第二章

 神界編  

 

「ちょっと待てよ・・・!!」

出てきた俺を ルシファーは驚いた顔で、は気付いてたと言わんばかりの顔で俺を見た。

「ふ・・・ようやくネズミが姿をあらわしたか・・・」

「タ、タクトさん!駄目です!!この方は神皇様直下の制裁者冥界を統べている冥王ハデス様なんですよ!?」

「・・・・・・」

「分かったのなら去ねい、小僧・・・貴様のようなネズミなど裁く価値も無い・・・」

「・・・ふざけんなよ?誰が退くか・・・お前等みたいな下衆野郎にルシファーを渡せるかよ・・・!!」

「どうやら死にたいらしいな・・・貴様・・・」

俺は正面からメシアと対峙する。メシアの殺気がびりびりと伝わってくる・・・

「さっきから黙っていれば言いたい放題言いやがって・・・そんなにあのキチガイの命令が大事か?俺達を無作為に処刑にするキチガイを崇める必要があるのかよ・!?従わないなら制裁するだと?ふざけるなよ!?あのキチガイの人望がないのがそもそもの原因だろうが・・・!!」

「小僧・・・神皇様への侮辱は死を持って償ってもらうぞ?」

「うるせぇ!ルシファーに謝れ!!」

「謝る?何をだ・・・?俺は事実を告げただけだが・・・?」

「この・・・!!」

「タクトさん!もういいですから!やめてください!」

「いや!こいつには謝らせる!!」

俺は奴に殴りかかった!

「制裁する。」

その声を聞いた瞬間、骨の砕ける音と鼻がツーンとする感覚と口に広がる鉄(血の)の味・・・

最初は何が起こったのかがわからなかったが・・・

どうやら俺は奴のカウンターパンチを喰らったらしい・・・

なんて間抜けで無様・・・

体の感覚が無い・・・・体が全く動かない・・・

「−−ー!!−−−!!!」

ルシファーが俺の顔を覗き込みながら何かを叫んでいる・・・その綺麗な顔を涙でくしゃくしゃにして・・・・鼓膜も破れたらしく声が全く聞き取れない・・・

駄目だな・・・俺って・・・また“彼女”を泣かしてしまった・・・

「・・・よせ、無駄だ、顎を完全に打ち砕いた・・・黄金の実を食す事もままなりまい・・・その醜くい死に面を晒しながら神に歯向かった罪を悔やむが良い・・・」

意識が朦朧としていく中でルシファーがあのチョコを口に含んでいるのが何となく分かった、彼女の顔が一瞬その苦味に顔を歪ませた・・・一体何を・・・?

君だけでも早く逃げるんだ・・・!!

決意を目に宿したルシファーの顔が俺の顔に近づいてくる・・・

そして彼女の口と俺の口が重なった・・・

彼女は自分の口で溶かしたチョコを俺に口移しで飲ませているのだ・・・

「無駄だ、陰月流 死突の傷はそんなものでは治癒などできぬ・・・あきらめて死なせてやれ・・・」

ルシファーは何度も口にチョコをいれては口移しで俺にチョコの成分を供給してくれている・・・・まるで雛に餌をあげる親鳥みたいに・・・・

恐らくはメシアが彼女をまたしても罵倒しているのだろう・・・

しかし、彼女は作業をやめない。

「この馬鹿が・・・・」

アレほど苦手だったこのチョコを・・・・化け物のように変形しているであろう俺の醜い顔に、血だらけの変形した口だった残骸に自分の口を隙間無く押し付けてこのチョコを供給してくれている・・・彼女の涙が俺の顔に落ちてくる・・・彼女のその必死な顔を見ていると自己嫌悪が高まってくる・・・忠告を無視して突っ走った俺を彼女は敵(メシア)の前で無防備に背中を向けて救命作業を続けてくれている・・・

(もういい・・・こんな馬鹿は放ってロキの所へ逃げるんだ・・・)

俺は残りわずかの命を燃やし尽くしてもそう言いたかった。

感覚が薄いが、俺の目に悔し涙が浮かんでいるのが何となく分かった・・・彼女にとっては恐らく初めてのキスだろう。まだ人生はこれからだというのに・・・こんな馬鹿で情けない俺の為に大事なものをささげてしまったんだ・・・涙が変形した頬を伝っていく。

彼女の口の感触を感じたまま俺の意識はおちていった・・・

 

「もう、無駄な事は止めろ。そいつはもう“完全に死んでいる”神皇様の元へ行くぞ・・・」

ハデスの忠告を無視してルシファーは何度も口移しでチョコをタクトの亡骸に流し込んでいく・・・

「・・・この馬鹿が・・・こうなれば力ずくでエリュシュオンへ連れて行く。」

「待てよ・・・俺の娘をどこへ連れて行く気だ・・・?」

ハデスがルシファーを力づくでタクトの亡骸から引き離そうとした瞬間、ハデスは桁違いな敵意を感じ取った。

(な、何だ?全く気配が感じられなかった・・・!)

桜の木の間から一人の男が現われる。

「お、お父さん・・・っ!?」

ルシファーが泣きはらした顔でロキの方を見て、驚いた。

ロキの顔はかつてないほど怒っていたからだ。

(この馬鹿が・・・あれ程こいつには手を出すなと言ったのによぉ・・・ああ・・・何か血が騒ぐなぁ・・・

「誰かと思えばロキか・・・?何の用だ?」

「何の用だと・・・?寝ぼけんなよ?俺の娘を泣かしといてただで済むと思ってんのか・・・?」

ロキの敵意が殺気に変わっていく・・・ハデスはロキの実力をよく知っている・・・

「ただでだと?・・・やる気か?」

俺をそこの馬鹿と一緒だなんて思うなよ・・・?」

「・・・それはないさ。お前の事はよく“マスター”から聞いているからな・・・今回は退いてやろう・・・」

ハデスの姿が薄れていく。そして・・・

「だが、どうしてもやる気なら我が冥界のタルタロスへくるがいい。いつでも受けて立つ・・・」

そう言い残して、ハデスは消えていった。

ガキがいきがりやがって・・・」

(追いかけたいが、こいつを放っとくわけにはいきまい・・・)

「お父さん!タクトさんが!タクトさんがーーー!!」

泣きながら混乱状態になっていたルシファーの頭を優しく撫でながらロキはタクトの亡骸を抱えあげた。

「大丈夫、まだ間に合うさ・・・」

ロキは妻の墓石に一瞬視線を向けて家へと向かった。ルシファーもその後に続いた・・・

 

「とまぁ・・・ここまででひと区切りかな・・・」

タクトの回想話に周りの者は口を閉ざしていた・・・

「やっぱり信じられないだろうな・・・過去へ行ってきたなんて・・・」

「そ、そうよ!あんたの夢の話じゃないの!?」

「でもねぇ・・・ランファ。この身体はすぐに出来るもんじゃないよ・・・」

フォルテの言う通り、タクトの体は以前とは全然違いその腕はまるでフェザー級チャンピオンの腕のように引き締まっている・・・

「な、なんかのインチキかもしれないじゃないですか!」

「ふぅ・・・わかったよ、ランファ・・・なら俺の鳩尾を一発殴ってくれ。」

「は、はぁ!?」

「それで俺が一歩も動かなかったら俺の言う事を信じて欲しい・・・」

タクトはランファの真正面に立ってボディを開けた。

つまり打ってこいとの合図だ・・・

「随分と舐められたものね・・・」

ランファが腰を少し落として正拳付きの構えをとった・・・

無防備の相手にはこの上無い有効な攻撃だ。

鳩尾のような急所はいくら鍛えても耐えられるものでは無いのだ・・・

「いくわよ?本当にいいのね?」

「ああ・・・本気で打ってくれ!」

タクトは大きく息を吸い込んで目を閉じてランファの一突きを待った・・・

「はぁ〜・・・ハッ!!」

ドムッ!

鈍い音がした。

ランファの正拳付きがタクトの鳩尾にもろに入ったのだ・・・

しかし、タクトは宣言通り一歩も動かなかった。

「な、か、硬い・・・!」

ランファは打った拳を押さえるが、打たれた時、タクトの表情は一切動かなかった・・・そう・・・ランファの正拳付きはタクトには何らのダメージも無かったのだ・・・

「これで信用してもらえたかな・・・これぐらいの体で無いと神界では生きていけなかったんだ・・・」

「皆さん・・・タクトさんの言う事は本当ですよ・・・私も元青龍と呼ばれていた神獣ですから・・・このような事もできます・・・これでも信用してくれませんか・・・?」

クロミエはタクトをフォローする為に宙に浮いた。

「ほ、本当に本当の事なのか・・・」

「はい・・・シヴァ様、タクトさんの言ってる事は全て事実です。」

「タイムスリップ・・・噂には聞いた事はあったが、まさか本当に存在したとはな・・・」

リリィは地面にゆっくりと降りてくるクロミエを見ながらつぶやいた。

「う〜ん・・・それにしても、そのロキっていう人、何かお父さんに似てますね・・・」

「いや・・・彼は違うと言っていったよ・・・」

「う〜ん・・・でもお父さんって結構、平気で嘘をつきますからねぇ・・・」

「いや・・・ロキは本当にもういないんだ・・・

タクトの表情が悲しそうに曇ったので全員の視線がタクトに集中する・・・

「タクトさん・・・お話を続けてもらえませんか・・・?」

「ああ・・・分かった・・・」

 

〜過去の記憶 ロキ 1〜

 

これは何の景色だろうか?俺、タクト・マイヤーズはハデスに殺され、目を開けた直後、誰かの記憶の中に存在してた・・・何故ならこの世界では俺の意思で体は動かないのだから・・・

景色は一面の住宅街・・・・しかし、俺の住んでいた所とは違って少し文明が遅れているようだ。6,6kVの高圧線が柱の一番上にはわされている。俺の故郷では地中に線を埋め込んでいるのだが・・・・

俺が意識を共有している人は走っていた。学生鞄を持って・・・という事はこの人は学生ということだろうか?

その手足と服装は男のものだった・・・

「よう!亮!お前も遅刻か?」

後ろから別の学生姿の男に肩を叩かれた。

「ああ、寝過ごしてしまったんだよ!・・・ったく!!」

「あはは!自業自得じゃねぇかよ。」

「るっせぇ!」

亮はそのまま走って学校を目指していく。

「お、おい!待ってくれよ〜!」

何気ない学生同士の会話・・・亮の後ろを男が追いかけていく・・・何気ない朝の光景・・・照りつける“白い太陽”・・・

「ん?」

亮と男は照りつける太陽の光に違和感を感じて立ち止まる。

「おい・・・亮?太陽ってあんなに白くなるほど眩しかったか?」

「いや・・・さすがにこの眩しさはおかしい・・・まだ十二月の朝なのに・・・くっ!!」

次の瞬間、視界が真っ白になって男の意識は落ちた・・・

 

が目を開けるとそこは森の中だった。

「な!な、何だよここは!?一体どうして俺はこんな森の中にいるんだ!?・・・そ、そうだ!健太!?健太ぁぁーーーーー!!」

先程まで一緒にいた友人の名前を呼ぶが返事は来ない・・・

「どうなってんだよ・・・わけがわからねぇぞ・・・!」

は学生服だけでこの森の中を彷徨い続けながら健太を探し続けた・・・

「悪い夢ならもう覚めてくれよ・・・頼むから・・・」

亮は夢と思いたかったらしいが森の匂いと“野獣の咆哮や遠吠えが”夢であることを否定していた。

「なんで俺がこんな目に会わなくちゃならないんだよ・・・!」

彷徨い続ける内に焦りはやがて恐怖へ変わった。

はかつてない程の恐怖を覚えた・・・

それは、死への恐怖・・・

右往左往する内に除々に目頭が熱くなって潤んできた・・・

俺は元々、プライドが高く、人前で泣くのが死ぬほど嫌いだったが一瞬、誰かが救助しに来てくれたのならこの情けない面を見せてもかまわないなんて考えたりしてしまった・・・

「ん?あれは・・・・」

俺の目の前に鎧を着た人が倒れていた・・・そいつはまるでRPGゲームのような格好をしている。

(な、何だよあれは・・・!)

ロキは倒れている人の周りに集まっていた者達に目を見張った。倒れている人に群がっていたのは動物や野獣ではない・・・それは翼を生やした悪魔のような格好をしていた。

それは間違いなく化け物(神皇の創造物)だった。

俺はすくみ上っていたが、このまま倒れている奴が死体であろうが喰われてしまうのがとにかくイヤだった・・・

俺は自分で何がしたいのかが分からなかった・・・

ひょっとしたら人に会えた安心感からか?

俺は足元にあった小石を拾って化け物達に投げつけていた。

化け物達が全員一斉にこちらに振り向いた。

そして、追いかけてきた!

何やってんだ・・・!俺は!?

俺は死に物狂いで逃げる・・・しかし、敵は飛べたらしく俺を取り囲んでしまった・・・正直に言うとチビリそうだった・・・しかし、こんな奴等にむさぼり食われる自分を連想すると恐怖はやがて怒りへと変わっていく・・・そうだった・・・俺は死んだじっちゃんから鍛えられていたんだ。

「こいよ・・・化け物共・・・死ぬ気になった人間がいかに怖いか教えてやるぜ・・・

化け物達は俺をただのガキだと思っている・・・

・・・そこが唯一のチャンスだ・・・・

俺の武器はこの体・・・戦争帰りのじっちゃんがここまで鍛えてくれたんだ・・・

じっちゃんは言っていた。

戦争に善悪は無いが、人間個人には正義がある・・・

ならば・・・力は正義の為に使え・・・何かを守ろうとする時に死の恐怖は消え去る・・・戦わずに死ぬ事をもっとも恥じよと・・・そうだ、弱肉強食の世界でも俺にはこの正義感がある。本能の赴く者がいるのなら・・・俺はそれと戦う!

化け物は幸いにも二体だ・・・まずは目をやるべしだ。

近くの枝をもぎり取る、これを目を突く為に使うなんて奴等には分かるまい・・・この俺の経歴を・・・

俺はこうやってイノシシや熊と戦ってきたんだ・・・

化け物達が無防備に爪で襲ってきたのと同時に俺は近くの木に飛んでしがみつき急いでよじ登り、化け物達の上を取る。

鈍感な野生の生き物達や人間は上に消えたものを瞬時には察知できないものなのだ・・・今度は俺が攻撃に出る。

化け物の間に飛び降りた俺はとがった枝の先で化け物達の目を斬りつけた。化け物が目を押さえている間に今度は鼻の付け根を斬りつけ連中の血か体液の匂いが鼻に飛び込むようにする・・・これで奴等の嗅覚は殺した。そして、俺は忍び足で逃げていく・・・幸い連中は根性無しみたいで追いかけてはこなかった・・・ちなみに目は失明させた訳ではない・・・そこまでするのは俺のポリシーに反すると思ったからだ・・・俺が倒れている奴の所まで戻るとそいつ無事な姿でそこにいた・・・

「ったく・・・気楽なやつだな・・・」

俺がその人間を仰向けにすると胸の膨らみが目に入った。

「女かよ・・・」

仮面を被っていて鎧を身につけていたが、よく全体を見渡すとプロポーションはそこら辺のアイドル顔負けだった。

「上から82 52 81 か・・・・本当にアイドル顔負けだ・・・」

俺のどうしようもない特技がつい発動してしまった・・・

そして、俺はついつい女の仮面を外してしまった・・・

「・・・・・・」

俺は絶句した桜色の綺麗な髪に非のうち所の無い顔。年は俺と同じぐらいだ・・・はっきり言って顔だけなら一目惚れしてしまいそうだ・・・

「・・・っ!?」

俺は背後に殺気を感じて振り返るとそこにはさっきの化け物二匹がいた。止めを刺さなかった・・・俺の甘さだった・・・俺が女を担いで逃げようとしたら額に冷たい感触と遅れて激痛が襲ってきた。どうやら爪で切り裂かれたらしい・・・

「・・っ・・・っつ・・・!」

俺は逃げる事をあきらめて女を降ろし化け物と対峙する。

しかし、さっきみたいにかく乱しようとすれば今度はこの女が

やられる・・・ち!とどめ刺しとくべきだった・・・

残る武器は俺のこの強運しかない・・・

その時、右の手のひらに熱い感覚を覚える。

見てみると何とそこには光でできた剣が握られていた。

迷っている場合ではない。俺は剣で斬りかかった。

愚鈍な化け物は手を交差させ防御に入るが剣はその手ごと真っ二つにした。真っ二つにした化け物はすぐに粉々になり消えた・・・

「すぐに逃げるのなら見逃すが?」

俺は残った化け物にそう促すが、化け物は逃げようとしなかったのでなぎ払って斬り捨てた・・・光の剣は俺が消えてくれと念じると消えていき・・・出てきてくれと念じると出てきてくれる・・・信じられないがそれが現実だった・・・

「ま、いっか・・・」

どうせ俺の体質に比べれば大した事無い・・・

戦いが終わると同時に女は目を覚ましていた。

「あ、わりぃ・・・起こしちまったか?」

「いえ・・・!その怪我・・・!」

女の声は本当に透き通っていた。

「動かないで下さい!」

女はそう言うと後ろ髪を縛っていた真っ白なリボンでおれの頭を縛ってくれた・・・止血をしてくれたのだろう・・・

真っ白なリボンはやがて俺の血で真っ赤に染まってしまった。

これが俺とエレナとの出会いだった・・・

「悪いな・・・・その・・・リボン汚しちゃって・・・」

「いえ・・・私の方こそ・・・ごめんなさい・・・」

彼女の名はエレナ・・・この森に兄と一緒に来たらしくはぐれてしまったらしい、石に躓いてこけてしまったらしく気絶したらしい、ちなみに彼女はすでに半泣きだ・・・

「・・・本当に助かりました・・・」

「いいって、いいって!」

俺は女の目に惹かれていた・・・女のサファイアのような目に・・・

「あ、あの!貴方のお名前は・・・?」

「俺?俺は古牙 亮(こが りょう)って言うんだ。」

「コガさんは何でこんな危ない場所に・・・?」

「リョウでいいよ・・・俺にもよく分からないんだよ学校に行く途中で白い太陽を見て・・・」

「白い太陽?」

「おかしいだろう?あまりにも白すぎたんだ・・・それで気が付いたらここに来ていた。ここに来る前に一緒にいた友人を探しているんだけど・・・」

「コ、リョウさん・・・失礼ですがここは森から出た方がいいと思います・・・その方はここにはいないみたいですから・・・」

「何でそんな事が分かるんだ?」

「今、この森には私とリョウさんしかいないみたいですから・・・」

「・・・もしかして、あんたって魔法使いか何かか?」

「はい。」

「・・・マジで?」

「そ、そうですけど・・・?」

オイオイ・・・

あまりにも信じられなかったがよく考えればさっきの悪魔や不可思議な光の剣・・・そして、ここに飛ばされた俺の事を考えたらもはやおかしい事ではない・・・というか信じた方が楽でいい・・・俺は面倒くさい事が大嫌いなのだ・・・

それから俺達はお互いの住んでいる世界の事を話して盛り上がった・・・思えば女を相手にここまで長話した事は無い・・・

正直嬉しかった・・・こんな綺麗な女の子の事と話せて・・・女の子との話でこの世界の事が分かった・・・ここは神界と呼ばれるところで・・・

今いるのは人間達の地上界アスポデロスと言うところらしい・・・

ちなみにここには、俺達の宇宙という概念は無いらしい・・・

地下には死者や魔物の住まう冥王の支配する冥界 タルタロス

空には創造主 神皇が支配する神々が住まう天界 エルシュオンがあるらしい・・・

この時の俺はこの神皇が正義の象徴でもあり、絶対者だと信じて疑わなかった・・・

 

「あ、兄さんが来たみたいです。」

エレナが何かに気付いたかのように背後を振り返った。

「兄さん?」

エレナの背後から男が現われた。

「エレナこんな所にいたか・・・ん?」

男は俺に気付いたらしい・・・

「エレナ、この方は?見たところ怪我をしてるみたいだが?」

「私をモンスターから助けてくれたの。それで・・・」

「なるほど・・・リョウさんとやら、妹のエレナがお世話になりました・・・私は、エレナの兄でアバジェスといいます・・・」

(おかしい、ダイルさんからはアバジェスとエレナが兄妹だなんて一言も聞いていない・・・)

「いえ、俺こそ介抱されましたし・・・」

アバジェスと呼ばれた男は仮面を取って俺に自己紹介をしてきた。黄金色のショートカットで顔はエレナ譲りで紺青の眼、背丈は俺と同じぐらいで全身は黄金の鎧に包まれていた。アバジェスも魔法使いだったらしく、俺の額の傷を治癒魔法とかいうもので治癒してくれた。ほんとにRPGの世界だな・・・

これが、後の宿敵アバジェスとの出会いだった・・・

「なるほど、しかし、エレナの言う事は本当だよ、ここには今、私達以外の人間はいないよ・・・取り敢えずはこの森を抜けて近くの農村へ一緒に行こう・・・」

「はい・・・」

すまん、健太・・・

俺は健太がもうこの世にいないのではないかと思っていた・・・何故ならさっき化け物を斬った時にふと健太の香水のりがしたからだ。

「気に病むことはない・・・きっとそのご友人も森を抜け出したに違いない・・・」

それから俺はアバジェスに引率されて森を抜けていく、途中でモンスターに襲撃されるが、アバジェスが瞬殺してくれた。アバジェスの戦い方は無駄が無く、可憐だった。俺みたいに見逃したりなどしなかった・・・

俺はこの時、この黄金の騎士をカッコいいと思った・・・

この神界は今、とても治安の悪い時代に入っているらしい・・・その原因は邪神ルシラフェルと呼ばれる者がモンスターを使って、あちこちの町や村を襲っているからだ。

その為、逃げ延びた人達は生活の為に他者から者を奪う強盗になってしまっているらしい・・・フィノリアから出てきたというアバジェスとエレナはその邪神ルシラフェルの居所を見つけて退治する為に旅をしているらしい・・・

まさにこのアバジェスは俺の理想の正義の味方だった・・・

(まただ・・・ダイルさんは邪神ルシラフェルを倒してロキとアバジェスは敵として戦いあったと言っていた・・・)

森を抜けた俺は小さな農村に紹介された。アバジェスはかなり有名な騎士だったらしく、その恩恵で身寄りの無い俺はある優しい老夫婦に預けられる事になった・・・

そして、アバジェスとエレナとの別れの時がきた・・・・

「ここで、お別れですね・・・リョウさん・・・」

「・・・ああ、あんた等がそのルシラフェルって奴を倒せるといいな・・・」

「ああ、必ずルシラフェルの奴は倒して見せるさ・・・」

「そうだな・・・あんたにならきっとできるよ!」

「ありがとう・・・」

「退治した時は必ずここに報告しに来ますね。ではリョウさん、またいつか・・・」

またしても半泣きのエレナに俺は笑顔で返し・・・

「ああ、気をつけてな・・・」

アバジェスとエレナが農村から出ていった・・・

俺はその後、老夫婦と共同生活を始めた。老夫婦の畑仕事を手伝いながら時は進んでいくのだった・・・

 

〜告白?〜

 

が目を覚ますとそこはロキの家の部屋であった。

俺はさっきの夢をはっきりと覚えている・・・

はたしてアレはロキが俺に見せたものなのかどうかは分からない・・・

「タクトさん!」

俺が首を横にやるとルシファーが涙目で嬉しそうに俺を見ていた・・・ああ、そうか俺はまだ生きていて彼女は俺の看病をしてくれていたんだ・・・・

「ル・・シ・・ファー・・・」

「よかったぁ・・・本当に・・・」

本当に俺の事を心配してくれていたんだな・・・・

「大丈夫ですか・・・?どこも痛くないですか?」

「ルシファー・・・ありがとう・・・そして、ごめん・・・」

俺は上半身だけを起こす・・・体には外傷は無いみたいだ・・・

「謝らないで下さい・・・ありがとうございました・・・」

違う、俺はロキや君の制止を聞かないで

自分の感情に負けたんだ・・・

「・・・俺は・・・」

俺は自分が情けないよ・・・と言いたかったが今の俺にはそんな事を言う事も許されないだろう・・・君にあんな真似までさせてしまったんだから・・・すると、ルシファーが俺の上半身に抱きついてきた。ちょっと・・・痛い・・・

「ルシファー・・・?」

「ごめんなさい!ごめんなさい!私のせいで!私が冥王様のいう事を聞かなかったから!」

「やめろ・・・!君は何も間違っていない・・・!君は正しい!俺、凄く嬉しかったんだ・・・君が神皇の事を否定した事が・・・」

だから君が気にする事はないと俺はささやきながら彼女の頭を撫で続けた・・・・。

「う・・・うう・・・タクトさん・・・う、うわぁぁぁーーーーーん!」

それからしばらくルシファーは俺の胸に顔を埋めて泣き続けた・・・

「うう・・・ごめんなさい・・・鼻水つけちゃいました・・・」

「ああ・・・あははは・・・気にしないでいいよ・・・」

ルシファーはようやく泣き止んでいつもの調子を取り戻した・・・

すると、ドアを二回ノックしてロキが入って・・・

ガチャ!

「おお!?・・・・こりゃまた・・・失礼しました〜!!」

バタン!!

・・・こようとして引き返した・・・

「・・・・」

「・・・・」

「待て待て〜!勘違いするなーー!」

ガチャ!

「ねぇ、俺、ここにいていい子?」

「子なんて年かよ・・・」

「あ、言ったな・・・この野郎・・・いい度胸だ・・・」

・・・・・・もしかして、自覚してなかったのか?

「ルシファー、俺は今からタクトと俺の今後の関係について・・」

「誤解を招くような言い方をするなーーー!!」

「話し合うから、下でクロミエと遊んでてくれ・・・」

無視かよ・・・

「え、でも・・・」

「いいから、いいから♪看病の報酬〜♪そんなルシファーに・・・

Prsent For You〜〜♪

そして何とロキはひょいとルシファーの頭に

ムカデらしきものを乗っけやがった!!

「・・・・・・ヒッ!!」

ああ・・・ルシファーが凍り付いて爆発するのが分かる・・・

「イヤアアアアアアアァァァァァーーーーーーーーーー!!!!!」

ルシファーは部屋を飛び出していった・・・

「ふ、初いやつよ・・・」

それを満足気に見送る鬼のような父親・・・こ、こいつは・・・!!

「ルシファーが刺されたらどうするんだよ!!」

「ああ?あれはおもちゃだから大丈夫さ・・・俺って結構器用なんだぜ?」

「おもちゃ・・・?それに器用って・・・」

「下の俺のアンティークコレクションを見ただろう?」

・・・・あれってお前が製作していたのか・・・・

「ルシファーの誕生日に一個プレゼントしてるんだよ。」

「さっきのが誕生日プレゼントって言うなよ・・・」

「ああ、あれはボーナスだ。」

どこの世界にボーナスにムカデのおもちゃをもらって喜ぶ奴がいるんだよ!!

「さて・・・取り敢えず・・・俺に言いたいことはないか?」

ロキの声が少し真面目なものになる・・・そうだ・・・俺は、ロキの忠告を破ったんだ・・・

「ご、ごめん・・・」

「・・・・・・」

ロキは黙って腕組みをして俺を見ていた・・・

「でも・・・俺、悔しかったんだルシファーがあそこまで言われてるのに自分の身可愛さに、見て見ぬフリなんて真似できなかった・・・!!」

「でも、やられたら意味ないだろうが・・・」

レイのような厳しい声でロキは言い放った。

「・・・ロキ、頼みがある・・・図々しいかも知れないけど・・・俺にレイを一発ぶん殴れる方法を教えてくれ・・・・」

「それは無理な相談だな・・・」

「頼む!俺、あいつをぶん殴ってルシファーに謝らせたいんだ!」

「勘違いするな・・・俺は一発ぶん殴れる方法を教えるのは無理だと言ったんだ。今の俺にできる事は一つだ・・・あのアバジェスのクソガキを倒せるようにお前を鍛え上げる事しかできない・・・」

「ロキ・・・すまない・・・」

「俺もお前がレイにやられる所を見てたからな・・・」

「え!」

って事は・・・ルシファーとの事も・・・?

「最初は頭に血が上ってたんだけどな・・・あの時、俺がお前の立場なら同じ事をしてたと思うぜ・・・だから・・・今は、お前を見直しているんだ・・・」

「ロキ・・・」

神皇をキチガイか・・・いいねぇ・・・気に入ったぜ・・・あの言葉はよぉ・・・それにあの冥王に立ち向かっていくなんて・・・男じゃねぇかよ・・・

ロキは俺の肩をぐっと掴み俺を見据えてはっきりと言った。

「お前をあの陰険親子を叩きのめせるぐらいの男にしてやるぜ!!俺の本気の修行についてこれるか!?

「オウ!!」

「よーーし!!そうと決まれば山に行って修行開始だ!!」

「おっしゃあぁーー!!」

早速、山の修行場についてすぐにロキは俺にこう言った。

「これからこいつに左右交互のストレートを打ち込むんだ!」

といってロキが持ってきたのは一畳の畳だった・・・そういえば、ちとせの部屋にあったな・・・

「時間は夕食前までだから4時間ぶっとうしで殴るんだ!」

「しかし、何で畳なんだ?」

“拳”を作る為さ・・・いいか?怪我をしても絶対に手を休めるなよ?

そして、畳を相手にストレートの練習が始まった。

「オラァ!!回転をかけて体を振り回すみたいに交互に打つんだよぉ!!」

ロキは畳をミットのように持ってアドバイスを入れてくる。

これはゲキなどっではないアドバイスだ。

「ウオオオオーー!!」

「後、拳はまっすぐ打て!手首を傷めない為にな!」

「うらアァァーーーー!!」

「オラァ!殺すつもりで撃てぇ!こんなパンチでどうする!?」

これがゲキだ。

「おう!!」

「まだまだだ!拳骨を庇おうとするな!

ひたすら全力で打て!!!」

「オラァ!オラァ!オラァ!!」

「そうだ!そうだ!休まずに打ちこめぇーーーーー!!」

開始からすでに二時間・・・拳の拳骨の皮は既に剥がれて血だらけだが、チョコのお陰か心臓はまだ爆発にはいたらない!

痛いだけならまだいける!!

「どうした!?威力が落ちてるぞ!?」

「おおおーーー!!」

「よぉーーーーし!!いっけぇぇぇぇ!!」

そして、四時間後・・・・

「よおぉぉし!!よくやった!!」

「はぁ・・はぁ・・・・」

まだ心臓が爆発するまでにいたってない・・・

「どうした?もう終わりだぞ?」

「まだ・・・心臓が爆発はしてない・・・」

「・・・師匠の言う事は素直に聞けと言いたい所だが・・・その意気は気に入った!なら爆発するまでやれーーー!!」

「おう!うおおおぉぉーーーー!!」

「威力は落とすなよ!!」

「おう!!」

結局、俺の心臓が爆発したのはそれから二時間後だった・・・

「まぁ、食え・・・」

ロキから例のチョコをもらいがっついた・・・

血だらけだった拳は傷がふさがり、心臓は正常な回転数に戻り・・・重たかった腕や腰は軽くなっていった・・・

「お前、凄いぜ・・・たまげたよ・・・」

「ルシファーの為・・いや、俺の意地の為だからな・・・」

「ふ、言うじゃねぇか!なら今日はそのルシファーを心配させない為にも帰ろうぜ。」

「ロキ・・・明日も頼む・・・」

「おう、じゃあ、畳さんに礼をして帰るぞ。」

「ああ・・・」

俺達は畳に礼をする。

それは礼に始まり礼に終わるなどの重苦しい武道の心構えではない。

感謝の気持ちと明日もヨロシク頼むとの意味だった・・・

それからずっと・・・こんな練習が続いた・・・

午前中はロキとの修行。

チョコと過酷な打ち込みのおかげで拳はどんどん硬くなり、

スタミナの持続時間も長くなっている・・・

午後はルシファーとお墓参り兼デート・・・・

一緒に行動するたびに俺とルシファーは親密になっていく。

この娘はミルフィーだ!転生前のミルフィーなんだ!

俺をハデスからああまでして救おうとしたこの娘がミルフィーと何の違いがあると言う?誰にもこの娘をミルフィーじゃ無いなんて言わせない!

破廉恥と言うのなら言うがいい!だが俺はもう、自分の気持ちに嘘はつかない!逃げたりはしない・・・・!!

そして、ルシファーの夢を嘲笑ったあの野郎に一発・・・いや・・・あの男を叩きのめして、ルシファーに謝らせる!!

命に代えても・・・俺にとって命は二の次だ・・・

俺の一番はこの信念だ!!ミルフィーを守ろうとする俺の信念。

ならばこの信念に命を懸けるのみだ!!修行を開始してから二週間後の事・・・

突如、ロキは突拍子の無い事を言ったのだ。

「畳ではもう、役不足だろう?」

「・・・・・」

それはかすかに思っていた事だった・・・もう、畳では柔らかすぎるのだ・・・

「だから・・・」

ロキが上半身をさらけ出した。

その肉体は筋肉の鎧そのものだった・・・

いく筋も浮かぶ傷が彼の戦歴を物語っている・・・

「今日からは俺に打ち込んでこい!」

「・・・いいのか?」

「これでも鋼の肉体と称される俺だ。お前のパンチなど何発食らおうがビクともしねぇよ・・・」

「じゃ、お願いしよう・・・いくぞ・・・!?」

「オウ!こいやぁぁーーー!!」

俺はロキのど真ん中に拳を打ち込んでいく。そして驚愕した・・・こいつの体は鋼なんてものじゃない!!打ち込んでいる俺の拳の方が悲鳴を上げ始めている!

そして、何発打ち込もうがロキは表情を変えず、息も乱さず俺にゲキを飛ばし続けているのだ。こいつは人間じゃない・・・・

心臓はまだ持つ・・・だが・・・拳はもう持たない・・・

「ん?どうした!?威力が落ちてるぞ!!」

「・・ぐ・・おおおおぉぉぉーーーーー!!」

そうだ、ロキはさっきからミット代わりになっているのだ。

ロキにだって味覚がある以上痛くない訳が無い、ならば俺がギブ・アップするわけにはいかなかった・・・!

そして、三日後遂に俺の拳が完成した。

「ここを打ってみろ・・・」

ロキに言われたとおり、岩の壁にストレートを叩き込んだ。

すると痛みは無く岩の方が降参をして割れていく・・・ヒビがどんどん侵食していき、そして遂に・・・厚さ500メートルぐらいの山の壁を砕いていった・・・

「・・・・・・」

俺は夢でもみている気分だった・・・

「これで一つの過程が終わった・・・だが、これからが本番だ・・・」

ロキは満足気に頷きながら俺をジッと見据えて・・・・

「タクト・・・今度は防御だ。」

「防御?」

「ああ、肉体の硬さと動体視力だ・・・」

俺はロキの言いたい事が分かった・・・戦いの経験が少ない俺には攻撃より防御のほうが重要なのだ・・・

「今度は俺が受ける側って事か?」

「ああ・・・しかし、大人しく殴られろなどとは言わん・・・ガードできるものはガードしろ。避けれるものは全て回避していいし・・・俺に隙あらば打ってこい・・・

ロキが構える・・・・俺の覚悟はとうに決まっている・・・

俺も構えてロキと対峙した・・・

そして、ロキが動いて、俺はすぐにガードに徹した。

ロキの動きが微かにしか見えなかった・・・

死神のメシアとの戦いで俺の動体視力はそこそこのものだと自負していたのにも関わらず、ロキの拳や足が全く見えないのだ。ついにはガードしている腕の骨が折れ、遂にはロキの痛烈な攻撃が被弾していく・・・顔、腕、胸、腹、足の全部に激痛を感じる、俺はそれでも膝をつかずに踏ん張ろうとしたが遂にロキのアッパーカットで吹っ飛ばされた・・・俺の体は意思に反してこれぽっちも動こうとしなかった・・・まさに医務室で喰らったあいつのカウンターを喰らった時に似ている・・・

「・・・少し、やりすぎたか?」

ロキが俺の口の中にチョコを突っ込み無理矢理食わせた。

「情けない・・・」

「まぁ、そのうち慣れるからそんなに落ち込むな・・・」

「まったく、見えなかった・・・」

「このチョコがある限り、お前はあきらめなければ必ず強くなれんだ・・・これは戦士にしてみれば幸せな事ではないか?

そうかも知れない・・・あいつとの戦いではあきらめるあきらめないに関わらずやられていた・・・ならば、あきらめない限り強くなれる事がいかに幸せだろう・・・

「わりぃ・・・待たせた。」

俺は立ち上がり、ロキにファイティング・ポーズをとった・・・

「よし!その意気だぜ!!」

それから再び俺は何度も叩きのめされたが、しかし、痛みが序々に薄らいでいくのが分かっていた・・・

それから一週間後の午前の修行を終えた俺は、ルシファーとお墓参りに来てたここにいる時が一番落ち着けて・・・そして・・・一番幸せだった・・・

「うわぁ・・・見てくださいよ、タクトさん!!」

桜の花が落ちて舞ってルシファーを飾り立てる・・・

母親からのプレゼントなのだろうか・・・

俺はそんなルシファーの姿に心を奪われていた・・・

彼女は間違いなく女神に恥じない美しさを持っていた・・・

それは容姿だけの話ではない・・・

俺が惹かれている最大の理由はその心だ。

知り合って間もない俺を身を挺してまで守ってくれた・・・

その優しさはもはや人の域から脱しているとしか思えない。

何故、彼女はあの時、逃げなかったのだろうか?

自惚れかもしれないが俺には妻がいる事を知っている・・・

「・・トさん・・・」

正確には彼女とはミルフィーとして将来結ばれるのだが・・・

彼女がそれを知っているわけが無い・・・

ならば何故・・・?

「タクトさんってば!!」

「うわぁ!?」

「ひゃあ!?」

ルシファーが俺の肩をいきなりゆすった為、俺は思わず飛び上がってしまい、ルシファーも驚いてしまったらしい・・・

「な、何?」

「あ、ごめんなさい・・今日はデザートを作ってきたんですよ。」

と言ってルシファーがバケットから取り出したのは桜色の餅だった。

「じゃ〜ん♪私特製の“桜餅”ですよ〜〜」

ああ・・・そのセリフを聞くのが久しぶりなような気がするな・・・

君はミルフィーなんだよな・・・

「お茶を淹れるから少々お待ち下さいねぇ〜♪」

ルシファーが木の筒からお茶をだしている間に俺はその桜餅とやらを見つめていた・・・

「はい、どうぞ〜♪」

「あ、サンキュ。」

ルシファーからお茶を受け取り、桜餅を早速頂いた。

「ん?これ、すッごく美味いよ!」

「あははは♪気に入ってもらえてよかったです〜♪」

「うん、さらにこの葉っぱ、しょっぱいけどこれが甘さを実感させてくれてるね。」

「あ、分かります?この葉っぱはここの桜の木からとったものなんです、ちゃんと食べられますよ。」

「へぇ〜〜」

俺が夢中になって食べていると

突如、ルシファーが話しかけてきた。

「タクトさん・・・この前、私と冥王様がここで話した事を聞いていたんですよね?」

俺がいきなりの質問に手を止めたら彼女にまた謝られそうだったので食べきってから「うん」と頷いた。

「タクトさん・・・冥王様の言った通りこの世には種族の違い等でどうしても分かり合えない者達がいます・・・」

「・・・・・・」

そうだ・・・それはロキが言っていた事だ・・・

「でも・・・もし私達と同じ言葉を持っているのなら・・・同じご飯を食べているのなら・・・私は何とかしてでも仲良くなりたいんです・・・これってやっぱり私のわがままなんでしょうか?」

「そんな事ないさ・・・」

俺はルシファーの頭をくしゃくしゃと撫でた。

甘い香りがする・・・

「タ、タクトさん?」

「わがままなんかじゃないさ・・・どうして仲良くしたいと思う事がわがままなのさ・・・わがままなのは仲良くしたくないから触れ合って何かが変わるのを恐れて・・・それを周りに押し付けてるさ・・・」

「で、でも・・・冥王様の言う通り、私は現実を直視しないで、自分のやりたい事をしているだけなんです・・・」

やれやれ・・・また彼女の悪い癖がでたな・・・

「ルシファー・・・君はどうしたいのさ?」

「わ、私ですか!?」

「そうだよ。君にも夢があるんだろう。」

「私はこのまま、お父さんやクロミエ・・・ダイルさんにマナに街の皆さん、そして・・・タクトさんといつまでも楽しく暮らしていきたいです・・・」

俺は彼女のその真っ直ぐな視線に少し罪悪感を感じた・・・

「だったら・・・それでいいんだよ・・・誰に何と言われようがそれを続けていけばいいじゃないか。少なくとも俺やロキはそう思っている・・・また冥王や神皇が来ても俺とロキで追い返してやるさ!だから、わがままだなんて言わないでくれ・・・きっとお母さんも同じ事を言うと思うよ・・・」

「・・・・・・タクトさん、ありがとうございます・・・」

(ルシファー・・・君が背負っているものは俺が解決してみせるよ・・・それが俺の役目だから・・・)

俺がそんな事を考えているとふいにルシファーが真面目な顔で俺の目を見つめてきた。

「タクトさん・・・」

「ん?何だい?」

「タクトさんはいつまでここにいてくれるんですか?

「!」

俺は心臓を鷲頭かみにされた気分だった・・・そうだ・・・俺は神皇を倒す為にきたんだ・・・神皇を倒せば俺は元の時代へ戻るのだろう・・・

「タクトさん・・・?」

ルシファーの顔が不安そうに曇る・・・

それでルシファーが俺に何を望んでいるのかが分かった・・・だが・・・俺は何て言ったら良いんだ!?嘘をついてぬか喜びさせるのか?こんな女神みたいな娘に・・・

「私・・・わ・・・わたしは・・・」

ルシファーが華奢な体を震わせて勇気を振り絞るように何かを言おうとしている・・・

「私はタクトさんの事が・・・」

駄目だ・・・その続きを言わないで欲しい・・・俺にはその答えを言える勇気がまだ無いんだ・・・

「私はタクトさんの事が大好きです・・・この世で一番誰よりもタクトさんを愛しています・・・!」

だが、ルシファーは言ってしまった・・・いや、言ってくれた・・・

こんな女神のような娘が

俺みたいな馬鹿に誰よりも愛していると・・・

「だから、ここにいてほしいです!いえ!どうしてもここにいられないのならそこに私を連れて行ってください!

俺はこれ程、運命を呪った事はない・・・

「タクトさんに奥さんがいるのは知っています・・・けど・・・それでも・・・私はタクトさんと一緒にいたいんです!召使いとしてでもいいですから・・・私をタクトさんと一緒にいさせてください!!

俺はいつまでこの娘に恥をかかせているつもりだ・・・!

勇気が無いなんてのは俺の都合じゃないか!!

「ルシファー・・・俺は・・・ミルフィーを裏切れない・・・それにミルフィーという娘は君の事なんだ・・・」

「え?」

俺はルシファーが転生してミルフィーになる予定なんて事は言わない・・・それでもこの娘はミルフィーなんだ!愛してないだなんて言えない!!

「ごめん・・・だから・・・そのミルフィーを裏切れないんだ!」

「タ、タクトさん・・・・・」

ルシファーが驚いた顔で見ている・・・当たり前だ・・・

俺は自分でも何を言っているのか分からなかった・・・

いや、断る勇気がなくて逃げただけじゃないか。

この大馬鹿野郎っ!!

ルシファー・・・ごめん!!

だから、俺は“未来の君”を一生愛し続ける!!

次の瞬間、ルシファーが俺に抱きついてきた・・・

そして・・・彼女は目を潤ませて・・・

“私”、嬉しいです・・・!」

そう言って俺の口に口を重ねてきた。

この前とは違い、愛情表現のキスだった・・・

ちょっと待った・・・なんでルシファーはさっきの俺の言葉に何の疑問も持たなかったのだろうか・・・

「え、えへへへ・・・キスしちゃいました・・・」

ルシファーは真っ赤な顔をして俺を見ていた。だから、俺は肝心な事を聞く事を忘れてしまった・・・

「タクトさん、“ミルフィーさんをこれからも愛し続けてください・・・”

「え?あ、うん・・・」

「タクトさん?も、もしかしてキス・・・嫌でしたか?」

「そ、そんな事ないよ・・・」

「よ、良かったです〜。私、は、初めてだったんです・・・もし、嫌だなんて言われてたら・・・」

「ありがとう・・・」

ルシファーは青い空を見上げて照れ隠しのようにぼやいた。

「この空の上に神様達の住まうエリュシュオンがあるんですね・・・」

そう言えば何故、宇宙が存在しないのにここには朝と夜が存在するのだろう?

「今日もアポロン様が私達を力強く照らしてくれています・・・そして、夜はアルテミス様が優しく私達の夜を照らしてくれます。」

まるで、俺の心を読んでいたかようにルシファーは呟いた。

アポロンにアルテミス・・・おそらくは十二傑衆の者達だろう・・・

「・・・ふぁ・・・」

ぽかぽかとした日差しが眠気を誘う・・・実はロキとの訓練は最近、早朝から始めているのだ。そのおかげで最近ようやくロキの攻撃が見えるようになってきてい・・・る・・の・・だ・・・が・・

「タクトさん?もしかして眠いんじゃないんですか?」

「え・・・あ、分かる・・・?」

「あはは・・・誰だってわかりますよ〜」

するとルシファーは正座をして俺を手招きする・・・

「タクトさん、タクトさん私の膝を使ってください・・・」

「え?わ、悪いよ、家に帰ってから眠るから・・・」

「いいですから・・・早く、早く・・・」

「う・・・うん・・・そこまでいうのなら・・・」

俺はルシファーの膝の上に頭を乗っけてもらった・・・

この感触はまさにミルフィーそのものだった・・・

その懐かしい感触に俺の意識は急激に遠のいていった・・・

 

ルシファーは眠りに入ったタクトの頭を優しく撫でながら、その

あどけない寝顔をこの上無く愛しく見つめながら・・・

私もタクトさんを一生愛し続けます・・・例えこの先、何があっても・・・

 

〜過去の記憶 ロキ2 前編〜

はエレナ達と別れた後、名も無き農村で生活をしていた・・・

俺を引き取ってくれた老夫婦は本当によく世話をしてくれた。

俺は農業を教わり、毎日を有意義に過ごしていた・・・はっきり言ってもはや、元の世界の事など忘れていた・・・・どうせ、俺はじっちゃんが引き取ってくれた孤児だったのだから・・・一緒に引き取られた“唯一のも数年近くも行方不明のままだ。

俺は学校にじっちゃんが残してくれた家とその財産で通っていたのに過ぎなかったのだから・・・俺はこの村に骨を埋める覚悟をしていた・・・そして、毎日、働き続けた。

エレナがここにルシラフェル討伐の吉報を届けるのを楽しみにして・・・だから、あのリボンは大事に肌身離さず持っていた・・・洗濯しても血が落ちなかったので、もはや白いリボンは真っ赤なハチマキと化していたのだが・・・

 

そんな俺の生活が終わりを迎えたのは村に来てから約半年の事だった・・・

俺はいつもの日課である、荷車を引いて隣町までの収穫物の運搬に出ていた・・・その帰りに俺は村の異変に気付いた・・・

この何も無い村に強盗集団が襲撃をかけてきて村に火を放ったのだ・・・

『何で!?何で!?何で!?何で!?よくも!よくも!よくも!』

(あれ、今のはロキの声ではない・・・)

奴等は生活に追われたらしく金目のものから日用品までの広範囲のものを容赦なく奪っていった・・・俺は自宅へ急いで戻ったのだが、家の中には無残な死体と化した老夫婦の姿があった・・・そして、その隣には老夫婦を斬り殺したと思われる“屑”が一匹いた・・・

何を聞いても俺がこれからする事は変わらないが、一応俺は老夫婦の死を少しは意義のあるものにしたくてそのに尋ねた・・・『何でこの二人を襲ったのかと』するとその屑はこう言った・・・『殺さなければ後がややこしくなるからだと・・・・・』

俺の頭は真っ白になった・・・・そしてそのはこちらの心情も知らずに『この世界は弱肉強食の世界だろう?』と抜かしやがった・・・

『そうだ!弱肉強食だ!この世は弱肉強食なんだ!』

俺は『ああ、納得、納得』と言いながら口元をニタリと歪めた・・・弱肉強食の世界なら俺がここでこいつを____てもかまわないと思った・・・これは復讐ではない制裁だと言い聞かせながら俺は例の光の剣を呼び出そうとしたが、何故か出てはこなかった・・・何故だろう?制裁は正義ではないのか?悪人を討つのは正義ではないのだろうか?

『正義なんかありはしない!復讐と制裁はそんなまやかしではない!リベンジだ!リベンジ!リベンジ!リベンジ!リベン・・・』

そして、屑が斬りかかってきてからの事はよく覚えていない・・・気付いた時はその村にいた者を全てバラバラの肉塊と化していた・・・誰がこんな事をしたのだろうか?

『よくやった!よくやった!よくやった!よくやった!よくやっ・・・』

何故、俺だけが生き残っていたのだろうか?

いや、答えは簡単だった・・・生き残っているものがこの殺し合いの勝者だからに決まっているからじゃないか・・・俺は朦朧としている思考で使える物をかき集めようと元農村を探索した。探索中に気が付いたのだが、バラバラになっていたのは強盗集団の奴等ばかりで、農民の者達は全員剣や矢などの人間的な武器で殺されていた・・・俺は少し心が軽くなった。

最後に老夫婦の供養を済ませた俺は、自宅跡に転がっていたていたさっきのの頭を踏み砕こうとしてその頭が既に握り潰されているのに気が付いた・・・

『甘い!甘い!!俺ならその頭をサッカーボールにして遊ぶね・・・!』

俺は残った物を隣町で売りさばき俺はそこでエレナが来るのを待っていた・・・ところがしばらくすると隣町の者はよそ者の俺が農村を襲撃したのではないかと噂し始めた・・・「あいつは飢えた狼だ」とか「鬼の化身」だとかが毎日のようにヒソヒソと聞こえてきた・・・もはや長居は無理のようだ・・・俺はフィノリアへ行く事にした。フィノリアの場所を前に聞いていたのは幸いだった・・・

『ならばそんな町もやってしまえ!お前にならこの世界を相手にしても勝てるほどの力がある!!』

にしても狼と鬼か・・・俺はもはや正義の味方ではないのだろう・・・ならば・・・じっちゃんの付けてくれたこの名を名乗る資格は無い。

狼と鬼か・・・ならば「狼鬼」なんてのはどうだろう?

ろうきだと語呂が悪いな・・・そうだ、昔、漫画で見た事がある、ロキなんてのはどうだ?うん、これはいい・・・気に入った。

この日から俺は古牙 亮 から 狼鬼へと名を変えた・・・

そして、正義の味方から盗賊へと成り下がった・・・フィノリアへ向かい、もう一度、エレナに会いにいってこのリボンを返したかった・・・俺にはもはや、それしか生きる望みは無かった・・・

『かわいそうに・・・俺と同じだな・・・』

フィノリア大陸までの道のりは遠い・・・途中で行き倒れになる可能性もある・・・しかし、死ぬ前にこのリボンだけは返したかった・・・そして、エレナに・・・いや、返すだけにしよう・・・

俺にはそんな資格はもう無くなったのだから・・・

だが、何としてでもフィノリアを目指そう・・・

それから俺はフィノリアをひたすら目指して歩いた・・・

フィノリアへ陸が続いていたのが幸いだった・・・

途中で資金が尽きれば裕福な家庭から金品を盗んでは資金を集めていった・・・強盗もしたが傷付けはしなかった・・・て今のは誰に対するいい訳だ?

もしかしたら、俺の窃盗が原因で人生が変わった者やあるいは自殺した者もいるかもしれない・・・それでも俺はフィノリアをあきらめるなんて事はできなかった・・・・すでに俺には正義など無く、生活に必要不可欠な本能しか残っていなかったのだから

『そうだ!気にするな・・・!この世は弱肉強食だってこの世界が教えてくれたんだから・・・』

フィノリアへ後半分といったところで既に出発から一年がたっていた・・・服は既に異臭を放ち、俺自身の髭も伸びていった。そして、俺は残りの半分に足を進めて歩いていった・・・出発してから一年・・・俺は歩いている時に、常に今日はどうやって生き延びるか、どうやって忍び込むかという段取りを考えていたので徒歩の旅は意外と辛くは無かった・・・

途中でモンスターが現われれば全部殺した・・・RPGゲームみたいに金が入ればどんなにいいかと何度も思った・・・

そして旅の途中でアバジェスが邪神 ルシラフェルを退治したと聞いた。

町はお祭り騒ぎだったが・・・今の俺にはあまり関係ないことだと思っていた・・・ただし、それならばエレナはフィノリアに戻っているだろうとは思っていたが・・・

そして、遂に俺はフィノリアについた・・・

魔法王国 フィノリア

覇王 ギュスターウ゛が統治するフィノリア・・・その規模はアスポデロス最大とも言われているだけあって、貴族の数も多い。また、魔法の研究の最先端とも言われていて、他国との交流も深い・・・

基本的に山奥の王国だが、その規模の為にここまでわざわざ航路を確保しており、船の出入りも頻繁だ。夏には涼しく、冬には雪が降り積もると言われている・・・

別名 アスポデロスの楽園

EDEN

フィノリアはアバジェス兄妹の帰りを待っていた・・・そう、エレナはまだ帰ってきていないのだ・・・俺はそれまでの間、貴族の屋敷へ忍び込んでは相変わらずの生活費を稼いでいた・・・アバジェスとエレナを待っている間、俺はアバジェスの武勇伝を聞いた。アバジェスは最強の英雄とも言われ、天界のエリュシュオンからは神王の位へのスカウトもきているとの事だ・・・エリュシュオンとやらは神々が住まう世界で選ばれた者のみが行く事を許されると言われている・・・俺には関係の無い事だが・・・

確かなのは神達は正義の味方などでは無いという事、もしくは絶対者では無いのかのどちらかだろうという事だ。何故なら、全知全能の創造主の癖に盗賊の俺を野放しにしているからだ。裁こうと意思がないのならそれは正義の味方ではないのだろうと言う事・・・俺の悪行に気付かないのならそれは絶対者では無いという事になる・・・

俺はこの時から神皇の神性を疑っていた・・・

そんな中、フィノリアでは俺の存在がかなり知られてしまったらしく、ガードが固くなっていた・・・美術品などはすぐに足がつくので紙幣や硬貨のみ盗んでいたのだが・・・

もう少しすればこの町を出て行かなければならないという時に二人は帰ってきた・・・

フィノリアは二人とフィノリアの王である覇王ギュスターヴの帰還に大賑わいだった・・・

俺はエレナに取り次ごうとしたが、エレナは依然として雲の上のような存在になっていて昼間はパレードのど真ん中にいて夜は厳重な警備を配置している城の中にいたので手が出せなかった。そこでギュスターヴ城正門の門番に俺は古牙 亮という名前をエレナかアバジェスに伝えれば分かると言ったが俺のこのなりを見て門前払いされてしまった・・・それでもこの命がある内にこの手でリボンを返したかった俺はその夜、城に忍び込む事を決心した・・・

夜の宮廷の外からこの_の姿で忍び込む事にした。人間離れした俺のこの_は夜になると任意で発動できる。狼鬼という名前を名乗ったのもこの_のせいである。人間離れした跳躍力で俺は城壁を飛び越える。

そして、俺は宮廷の中に忍び込んだ・・・宮廷の王の間は大きかった・・・何故なら覇王ギュスターヴは巨人のティターン族の数少ない生き残りだった・・・旧姓はディオネ・・・先代の神王 ガイアは神皇から反逆者の烙印を押され、忠実な配下の者達ティターン十二傑集はクロノスを始末にきたエリュシュオン裏の十二傑集と言われていたポセイドンが率いるオリュンポス十二傑集と勇敢に戦い一度はこれを退ける・・・

しかし・・・神皇の次に強いと言われる冥王のアルフェシオン(完全な者)と呼ばれる者がティタン族を皆殺しにしてガイアすらもあっさりと消してしまったという・・・このティターン族の数少ない生き残りの一人が覇王と呼ばれているギュスターウ゛である・・・ガイアの死後いまだに神王は空席のままで世界は現在の暗黒の時代を迎えているのだ・・・アバジェスはその強さと邪神ルシラフェルを倒した功績を見込まれて神王の席へ呼ばれているとの事らしいがアバジェスは引退の意思を固めている、何でも妹のエレナと静かに暮らしていきたいと言っているらしい・・・やはりいまだにアバジェスは俺の理想のヒーローだった・・・

俺はこの_の嗅覚能力を使いエレナ香りを嗅ぎ沸けて俺は彼女の部屋らしきところにまでたどり着く、そこには獣人の警備兵が一人で部屋の前を警備していた・・・今の俺になら殺す事は容易い・・・しかし、エレナの知人かもしれないのだ・・・

乱暴な事はしたくない・・・今更、何を言うかこの_めと言いたいところだが・・・俺は気配を現し、警備の兵にこの姿のままで現われた。この姿は一度現してしまうと中々戻らないそれに万が一ここから逃げる時には役に立つと思ったからだ・・・・

俺はエレナにこの赤くなったリボンを返す為に正義を捨てて盗賊に成り下がってまで生き延びてきたのだから・・・・渡すまでは死ぬ訳には行かなかった・・・・

俺に気付いた当然警備兵は槍を構えた。お互い獣人だろうが、身もとの知れぬ不審者の俺はまさにモンスターだろう・・・・

「エレナにこの赤いリボンを返しにきた・・・」

俺はそう言って、頭から腕に巻き変えた赤いリボンを指した。

「それのどこがリボンか?魔物め、エレナ嬢には指一本も触れさせぬぞ、我が命に代えても・・・」

そうか、ボロボロになっているこれをリボンと思う奴はこれの経緯を知っているものだけだろう・・・それにこの兵は間違いなくエレナの事を親身に考えている・・・いい奴だ・・・

「あんた、いい奴だな・・・名前を教えてくれないか?」

「?魔物風情が・・・そちらから名乗るのが礼儀であろう・・・」

「確かに・・・俺は・・・古・・・狼鬼だ・・・」

「!そうかお主、もしかして城下町を騒がしておる盗賊ではないか?」

「多分な・・・」

「俺はダイルだ・・・お主の噂は聞いている・・・豊かな者には悪魔になり、貧しき者達に救世主のように振舞う盗賊が今度はこの城下町にきているという・・・」

「随分と有名になったもんだ・・・」

「魔物よ、俺と一つ手合わせを願えぬか?」

「・・・?」

「なぁに・・・俺も血の気が多くてな・・・」

ダイルが槍を置いて構えた。

「・・・・・・」

「受けるか?この勝負・・・」

「いいぜ・・・」

それは一瞬だった。俺のストレートがダイルの鳩尾に入った。

「ぐ・・・!」

ダイルが構える前に打ったのだ。

名付けるなら俺の光速ストレートというべきか?

「な、何と早い拳か・・・」

「あまり無理はすんなよ・・・手加減はしたけど肺にキてる筈だ・・・」

それからダイルは何とか呼吸を落ち着けた。

「大丈夫か・・・?」

「ああ・・・さっきの続きだが、貧しき者の家に金を密かに置いて次の犯行へ移っていくと聞いている・・・」

「アレは大金を持ち歩くのが面倒なだけだ・・・」

「はっはっはっはっ!お主の事は明日にでもエレナ嬢に伝えておくし、正門にはわしがつこう・・・今日は引き下がってはくれぬか?エレナ嬢は疲れている・・・」

「いや、このリボンさえ渡してくれれば良い・・・」

それはお主の手で渡すべきだろう。エレナ嬢はそのリボンの持ち主の事をいつも楽しそうに話しておったよ・・・

「・・・・・・」

「のう、狼鬼、いや、リョウ殿、何故、お二人の帰還が遅れたかしっておるか?」

「いや、どうせエレナがまた迷子にでもなったんだろう。」

あいつと出会った時の事を思い出せば容易に想像できた。

「ん?うわっはっはっはっ!おっと・・・少し声がでかすぎたな・・・

実はなエレナ嬢はお主を探していたんだよ・・・」

「な、何・・・?」

あいつはあの約束を覚えていてくれたのか・・・?

あんな古い約束を・・・

「あの農村が盗賊につまりはお主に襲撃されたと隣町の者から聞き、エレナは珍しく激怒してな、お主をあちらこちら探しながらこちらに戻ってきたのだ・・・」

「・・・という事はあいつは俺の後ろからこちらに来ていたと言う事か・・・はぁ〜」

何て間抜けな・・・でも、普通に考えれば後ろからついてきていたとは思うまい・・・

「おうよ・・・しかし、エレナ嬢は立ち寄った村では一人残らずお主の事を聞いてきたのだ・・・だから時間をくうた・・・お主が盗賊をしていた事はエレナ嬢はもう気が付いておる、その目立つ赤いハチマキがな・・・いや、リボンだったな・・・」

俺があんな事をしてきたのに何故、あいつは俺を探し続けたんだ?

「アバジェス様が必ず見つけるといってエレナ嬢をここまで連れ戻したのだ・・・ここで目立つ事をしすぎたな・・・そのリボンをつけて・・・

それを知ったアバジェス様は明日はお主を捕まえるとか言っておる・・・」

「いや、もう捕まえたよ。」

「・・・ッ!?」

「ア、アバジェス様!?」

俺の背後には黄金の鎧を纏ったあの男がいた・・・

神界最強の英雄 アバジェスだ・・・・

全く気配に気付かなかった・・・さすがは黄金の騎士だ。

戦士は戦う者、騎士は守る者か・・・

いや、今の俺は盗賊か・・・

「・・・姿は変わり果ててもその魂は変わらんな、お前は・・・」

「まいったな・・・あんたとこういう形であうなんてな・・・」

「ふ、正門の兵からお前の事を聞いてな・・・この事はエレナにはまだ内緒にしてある。だって、びっくりさせたいじゃないか。」

「あんた、案外意地悪い兄貴なんだったんだな・・・」

「周りが俺のことを過大評価しすぎなんだよ・・・」

「・・・それで、逃がす気はないんだろう?」

「まぁ、これ以上逃げられるのは面倒だしな・・・」

「いつから、気付いていた?鎧を着てるんだ。今さっき気付いたわけではあるまい?」

「この鎧は実体を持ってはいない、いつでも好きな時にコンマ一秒で装着可能だ・・・しかし、お前が城壁に近づいてきたところから気付いていたよ・・・そんな姿だしな・・・」

「俺を逮捕するのは構わないが、エレナに会わせてくれないか?後、そこの熊をクビにしないでくれ、その熊は間違いなくエレナの最高のガードマンだ。」

「お、お主・・・」

アバジェスは俺に近づいて・・・

「ふ・・・苦楽を共にした戦友をクビになんてするか。・・・それにお前も“夢”を掴んで見ないか?」

と言って俺を王の間まで連行した・・・

王の間では玉座に王が座り待っていた・・・

「アバジェス、それがお前が言っていた者か?」

「ああ、ついでにエレナの初恋の男でもある。」

覇王ギュスターヴはひゅ〜と口笛を吹いて俺を見下ろしている。

「なるほど・・・確かにこいつは凄いな・・・俺以上の化け物だよ・・・こんなに血が騒いだのはお前以来だ、アバジェス・・・」

「そう言うと思ったよ・・・」

俺はギュスターヴの言葉に少し傷付いた・・・俺以上の化け物?そんな巨体でか・・・?覇王ギュスターヴと呼ばれるだけあり、その背丈は俺を一握りすると頭と足だけが出ると言った感じだ。まぁ、目測で堅く見ても、4辰呂△襪噺た・・・

「よぉ・・・リョウさんとやら・・・」

「悪いが、ロキと呼んでくれ・・・」

「なら、ロキさんよ・・・あんた分かっているかい?あんたは不法侵入者だ・・・しかも、雑魚だけならともかく、今ここには俺とそのアバジェスがいる・・・まず、逃げられないぜ?」

「分かっている・・・」

「しかし女神の初恋の相手でもある君に乱暴はしたくない・・・ここは俺と一勝負しないかい?君が勝てばエレナと会わせてやろう・・・そして部屋に入れてやろう・・・」

「コラ・・・人の妹を売るな・・・それにあいつは夜が弱いんだ。明日にしてやれ・・・」

「相変わらずの兄馬鹿っぷりだな・・・お前も・・・まぁ、いい・・・それでどうだ?俺と勝負するか?」

「勝負の方法は?」

「もちろんこれさ・・・」

そう言ってギュスターヴは巨大な剣を取り出した。

「ったく・・・何が“乱暴はしない”だよ・・・」

「すまんな、ロキ。ギュスターヴはこういう奴なんだ。」

「いや、こういうのは嫌いではないんだ。むしろ俺も楽しくてしょうがない・・・」

なにしろ相手は覇王だ・・・

覇王はここフィノリアで二年置きに開催されるアスポデロスの強者共が集う武術大会 ドラコルムで優勝した者が選ばれる、正真正銘の強者だ・・・

そして俺がこの覇王ギュスターウ゛を気に入っているのは同じティターン族の初代覇王 オケアノスとは違ってエリュシュオンから来た十二傑衆のスカウトを蹴った事だ・・・ちなみにオケアノスはエリュシュオンでゼウスとリーダーの席を駆けて争っているとか・・・何とも無様な元・覇王な事だ・・・

「んじゃあ、始めるか?」

「ああ・・・」

そう言って、俺は拳を構える。短剣など必要ない・・・

「いくぞぉぉぉーーー!!」

そうしてギュスターヴとの試合が始まった・・・威力は高そうだがやはり動作が今いち鈍そうだ。俺は覇王の剣をかわしながらこの体のみで確実にダメージを与えていく。やつもタフだが、俺の忍耐力も負けちゃいない・・・地道にダメージを増やしていく・・・

「まいったぜ・・・こりゃあ、アバジェス以来の化け物だぜ!」

「あんたこそ・・・これだけ打っても倒れない相手は初めてだ!」

俺達は闘争本能の赴くままに戦いあった・・・そして・・・・

バキイィッ!!

俺の必殺のアッパーカットが覇王に炸裂して覇王は初めて倒れた・・・

「・・・悪い、俺の負けだ・・・体が動かないし・・・意識が薄れていく・・・」

「今日はそのままいい夢見な・・・」

「しっかし・・・この・・・俺が・・・一撃・・・も・・・あてれ・・ない・・」

と言いながらギュスターヴは本当に眠りに入った・・・

「お見事、お見事・・・まさか無傷でその男を倒すなんてな・・・」

アバジェスが拍手をしながら・・・近づいてくる・・・・

当たり前だ・・・一撃でも喰らえが俺が無事では済まなかったぜ・・・

「明日、エレナに会わせてくれるか?」

「ああ、約束しよう・・・しかし・・・」

「・・・?」

俺とも一勝負受けてくれないか?

「・・・光栄だね・・・」

無理も無い・・・神界最強と言われ、神王の位へのスカウトもきている神界の英雄。

俺が泥沼人生の中でも憧れ続けた黄金の騎士からの挑戦さ・・・

相手は間違いなく俺より強い・・・エレナにリボンを渡すのは最前提だったが・・・この男と戦いたいという闘争本能には勝てそうもない・・・

「もうすぐ・・・夜が明ける・・・始めよう。お前が化け物である内に・・・・

アバジェスが剣を構えるフリをした・・・

「なるほど・・・俺はまだまだあんたを本気にさせるほどではないんだな・・・当たり前か・・・」

「いや、そうでもないさ・・・」

俺はアバジェスに攻めていくが、アバジェスは俺のこの人間離れした速さの拳と蹴りを全てかわしていく・・・

「なるほど、攻めは悪くは無い・・・ならば次は守りを見せてもらおう・・・」

アバジェスはそう言うと見えない何かを振った・・・剣のように・・・

奴が剣をなぎ払うかのように横に振ったので俺は上に飛んで逃げたつもりだったのだが、まるで、縦に斬りつけられたような痛みが襲ってきた・・・

「ぐッ!」

「・・・これは驚いた・・・これで斬れない程の体とはな・・・」

アバジェスは何か信じられない程嬉しそうな顔をしていた・・・

どちらにしろあれはかわせないものだ・・・俺は二本の短剣を取り出す。

「む・・・?」

アバジェスがまた剣を振る今度は縦、横の順で十字に・・・

俺は見えない何かに短剣を当てるが・・・

パキン・・・

二つのミスリル銀製の短剣はあさっりと崩れ去った・・・

「どうする?ここで止めとくか?」

「・・・いや、まだ一つだけ試したい事がある・・・」

俺は折れた短剣を投げ捨てて手に例の剣をイメージした・・・

出てくれなくて当たり前、出てくれてこそ奇跡・・・

すると、どうだろう、右の掌に熱い感触が生まれた・・・

・・・きた!奇跡がおきた!!

エクスカリバーか・・・

アバジェスのぼやきを俺は聞き逃さなかった・・・

エクスカリバー

俺の世界ではイングランドのアーサー王の剣として言われていた伝説の聖剣だ

「知っているのか?この剣を・・・」

「知っているさ・・・それは俺が創った剣なんだから・・・」

「何・・・!?」

「ああ・・・別に鍛冶屋みたいに造った訳ではない・・・その剣という概念を創ったんだよ・・・俺は構築者だからな・・・

構築者・・・聞いた事がある・・・ゴッドハンドと呼ばれたその手からは神皇と同じようにあらゆる物をを生み出す事ができると・・・そして、そのエクスカリバーは持ち主を選ぶ・・・俺も邪神ルシラフェルを倒すまでは召還する事ができたんだがな・・・」

・・・できた?・・・ならば今は使えないと言う事か・・・なるほど・・・この剣は使える時と使えない時があるのか・・・

「まぁいい・・・いくぞ・・・」

アバジェスが再び剣を振り回した・・・振り回した・・・?

俺はエクスカリバーでそのラインを予想してそのラインにあわせて剣をおいた。そして、その剣撃を受け止めて気が付いた・・・

「そうか・・・これは・・・“剣じゃない”な・・・?」

「・・・バレちまったらしょうがないな・・・」

「これはだな?」

「さすがにお前相手にごまかしはできなかったな・・・その通り、これは龍の髭という奴だ・・・」

「マジかよ・・・?秘宝中の秘宝じゃないかよ・・・」

龍の髭

伝説の神獣 黄龍の黄金の髭でその切れ味はそこいらのなまくら剣なども断ち切ってしまう武器だ・・・黄龍三つの秘宝の中の一つだ。伝説の黄金の槍 グングニル・・・伝説のアミュレットであり、魔力増幅器(タリスマン)龍の目こと二つのドラゴン・オーブ・・・

そして、龍の剣とも言われるこの龍の髭だ。

もちろん、所在は知られずその中の一つだけ売ろうとしてもその価値は無限大とまで言われている・・・嘘では無い、大国の王達が血眼になって探しているのだ・・・

「ばれちまった以上こいつは使わない・・・その代わりに新作の剣試させてもらおうか・・・」

そう言うとアバジェスの手には漆黒のエクスカリバーが現われた。

「これは、魔剣 ダインスレイブ・・・簡単に言えばエクスカリバーの発展型だ・・・ただし、この剣はエクスカリバーよりも扱う奴を選ぶ。エクスカリバーが光を好むのなら、こいつは闇を好むんだ・・・」

そして、アバジェスが斬りかかって来た・・・

「!!」

俺は身構えるがアバジェスの速さは俺の動体視力をもってしてでも霞むほどだ。

技量の差は歴然で俺のエクスカリバーは弾かれ、手から離れるの同時に霧散して消えていった・・・戦いにすらならなかった・・・神界はそんなに甘くは無いか・・・

「いい勝負だった・・・・“合格”だ」

「そうか・・・?」

俺はそうは思えないんだだが・・・後、合格って何の事だ・・・?

「兄さん!?一体何を・・・!?」

背後から懐かしい声が聞こえてきた・・・

「ん?起きちまったか・・・オーブのせいか?」

そう言ってアバジェスは胸元から金のペンダントを取り出した多分

それがドラゴン・オーブと言われるものなんだろうと思った・・・

そして、俺は驚愕した!その金のペンダントに彫られていた紋章はムーンエンジェル隊の紋章とうり二つだったのだから・・・!!

「あ、あなたは・・・・!?」

背後の彼女が息を呑んで俺を見て震えているのが分かった・・・俺のこの姿を見れば無理もない・・・それに・・・俺は右腕にあの彼女のリボンを巻いているのだから・・・多分、俺が誰なのか気付いている・・・

そう、考えていると背後に暖かい吐息と柔らかい感触を感じていた・・・なんと背後の女が俺に抱きついていたのだ・・・・

「よっかったぁ・・・本当に・・・本当に・・・」

背後の女が泣いているのがわかる・・・しかし、この姿の状態で日を浴びると俺は急激な疲労感と睡魔に襲われるのだ・・・

今日はこのまま・・・・眠らせてもらうとしよう・・・

約束は約束だからな・・・・・・

俺が目を覚ますと見知らない部屋のベットに寝かされていた・・・装飾から言ってこの部屋の主は相当な階級にいる者だろう・・・

「あ、目が覚めた?」

そこには懐かしい顔があった・・・あれからはや二年半・・・前のあどけなさは少し残してはいるが、その顔は少女のものではなく大人の顔になっていた・・・可愛いから綺麗に変わっていた・・・

「お前がエレナなのか・・・?」

「うん、久しぶりね、リョウ。」

「ああ、その名で呼ばれるのは懐かしいな・・・しかし・・・」

「わかってる、ロキって呼んでいい?」

「そうしてくれ・・・」

「じゃ、ロキ。ごめんね・・・」

え・・・・?何故、お前が謝るんだ・・・?

「私知らなかった・・・あなたがこんな事になっているなんて・・・本当になんて・・・謝ったらいいのか・・・」

また彼女は半泣きだ・・・ったく・・めんどくせぇなぁ・・・

「謝る必要なんてないから、泣き止んでくれないか?泣かれると困る・・・」

「ご、ごめん・・・・う、・・・うぅ・・・

必死に我慢しているが多分、もたないだろうな・・・

「いや、前言撤回・・・好きなだけ泣けよ・・・」

それから彼女は本当に泣き始めた・・・・容赦なく・・・

ちなみに俺の体は人間に戻っている・・・

「これを返しにきたんだ・・・」

彼女が泣き止んだ後に俺はあのリボンを渡した。

「ありがとう・・・私の事忘れないでくれたんだ・・・」

そっちこそ・・・・・しかもまた半泣き状態だよ・・・・・

「わりいな・・・ベット汚しちまったな・・・俺汚れているから・・・」

「ううん、気にしないで・・・それよりもこれからどうするの?」

「お前を襲う為にになるって言ったらどうする?」

「え?」

ついついからかってしまったが少し、外してしまったか・・・

俺の悪い癖だ・・・可愛い奴にはいじわるをしたくなる・・・

小学生レベルだな・・・俺の頭も・・・

「・・・いいよ・・・」

は?今、こいつ何て言った・・・

「いいよ・・・・ロキとならあたしは・・・」

しかも、そっちと勘違いしてるし・・・

「わりぃ・・・今の冗談だから・・・」

「え?え・・・?」

本当にそんな事したら俺はあんたの兄貴に殺されるよ・・・

「さてと・・・俺は帰るよ・・・」

「え?どこに・・・?」

「どこかにさ・・・大丈夫、これからは真っ当に生きていくさ・・・あんたは兄貴と一緒に幸せにな・・・」

そう、今の俺では君とは釣り合わないだろう・・・それにアバジェスが神王の座を蹴ってまで君と一緒にいたいと言ってるんだ・・・それを邪魔したくは無い・・・アバジェスは間違いなく他人の為にこの世に貢献したのだから・・・

「ねぇ・・・ロ、ロキ・・・あの・・・私は・・・」

「じゃあな・・・」

俺は最後まで言わせずに部屋から飛び出した。

「ま、待って!!」

エレナが慌てて追いかけてくるが俺は持ち前の素早さで突き放して城から脱出した。

俺は遂に夢を果たしたのだ・・・

 

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