第一章

ブラウド財閥

 

〜運命の輪 機

烏丸ちとせの救出に成功したタクト達はレナミス星系に身を潜めていた・・・

被害は比較的軽かったとは言え、予定していた進行ルートがメシア隊の襲撃によって妨害された為、補給地点まで辿りつけず溶接などに使う、液体金属などのリペア用品が底をついてきた・・・

万が一にもこんな状況下でメシア隊の襲撃をうければひとたまりも無いだろう・・・

タクトは司令室で頭を捻っていた・・・医務室で目を覚まさないミルフィーユの様子を見に行く精神的な余裕すら彼には無い・・・彼は乗組員の命を預かる司令官なのだから・・・

「・・・くそ!メシアの奴・・・最初からこのつもりだったのか・・・」

補給物資受理地点はここより先の地点だ・・・しかし、二度に渡るメシア隊の襲撃でエルシオールの動力系統にダメージを受けて大幅に到達時間をオーバーしていた。予定ではこの時間には補給を受けれた筈なのだが・・・

「引き返してもメベトの主力艦隊がトランスバールを警備している筈だ・・・ミルフィーがああなった以上NEUEにも行けないし・・・一体、どうすればいいんだよ・・・!」

タクトとて人の子である、いつも陽気に振舞えるのは心のどこかで何とかなるという保険があったからだ。それはどんな聖君でも同じ事だろう・・・人間はそんなに丈夫な者なんかでは無いのだ・・・

そして、死神のメシアはその何とかなるさという保険も徹底的に叩き壊した。

死神のメシアはタクトに最終的には力だけがものを言うと教え込んだのだ。

もちろん、タクトはまだ、そんな風には思っていない・・・

言葉が絶対な力さえも越えられると信じているのだ・・・

例え、相手が全ての起源そのものだとしても・・・

もし、この時タクトが言葉より力を選んでいたのならこの世界は滅んでいただろう・・・

もちろんそれはこの物語の終幕で明らかになる事だが・・・

 

「死神のメシア・・・何でだろう・・・僕はあの人の事をよく知っている気がする・・・」

遠い昔にあの人を見た気がする・・・

カズヤは自室のベットで自分の記憶の整理をしていた。

僕は冷たい海の中にいたような気がする・・・

君の名前はカズヤ・シラナミ・・・

汝はNEUEの救世主となる・・・神の子・・・

え?

今、二つの声が・・・?

目を開けて周囲を見渡すけど誰もいない・・・

君の人生だ・・・好きなように生きるといい。

汝、その使命から逃れる事許されぬ・・・

「・・・っ!?」

目は開いている・・・起きているのに・・・!聞こえてくる!!

ただし、君がこの運命の輪から逃げ出したいのならフェイトを選べ・・・

そうすれば、奇跡の体現者がこの世にはびこる愚神共を成敗して運命の輪(メビウス・リング)を断ち斬る、その時この世界は無限に続く呪いから脱出できる・・・それが俺のラグナロクだ・・・

「だ、誰ですか・・・!?」

許さんぞ・・・この世界は俺が望んだ世界だ!運命の輪を断ち斬る事は許さん・・・!

EDENにはびこる人間という寄生虫共を全て駆除するまでこの世界は終わらせん!

「・・・ッ!?黙れ!!」

返事は無い・・・僕は通信機を動かそうとするがドアも通信機も死んでいる・・・

EDENの人間を憎悪する・・・それがお前達NEUEの民の本能だ・・・!なのに何故俺に抗う!?何故、EDENの女と戯れる・・・!?

リコの事を言っているのか・・・?それに・・・!

「戯れてなんかいない!」

他の天使も用意しているのに何故、貴様はフェイトを選んだ?

「フェイトじゃない!アプリコット・桜葉だ!」

まだ、交わっていない・・・だからまだ引き返せる!

貴様が天使を選んだあの日に・・・

過去へと戻るがいい・・!

「断る!!」

それでいい・・・自分だけを信じろ・・・

フェイトは運命の輪を紡いだ者でもあり、終焉させる者でもある!

え・・・?

「・・・今、何て言った?」

フェイトは終焉させる者、始めたのはお前だろう?

黙れ!俺という存在を生み出したのはEDENとフェイト、そしてこのカズヤだ!!

この三つの因果が無ければ俺はのままでいられたのだ!

クロノが欲という概念を持たねばEDENが俺を産み出す事も無かった!!

そうだ・・・元を正せばあの馬鹿女が全ての元凶だ・・・!

俺を産み出したのはお前達運命の三女神だ!!違うか!?

「一体、さっきから何を言っているんだ!?」

ルシファー・・・創造主に抗う堕天使め・・・八つ裂きにしてやる・・・!

己が生み出した欲望をその清楚な身に全て叩き込んで魂すら残さずに消してやる!そしてそれを守護する奇跡の体現者も同じ目にあわせてやる・・・!

この俺の中に巣くう全ての地獄を・・・

俺が味わった無限大の地獄をお前達にも味わらせてやる!

そして殺したらリセットしてまた蘇らせて、また地獄を味わらせてやる!

永遠に続くこの運命の輪の中で永遠の地獄を味わらせてやるっ!!

さぁ!カズヤよ堕天使を殺せ!

全ての欲を生み出した堕天使ルシファーを殺せ!!

EDENの民を殺せ!

奇跡の体現者を殺せ!

完全の体現者も共に!

俺には奇跡も不完全な完全もいらん!

求めるのは常に絶対だ・・・!

絶対だ!それがお前の運命だ・・・!!

黙れ!フェイトは完全の体現者などでは無い!!

貴様が全て仕組んだ事だ!

黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れれ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ

「や、やめろ・・・!」

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

・・・何故、そこまで俺を拒むんだ・・・

あなたがフェイトを選んだから私が生まれたと言うのに・・・

許さない!!許さん!!許さない!!許さん!!

お前にも俺が味わった地獄を見せてやるっ!!

あなたにも私が味わった地獄を見せてあげる!

な、周りが・・・!?

何と僕の周辺は真っ赤な空間と化していた・・・

「・・・ッ!?」

辺りに広がるのは様々な_の肉片!?

目を閉じても辺りの地獄絵図が脳裏に直接送り込んでこられる。

広がるのは肉片と骨のみ・・・それ以外のものが見えない・・・

はここから出たいのに手足が動かない・・・

この地獄絵図を見たものは一時間で正気を失う・・・

それならは自分の手を見て目をそらそうととするが、首が動いてくれない・・・

いや・・・には首しかなかったのだ・・・

なぁ〜んだ・・・もその中の一人だったんだ・・・

は上から降ってくるバラバラにされた(奴等にバラバラにされた)新しい仲間に痛くなかった?などと聞きながら歓迎した。

仲間の歓迎会が始まる・・・

仲間の自己紹介が始まった・・・

ねぇねぇ?君は何処を取られたの

おめめ。

あ、僕とおんなじだね。

なんか、内臓を全部とられたよ・・・あはは・・・

それは痛かったね・・・大丈夫・・・今も痛いの?

大丈夫・・・いつか達のこの痛みを晴らしてくれる仲間が現われるから・・・その時までの辛抱さ・・・それが僕達のラグナロクさ・・・

あぁ・・・任せな・・・俺は死神であり救世主なのだからなぁ・・・

君達の救世主であり、罪人共の死神である・・・

死神に助力してこの世に死を充満させる・・・

それがこの俺・・・死神の救世主(メシア)だ・・・

ああ・・・仲間が死神のメシアの誕生を祝ってくれている・・・

この高揚感・・・たまらない・・・死への恐怖すら超えるこの高揚感・・・

お前達の痛みは俺が晴らしてやる・・・

自由だけを追い求めたEDENの民を皆殺しにしてやる!!

臭いものに蓋をしたEDENの奴等を皆殺しにしてやる・・・!!

貴様達に神罰を下してやるぞ・・・!!!

僕・・まで・・・頭がおかしく・・・なりそう・・・だ・・・

・・・ズヤさん!カズヤさん!!

誰かが僕を呼んでいる・・・

カズヤさん!カズヤさん!!カズヤさん!!!

リ・・・コ・・・・・・ッ!?リコ!?リコォォーーー!!

ガバッ!

「カ、カズヤさん!」

「・・・あれ・・・?」

僕が目を開けると僕はベットの中だった・・・あれ・・・僕はさっきまで・・・何を・・・?

駄目だ!思い出したくても思い出せない!思い出そうとすればするほど思い出せなくなる!!

「カズヤさん・・・凄い汗です!一体どんな夢を見たんですか!?」

夢?夢・・・夢・・・駄目だ・・・やっぱり思い出せない・・・

「・・・いや、もう大丈夫・・・ところでどうしてリコがここに?」

「え?あ、私は洗濯物を取りにきたんですけど・・・」

あぁ、そうだった・・・リコが僕の洗濯物を引き受けてくれていたんだっけ・・・

忘れかけていたなんて・・・本当に酷い彼氏だな・・・僕は・・・

「呼び鈴を押してもカズヤさんの返事が無くて・・・そうしたら部屋の中からカズヤさんがやめろー!って叫んだから・・・悪いとは思ったんですけど・・・ロックを外して・・・」

「いや、いいよ・・・おかげで助かったよ・・・っと・・・とと・・・!」

僕は立ち上がったが、足がおぼつかない・・・一体、どんな夢を見たのかは分からないけどおそらくは悪夢だったのだろう・・・

「カズヤさん!?全然大丈夫なんかじゃないじゃないですか!」

「あはは・・・ゴメン・・・」

「もう!笑い事なんかじゃないですよ!」

リコが本当に心配そうに僕を見ているので大人しくベットに寝る事にした。

「あ、駄目ですよ!寝汗がシーツに染み付いているんでしょ?」

「え?あ・・・あぁ・・・いいよ・・・」

「駄目です!シーツも今着ている服も洗っちゃいますから!」

「わ、わかったよ・・・」

僕はリコに一度部屋を出ていってもらって僕はシャワーを浴びて服を着替え、シーツと服を洗う事にした。

・・・で

「リコ・・・?」

「はい?何ですか?」

「あのさ・・・どうして僕はリコの部屋にいるのかな?」

「変なカズヤさん・・・カズヤさんが具合が悪そうだから私の部屋に来たんじゃないですか・・・」

正確に言うと僕が君にここまで連れてこられたんだけどなぁ・・・

「別に僕の部屋でも良かったのに・・・」

「駄目ですよ!シーツも無いのに・・・寝るなんて・・・」

「いや、床でも・・・」

「駄目です!なんかカズヤさんのそういうところお父さんに似てますよ。」

リコ・・・僕は君のお父さんを知らないけどその様子だと随分とお父さんで苦労してきたんだね・・・と僕が黙っているとリコが可愛い顔を膨らませた。

「む〜・・・そんなに私の部屋が気に入らないんですか?」

「へ?」

いや、何か話が思わぬ方向に・・・

「分かりました!もうカズヤさんを部屋には呼びませんから!」

リコは顔をフイと背けてしまった。はぁ〜困ったなぁ・・・

「あ、ち、違うんだ!リコに悪いかなって思って・・・」

「もう相変わらず馬鹿なんですから!」

「・・・はい?」

「私はカズヤさんの彼女なんですよ?そんな遠慮はしないで下さい!」

「は、はぁ・・・?」

「それに私はカズヤさん以外の男の人を部屋に入れたりしません・・・」

いや・・・その言葉は嬉しいんだけど・・・リコってこんなに積極的だったけな・・・?

「さぁ・・・カズヤさんあのベットを使ってください。」

う、う〜ん・・・正直目が冴えてしまったんだけど・・・

リコは本気で心配してるみたいだからここは大人しく従うとしよう・・・

「ゴメン・・・じゃあベットを借りるね・・・」

そう言って僕はリコのベットに潜り込んだ・・・

「いいですよ。私も寝ますから」

正直に言うとリコの香りがしてドキドキしている・・・

って僕は何を考えているんだーーーー!!

ん?隣に誰かが・・・って!?

「ど、どうして、リコも入ってくるの?」

「どうしてって私も寝るからに決まっているじゃないですか。」

と言いながら髪飾りを外すリコ・・・じゃなくて!!

「ご、ごめん!やっぱり僕、自分の部屋で寝るから!!」

と言ってベットから抜け出そうとしたんだけど・・・

ガシ!

リコが手を掴んで離してくれなかった・・・

「あ、あの〜リコ・・・手を離してくれないかな?」

「駄目です。一緒に寝るんですから・・・」

「い、いや、それだけはちょ、ちょっと・・・」

「あ〜誰だったかなぁ〜?私に添い寝してってお願いしたのは〜?」

ごめんなさいそれ僕です・・・

「それに離しませんから、私これでもお母さんから柔道を教わっているんですからね・・・あまり抵抗すると無理矢理抑え込んじゃいますよ・・・てへ♪」

リコ・・・笑って誤魔化してもそれは立派な脅迫だよ・・・

後、君の家族って一体どんな人なの・・・?

結局、僕はそのままリコと一緒に寝る事になった・・・

もちろん、リコだけが寝付いたのだが・・・え?僕?僕は寝られなかったよ・・・

だって、リコの寝息が背中越しに伝わってくるんだから・・・

 

 

「ではそのブラウド財閥が補給を代行してくれると?」

「はい、ちょうどレナミス星系に駐留しているとの事でして、どうやら資源衛星の視察に訪れている間にメベト達の襲来があり、NEUEに戻れなくなったからだと思われます・・・」

ここはトランスバール本星にある皇居・・・

その執務室でシヴァとルフトはネオ・ヴァル・ファスクへの対抗策を練っていた。

もっとも、敵の膨大な軍事力にはどうあがいても無駄なのだが・・・

この騒乱の際にシヴァに助言をした者がいた。

「そして敵の行動は未知数です。ここで我々が補給部隊を出せば、敵を刺激して補給部隊は瞬時に壊滅させられます・・・」

皇国軍 人事部の部長 阿部 竜二である。

彼はジェラールの時より、皇国に使え、戦略助言などの権限をジェラールより与えられていた。そして、その頭脳明晰さは今でも健在でこうやって留任しているのだ。

「したがってここはブラウド財閥を利用すべきかと・・・シヴァ様・・・これだけはお忘れなきよう・・・我々の敵は死人を蘇らせる程の技術力を持っているという事を・・・

「エオニアの事はタクトから聞いている・・・映像も届いている・・・連中はこちらより技術力が優れているという事か・・・」

「しかし、かと言って、得体の知れん財閥を簡単に信用してよいものやら・・・もしかするとネオ・ヴァル・ファスクと共謀しているかもしれんぞ・・・」

「そうだとするとクロス・ゲートは使えないようにしてしまった理由が無くなる・・・ネオ・ヴァル・ファスクはブラウド財閥をこちらにいれたくなかったんだろう・・・」

「そうは言うてものう・・・」

ルフト准将は頭を捻っていた。ルフトは正直、この阿部という男が信用できなかったからだ。彼はジェラールの統治時代にジェラールがいつも傍に置いていたからだ。

確かに、彼は金や物には興味が無く不正なことなどは一切してない・・・またその年齢とはかけ離れた容姿により、部下からの信頼も厚い人物でもある。ただし、戦闘や皇国の運営については積極的に意見を述べていて皇国は彼が今まで動かしてきたと言っても過言では無い・・・ゆえに今ひとつ信用ができないのだ・・・

ルフトは確信していた。阿部は何か重要な事を隠していると・・・

「阿部殿・・・そのブラウド財閥とはどのようなところなのか?」

「・・・ブラウド財閥はNEUEで大昔から密かに栄える鉱業社です。NEUEに出回っている金や希少な金属はほぼ全てブラウドから流れてきているとの事です。」

「鉱山物質の搬送屋か・・・しかし、そんな貴重な鉱物がそんなにいつも採取できるものなのか?しかもNEUEを占める程に・・・」

「その通りです・・・それがブラウド財閥の裏の顔なのです。」

「裏の顔じゃと・・・?」

「そうだ・・・昔よりブラウド財閥はその鉱山を狙われてきた・・・しかし、狙った連中は全て撃退されたと聞く・・・つまり、ブラウドには私設軍隊があるという事だ・・・」

「私設軍隊・・・」

「その規模も未知数ですが、総帥のゼイバー・ブラウドがこちらにきていると言う事は本拠地にはそれなりの軍備が敷かれているという事です・・・しかもメベトは有利な立場にいながらミルフィーユを要求しなかった・・・つまり、メベトもブラウド財閥とは関わりになりたくないという事ではないでしょうか・・・?」

「なるほど・・・」

「ゼイバーは金には興味が無い商人と聞きます・・・ですからここは素直に信用した方がよろしいかと・・・」

「うむ・・・わかったゼイバー殿の申し出を受け入れよう・・・」

「分かりました・・・それでは待機している使いの者にそう伝えましょう・・・」

「待て、わしも行くぞ・・・」

「・・・・・・」

皇居の来賓室までの道のりをルフトと阿部が並んで歩いている・・・

皇居の内装は見事なものだった・・・クーデターの際にエオニアが焼き払った後でこの阿部がここまで復興したというのだから驚きだ・・・

「それにしても阿部殿・・・随分と新世界の事に詳しいようじゃが・・・」

「・・・ルフト、お前が俺を疑っているのは知っているが、今は緊急事態だ・・・俺の詮索などする時間があるのなら、EDEN星系の惑星の現状を把握しろ・・・」

「わかっとるわい・・・それよりもじゃ・・・」

ルフトは阿部の前に先回りして阿部の目を見据えた。阿部は表情を崩さずにたちどまりルフトの目を見返した。

「お主が何かを隠している事は知っている・・・それが皇国の存亡に関する事じゃったら話してはくれぬか?」

「・・・お前の言う通り、俺は重要な事を知っているが、今は話せない・・・

「何故じゃ!?お主とて緊急事態だ言うたではないか!?」

「緊急事態だからこそだ・・・どこに敵が潜んでいるかも分からないのに迂闊に話せるか・・・それに心配する必要は無い・・・俺の情報はお前達が知っても何の役にもたたない・・・だから俺に任せておけ・・・EDENは守り通してみせる・・・」

そう言うと阿部はルフトを追い越してブラウド財閥の使者の元へと向かっていった。

「・・・任せてよいものかの・・・」

ルフトは顎を擦りながら阿部の背中を見送った。

 

 

〜真夏の肉じゃが〜

 

私は昔の夢を見ている・・・

あれは暑くても心地よい暑さの夏の日だった・・・

「リコ〜!ご飯が出来たよ〜!」

「うん!今行く〜!」

お姉ちゃんがいつものように呼びにきてくれた。

今日はお父さんとお母さんがいないので私とあの人とお姉ちゃんだけだった。

「肉じゃが・・・?」

「うん!お兄ちゃんが作ってくれたの!」

お兄ちゃん・・・レイ・桜葉・・・私とお姉ちゃんのお兄さんだ。

私とお姉ちゃんが一階の台所に下りるとお兄ちゃんが奥の台所からお盆を持って出てくるところだった。

お兄ちゃんは紺のジーパンに白い半袖シャツだ。猫さんエプロンは外していた。

「別にテメェの為に作ったわけじゃねぇ・・・」

お兄ちゃんは相変わらずお姉ちゃんにぶっきらぼうだ。

「あのねあのね!凄いんだよ!この肉じゃがって何と!水を一切使ってないんだよ!ミンチ肉と玉ねぎとにんじんとじゃがいもを入れてみりんと砂糖と醤油だけで味付けしているんだよ。」

「説明が長いんだよ・・・テメェは・・・」

お兄ちゃんが料理を並べながらつっこんだ。

お姉ちゃんが盛り上がって、お兄ちゃんが突っ込む・・・これもいつもの光景だ・・・

「へぇ〜・・・お水を使わないの?」

私はお水を使わないのに感心してお兄ちゃんに聞いてみた。

「あ、あぁ・・・玉ねぎには水分が・・」

「すいぶんって・・・?」

「お水の事だ・・・玉ねぎには水分があらかじめあるから水を使うと味付けが薄くなるんだ。特に夏には冷やして食べるから少し濃い目にするのがポイントだぞ?」

「はい!師匠!!」

お兄ちゃんにビシっと敬礼するお姉ちゃん。

「誰がお前に教えたんだよ。この馬鹿女。」

馬鹿女・・・そうだ・・・お姉ちゃんの事を馬鹿女って呼んでいたのはお兄ちゃんだけだ・・・お姉ちゃんが他の人にはミルフィーって呼んでっていたから・・・

馬鹿女って呼ばれるのを許しているのはお兄ちゃんだけだ。

理由はそれぐらい許さないと相手にしてくれないからだって言っていたっけ・・・?

二人の間ではその呼び方が当たり前になっていたんだろう・・・

「作っているところを見てみたいなぁ〜・・・」

この頃の私ってわがままだったなぁ〜・・・

「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」

「何だよ・・・?」

お姉ちゃんがテーブルを回ってお兄ちゃんのところまで行く。

ちなみに私とお姉ちゃんはお兄ちゃんと向き合って座っている。

「ゴニョゴニョ・・・」

「・・・?」

何かお兄ちゃんとお姉ちゃんが内緒話をしている。

正直、仲間外れにされたみたいで寂しかった・・・

「ゴニョゴニョ・・・」

「・・・」

何やらお兄ちゃんが頷いてお姉ちゃんが離れて、そして、お兄ちゃんが立ち上がって私を手招きした。

「来いよ・・・見せてやるぜ。」

「?」

そしてお姉ちゃんに手を引かれて私は台所まで来た。

「さぁ〜遂に始まりました〜♪」

お、お兄ちゃん・・・?

「桜葉家がお送りする・・・なぁ・・・本当に言うのか?コレ・・・」

「言わなきゃ駄目!続いて言ってね!」

お姉ちゃんが何やらかしこまって・・・

「レイ・桜葉と!」

とお姉ちゃんが元気にお兄ちゃんの名前を・・・

「馬鹿女の・・・」

とお兄ちゃんは棒読みにお姉ちゃんの名前を・・・

「って駄目だよ!ちゃんと名前を呼んで!」

「・・・お前これを未来の友達にやったら絶対に絶交だぞ・・・」

「大丈夫だよ!」

「きっとお前の未来の友達はよっぽど人間が出来ているんだろうな・・・」

・・・お兄ちゃんにはお姉ちゃんの未来が見えるてんだね・・・

「いいから行くよ!」

「わかったわかった・・・」

「レイ・桜葉と!」

またまた元気にお兄ちゃんの名前を呼ぶお姉ちゃん。

「ミ、ミルフィーユ・桜葉の・・・」

「駄目だよ!元気に言わなきゃ!!」

「アァァーーーーーーーーーーー!」

「きゃ!」

「お、お兄ちゃん!?」

「分かった!分かった!!やればいいんだろ!やってやるよ!ヤケクソだ!

チクショオオオォォォーーーーーーー!」

お兄ちゃんが壊れた・・・

「レイ・桜葉と!」

「ミルフィーユ・桜葉の!」

「お気楽クッキング〜♪」

「は〜い!いきなりですが今日のメニューは冷まして美味しい肉じゃがですよ〜!」

お姉ちゃんはノリノリだね・・・

「そして、今日の先生は・・・!料理界の巨匠・・・レイ・桜葉先生です!」

(桜葉は省け・・・鬱陶しいから・・・)

「レイ・桜葉です。」

「では先生!早速作り方を教えて下さい!」

「・・・・・・」

「先生?」

「まずは油を軽めにひいてミンチ肉を炒めて、捌いたジャガイモと人参を入れて砂糖と醤油を入れて炒めろ。色にメリハリを付けたい奴は少しだけみりんを入れるんだ。

入れすぎると不味くなるから気をつけな・・・」

「お、お兄ちゃん?は、速すぎるよ!!」

「後は玉ねぎの野郎を好きなように捌いて入れろ・・・日頃玉ねぎに悩まされているお前・・・この玉ねぎの水分を逆利用してやれ・・・存分にな・・・くっくっくっくっ!あーはっはっはっはっ!!」

お兄ちゃん・・・玉ねぎが嫌いなんだ・・・というか悩まされているんだ・・・

「後は弱火で30分近く煮込みな・・・我慢しきれなければ好きにしな・・・味がおちても俺の知った事かよ・・・以上・・・」

「・・・」

「・・・」

「分かったか?リコ・・・」

「うん・・・」

ごめんなさい・・・全然分からなかった・・・

そして私達は肉じゃがを食べる事にした。

「う〜ん!美味しい!!」

「うん!」

「・・・そうか・・・」

お兄ちゃんはいつも通りに返して来た。多分お兄ちゃんは恥ずかしがり屋さんなんだろう・・・でも、追及したらぶすくれそうなのでやめておこう・・・

「でも、他にも入れたかったな〜」

「・・・お前が買い忘れれなければ入れられたんだよ・・・」

お兄ちゃんの目がギラリと光る。

「うっ・・・ごめんなさい・・・で、でもでも!今度はちゃんと入れようね!?」

「お前が買い忘れたからだろうがぁ!オラァッ!!」

お兄ちゃんは目にも止まらない速さでお姉ちゃんの頭をぐりぐりした。

「痛い!いたたたたた!!ごめんなさいーーー!!」

何でもウメボシって言うらしい・・・

「テメェの頭の中には常識って言葉が入っているのか?ああん?入っていたらそんな馬鹿なことは言わないよな〜?ああ!?」

「うわ〜ん!」

私達はこんな風に暮らしていたんだっけ・・・

 

「う、う〜ん・・・」

私が目を覚ますと隣にはカズヤさんが眠っていた。

あれ?私は何か夢を見てなかったけ・・・?

そうだ・・・昔の夢だ・・・

「お目覚めかい?」

「・・・っ!?」

声のする方へ向くとマントで体を覆った人がいた。

「はっはっはっ!仲良き事はいい事だな。」

「大きなお世話です!!それよりも人の部屋で何をしているんですか!?」

この人は普通の人じゃない・・・鍵はかけておいた筈だ・・・

「どういう事も何もなぁ・・・カズヤの治療だよ。」

「カズヤさんの・・・?」

その言葉に私の怒りは治まっていった・・・

「ど、どういう事ですか・・・?」

「リコ・・・今日カズヤの様子がおかしかっただろう?妙に汗をかいたり足元がおぼつかなかったり・・・」

「は、はい!そうです!」

今はこの人よりもカズヤさんの容態が第一だ。

「間に合って良かったよ・・・後もう少し遅れたらアウトだったよ・・・」

その人は手に何かの小瓶を持っていた。

「それは何ですか?」

「精神安定剤の一種だ・・・心配無い・・・中毒性は全く無い・・・」

「ふぅ〜よかった・・・」

私はホッと胸を撫で下ろした・・・って思い出した!

「それであなたは一体誰なんですか!?」

「・・・・・・」

その人は渡しの問いかけに答えずにもう一つ小瓶を取り出した。

「な、何をする気ですか・・・?」

「さぁ・・・君も飲んだ方がいい・・・症状が始まるととてもでは無いが耐えられないぞ・・・」

「え・・・?わ、私もですか・・・?」

「毒なんかは入っていない・・・その証拠に俺が一口飲もう・・・」

その人は整った口元に垂らすように一滴飲んだ。

「さぁ・・・飲むんだ・・・これは命に関わる事だからな・・・」

「ん・・・」

私は何故かその人を信用して飲む事にした。

「うん・・・いい子だ・・・」

何でだろう・・・?この人は・・・誰かに・・・

・・・・・・・ッ!?そうだ!この感じは!?

私が喋ろうとした時にはその人が私の頭の上に手をかざしていた。

あれ・・・?前にもどこかで・・・これがデジャビュってやつなのかな・・・?

私は薄れていく意識の中でそんな事を考えていた。

「ゆっくりお休みリコ・・・」

 

〜艦隊戦 〜

 

「そうか・・・良かった・・・」

自室で仮眠していたタクト・マイヤーズはレスターから補給のルートが確保できたとの連絡を受けてホッと胸を撫で下ろした・・・

「予定時刻まで30分だ・・・そうだ。向こうのブラウド財閥の総帥がお前と会いたいと言っていたぞ?」

「分かった・・・」

「ん?お前にしてはやけに素直だな?」

「状況が状況だけにね・・・」

「・・・ミルフィーユの事か・・・?」

「・・・・・・」

「・・・すまん、俺が言えた事では無かったな・・・」

「いや・・・レスターが気にする事じゃない・・・まんまと誘拐された俺が悪いんだ・・・」

まんまと死神のメシアに誘拐された俺が・・・

「お前こそあまり自分を追い込むな。」

「そうだな・・・悪いけどきらせてもらうよ。」

「ああ・・・」

タクトは通信をきって軍服に着替え始めた・・・

「七番機を使いこなせ・・・か・・・」

死神のメシアが言っていた事だ・・・確かにな・・・

そして、ミルフィーのところにはあれから行ってない・・・彼女を守れなかった俺にはそんな資格すら無い・・・

バキィ!!

俺は自分の顔を殴った・・・

違う・・・俺は彼女に合わせる顔が無いから怖いだけなんじゃないかっ!

「ちくしょう!何処まで情けない奴なんだ!俺は・・・俺はぁっ!」

タクトは拳を血が滲むぐらいに握り締めた。

 

「あ・・・!レスター副指令!!」

「どうした?アルモ?」

「ブラウド財閥のゼイバー総帥が着艦許可を求めています!」

「何?総帥自らがか!?」

「はい!どうやらシャトル機にてこちらへ向かってこられた模様です。」

「至急、着艦を許可しろ!俺はタクトを呼んでくる!」

レスターは大急ぎでブリッジを飛び出した。

レスターがここまで取り乱していたのはゼイバー・ブラウドに気をつけろというルフトからの極秘メッセージを受け取っていたからだ・・・

そして、シヴァにはブラウド財閥がちとせの父烏丸 雅人誘拐拉致事件の主犯格であるという事も伏せられているとも・・・

ブラウド財閥は味方にすれば心強いが、敵にすればネオ・ヴァル・ファスクと同等かあるいはそれ以上の脅威になるとも言われているからだ。

もちろんシヴァがこの事を知ればブラウドを糾弾する・・・そうなれば今回の補給の件も取り消しになるだろうとルフトはレスターに伝えてきたのだ。

それだけにゼイバーを刺激してはならないのだ。今回ばかりは友好的な相手では無い。ブラウド財閥は影からNEUEを動かしているのだ。

 

「リコ・・・リコ・・・?」

「う、う〜ん・・・カズヤさん・・・」

「おはよう。ゴメンね起こしてしまって・・・でも、さすがにもう起きないとまずいと思って。」

「・・・いえ・・・私も少し寝すぎちゃいましたから・・・ふぁ〜・・・」

「あはは・・・やっぱり起こさない方が良かったみたいだね・・・」

「・・・カズヤさん・・・すっかり元気ですね。」

「うん!何でか分からないけど今日は調子がいいんだ。これもリコのおかげだよ!ありがとう・・・」

「・・・いえ、そんな・・・」

何か忘れているような気がする・・・

「?・・・どうしたの?」

カズヤさんが少し心配そうに私の顔を覗きこんできた。

「カズヤさん・・・ぐっすり眠れましたか?」

「え?う、うん・・・」

私の勘違いなんだろうか・・・昨日は誰かに会った気がする・・・

「リコ・・・?」

「あ、機体のチェック入れるの忘れてましたね。」

「え?あぁ!しまった・・・!」

「一緒に行きましょう!」

 

ここはエルシオールの格納庫・・・今ではムーンエンジェル隊とルーンエンジェル隊の紋章機が収納されている。

イレギュラーな七番機は奥でひっそりと無理矢理収納されている。何かタクトさんっぽいていうか・・・

ネオ・ヴァル・ファスクの襲来後ムーンエンジェル隊とルーンエンジェル隊は合併された。

それは皇国軍が敗北したからだ・・・トランスバール周辺は敵の艦隊が駐留して監視をしている為に皇国軍は軍備を再編する事が出来ない為、運良くガイエン星系で待機していた僕達が唯一の砦となった。

しかし、ここで一つ矛盾点が出てくる・・・

死神のメシアは僕達を襲撃してきて僕達も応戦している・・・立派な条約違反だ。

なのにトランスバール本星には何も危害が加えられていない・・・一体何故・・・?

まるでこの戦争は・・・誰かが意図的に仕組んでいるような気がする・・・

僕がそんな事を考えながらリコと格納庫へ進むとそこには見慣れない紳士がいた。

外見は20代後半で・・・服装はいかにもといった紺色の紳士の服だ。

水色の綺麗なショートカットではたから見ると女に見えるが・・・

「・・・」

その紳士は僕達の紋章機を見上げていた。

僕とリコの紋章機は今では合体したまま収納されている。僕とリコのペアがもっとも戦果が高かったからだ。

それに今度の敵はドッキングの時間など与えてもくれないだろう・・・

「カズヤさん・・・あの人は一体何をしているんでしょうか?」

「うん・・・」

僕たちが不審そうに紳士を見ていると紳士がこちらに気付いて振り返った。

「・・・っ!」

リコが思わず息を呑んでしまった。

紳士は目を閉じたままなのだ。

「これは失礼・・・驚かせてしまいましたね。」

紳士の口調は至って穏やかだった。

「これがエースの機体か・・・美しいフォルムですね・・・そしてこの紋章機は勇気に満ち溢れており、慈愛に満ちている・・・」

「・・・!?あなたには紋章機の心がわかるんですか!?」

死神のメシアも言っていた。紋章機には意思があると・・・

「はい・・・あなた達にもお分かりになれるのでしょう?紋章機の心が・・・」

「もしかして私達の事を知っているんですか?」

「はい・・・あなたはアプリコット・桜葉さん・・・

クロスキャリバーのパイロットですね?」

「は、はい。」

紳士が今度は僕の方に向き直った。

思わずビクっとなってしまった。

「そして君がブレイブ・ハートのパイロットカズヤ・シラナミ君ですね?」

「はい!」

何故だか賢こまってしまう。

「君達はNEUEの救世主・・・」

救世主・・・何故だかその言葉に僕は反応してしまう・・・

少し心臓の鼓動が早くなった・・・

「あ、あの・・・あなたは・・・」

「これは申し遅れました・・・私はゼイバー・ブラウドという者です・・・」

「あ!あなたがあのゼイバー総帥!?」

「はい。」

「カズヤさん!?どうしたんですか!?」

「リコこの人はブラウド財閥という大企業の総帥さんなんだよ!」

「え?えぇーーーーーー!?」

「まだまだ至らぬ身で申し訳ありません・・・」

「い、いえ・・・僕もブラウド財閥とは無縁の世界でしたから・・・」

「それは失礼しました・・・確かに我々のお客様は企業が主ですからね・・・」

ゼイバー・ブラウド・・・ブラウド財閥の総帥・・・

NEUEの世界でも名前のみが公表されていて

会社の規模は一切不明・・・ただ鉱物資源はここから出荷されているので

その規模は事実上NEUE最大と言われている・・・

影の支配者という悪評もあるけど、相手は貴重な鉱物資源を持っている為に

迂闊に糾弾する事はできないのだ。マスコミですらその名前を読み上げる事も無い程にNEUEの世界では恐れられていた。本拠地は誰も立ち入らないNEUEの辺境の宙域・・・カオス・シー(混沌の海)にあると言われている・・・つまり、この人はそれ程の大物なんだ。

「失礼・・・もし良ければ私と握手していただけませんか?」

ゼイバーさんは僕に向けて手を差し出してきた。

「え?」

「失礼しました・・・英雄さん相手に舞い上がってしまいましたね・・・」

「い、いえ!光栄です!」

僕はゼイバーさんの手を握って軽く振った。

「よろしければそちらのお嬢さんも・・・」

ゼイバーさんは今度はリコに向けて手を差し出した。

「あ、あのその私は・・・」

「お嫌ですか?」

「いえ!そ、その私は男性恐怖症でして・・・男の人に触ると投げ飛ばしちゃうんです・・・最近、握手までは何とかできるようになったんですけど・・・」

「・・・・・・」

まずい・・・ゼイバーさんが黙り込んでしまった・・・

「分かりました・・・ではどうぞ私を投げてみて下さい。」

「え?」

「ですから私を投げ飛ばして下さいと申し上げたのです。」

「だ、だだ駄目です!!」

「おや、こう見えても私は武術のたしなみがあります・・・ですからお気になさらずに・・・」

「で、でも・・・でも・・・」

「すいません・・・失礼しますね・・・」

「きゃ・・・!?」

言うが早いかゼイバーさんはリコの手を引っ張って握手を強引にした。

「どうですか・・・?私が怖いですか?」

「あ・・・いえ・・・いえ!怖くないです!!」

リコも嬉しそうに握手を仕返した。

「はっはっはっ!さすがに亮さんの娘ですね。そういうところは似ていますね。」

「え!?お父さんを知っているんですか!?」

リコのお父さんって桜葉・亮・・・いやリョウ・桜葉って言うのか・・・

「黙っていて申し上げありません・・・実は彼からあなたとはこうスキンシップするように言われていたのですよ・・・あ、私と彼はEDENとNEUEの交流が始まってからすぐに知り合ったんですよ・・・彼の星でね。」

「もう・・・お父さんの馬鹿・・・!」

「あはは!そう邪険にしないでください・・・その彼からあなた宛てにプレゼントがあります。こちらです・・・」

そう言ってゼイバーさんはポケットから小さめの箱を取り出した。

「・・・!!」

しかし、リコは何故か顔を引きつらせた・・・

「どうしたの・・・?」

「い、いえ・・・その私のお父さんってちょっと・・・かなり変わっていて・・・」

「???」

「その・・・私にプレゼントするというものが・・・」

「せっかくですからここで開けられてみられたらどうです?」

「え・・・そ、その・・・!」

「そうだ!僕が開けるよ!」

「カズヤさん・・・すいません・・・お願いします・・・」

僕が包装紙を丁寧に開いて箱を開けると・・・

「うわ!?」

思わず箱を落としそうになった・・・

「・・・っ!!きゃぁーーーー!!!」

そしてリコも中身を見たらしく僕から遠ざかっていった。

「ふむ・・・精巧に造られたおもちゃだね・・・」

そう中身はおもちゃだった・・・精巧に造られたムカデの・・・

リコ・・・君のお父さんはかなりじゃなくて非常に変わってるよ・・・

絶対に嫌がらせだと思うのは僕だけじゃない筈だ・・・

「・・・ど、どうしようか・・・コレ・・・ん?」

箱の中をよく見ると紙切れが入っていた。二枚でホッチキスで止められている。

「リコこれ・・・」

「そんなのいるわけないじゃないですか!」

「いや!違うよ!お父さんから手紙だよ・・・」

「え?・・・手紙・・・?」

私はそぉっと手紙を受け取って中身を見てみた。

『やっほ〜!リコー!!元気〜!?お父さんは今、ピラミッドの中でこの手紙を書いているんだぞ〜?どうだ!凄いだろう〜!!』

・・・お父さんの仕事って一体どんな仕事なの・・・?

『と言うのは嘘だ。』

やっぱり・・・

『久しぶりに力作が完成したから送っといたからな〜俺の入魂の出来栄えだ!大事にするんだぞ〜!!』

・・・大事も何も退治しちゃうかもしれないよ・・・

『お前にPRESSENT FOR YOU〜』

しかもまた、つづり間違えているし・・・しかもお前とYOUもダブっているし・・・

『さてつづりに突っ込みたいのは分かるが、ここから先はこの前聞いたお前の彼氏に見せてくれ・・・あ、そうそう・・・リコは見ちゃ駄目だぞ〜?』

「・・・残りはカズヤさん宛てです。」

リコが頭を押さえて手紙を差し出してきた・・・ていうか・・・

「え、え?何でリコのお父さんが僕の事を知っているの!?」

「すいません・・・お姉ちゃんがお父さんに教えたそうで・・・」

あはは・・・なるほどね・・・

僕はリコとゼイバーさんから離れて手紙を読んでみる事にした。

「え〜っと・・・何々・・・」

『や!未来の息子よ!!』

は、はいぃーーー!?

『あ〜これはもう決定事項なので変更は不可能だから。』

ちょ、ちょっと何ですか!?それ!?

『ちなみに今、リコと別れたりしたら・・・死刑。Realy?』

それ、立派な脅迫です・・・しかもそれ本気でしょう・・・後、その英語の意味知ってて使っています・・・?

『さてさて互いの絆も深まったところで本題だ。』

本題って・・・?ちなみに溝が深まった気がします。

『ところでお前は今、紋章機についてあれこれと悩んでいるみたいだが、今は目の前の敵に集中したほうがいい・・・』

この人・・・!?

『現状で死神のメシアに対抗できるのはお前だけだ・・・もし、死神のメシアが襲撃してきたらお前が奴の相手をするんだ。タクトにはシリウスの相手をしてもらった方が効率がいい・・・死神のメシアの弱点は無いが、お前の長所を活かせばくいついていけるだろう・・・』

この人は・・・軍人なのか?

『リコは君に任せるぞ、未来の息子よ・・・カズヤ・桜葉かいい名だな!』

・・・勝手に婿養子にしないで下さい・・・

『追伸・・・孫の顔が早く見たい・・・マジで見たい!!はい決定!!注文したからな

!?忘れたら死刑!!』

な、なんて自分勝手な人なんだ・・・!

『男なら強きでGOー!だ!!OK!?』

・・・聞いちゃいない・・・

・・・この手紙は僕が預かっておこう・・・

「カズヤさん?何て書いてあったんですか?」

「うわ!?」

「きゃ!?」

「ごめん・・・励ましの言葉を書いていただけだよ・・・」

・・・リコ・・・君のお父さんは宇宙一変わっているよ・・・

いっけねぇ!ゼイバーさんを忘れていた・・・っていうか・・・

「そう言えばゼイバーさんは何故ここに?」

この人はそんなに頻繁に出歩く人ではない筈だ。

「あれ?ゼイバーさん・・・?」

僕達が後ろに振り返った時にはゼイバーさんの姿は何処にも無かった。

 

一方ラッキースターのコクピットの中では・・・

「どうだ?久しぶりの再会は?」

「ああ・・・リコの反応がおもしろかった!」

コクピットに潜り込んだ男はせっせとラッキースターの

ハードシステムチェックを終了させていく・・・

「酷い父親だ・・・」

「何を言う、これも親の愛だ。」

「お前が親の愛ねぇ・・・」

「お前も子供を持てばわかるさ。」

「子供はいるよ一人はあそこにそしてもう一人はお前だ。」

「あん?」

最強の鬼とまで呼ばれたお前が親の愛とは時代と共に人の心が変わるとはまさにこの事だな・・・」

「・・・あんだと?」

「・・・いいから早く結果報告をしろ。」

「ちっ!」

男は煙草を咥えてラッキースターのチェックを終了させた。

「システム的には異常は無い・・・」

「妙だな・・・アルフェシオンとの接触でアレが起動したのかと思ったんだがな・・・」

「こりゃぁ・・・白き月でばらしてエンジンを調べるしかねぇな・・・」

「だな・・・あいつには連絡を入れておく。白き月の場所を教えておくから・・」

「待て・・・本物のゼイバーのお出ましだな・・・」

「来たか・・・あいつには出撃体勢を取らせているからお前も早く出ろ。もうじきそこは戦場になるぞ。とても激しい戦場にな・・・」

「・・・もう少しカズヤとリコの見張りをしている・・・あいつが接触してきたら問答無用で殺すからな・・・

「当然だ・・・あの二人とゼイバーは何があっても接触させてはならない。」

「ああ・・・俺の子供達には指一本触れさせはしねぇ・・・今度こそはな・・・

 

「隊長、ゼイバーがエルシオールに接触した模様です。」

「・・・ついにか・・・シリウスのゼックイは依然修復していないな?」

「はい、シリウスは自室で待機しております。というより目を覚ましてしません・・・」

「好都合だ・・・エオニア今回は激戦になる。嫌なら出撃しなくてもかまわんぞ?」

「いえ、隊長のお供をさせてください。」

「すまんな・・・では行こう・・・」

 

「・・・タクト、入るぞ・・・」

レスターがタクトの司令室に入っていく。

タクトの返事がこない事は承知ですぐさまに開け放った。

(タクト・・・ここまで落ち込んでいるのは始めてだな・・・)

「何の用だい・・・?」

「タクト・・・ゼイバー総帥がお見えだ・・・」

レスターの表情が強張っているのが分かる・・・

そうか・・・それほどの大物か・・・さっきまで俺はブラウドの資料を見ていた・・・

ゼイバー・ブラウド・・・下手をすればEDENにとって最悪の敵になる男・・・

「俺から会いに行こう・・・」

「いや・・・すでにこちらまで来ておられる・・・」

「・・・何?」

「入ってよろしいかな?」

「どうぞ・・・」

丁寧な物腰で紳士服に身を包んだ若い男が入ってきた・・・

「・・・はじめまして・・・ブラウド財閥の総帥をやっているゼイバーです。」

その男が入ってきた途端に俺の全神経が逆立った・・・

な、なんだ・・・こいつは・・・死神のメシアとも違うこの嫌悪感は・・・

「タクト?・・・どうした?」

「あ、あぁ・・・失礼しました艦長のタクト・マイヤーズです。」

「ふふふ・・・あなたの事は知っていますよ。」

この男の目・・・そうか・・・そういうつもりか・・・

「そうですか・・・」

何故だか分からないが、この男とは・・・普通に喋れない・・・

「・・・さてさて補給物資の搬入も済ませておきましたから・・・」

「どうも、ありがとうございます・・・」

俺は普通に喋ろうとするので精一杯だった・・・

「ゼイバー様、それで運搬料の方は・・・」

「ああ、結構です。無償でご奉仕させていただきますから・・・」

「な!?」

「・・・・・・」

いいから早く俺の前から消えてくれないか・・・

「あなた方は幾多もの危機を解決してくれた英雄です。その英雄の方々にご奉仕させていただくのは私にとっても光栄な事ですので・・・」

偽善はやめろ・・・

「タクトさん。」

「はい・・・何でしょうか?」

「ミルフィーユさんにお会いしたいのですが・・・よろしいですか?」

冗談じゃない・・・お前だけは絶対にミルフィーと会わせる訳には行かない・・・

「お、おい!タクト!聞いているのか!?」

「聞いているよ・・・レスター・・・」

俺はその瞑ったままの目を真っ直ぐに見据えて言った。

「申し訳ありませんがミルフィーユは私の部下であり、私の妻です。そして何より彼女は今、寝ています・・・」

「・・・・・・」

「従って彼女との面会は許可できません。」

「お、おい!?」

「ほう・・・私では駄目だと・・・?」

「はい・・・ご了承下さいませ・・・」

「タクト・・・!幾らなんでも・・!」

「黙っていろ・・・レスター・・・」

こいつだけはミルフィーに会わせてはいけないと俺の直感が言っているんだ。

「ふぅ・・・残念ですが、あなたの言う事も最もですね・・・」

ゼイバーはわざとらしくため息をついた。

「分かりました・・・早急に引き上げるとしましょう・・・」

「ご理解が早くて助かります・・・」

「では・・・」

「は、はい!それではシャトルまでお送りします!」

ゼイバーはレスターに引きつられて出て行った・・・

「・・・ゼイバー・ブラウド・・・」

俺はこの名前を一生忘れないだろう・・・

 

やがてゼイバーは自分の搭乗してきた戦艦へと乗り込んだ。

ゼイバーの戦艦はステルスで隠されていたがその巨大さは群を抜いて大きかった。

この新・エルシオールと比較すればその対比は7:3といったところだろう・・・

「タクト・・・どういうつもりだ!!」

俺はレスターからさっきの態度について注意されていた。

「どういうつもりも何も、宣戦布告さ・・・」

「お前・・・悪ふざけにも程があるぞ・・・!!」

「ふざけてなんていないさ・・・」

「何・・・?」

「ゼイバー・ブラウドは間違いなく敵になる・・・

「何故そう思う・・・」

「目さ・・・さっきのゼイバー総帥の目がそれを訴えていたよ。向こうだってそのつもりでここへ来たんだ・・・ただ単に今は共通の敵がいるって事で一時的に協力しているってところだろうな・・・レスター、お前も知っているだろうNEUEの中にはEDENをよく思っていない連中がいるって・・・」

「あ、ああ・・・NEUE改革軍という奴等の事だろう。確かNEUEに文明開化をとか叫んでいる連中だ・・・それがどうした・・・?」

「さっき先生から来た資料でね、その集団の活動資金の90%を占めているのが金なんだよ・・・金はいくら流通しても価値が下がらないからね・・・もう分かるだろう?」

「・・・先生の読みは正しかったという事か・・・」

「ブラウドはNEUEを影から動かしてきたんだ・・・ゲヴェルの一派の中の一部にブラウドの諜報部が入り込んでいたとの証言もいくつか出ていたらしい・・・もっとも証言者は報告したその日に殺されているらしいけどね・・・

「おいおい・・・ならば、ブラウドは何をしたいんだ?」

「EDENNEUEの接触を避けたいのさ・・・あの時も一時的にクロスゲートは凍結されたからね・・・」

あいつの言う事を信じたくは無かったけど最後の敵がNEUEだと言うのもあながち嘘ではないかもしれない・・・正直に言うとブラウドがこのまま大人しく見ているとは思えない・・・ネオ・ヴァル・ファスクが敗北した後に何らかの動きを見せるだろう・・・

ゼイバー・ブラウド・・・人を殺す事になんのためらいを感じない目をしていた。

あいつは人間じゃない・・・まるで死神のようだ・・・

死神のメシアには恐怖を感じたが、危険をそこまでは感じなかった。

しかし、ゼイバーからは危険というものを感じた・・・

ゼイバー・ブラウド・・・一筋縄ではいかない化け物だ・・・

その時、アルモから緊急連絡が入ってきた。

「マイヤーズ司令!敵襲です!至急ブリッジに来てください!!」

「敵襲だと!?つけられていたのか!?」

やっぱり・・・皇国軍の中にも紛れ込んでいるのか・・・

俺はブリッジへと駆け上がっていた。

 

「・・・な、なんて数だ・・・」

レスターはモニターに広がる光景に呆然としていた。

モニターに映っていたのはエルシオールの遠方に陣取っている大艦隊。

「・・・メベトの主力艦隊・・・」

「か、確認できている数だけでも30万機です・・・これ以上は観測ができません・・・」

だろうな・・・あの数では反対に動けない・・・おそらくは無人機だ・・・

先頭の船が全滅すれば後ろの艦隊が動き出す・・・

文字通りの総力戦だ・・・これは、エルシオールとブラウドの両方を潰しにきたのか?

「・・・!?司令・・・SOUND ONLYで通信が入ってきます。」

「繋いでくれ・・・」

「こちらはネオ・ヴァル・ファスクの死神のメシアだ。」

「メシア!?あいつか!?」

来たな・・・メシア!

「こちらは艦長のタクト・マイヤーズだ。」

「ふ・・・何だ?まだ艦長でいられる資格があるのか・・・」

「・・・用件は何だ・・・?」

「ふん・・・こちらはこれより、そこのブラウドの旗艦を沈める。」

「・・・っ!?やっぱりか・・・!」

「・・・それで・・・?」

「したがってお前達に用は無い・・・撃沈されたくなければ早々に立ち去れ。」

「・・・どういうつもりだ・・・?」

「雑魚には用は無いと言っている・・・」

・・・そんな理由で見逃すのか?お前が・・・

「タクト・・・」

レスター・・・言いたい事は分かっている・・・

「メシア・・・一つ教えろ・・・お前は・・」

その時、メシアの回線が切られてブラウドが割り込んできた。

「タクト殿、我々は無人艦隊を所有しておりますのでお気になさらずにお逃げ下さい。」

「ゼイバーさん・・・」

「無茶です!あの大艦隊を相手に!!」

「なに・・・私達にはいつもの事です・・・」

(い、いつもの事ってこんな大艦隊がか・・・!?)

今度はメシアが回線に割り込んできた。

「さっさと逃げな・・・向こうも艦隊のステルスを解く・・・そうなれば戦闘開始だ・・・」

「メシア・・・お前は何で俺達が補給を終えるまで待っていた?

「・・・・・・」

「メシア・・・お前は何が目的だ・・・?」

「・・・俺がお前達の補給を終えるのを待っていたのは気まぐれだ・・・弱者にかける強者の慈悲よ・・・」

嘘つけ・・・

「あ、悪いがもう一つ聞きたい。」

「・・・何だよ・・・?」

「お前はゼイバー総帥の船の乗組員をどうする気だ?」

あれほどの大きい船だからな・・・そうとうな数の人が乗り込んでいる筈だ。

「・・・決まっている・・・撃沈する・・・それだけだ・・・」

「・・・なるほど・・・ならばこちらの答えは決まっている・・・こちらはゼイバー総帥の艦を守る!」

「・・・いきがっていると死ぬぞ?お前・・・」

「死なないさ・・・こっちにだって無人艦隊があるんだ。」

「待て・・・無人艦隊だと?・・・ゼイバーがそう言ったのか?」

「?・・・そうだが・・・」

「・・・なるほど・・・では俺から逃げられるかな?」

「メシア・・・俺は遊びでやっている訳じゃない・・・命を駆けてでも皆を守ってみせるさ・・・今度こそ・・・」

(ふ・・・お前にしてはいい答えだ・・・)

死神は嬉しそうに通信を切り、エオニアに呼びかけた。

「エオニア・・・俺はあちらの艦隊を調べる・・・」

「何故です・・・?」

「ゼイバーの奴が自分の艦隊を無人機だと言っているんだ。」

「・・・そこまで人の命に配慮するような奴では無いと思いますが・・・」

エオニアは明らかにゼイバーを軽蔑していた。

「ああ・・・それを確認する為、俺はブラック・アウトで忍び込む・・・」

死神は言うがはやいかステルスをかけてゼイバーの艦隊へと潜り込んでいった。

「・・・・・・」

死神のメシアはゼイバーの艦隊から生気を感じた。

しかし、生気とはあくまで人間が呼吸をしているだけだという事だが・・・

「・・・何が無人艦隊だ・・・ふざけやがって・・・!」

マスター・・・お許し下さい・・・作戦は変更します・・・俺はもう我慢できません・・・!あのはここで始末します・・・)

 

inserted by FC2 system