番機には深い因縁があってな・・・はっきり言って非常に仲が悪いんだ。」

「え・・・?う、うわ!」

死神の答えを肯定するかのようにラッキースターが光の翼を出したのだ。アルフェシオンもそれに答えるかの如く、うなり声を上げている。

「聞こえるか?紋章機の声が・・・?」

「な、何を言ってるんだ・・・?」

「君には聞こえる筈だ・・・紋章機には意思がある・・・

「意思って・・・?な、何の事を言ってるんだ!?」

「君は分かっている筈だがな・・・今、この二機は互いを罵倒、威嚇中だ・・・あそこの七番機同様で一番機は基本的に俺の言う事は聞いてくれないんだ。」

「・・・?」

こいつは一体何が言いたいんだ?

「どうやらアルフェシオンはそいつにやられた古傷がまだ痛むらしい・・・

古傷って何の事だ・・・?

その時モニターにGRA-000 ALFESHION LUCILAFELと表示された。

「何だ?アルフェシオン?ルシラフェル?」

そして、死神のモニターにはGRA-001 EXTREME LUCIFERと表示されていた。

エクストリーム・・・ルシファー・・・ね・・・まぁ、俺達にとってはそっちの名前の方が定着しているか・・・しかし、参ったな・・・こいつは・・・)

「やれやれ・・・どうやらお互いに戦る気満々らしい、こうなっては戦うしかないな。」

「・・・僕は戦う!これ以上お前に仲間を傷つけさせはしない!!」

「・・・残念だよ・・・君と戦う事になるのがね・・・しかし、せっかくの機会だ・・・君の力を見せてもらおう・・・」

アルフェシオンがステルスを発動させ姿をくらました。

 

ブラック・アウト

 

「カズヤ・・・気を付けろ、こいつのフライヤーにはステルス機能が備わっていてレーダーにもかからない・・・」

「それでも・・・何としてでも勝ってみせます!」

「頼む・・・」

俺は何て情けない事を頼んでいるんだ・・・

カズヤはレーダーを切って意識を集中させる。

(・・・二時の方向にあいつがいるような気がする・・・)

カズヤは自分の直感を信じてラッキースターの二時の方向にミサイルを撃ち込む。

敵がステルスを使っている以上追尾レーザーは仕えない・・・

「!」

ミサイルが途中でフライヤーの攻撃を受けて爆発した。

「狙いがあっていたという事なのか・・・?」

(さすがだ、直感的に俺の位置を掴んでいる・・・)

「いや、まぐれか・・・?」

(では、まぐれかどうかを確かめさせてもらおう。)

(フライヤー!?)

何もない空間からフライヤーのビームが時間差で襲い掛かってくる。

「そこか!?」

カズヤは上手く次々と襲い掛かってくるフライヤーの弾幕を回避していく。

(しかし、このままじゃ囲まれる!?)

そうフライヤーは包囲網を作り、徐々にカズヤの脱出経路を潰していく。

それはまさにフライヤーの牢獄・・・狙った獲物は逃がさない。

(それなら・・・!)

カズヤはフライヤーが仕掛けれられて無い区域を見つけてそこに逃げ込み、そのまま最大速度で真っ直ぐ飛んでいく。

(ほう、“正解”だ。)

フライヤーがカズヤを追跡する為に、一方向に集まる。

飛行形態の弱みは旋回だが、直線ならば驚異的な速度が出せる。ましてやラッキースターの速度は紋章機の中でもトップクラスなのだ。

「ふふふ・・・今度はお前の腕を見せてもらおう・・・」

死神がステルスを解除し姿を現した。アルフェシオンの姿はいつの間にか飛行形態へと戻っていた。

「・・・?何のつもりだ!?」

「何のつもりも何も・・・こういう事だよ・・・」

アルフェシオンが急発進してカズヤの背後に回りこもうとする。

「バックアタック!?させるか!」

カズヤは迫り来る死神の進行ラインの真正面から逃げるようにラインをずらしながら逃げていく。

「ほう・・・どこまで逃げ切れる?」

死神はスロットルの開度を序予に上げていく・・・

「追いついてくる!」

「紋章機の開発者として一つ教えといてやろう・・・アルフェシオンの機動性を上回る戦闘機など存在しない・・・このままではいずれ追いつかれえるぞ・・・どうする?カズヤ・シラナミ・・・!」

「く・・・だったら!!」

カズヤは急旋回してアルフェシオンの方に一瞬、機首を向けさせる。

(この俺を相手にフェイントか・・・まぁいい・・・付き合ってやろう・・・)

「ここで!」

そのまま後方から追跡していたアルフェシオンの背後へ向けて飛んでいき、死神も瞬時に進行方向を変更する。

ほんの少しの差でカズヤが死神の背後へ張り付いている。

「今度はこっちの番だ!!」

カズヤは背後に向けてホーミングレーザーを発射した。

「・・・む・・・」

死神は機体のを右のスロットルを全閉にして左のスロットルをを全開にして急反転させアフターバーナーを全開にして機体を急発進させて迫ってくるホーミングレーザーを振り切った。

「まだまだぁ!」

カズヤはあきらめずにホーミングレーザーを撃ち続けた。

「ふ・・・今のお前達にはそれが限界か・・・」

死神は忍ばせておいたフライヤーを出現させ、ラッキースターとホーミングレーザーに向けて攻撃命令を出した。

フライヤーのビームがレーザに衝突して射軸を屈曲させた。

そして次はカズヤに襲い掛かった。

そのアグレッシブさは敵に襲い掛かるスズメバチのようだ・・・

「は、速い!?」

 

その頃アプリコットは医務室で目を覚まさない姉の元に座ったまま祈りを捧げていた。

しかし、彼女が今願っている事はただ一つ・・・カズヤの無事だ。

「カズヤさん・・・」

 

フライヤーが一斉にビームを照射しようとした次の瞬間、ラッキースターに異変が起こった。

「な、何だ?エンジンの出力はフルのままなのに、速度が上がっている・・・?」

気のせいなんかじゃない!ラッキースターの出力が上がっている!

ラッキースターは尋常ならざる速度でフライヤーを振り切っていく。

(ち・・・ならこれで・・・!)

死神はラッキースターの正面に四機のフライヤーをドライブアウトさせて待ち伏せ撃ちをさせた。

「うわ!?」

しかし、ラッキースターは瞬時に機体をずらしてフライヤー粒子を回避した。無論カズヤにこんな芸当が出来るわけが無い。

(い、今機体が勝手に動いた・・・?)

何がどうなっているのかがさっぱり分からない・・・ラッキースターは僕の操作を受け付けずに敵のフライヤーの猛攻撃を悠然と回避していく・・・

「ち・・・分が悪いか・・・」

「あ、あれはカズヤが操縦しているのか?」

俺は目の前で繰り広げられている光景に驚いていた。

(時間か・・・今回はここまででいいだろう・・・)

死神はフライヤー達を呼び戻した。

「・・・?フライヤーが・・・」

「カズヤ・・・君は確かな実力を持っているな・・・その強き力でリコを守ってやれ。本当はそこの優男を徹底的に痛めつけにきたんだが今回は君に免じて見逃してやろう・・・」

死神は最後にこう言った。

「タクト、覚えておけ・・・これからお前がどんな事をしても最後の敵はNEUEだという事をな。それは運命・・・絶対だ・・・絶対は奇跡でも覆せないものだと知れ・・・

「NEUEが敵になるだと・・・?」

「いずれわかるさ・・・じゃあな・・・」

「待て!逃げるな!!」

カズヤは死神を探そうとしたがすでに死神の気配は消えていた・・・

「くそ!逃げられたか・・・死神のメシア・・・次こそ・・・」

お前を倒す・・・必ず・・・必ず・・・

この戦闘でタクト達の被害は甚大なものとなった。

幸いタクト以外の負傷者は出なかったが、依然としてミルフィーユの意識は回復せず、アルフェシオンのデス・ブラスター・キャノンの位相逆転現象によりエルシオールのエンジン関係のモーターや制御盤などはすべて破損しており、乗組員総出で復旧作業に当たる事になった。

死神との最初の戦いは最悪の結果となった・・・

混乱の為にエルシオールの乗組員は全員気付かなかった。

GA−006シャープシューターと烏丸 ちとせが帰艦してない事に・・・

 

ちとせは宙域を彷徨い続けていた。

ちとせの頭の中に懐かしい声が響いてくる。

おいで・・・ちとせ・・・おいで・・・ちとせ・・・おいで・・・

懐かしき声に心をうつろににして呼ばれる方向に機体を動かしていった・・・

「父さま・・・どこにいるの?」

こっちだよ・・・おいで・・・ちとせ・・・こっちだよ・・・おいで・・・

ちとせは気付かない・・・・進路方向にメシア隊の母艦がある事に・・・そして、目の前に、“死神”がいる事に・・・

(くっくっくっくっ!ファザコンを誘い出すのはたやすいぜ・・・)

こうしてメシア隊はちとせとシャープシューターを捕獲した・・・

「今度の戦いは面白くなりそうだぜぇ・・・」

“死神”は嬉しそうに舌なめずりをした・・・

 

レナミス星系のごく普通の宙域にステルスをかけて姿を隠している黒い巡洋艦がある・・・この船こそノア・・・死神のメシアの艦だ。

総帥のメベト・ヴァル・ファスクが率いる主力のメベト艦隊には100億以上の重戦艦が配置されているが、メシア隊にはこのノアしか配備されていない・・・ゼックイなどは全て死神のメシアが応援要請を出した時にのみ送られてくるだけだ・・・戦闘機の積載数も最大で7機と少ない・・・

しかしこの船には最強の紋章機 アルフェシオンと最強のパイロット死神のメシアがいる為、それだけで十分なのだ。そして、部下には性格的には問題があるものの腕は確かなシリウスと優秀なエオニアがいる・・・

これだけでメシア隊は身内の元老院のメンバー達から

事実上、ネオ・ヴァル・ファスク最強の戦闘部隊とも言われている・・・

もっともタクト達との第二次ヴァル・ファスク大戦以来元老院の者達には何の権限もありはしない・・・故に、ヴァル・ランダルの市民達もメベトの事は伝説の登場人物程度にしか認識していないのだ。無論、死神のメシアのことなど知る由も無いだろう・・・

一方ノアのブリッジでは・・・死神のメシアが艦長の椅子で足を組んでシリウスの帰還を待っていた・・・その姿はその性格に似合わない程の美しさを出していた。

背中まで降りている銀色の髪・・・そして白い肌・・・その階級を強調するかのような紫の軍服と赤いマント・・・そして、その端正な顔の目だけを隠している真っ赤なバイザー・・・もし、彼を一度でも見た者がいるのならその姿を二度と忘れる事はないだろう・・・

「隊長・・・シリウスは現在、帰還予定時刻を1時間もオーバーしています・・・さすがにこれは・・・」

「かまわん・・・どうせ馬鹿には何を言っても聞かん・・・下手に注意をすると何をするか分からんしな・・・それよりも・・・なぁ・・・エオニア・・・」

「た、隊長!?バイザーを外しては・・・!」

「かまわん・・・暑苦しいんだよコレ・・・」

エオニアにだけその素顔がさらされている・・・

「やはり・・・この顔はお前には辛いか?何せあの馬鹿とそっくりだからな・・・」

「そんな事を気になさらないで下さい・・・隊長の容姿などで私は忠誠を誓ったわけではないのですから・・・隊長は隊長です・・・」

「・・・だが、シャトヤーンとシェリーを傷つけお前を廃太子へしたのは紛れも無くこの俺なんだぞ・・・?俺が憎くはないのか・・・

「・・・傷つけたのはジェラールです・・・隊長ではありません・・・」

「・・・だが、傷つけたのは間違いなくこの手だぞ?

死神のメシアは白い手袋を外して白魚のような手をかざした。

「隊長がその質問をするのも、もう120回も越えています・・・だからこれ以上自分を責めないでください・・・」

「すまん・・・エオニア・・・」

「その言葉も167回目です・・・」

「何度でも言うさ・・・この命が尽きてでもな・・・」

「隊長・・・そ・・」

エオニアが死神をフォローしようとしたその時、通信が入ってきた。

「・・・っ!?・・・隊長・・・メベト様からです。」

「モニターに出してくれ。」

死神のメシアはバイザーで眼を隠す。

「了解。」

ブリッジのメインスクリーンに巨大な大男が映った。その背丈は背景と照らし合わせても全長5Mはある・・・

その黄金のサークレットや黄金のアーマープレートや派手な装飾品の数々が彼の立場を示している・・・

この大男こそがネオ・ヴァル・ファスクの総帥ことメベト・ヴァル・ファスクである。

「これはこれは・・・メベト様、いかなるご用件でしょうか・・・?」

「白々しい芝居はよせ・・・用件はただ一つ・・・何故、本気を出さなかった・・・?本気ならば奴等を五分足らずで始末できた筈だ・・・」

「私はいつでも本気ですよ?」

「汝・・・余を愚弄する気か・・・?」

お前こそ・・・俺をなめるなよ・・・

「まさか、滅相も無い・・・」

「・・・まぁいい・・・余が汝に指揮権を委ねているのは過去の実績とその実力があるからこそだ・・・失敗は許さん・・・」

「心得ておきます・・・」

メベトがモニターから消えたのを見届けてメシアは言った。

「・・・お前こそ・・・失敗は許さんぞ・・・」

それから約30分後、死神のメシアはエオニアからシリウスがちとせとシャープシューターを捕獲して帰還したという報告を受けた・・・

「エオニア・・・俺は少し寝てくる・・・」

「了解しました。」

「悪いな・・・」

「気になさらないで下さい。」

メシアはブリッジを出ていった。

 

ブラック・アウト

 

 

あれは私が5才の時だった・・・私あの人と会ったのは・・・

私の家にはお父さん、お母さん、そしてお姉ちゃんと私が住んでいた。

お母さんはとっても不器用だけどとっても優しかった・・・

お父さんは器用だったけど少し怖かった、とにかく乱暴で滅茶苦茶でいつも私にいじわるをするから・・・それでもお父さんが出張でいなくなるととっても寂しかった。お父さんは家のムードメーカ的存在だったから・・・

お父さんの仕事は何であるのかは教えてくれなかったけどほとんど家には帰ってこれないほど忙しいんだとお母さんから聞いた。

だけど、私の傍にはいつもお姉ちゃんがいたのを覚えている・・・

私はお姉ちゃんにべったりだった・・・私はお姉ちゃんに憧れていろんな事を真似ていたような気がする・・・服も髪飾りも・・・

でもこの日、新しい家族が増えた。

どうやらお母さん達はあの人の事を知っているらしい

お父さんとあ母さんのお兄さんつまり叔父さんの間にはさまれてその人はこの家に帰ってきた。

お姉ちゃんがヒシと抱きついて、その人がそれを鬱陶しそうに引き剥がしていたのが最初に私がみたその人だった・・・

その人はとってもぶっきらぼうで、背丈はお父さんと同じぐらいあった。

私は正直に言うと最初はこの人が怖かった・・・

その人はいつもお父さんとお母さんと口喧嘩をしていたから。

その人は帰ってきてからはほとんど寝てばかりでお姉ちゃんが無理矢理起こすと物凄く怒ってお姉ちゃんを投げ飛ばしていたのをよく覚えている・・・

お姉ちゃんは24時間その人にべったりでお風呂も寝るのも一緒だった・・・もちろんお姉ちゃんが一方的にスキンシップを求めていたのだけど・・・

私はその人が羨ましかった・・・お姉ちゃんにそこまで好かれているのが・・・

そして、その人はお姉ちゃんを馬鹿女と呼びながらも何だかんだ言っても相手にしていた。でも、私とはまったく話してもくれなかった・・・何故なら私もその人と話したくなくって逃げていたからだ。

そんなある日、お父さんが私を部屋に呼びつけた。

お父さんの部屋は今も昔もプラモデルで一杯だ。

お父さんは「コレを使ってあいつと仲良くなりな」とだけ言ってプラモデルの一つを私に渡した。でも私はこんなもので仲良くなれるのかと不安だった。そんな私を見たお父さんが私を励まそうとして頭を撫でて私がお父さんを投げ飛ばしたのは覚えている。

私が男の人を投げ飛ばしたのはお父さんが始めてだった。でもお父さんは受身を取っていつもへらへらと笑っていた。何となくお父さんタクトさんが似ている気がする。

夕食後、私は勇気を出してその人に話しかけようとその人の部屋へと向かった。

何故ならその人はお酒とお風呂、そして何より睡眠が好きな人で食事は面倒くさいからと言ってほとんど食べなかったからだ。

私はその人の部屋に震える足で入っていった。何しろ無理矢理起こされるといつも怒っていたからだ。結局、私は引き返す事にしようとしてんだけど・・・

「・・・何のようだ・・・?」

私は心臓が止まるかと思った・・・その人が起きてしまったからだ。見る見るうちに私は恐怖で半泣きになっていた。私もお姉ちゃんのように怒られるかと思ったからだ。

しかし、その人は私を怒ったりなどしなかった・・・それどころか私の頭を優しく撫でていた。驚いた・・・その人は私に笑いかけていたからだ。そして私が持っているプラモデルを見て・・・

「あいつからだな?お前も大変だな・・・」

と言って笑っていたのをよく覚えている。

その日から私はその人と仲良くなった。

お姉ちゃんも料理を作っていたけどその人が帰ってきてからはその人が作っていた。お姉ちゃんは料理の際にはその人の事を先生とか師匠とか呼んでいた。

そしてその人の料理は本当に美味しかった・・・そしてどんな事もそつなくこなしていた。その人は近所でも有名でいつも色んな差し入れが家に届いていた。

よく思い出してみるとその人はとってもかっこ良かったTVなどで見る男の人達よりかっこ良かった。差し入れだけではなくその人宛てに色んな手紙が届いていたのは覚えている・・・

あれ?ここから先の事が思い出せない・・・

後、覚えているのは夕暮れ時のその人との別れだ。

お姉ちゃんは熱を出して寝ていて、お母さんはその看病をしていて家の入り口にはお父さんと叔父さんと私、そしてその人がいた。

その人は何かを私に謝っていた。何度も何度も・・・

そしてその人がお父さんと叔父さんに促されて車に乗り込もうとした時に私はその人のしがみ付いた。だって、ぶっきらぼうだったその人が泣いているように見えたからだ。

いや・・・泣いていたのは私だ・・・

そして私は頭につけていた髪飾りをその人に手渡した。

とても大事な物だったけど私の事を忘れないでほしかったからだ・・・

その髪飾りを握ってその人も泣いて私の頭に手をのせてきたのが私が覚えている最後の思い出だった・・・

「あれ・・・私・・・」

私は気が付くとお姉ちゃんに被さるように寝ていた。どうやらうたた寝していたらしい・・・

「大分疲れているな・・・リコ・・・」

「・・・っ!?」

私は声がした方に振り返った。声は私の聞いた事のない男の人の声だったからだ。

そこには紫色の軍服と赤いマントを羽織った人が立っていた。

「・・・久しぶりだ・・・大きくなったな・・・リコ・・・」

「あ、あなたは一体誰ですか・・・!?」

どことなくお姉ちゃんに似た髪型にそれを紡いでいる銀色の髪・・・そしてその目元を隠している真っ赤でシンプルなバイザー・・・少なくとも乗組員の人ではない。

「寂しいな・・・まぁ仕方ないか・・・」

「こ、ここは軍艦ですよ!」

「ああ・・・分かっているよ・・・この船も俺が造ったものだ。少し改造されているが基本構造は変わっていない・・・」

「違います!分かっているんですか!?あなたは不法侵入しているんですよ!」

「分かってるよ、すぐに立ち去る・・・ただ君に一つ言いたい事があってね・・・」

「言いたい事・・・?何ですか!?」

「そこの馬鹿女はいつかは目を覚ます・・・だからあまり気に病むな・・・」

そう言ってその人は私の頭に・・・ってあれ?この人・・・この光景・・・どこかで見たような・・・

そこで私の意識は途切れた。

 

「・・・コ・・・リコ・・・起きて・・・」

「ん?ん〜?」

あれ?この声はカズヤさん?・・・って!?カズヤさん!?

「きゃっ!」

ドスン!

慌てて跳ね起きた私は思わず椅子から転げてしまったらしい・・・

「リコ!?・・・大丈夫!?」

カズヤさんに起こされて私はすいませんと頭を下げた。

「・・・ここでずっとミルフィーさんの看病をしていたの?」

「はい・・・」

あれ?私さっきまでどんな夢を見ていたんだろう・・・?

「そう・・・早く目を覚ますといいね・・・」

「はい・・・」

何故だか分からないけど私はいつかお姉ちゃんが目を覚ますのだと思えてきて少し気が楽になっていた。

「あれ・・・?」

よく見ると私にはカズヤさんの軍服の上着が着せられていた。

「あ、風邪をひいたらっと思って・・・」

「ふふ・・・ありがとうございますカズヤさん。」

「え?いやそんなの・・んっ!?」

私はカズヤさんの口に自分の口を重ねた。

「え!?・・・リ、リコ・・・?」

「えへへ・・・お礼です。」

私は顔を真っ赤にして口を押さえているカズヤさんを見て笑った。

 

一方、メシア隊の旗艦 ノアでは・・・

「待たせたな・・・」

もう、よろしいのですか?

「ああ・・・それよりシリウスは?」

「格納庫です。」

「・・・分かった・・・」

俺に残された時間は少ない・・・

さぁ・・・始めよう俺の戦争をな・・・

死神のメシアは絶対なる決意を胸に格納庫へと向かった・・・

 

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