第二章

 

死神のメシアの誕生〜

 

EDENNEUEの創始〜

俺が神皇を滅ぼした時

双子の妹ルシファーが

人間として生き人間として死にたいのだと言い出した・・・

理由は分かっている、ルシファーは未来を見る事が出来るからだ

ルシファーが人間として生きたいと言った理由は二つ・・・

一つは神界で出会ったタクトという男との再会だった・・・

もう一つはいずれ生まれてくる妹と会いたかったからだ。

タクト・マイヤーズ・・・・

ルシファーにアプリコット・桜葉という妹を教え

ルシファーをミルフィーユ・桜葉と呼んだ男だ・・・

そしてタクトは俺を殴った男であり、

俺の代わりにルシファーを守ると言った男だ・・・

俺を初めて負かした男だ正直に言うとあの負け方は屈辱だった・・・

俺がこれからどうするかはマスターの指示書の内容で決まる。

それはルシファーの望む事を第一に叶えて、そして、いずれ復活する神皇を倒せとの事だった・・・残念だが俺だけでは神皇(混沌)は倒せない・・・

それは真の絶対者 因果律が今だに神皇の存在を認めているからだ・・・

否、全ての起源である、大気(マナ)が無限に発生する・・・

いわば無限のエネルギーの貯蔵庫・・・

それが混沌

それは魂が生まれ魂が帰る所でもある。

正でもあり負でもある。

光でもあり闇でもある。

未来でもあり過去でもある。

まさに全ての起源・・・混沌・・・

しかし、混沌には意思が無い

しかし、全ての起源を消してしまうのを惜しんだ因果律はそこで、そこに一つの意思を持つ者意思の極限・・・人間を置いた・・・それが神皇だ。

しかし、神皇はこの世を滅ぼすだけの失敗だった・・・

そこで因果律は新たなる意思体を探した

混沌に宿らせるのではなく混沌に一時的にアクセスし混沌を扱う者を知恵を持つ者を・・・

それが構築者 黄龍・・・

その化身が竜王 アバジェス竜姫 エレナだった・・・

混沌の神皇は馬鹿だったので己の力を使う術をあまり知らないのだ・・・

万が一、神皇に構築者並みの知恵がつけば

俺でも歯が立つ相手ではなくなる・・・

いや、その場合は因果律が神皇を認めるだろう

しかし、アバジェスは混沌の力・・・創造力を駆使する内に

混沌に侵されていった・・・そこで因果律はまた探した。

神皇に代わり混沌を制する者を・・・

因果律にこれからの道を示す者を

それは

進化を求めて変化する世界で生き抜く奇跡の体現者

不変を求めて安定した世界を維持していく完全の体現者

のどちらかの一つだ・・・

体現者、もしくはそれに選ばれそうな者を候補者と言う。

そして

奇跡の体現者完全の体現者

己の理想を懸けて戦う

勝利した方の理想郷がこれからの世界へとなる・・・

もう、因果律がリセットしない(やり直さない)世界が始まる。

そして二つの体現者の勝負が始まるのには条件がいる・・・

それは混沌を倒す事である・・・

混沌を超える者、混沌を制御した者こそが

因果律が求める強き者だからだ・・・

それは一人でも協力してでも構わない・・・

しかし、神皇は混沌の意思体である故に

トカゲの尻尾切りで“混沌の海”へと逃げてしまう・・・

先代の奇跡の体現者 クソ親父 ロキ

先代の完全の体現者 マスター・アバジェス

手順を間違えた。

混沌を倒す前に戦いあってしまったのだ。

原因は

混沌完全の体現者に仕立て上げたアバジェス

わざとロキにぶつけるように仕向けたからだ・・・

それがあのフィノリア陥落事件だった・・・

故に混沌は逃げてしまった・・・

過去か未来へと・・・

故に方法は一つ

アバジェスの後継者である俺と

今だに現われないロキの後継者が

奇跡の体現者完全の体現者が協力して倒すしかない。

正確に言えば

シャイニング・サンオメガ・ブレイクで挟み撃ちにすると言う事だ。

奇跡の体現者が未来への扉を閉め

完全の体現者が過去への扉を閉めて

神皇の逃げ道を塞いでしまうのだ

奇跡の体現者である筈のルシファー

今だに因果律から“刻印”を貰っていないのだ。

刻印は因果律の生存をかけた勝負に出る事を命じられた者

つまりは因果律に候補者として認められた者に与えられる

体現者の性質を現した刻印なのだ。

それはルーン文字で表記される。

つまりは因果律はルシファー

奇跡の体現者とは認めてないという事だ。

こいつがシャイニング・サンが使えないという事でもある。

今の状況ではいずれ蘇る神皇は倒せない・・・

結論から言うと奇跡の体現者を作り出さねばならない・・・

そこで、俺はまず、奇跡の体現者だったったロキのクローンを造ろうと思った・・・マスターから構築者の力を授かった俺にならどうと言う事の無い作業だった・・・

ところが、ルシファーの要望がうるさかった・・・

タクトとそっくりの男がいいと言ってきたのだ。

これがタクト・マイヤーズの誕生だった・・・

しかし、タクトはEDENが完成するまで起動はしない・・・

気にくわないが、それがルシファーの要望であり

ルシファーの要望第一と言ったのがマスターだからだ。

思えばこの時点でルシファー運命の輪から抜け出せてはいない・・・

何故なら、これから創造する世界は

タクトルシファーに話した世界を“忠実に再現する”のだから・・・

それは俺の所に現われたタクト・マイヤーズ

前の俺が送って来た者だったからだ・・・

だからこそ俺は今度こそ

この運命の輪から抜け出さなければならない・・・

そして、俺はルシファーと分離した。

世界(宇宙)を創造するのには無限に近いエネルギーが必要であり

構築者は材料を仕入れる為に混沌アクセスしなければならない・・・

だから、万が一の為にルシファーを切り離しておいたのだ。

万が一混沌に侵食された時の為に・・・

これが間違いだったのかもしれない・・・

創造する世界はタクトの話により二つだ・・・

まず一つ目がEDEN・・・

EDENの宇宙を創りそこに生命体を放ち時々サポートしながら成長していくのを見守る・・・

そして、二つ目のNEUE・・・

そしてその創造の時にそれは起きた・・・

混沌の海の中にいた神皇に気付いたのだ。

無理もない・・・EDENを創るだけのエネルギーを混沌から引っ張り出したのだ・・・馬鹿な神皇でも気づかない訳が無い。かつてアバジェスに侵食したみたいに・・・巣にかかった獲物を捕食しに迫ってくる蜘蛛のように・・・神皇が俺に迫ってくる・・・

俺はアクセスを中断し、神皇から逃れられた。

(とこの時は思っていた・・・)

エネルギー不足の為・・・

NEUEの創造は事実上不可能に近い・・・

かと言って中止にする訳にもいかない・・・

そこで俺は頭を捻った・・・

そこで思いついたのは俺の過去の力

ルシファーと一つになった時に感知できる並行世界だった・・・

それは因果律にアクセスして開ける並行世界への扉

それが本物のゲートだった・・・

そこで俺はルシファーと再び一体化して並行世界へ赴いた。

しかし、並行世界への介入は因果律ですら慎重になるほどリスクの大きい作業だ。

原則的には過去を変えてはならないのだ

厳密に言えば神界の過去を変えてはならない。

俺がエレナを救うわけにはいかない・・・

ロキとアバジェスが死ぬのを止めてはならない・・・

何故ならそんな事をすれば俺は構築者でも無くなり、完全の体現者でもなくなる・・・

因果律にも修復困難な事態になるからだ・・・

俺が赴いたのは神皇に焼き尽くされたロキの世界だった・・・

完全な無に返す俺の____クは世界という概念すら消す。

それに対して神皇のビッグ・バーン直接的に無まで焼き尽くす爆発だ。

それはあくまで死滅という形で消すわけではではない。

無になった空間・・・宇宙という容器は依然として残っている・・・

ただし、そこにはもはや何も残ってはいない・・・

エネルギーを消費せずにかつての生命体を呼び戻す方法はただ一つしか俺には残っていない・・・それはこの宇宙の時間を巻き戻す事だ・・・

神皇に焼き尽くされる前までの世界に・・・そして、俺はNEUEの時間を巻き戻した・・・しかし、巻き戻した世界はEDENに比べると文明力が低すぎた・・・

万が一、“外宇宙の連中”などが攻めてくれば再び滅ぼされるほどに弱かったのだ・・・

そこで俺は何人かの魔法使いを配置した。外敵への牽制としての役割の為に・・・

残る問題はタクト達がどうやってここに来るかだ・・・

並行世界へのアクセスは俺とルシファーが力を合わせても頻繁にできるような事でもない・・・

悪ければ因果律に危険物とされ排除されてしまうだろう。

ならば、残る方法は一つ・・・

俺の持つ過去の力でここにこらせる事だ・・・

それはNEUEをEDENの前の時代に配置する事でもある・・・

もちろんそれは俺ですらできはしない大変な作業だ。

そこで俺はルシファーの持つ未知の力に頼る事にしてみた。

この馬鹿女の運に・・・ルシファーと俺は願った・・・因果律に・・・

ひたすら・・・ただひたすら・・・そして、因果律は渋々、それを叶えてくれた・・・

ただし、因果律は一つの条件を出した

それはNEUEの世界の時間を一万年に一度巻き戻せとのことだった・・・それは仕方の無い事だ・・・

タクト達がNEUEに介入してNEUEを変えれば未来のEDENもいずれは変わってしまう・・・そうならない為には辻褄合わせが必要だった・・・

つまり、NEUEの時間が絶対に巻き戻るという事になれば

EDENはその後の世界だという事にできるのだ・・・

NEUEEDENの絶対の過去の世界・・・

EDENから過去へ向かうのは俺の力を用い・・・

EDENNEUEの絶対の未来の世界・・・

NEUEから未来へ進むのはルシファーの力を用いる。

そして、俺とルシファーの力を配給する

本物の並行世界のゲートの複製品・・・

時の化身の俺達の力を用いた

絶対の過去絶対の未来へと繋がるゲート・・・

それが・・・

絶対領域の扉

こうして、二つの世界は機能を開始した・・・

俺は世界を復元する事に成功した・・・

そうして、マスターの指示に従い、神界の住人をクローンニングしてEDENに解き放ったのが現代だ・・・・

ルシファーミルフィーユ・桜葉として転生する日だ

この馬鹿女が人間として生き、人間として死ぬ日なのだ・・・

俺は既に、タクトカズヤなどを世界に放っておいてある・・・

指示書にはタクトが奇跡の体現者になるまでは絶対にルシファーとしてのタクトへの想い出を思いださてはならないと書いてあった・・・

理由はタクトの成長の為だとの事だった・・・

そこで俺は転生の際にルシファーの記憶を封印する事にした

ルシファーは完全な赤子となり、ミルフィーユとして生きていくのだ・・・

桜葉家を配置して

そこにロキエレナが住み、転生した馬鹿女を預けた

俺はその日からレイ・桜葉して名乗る事になった・・・

これも指示書にあった事でもある。

つまりレイ→零→0だという事だ・・・

ルシラフェル→ハデス→レイ・桜葉

・・・本当に出世魚のような名前だと思った・・・

 

俺はトランスバール本星へと来た。

もちろん、今更、真正面から入れる立場では無いのでマスターにポートを開いてもらい一気にワープして来たって訳だ・・・

マスターの担当する人事部の人間はみんな、俺達の協力者だ。

腐りきった皇国軍の中で唯一残った聖地と言えよう・・・

「桜葉大将、任務復帰おめでとうございます。」

「ああ・・・」

俺は軽めに協力者達との挨拶を済ませて通路の奥にあるマスターの元へと向かった・・・

至って質素な造りのドアを三回ノックした。

「入れ・・・」

俺は丁寧にドアを開けた。

この服を着ている時は俺はマスターの部下なのだ。

「お久しぶりです・・・マスター・・・」

「うむ、よく来てくれた・・・レイ・桜葉。」

この部屋にはマスターと俺しかいない・・・

盗聴器など探知機など使わなくても察知できる・・・無論立ち聞きしている奴も・・・

「・・・マスター、申し訳ありません。」

俺はマスターにそう言うと気配と足音を消してドア近づく。

もちろんマスターも気が付いている・・・

俺がドアを開け放つとそこにはジーダマイヤー小将がいた。

「な!?」

ジーダマイヤーの顔が驚愕に変わる・・・

「立ち聞きとは恐れ入るな・・・」

「!」

 

ジーダマイヤーに成りすましているが目の色を変えた。

出世したいのは分かるが、命あってのものだろう?」

俺がそう言うとそいつはあっさりと逃げていった。

「マスター・・・追いかけますか?」

「いや、下手に追跡して神皇が出てきたら厄介だ・・・」

「了解しました・・・」

俺は用件を聞く事にした。もう、内容はほとんど分かっているのだが・・・

「マスター、始めるのですね・・・アレを・・・・」

「いや、まだアレには早すぎる・・・神皇に察知されて潰されたら元も子も無い・・・タクト候補者に選ばれるまで待て・・・」

「出すぎた発言お許し下さい・・・」

「いや、いい・・・今日来てもらったのはコレだ。」

アバジェスが俺に見せたのはパイロットの候補者だった・・・

既に六人が抜粋されている・・・

「・・・GAシリーズのパイロット達を選ぶのですか?」

「そうだ・・・」

「何故です?量産紋章機達は全て俺のアルフェシオンの命令で動きますよ。」

「念の為だ・・・相手が神皇ならいつ何があるかわからないだろう・・・?」

「・・・失礼しました。」

「ふふ・・・そうやってすぐに謝るのは桜葉家の遺伝だな・・・」

俺はマスターの能天気な指摘にため息をついた。

「マスター・・・からかうのは止めてください。」

「ははは・・・悪かった・・・」

俺は気を取り直して机に並べられていたガキの写真に目を通した。

「見たところこのGA−006のパイロット以外は全員、女みたいですが・・・」

「指示書にも書いていただろう?私達はタクトの言った通りにこの世界を動かさなければならない・・・」

「マスター・・・ならば我々の前にタクトを送り出したのは・・・?」

「・・・それは考えてはならない矛盾だ。それは“因果律のみ”知りえる事だ・・・私達には一生かかっても分からないだろう・・・」

「・・・そうですね・・・」

「本題に入るがお前に頼みたい事がある・・・・」

「何でしょうか?」

「今回、唯一のアンフィニ搭載機 GA-006の機動実験をしなければならない・・・それにクロノ・ストリング・エンジンでは混沌に立ち向かう時には役不足だろう・・・インフィニならともかくアンフィニはあくまで複製品だ。故に、限界領域での性能が分からん・・・こればっかりは動かして見ないと私にも分からない・・・」

「なるほど・・・それでこのGA-006の烏丸雅人を保護、もしくは勧誘しろと言う事ですか?」

「ほう・・・よく分かったな・・・」

「さっきの屑を見れば分かりますよ・・・マスター・・・神皇が帰ってきたんですね・・・」

マスターは黙って頷いた・・・

 

そうして、俺は今、反政府軍と交戦に入っている

烏丸 雅人率いる部隊の元へ来ていた・・・

戦場は砂漠地帯だった・・・俺が一番嫌う地形だ・・・

烏丸 雅人の部隊は忙しそうに次の戦闘の準備をしていた。

「・・・烏丸 雅人ってのは誰だ?」

俺がそう呼びかけると一人の28ぐらいの男が

俺の方に近づいてきた・・・

「私が烏丸 雅人だが・・・君は誰だ?」

「俺は____の命令を受けてここに援軍しにきた・・・正確にはあんたのボディガードだがな・・・」

俺は階級は隠す事にした・・・むやみに皇国軍の大将が来たなどと敵に知られると厄介だからだ・・・だから戸籍が至って不透明な俺がここに派遣されたわけだ。

「き、君みたいな若い女性が?

「はぁ!?」

俺はポカンと口を開けてしまった・・・

「・・・まさか・・・男なのか?」

「・・・一発、殴らせろ・・・!」

俺は本当に強烈なストレートを叩きこんだ・・・

これが戦友 烏丸 雅人との出会いである

「・・・失礼した・・・」

気絶していた雅人はしばらくしてから目を覚まして俺に謝った。

「顔の事には触れないでくれ・・・大体声で分かるだろう?」

ちなみに俺は何度もこの顔を作り直そうと思ったのだが指示書には顔を作り変えてはならないと書いてあるのだ・・・何故ですか?マスター・・・

「それで敵の詳細は?」

俺はさっさと質問に入る、ちなみに俺は傭兵としてここにきている・・・俺の行動はまさに傭兵そのものだ・・・

「敵の名前はシナ・・・反政府勢力の中ではもっとも過激な連中だ・・・戦場から逃げようとした兵をも殺す集団だ。」

「そのシナの要求は?」

「トランスバール皇国の指揮権の移譲だ・・・」

「敵の主な活動は?」

「皇国に賛同している各国家を襲っては自国の領土を広げようとしている・・・」

「なるほど・・・」

なんとも典型的な戦闘集団だろうか・・・

戦争とは自国を守る為に行われる行為だ・・・自国を豊かに、もしくは自国に迫る侵略から自国を守る為に自国を強化する為に他国を侵略して占領する・・・

始めに戦争を知らないガキ共に言っておく。

平和の反対は戦争ではない・・・

「連中の在籍している国家は?」

「ハルノートだ・・・」

ハノルート・・・厳戒な徴兵制を用いている国家で皇国も一目置いているほどの軍事力を持っている・・・

「兵のほとんどは強制か?」

「いや・・・潜入していた工作員からほとんどが志願兵だと聞いている・・・」

「なるほど・・・素晴らしい国家だな・・・そして、手強い敵だな。」

「ああ・・・」

戦争を知らない馬鹿共に言っておく・・・

平和の反対は混乱だ。

自国を侵略などの混乱から自国を守る・・・

その為には自身を鍛え上げ、戦場で発揮しなければならない

それがその国で暮らす者の使命だ

使命とは果たさなければならない・・・

ただ、単に税金を納める消費者ならその国から去れ。

そんな自分を受け入れてくれる国を探し続けるがいい。

戦う勇気の無い者に与える資源は無い。

我々はいずれ神皇という天敵と命を張って戦わなければならないのだ。

死ぬのが怖いから、痛くて苦しいのがイヤだから弱者のままでいいと思うのならそいつにはこれから生きる価値は無い。

何故なら弱者は強者に守られている・・・

自分を弱者と言われたくなければ自分の身を犠牲にしても戦い続けろ・・・

それこそが強者、因果律が求める者だ。そこに正義などというまやかしはない。

強き者が生き残る・・・それだけだ・・・そうでなければ国家は滅びる・・・

全部の生き物が仲良しこよしでいける訳が無いのだ。

自称正義の味方共よ、この俺の信念に文句があるのなら

自分が暴力社会の中でいかほどにたちまわれるのかを考えろ

武器を持って攻め込んでくる敵に口で対抗するのならしてみればいい・・・

銃口を頭に突きつけられても言い続けられたのならそいつは本物の馬鹿だ。

自分の体力の限界をまず知るがいい・・・

野生の世界では老いた者、体が動かない者は容赦なく喰われると言う事を忘れるな。その為に捕食という概念が我々にあるのだという事を・・・

俺は弱者では無い・・・俺の守るべき家族は皇国にいる・・・

皇国は正義の国ではない・・・

しかし、俺は皇国で生きている者なのだ・・・そして、俺には正義などいらん・・・

正義が戦争を否定している時点で誤っているのだ。

ならば、相手が何であろうと駆逐するのみだ・・・

俺から国を守りきれなければそいつ等が弱者だという事だ。

命を奪う方と命を奪われた方にも責任があるのだ。

「それでこちらの兵力は?」

「面目ない・・・最近、便衣兵に奇襲を受けてしまい、今ではほんの十数名だ・・・」

「・・・・・・」

便衣兵とは農民や女子供が扮装している兵の事だ。

攻撃をしてこない者達に奇襲をかけてくる兵だ。

俺は、烏丸の下にあった便衣兵の報告書に目を通していく・・・

「・・・・・・この報告書は本当か?

これが本当ならば・・・俺は・・・

「ああ・・・命懸けで生き残りが届けてきてくれた・・・そしてそいつは死んだよ・・・本当に面目ない・・・」

なるほど・・・俺の考えは決まった・・・

「なるほど・・・確かに面目ない・・・だが・・・」

俺には許せない事がある・・・

一つ・・・そんなものに引っ掛かった間抜けな兵だ・・・

「俺はそんな奴等が一番嫌いだ。相手がそのつもりで来るのなら俺はそいつ等を皆殺しにしてやろう・・・便衣兵などという小細工ができなくなるようにな・・・」

「おい、何もそこまで・・・」

「奴等の一味がすでにこちらの兵を殺しているのだ・・・国を守ろうと参加した兵をえげつなく奇襲で殺してな・・・」

二つ・・・勝つ為に手段を選ばない戦士気取りのガキ共だ。

「お前等はここで待機していろ・・・今から俺が仕掛ける。」

「馬鹿な事を言うな!」

「一つ聞かせろ・・・この部隊の人間は志願兵か?」

「あ、ああ・・・」

「・・・それだけで十分だ・・・俺は傭兵だ・・・何かあっても誤魔化せばいい・・・」

「お、おい!待ってくれ!ならば、せめて・・・私も・・・」

「・・・あんたちとせていう子供がいるんだろう?」

「・・・ッ!なんでそれを・・・」

「・・・俺は____の命であんたを守りにきたんだ・・・それくらいは調べておくさ・・・軍人が真に守るものは家族だ。家族を守る為に国の秩序を守るんだ・・・それを忘れるなよ・・・後、絶対にここから動くなよ・・・敵は一匹たりともここにはこらせん・・・」

俺は雅人に敵の資料を貰う・・・普段ならそのままやってもいいのだが今回はそいつ等を一人も逃がしたくはなかったのだ。                                      

「お前達はこんな下種共に殺されていいような兵では無い・・・」

そして、俺は強者の数を減らした弱者共を・・・

戦士を気取ったガキ共を制裁にいく・・・

俺はその為にここに派遣されたのだろう・・・

敵は自分達の集落の真ん中に要塞を構えている・・・

その上で集落の住民が自分達が武装集団とは無関係などと言うのはふざけている・・・それは敵とこちら側の両方に向けて言った・・・烏丸 雅人はお人よし過ぎる・・・

マスター・・・俺は今作戦の為に禁じ手を使います。

阿部陰月流の禁じ手を・・・

この勇敢な兵達を守る為に・・・

俺は久しぶりに制裁者に戻ります・・・

 

俺は集落(農村)の入り口付近に広がる畑まで来た。

畑にはたくさんの男、女、子供、老人達がいる。

そして、今より、ここは地獄と化す・・・

こいつ等が全員便衣兵(ゲリラ)である事は確認済みだ。

俺の眼は欺けないぜ・・・ガキ共・・・

俺は数々のトラップを抜けながらここへ来た・・・

奴等にもそれが分かっている筈だ・・・俺は堂々と要塞へ向かっていく・・・

目の前からニコニコとした若い女が近づいてくる。

若くて美しくても俺には関係無い・・・

このクソガキ共は一人として生かしては帰さん・・・

戦争を知らぬ者達よ聞くがいい・・・

戦争に参加する者達が死の恐怖にどうやって耐えているか知っているか?

それは英気だ。

家族に見送られて・・・

その家族を守る為に命懸けで戦うのだ・・・

この高揚感は戦争を体験した者にしか分からない・・・

本で見たとしても分かるまい・・・

命より大切なものを信念と知れ・・・

俺の魂の振分けの優先度は信念→命→プライド→欲望の順だ

家族の元へ帰る日を夢見て・・・

誰も戦いたい訳ではない・・・しかし・・・この世は戦って生き残っていかなければならない世界だからだ。

弱者なら戦地に赴く事すらしまい・・・

だから、俺はそんな勇敢な志願兵達が何より好きだ・・・

己の身をかえりみず、国を、家族を守ろうとする者をそれでも貴様等は笑うか?

それでも貴様等は自分だけを守りたいか?

蛮勇だなんどと言うのならばその国から出て行くがいい・・・

自分の身だけは必死に守るのだろうからな・・・

俺に言わせれば自分だけが大事な者に生きる資格は無い・・・

だからこそその英雄達をだまし討ちにしたこのカス共が許せない・・・

俺の血が騒ぐ・・・もう止められない・・・

お前等にも同じ恐怖と屈辱を与えてやる・・・

お前等を制裁する・・・

俺に若い女が近づいてくる・・・その背後に青龍刀を隠して・・・

ふ、ふふふ・・・自分が先にバラバラにされるとも知らずに・・・

さぁ・・・俺に貴様等の魂を見せてくれ・・・

俺は女が刀を振り下ろす前に両手首を跳ね飛ばした・・・

女は悲鳴を上げ、周りの者達が注目する・・・

見ておけ・・・これが貴様等達の未来だ。

俺は悲鳴を上げる女の喉を断ち切り空気を震わせられないようにする・・・

そして、女が落とした青龍刀を拾い上げ、倒れ付して逃げる事もままならない女を1秒間の間に66回切り裂きサイコロステーキにしてやった・・・

最後に女の頭を拾い上げそれをサッカーボールにのように蹴り飛ばす。

女の頭が粉々に砕け散った・・・

俺を非難する前に言っておく・・・

これはこいつ等が奇襲をかけた皇国の英雄達にした事だ

ふふ・・・無論、蹴り飛ばして頭が砕けたのは予想外だったがな・・・

それが烏丸に命懸けで報告をした

今は亡き英雄達の生き残りの最後の報告だった・・・

それでも俺を悪と称するのなら勝手にしろ

反論をしたいのなら仲間を募って勝手にするがいい・・・

そんなガキといつまでも付き合っている暇はない。

これが挨拶代わりだ・・・

お前等にも同じ事をしてやるという宣言だ・・・

しかし、奴等は一向に俺に襲い掛かってこようとしない・・・

頭にきた・・・どうやら、この状況下で私は無関係ですから見逃してくださいと言っているのだ・・・

一番遠くにいた奴等が逃げようとする・・・

もちろん逃がすわけが無い・・・

こういう事には神界にいた頃に慣れている・・・

俺は逃げようとする者に砕け散れと命ずる。

そして逃げようとした者達は一人残らず砕け散った・・・

これで分かったか?一人も逃がさないという事が・・・

この俺の事を報告する事はさせない・・・

何故なら阿部陰月流の極意は

陰月流の技を見た者は必ず殺せだからだ・・・

暗殺者は決して見られてはならない・・・

暗殺者は目撃者を討ち損じてはならない・・・

何を思ったか・・・連中は地面にへばりついて

俺に頭をさげだした、涙ながらに・・・

これは本心のようだ・・・後でやり返してくる気配も無い・・・

だからと言って俺は見逃さない・・・

人を殺した者は殺されても仕方ないって知らないのか?

やられたらやり返すって事を知らないのか?

俺は頭を下げている奴等を次々とバラバラにしていく・・・

こいつ等が降参した英雄達を虐殺したように・・・

戦争を舐めるなよ・・・ガキ共が・・・

追い詰められた奴等はようやく戦う気になったみたいだ・・・

もしくはヤケになったか?

俺は少しだけ考えたこれから放つ禁じ手は対域だ

格闘術の古牙陽輪流が対人なら

暗殺術の阿部陰月流は対域だ。

奴等の中には子供もいる・・・俺は最後まで迷っていた・・・

しかし、こいつ等はそこにつけこんでくる・・・

子供に罪は無い?

従わないと親に殺されるからか?

・・・・・・・

しかし、報告書によると親が殺した英雄達の生首をサッカーボールにして遊んでいたのは子供達だ・・・

なら迷う事は無い・・・

「こ、この死神め!」

連中の誰かがそう言った・・・

その通りだ、俺はお前等に対しては死神と化すさ・・・

本当は制裁者なのだが・・・

奴等が銃を手に取る前に俺は禁じ手を放った・・・

そして、一人の残らず連中は切り刻まれる・・・

一人残らず手を足を切断した・・・もはや奴等は何もできまい・・・

辺りに響く絶叫・・・しかし、周りには届かない・・・

何故ならこいつ等がそういう所に構えていたからだ・・・

烏丸陣営まで届かない悲鳴・・・嗚咽・・・

自分達の武器が自分に降り掛かってくる気分はどうだ?

奴等は止まらない気を狂わせるほどの激痛に苦しみいずれ出血多量で死ぬだろう・・・

よく聞け・・・こいつ等のように人を残虐に傷付けられる者は

その痛みを知らない・・・知らないから傷付けられるのだ・・・

痛みを知らぬ者は、こいつらと同じようには振舞えない・・・

俺は例外だがな・・・

さて、ここを見られる訳にはいかない・・・俺は今度は本気で禁じ手を放った・・・

今度は全員残らず肉塊と化した・・・放った技は・・・

阿部陰月流 禁じ手 裂叫殺・・・・

簡単に言えばかまいたちの嵐だ・・・もちろん人間には真似などできはしない・・・阿部陰月流を名乗れるのは現在二名マスターとこの俺だけだ・・・

おそらくこの事は見張りが気付いている筈だ・・・

俺は奴等を逃がさない為に疾風の如く集落と要塞に駆ける辺りはパニックだ・・・その元凶はこの俺だ・・・だが、知った事ではない・・・

便衣兵などというくだらないものをつくりあげた者達には死んで償ってもらおう。

それをとめられなかった者にも・・・

これは戦争ではない・・・

これは制裁だ・・・

俺は逃げていく者に姿を消して近づき殺していった・・・

お前達に俺の姿は捉えきれない・・・

 

ブラック・アウト

 

もはや、外には生存者は一人もいない・・・

集落の家にも生存者は一人もいない・・・

残るは要塞の中だ・・・

俺は要塞に引き込んでいる電気の高圧線を二本切断してそれを念動で動かし、違う線同士を接触させた。

スパークを散らし短絡する電力線・・・

今頃は短絡継電器(高電圧用のスイッチ兼警報)が働き、中の動力、照明は機能を停止しただろう。

ここには非常電源設備すら無い・・・

この要塞の責任者は資金不足かただの馬鹿だろう・・・

何故、要塞ともあろう所が地下から引き込まないのか?

ただし答えは一つある

あの便衣兵でやり過ごしていくうちに自信をもったのだろう・・・

こんな奴等の為に皇国を守るべき英雄達は

こんな奴等の為に消費されたのだ・・・

・・・戦争を舐めるなよ・・・ガキが・・・

 

その頃、マスターの部屋にはリョウがいた。

「・・・どう見る・・・?」

二人の男は先程のレイの惨劇をモニター越しに見ていた。

「あの馬鹿が・・・」

「ちなみに俺がこうやって覗いている事も奴は知っている・・・」

「・・・・・・」

「・・・本当に恐ろしい奴だよ・・・」

「いや・・・あいつは完全主義者だ・・・故にすぐに決め付け癖がある・・・即決即断は確かに完全だがな・・・」

「・・・・・・」

「しかし、それでは明鏡止水の域にまでいけない・・・」

「あいつは確かに完全な軍人だ・・・しかし、そこには愛情というのが欠如している・・・

あいつはそれを知らずに今まで生きてきたんだ・・・故に、本当の手加減を知らない・・・妥協する意味を知らないんだ・・・つまりは両極端だと言う事だ・・・」

「あいつは、一つ一つの事に極限まで極めてしまう・・・ひたすら一生懸命に極限まで計算してしまう・・・相手の心理までな・・・」

それがタクトレイの違いだな・・・

タクトはそこそこに考え、結果的には本質を見抜く・・・

しかし、レイは最後まで計算してしまうから

結局、理屈ではない所が見えなくなるんだ・・・

「それ故に明鏡止水の域にまでいけない・・・

常に計算・・・雑念が振り払えないからな・・・」

「それが二人の勝負の決定的な差となるか・・・」

「勝つのはタクトさ・・・」

「やれやれ・・・」

マスターは肩をすくめて椅子を回転させて

モニターからリョウに振り返った。

「もう一つ予想外の事が起きたのに気付いているか?」

「予想外の事?」

「はぁ・・・お前の娘はいつからあんなに運のふり幅が極端になったんだ?」

「・・・ッ!」

ルシファー運は普通だったよ・・・ルシラフェルもな・・・」

「・・・ま、まさか・・・」

「あの二人が一つになり、ラグナロク・・・今のアルフェシオンに乗って神皇を滅ぼした・・・そして・・・二人はEDENNEUEが創造された後に分離して・・・今に至る。」

「・・・・・・」

それ以降、ルシファー=ミルフィーユの運のふり幅は両極端になり、それに対してルシラフェルの運のふり幅は限りなくゼロに近くなった・・・その為により完全の体現者への適性値が高くなり本人もそれを目指している・・・」

「分離する時に何があったんだ?」

「わからん・・・ただ・・・予想できるのはあいつNEUEを創ろうとした時に因果律に何かを願ったのかもしれん・・・」

「あの馬鹿・・・まさか・・・偶然というものを消し去ろうとしてんのか?」

「確証は無いが、あいつが真の完全の体現者になろうとしているのなら予想はできる・・・」

「あのガキ・・・!その為に、自分の運のふり幅をミルフィーに預けたのか・・・!」

「そして、その代償ルシファーが持っていた捕食への嫌悪感を受け持った・・・」

「あのガキが・・・いきがりやがって!!」

「にしても親子は似るものか?まさに、昔のお前そのものだ。」

「・・・喧嘩売ってんのか?」

「いや・・・言い方が悪かったな・・・あいつはああ見えて内心は優しい・・子供まで殺すのは今回が初めてだ・・・」

「・・・内面も腐っていると思うがな・・・」

「真面目な話だ・・・よく思い出してみろ・・・我が阿部陰月流は暗殺術・・・

静かに目立たず、気付かれずに相手を仕留めるのが極意だ

「・・・・・・」

「分かっているだろう?陰月流は相手を一撃で仕留めるのが原則だ・・・」

「・・・ああ・・・」

「にもかからず・・・完全のあいつが何故一撃で仕留めなかったのかが気になる・・・」

「・・・本来、裂叫殺は一撃必殺だ・・・しかし・・あいつは・・・」

「まるで、痛ぶって殺して行った・・・楽には死なせないと言わんばかりの殺し方だ・・・あいつらしくない・・・」

「これはあのクソ野郎の殺り方だ・・・」

リョウの眼が殺気立つ・・・

「・・・最近、考えていたんだが・・・混沌が宿った者には独自の波動が漂う・・・俺のようにな・・・

この男には過去に混沌にとり憑かれてフイノリアで凶行をしでかしてしまった経験がある・・・

「俺はレイにクローニングされて以来混沌の波動をずっと探していた・・・しかし・・・EDENにもNEUEにもそれは感じられない・・・」

「手短に言え・・・」

「俺が今だに底まで見れていないのはレイだけなんだ・・・」

「・・・まだ・・・決まったわけじゃねぇだろう・・・」

「現実を見ろ・・・とり憑かれた者は自覚がないんだ。それに、レイの戦い方はお前が一番知っている筈だ・・・」

「・・・もうすぐ・・・リコが産まれるんだぞ・・・

「覚悟を決めろ・・・いざとなれば俺達はあいつと戦わなければいけない・・・」

「・・・またしても混沌に!」

ロキは歯軋りをして拳を握り締めた・・・

 

は・・・要塞の中に隠れていたガキ共を始末して・・・

辺りに散乱した肉塊を掃除する事にした・・・

俺は力を解放する・・・闇の牢獄へのアクセスを開始した。

そして、俺は散乱した肉塊をタルタロスへ送り込んだ。

ガキ共の魂と肉体は永遠に牢獄の中を彷徨い続けるのだ・・・

ざまあみろ・・・

 

俺は烏丸の所へ戻っていった・・・

連中が消えたという事が分かると・・・

連中は俺を賞賛した・・・当たり前だろう・・・

俺が来なければ彼等は殺されていたのだから

彼等は口々に叫ぶ・・・俺を

メシア

救世主

と・・・制裁した連中は俺を死神と称したのだがな・・・

(ふ、ふふふ・・・死神のメシアか・・・お前達もいずれ俺に殺されるとも知らずに・・・

かくして俺は烏丸 雅人をマスターの元へと連行した。

 

〜混沌に呑まれる者

 

「話は以上だが引き受けてくれるか?」

マスターは雅人にこの世の仕組みと

神皇の存在を教えたのだが・・・

「・・・さっきの話は本当なのですか?」

雅人は今だに完全に信じられないでいるらしい・・・

無理もないか・・・はたから聞けばただの危ない奴だろう・・・

俺たちが紋章機のテストパイロットにさせたい為に俺達が壮大な嘘をついていると思われても仕方が無い・・・しかし・・・

「雅人・・・信じてくれ・・・神皇は、いずれここに攻めてくる・・・その時になってからで済む相手じゃないんだ・・・」

俺は雅人の“目を見て”お願いした・・・

「・・・・分かりました・・・その任務・・・お受けいたします・・・」

「協力感謝する・・・・烏丸大佐・・・それではレイ・・・大佐を紋章機のところまで案内してやれ。」

「了解しました・・・マスター・・・」

そう言って俺は雅人の手を持って・・・相転移した・・・

「・・・あの眼を自分から解放するとはな・・・もはや、混沌に呑まれるのは時間の問題か?」

GAシリーズの紋章機はここ白き月に全て保管してあるのだ。

「あ、あんた・・・本当に人間じゃないんだな・・・」

「・・・あんたはやめてくれ・・・俺はレイ・桜葉だ・・・」

「・・レイ・桜葉・・・分かった。」

俺はGA−006のコックピットに雅人を誘導した・・・・。

雅人は間違いなくGA-006イグザクト・スナイパーに適したパイロットだった・・・通常、紋章機とは女にのみに心を開く・・・

何故なら・・・選ばれたパイロット達は皆・・・ルシファーが転生する間際に因果律に願った仲間・・・天の使い・・・なのだから・・・

故に紋章機に乗れるのはルシファーが選んだ天使のみだ。

ならば・・・烏丸 雅人を天使に選んだのは誰だ?

そうか・・・俺だったんだな・・・

俺は戦友を・・・仲間を欲しがっていたんだな・・・

しかし、それでは完全の体現者としては失格だ・・・

 

トランスバール暦 402年 7月7日・・・

 

そして、3ヶ月間にも及ぶ起動実験が終わった時

雅人が俺にこれからの事を尋ねてきた・・・

ちなみに実戦用エンジン アンフィニの量産がこの時、確定した・・・

「レイ・・・俺達はブラウド財閥という奴等の尻尾を掴めばいいんだな・・・?」

「いや・・・ブラウド財閥の監視だ・・・奴等を本気にさせない程度にな・・・」

「なるほど・・・」

「まだ、GA−007のパイロットが現われるまでは俺達は神皇を完全に滅ぼす事はできない・・・アルフェシオンだけでは無理だったんだ・・・逃げられてしまうんだ・・・」

それを聞いた雅人は何を思ったか、俺の肩に手を載せて

「阿部准将から話は聞いてるよ・・・もうすぐ、新しい妹が生まれたんだろう?・・・」

俺の頭にもう一匹の馬鹿女が暴れる様子が蘇る・・・

「イヤァァァァァーーーー!!」

「おわ!びっくりしたな・・・」

「す、すまない・・・」

「んで・・・様子を見に行かなくてもいいのか?」

「妹はもうあの馬鹿一人で十分だ・・・」

「ん〜・・・妹や子供ってのは案外、お前の予想をつくかもしれんぞ?これは娘をもつ俺の考えだが・・・」

すでにあの馬鹿女に振り回されているよ・・・

「そんなに綺麗な顔をしてるんだから・・・結婚相手もすぐに見つかるさ・・・その不気味な仮面さえ外せ・・ブッ!!」

俺のストレートが雅人に炸裂した。

「顔の事には触れるなと言った筈だぞ・・・」

「すまん・・・」

新しい妹についてはあの馬鹿女がつきっきりで見ているらしいし、・・・これはあいつが望んでいた事だ・・・

それにあの時の俺は妹などに興味は無かった・・・

ここで気付くべきだった・・・

無限のループが終わっている事に・・・

運命の結末が変わっている事に・・・

メビウスの輪が変わっている事に・・・

歴史はもうループをせずにただ進むだけになっているこ事に

はこの時に気付くべきだった・・・

 

俺はGAシリーズの微調整の為に白き月の最深部にこもりきっりだった・・・ここに入れるのは建造者の俺とマスターの二人のみだ・・・そんな日が続くある日の事・・・

 

運命の日がやってきた・・・

 

「父さまと死神のメシアが戦友だったなんて・・・」

「はい・・・桜葉大将が指揮する独立部隊メシア隊はTOP SECRETでしたからね・・・皇国の中でも知っていたのは阿部部長とその一味の者のみでしたから・・・」

「メシア隊・・・」

「主な作戦内容は紋章機の試運転を兼ねたブラウド財閥の監視です。ブラウド財閥は常にEDENへの接触を図っていましたから・・・」

「ちょ、ちょっと待て!ブラウド財閥はNEUEにあるのだぞ!」

シヴァはごく当たり前な指摘をした・・・しかし、クロミエは残念そうに頭を横に振った。

「・・・彼等の商売相手は外宇宙ですからそんなのは動作も無い事でしょう・・・」

「その外宇宙とは・・・?」

「いいですか?ミントさん、我々EDENの民から見ればNEUEのような別の宇宙だとお考え下さい・・・」

外宇宙・・・」

「そして外宇宙は必ずしも友好的な者では無いという事も知っておいてください・・・」

「・・・つまりは、侵略者でもあると・・・?」

「そうです・・・リリィさん・・・かのヴァル・ファスクも外宇宙からの使者なのです・・・」

「な、何!?」

「外宇宙は神皇の管轄とは違うのです・・・彼等の創造主までは存じませぬが、神界戦争の後で、彼等は生まれたばかりのEDENに幾度も侵略を試みてきたのです・・・そしてあの方はそのたびにアルフェシオンに乗って外宇宙の部隊を撃退してきたのです・・・

「アルフェシオン?あの黄金の紋章機は?」

「黄金の紋章機はルシファー様が眠りについた後でGRA−000通称アルフェシオンとGRA-001エクストリームに分裂したんです・・・」

「エクストリームってアルフェシオンを倒したっていう・・・」

「そうです・・・カズヤさん・・・そしてあの方が外宇宙を撃退までで見逃していた事が後に最大の悲劇を招く事になります・・・そして、その時からあの方は死神のメシアとなられたのです・・・そして、それはあなたに関係があります・・・リコさん・・・

クロミエの悲しそうな目がアプリコットの目を捉えていた。

「え・・・」

「そしてシヴァ様・・・ここからはあなたにとってとても辛い話になります・・・」

「かまわぬ、申せ!」

「・・・クロミエ・・・後は私が代わろう・・・」

「・・・っ!?」

入り口から一人の男が入ってきた・・・金髪の男が・・・

俺も含めて全員がその男の気配に気付かなかったのだ。

「ア、アバジェス!?」

「阿部殿!?」

俺とシヴァ女皇の反応は違っていた・・・

「伯父さん!?どうしてここに!?」

そして、どうやらリコにも面識があるらしい・・・

「タ、タクト・・・アバジェスってお前が話していた。」

「ああ・・・神王 アバジェスだ。」

全員に緊張が走る。

相手は第一級神であり、あの死神のメシアの師なのだ。

しかし、リコやシヴァ女皇はそれどころでは無いようだ。

「阿部殿!これは一体どういう事だ!あなたが神王 アバジェスだと言うのか!?」

「伯父さんが皇国軍に所属していたなんて聞いてないですよ!」

「二人共、お、落ち着いてくれ・・・」

阿部はまぁまぁと二人をなだめると、俺の方に向かってきた。

「久しいな・・・タクト・マイヤーズ・・・」

「あ、あなたは・・・生きていたのか?」

「いや、俺はエオニアと同じようにクローニングされて蘇がえらされたんだよ・・・」

「あんたも死神のメシアの仲間なのか?」

「ああ・・・でも俺達は皇国軍を助ける為に動いてきた・・・そしてこれからも動いていく・・・」

「何を言うか!この諸悪の根源が!」

リリィが剣を抜いて、アバジェスに突きつけた。

「リリィさん!止めてください!その人は私のお母さんのお兄さんでつまり伯父さんなんです!!」

アバジェスはリコに手で構わないと合図をした。

リリィは当然の如く、アバジェスの喉元に剣を突きつけた。

全員に緊張が走る・・・

「・・・お前は昔もそうやってリコにも剣を向けたな・・・」

「そんな事までお前には報告されているのか?」

「そんな事はどうでもいい・・・それよりもお前は戦士か騎士か?」

喉元に剣を突きつけられてもアバジェスはまったく動じない・・・

「私は騎士だ!」

「ではお前は剣士か?」

「当たり前だ・・・さっきから何が言いたい・・・?」

「・・・安っぽい剣だな・・・セルダールの質もおちたな・・・」

「貴様・・・陛下を愚弄する気か?」

「そうだ。お前みたいな馬鹿を側近に選んでいる時点で奴も馬鹿だ・・・それに人間如きの王がいかほどのものか・・・」

「あ、阿部殿!口が過ぎるぞ!」

「すいませんが、少し黙っておいて下さい・・・」

阿部がシヴァの方を軽く見詰めるとシヴァは口にチャックをされたように口が開けれなくなってしまった・・・

「おい!アバジェス!!」

さすがの横暴ぶりに俺もアバジェスに詰め寄ろうとするが。

「タクト・・・邪魔をするな・・・この馬鹿に剣士というものがいかなるものかを徹底的に教えてやらねばならん・・・それに邪魔をするのならお前でも容赦はしない・・・」

・・・俺と戦った時もコイツは絶対的に有利な状況でありながら俺にわざと負けたのだ・・・おそらくアバジェスは本気だろう・・・

「さて・・・リリィ・C・シャーベット・・・お前の剣とは何だ?このように問答無用で剣を抜くのか?」

「相手が邪道ならばな・・・」

「痴れ者が・・・恥を知れ・・」

次の瞬間、アバジェスがリリィの剣を二本の指でつまんだ。リリィが剣を動かす間も与えずに・・・

「ぬ!?う、動かせない・・・」

「・・・人間ごときが腕力でこの俺に勝てる訳がなかろう・・・」

遂にはアバジェスはリリィから剣を取り上げた。

「く・・・」

「聞け・・・三流剣士よ・・・本来、剣とは守る為に使われるものだ・・・決して、脅迫したり、相手を牽制する為に使われるものではない・・・剣は自分から抜くものではない・・・剣を構えた相手が出た時に抜くものだ・・・」

アバジェスはそう言うとリリィに剣を返した。

「一流の剣士ならば、必要以外に剣は抜かない・・・相手の動きを牽制するのに抜いたのであればそれは二流だ・・・そして脅迫目的に使うのであればそれは三流だ・・・」

「・・・・・・」

「お前の欠点は真っ直ぐすぎて肝心なものが見えない・・・それでは最後まで二流のままだ・・・それでいいのならばこれからも剣を抜け・・・俺は一流のつもりだから、お前みたいに安っぽく剣は抜かない。」

「ぬぬ・・・」

「どうやら頭では理解しても、体が納得をしきれないようだな・・・仕方ない・・・」

アバジェスは左手にリリィと同じ剣を召還した。

全員が信じられないようなものを見た顔になる。

だが、俺は驚かない。アバジェスは元とは言え、構築者だ・・・

「ならば、体にも理解させてやる・・・こい三流・・・」

「ほざくな・・・!」

「やめろ!リリィ!」

リリィがアバジェスに斬りかかった!

「上官の命令も無視か・・・子供だな・・・」

アバジェスはリリィの剣をスウェーだけで避わしていく。

「く・・・!」

リリィに焦りの表情が浮かんでくる・・・

「強き者に挑むのはいい事だ・・・しかし、殺し合いのつもりならば、ただの命知らずだ・・・」

リリィを焦らせているのはアバジェスの技量だけではない。

アバジェスが発している圧倒的な威圧感だ・・・

俺も味わったのでその凄まじさはよく理解している・・・

次の瞬間、リリィののど元にアバジェスの剣が突きつけられていた。

「話しにならん・・・剣技の競い合いでは無い・・・動体視力で負けているようでは俺には勝てない・・・」

そう言ってアバジェスがリリィの喉元に突きつけていた剣を消すとリリィは剣を落として、膝をついた。

「リリィ!?」

「今一度、おのが剣に問い正すがいい・・・失礼しましたシヴァ様。」

アバジェスはシヴァに向けて人差し指を横にひいてかけた呪術を解いた。

「さて・・・クロミエに変わって俺が続けよう・・・もっとも詳しい事までは聞いてはいないのだがな・・・」

アバジェスは語り出した・・・

 

俺は月の聖母シャトヤーンの元へ向かっていた・・・

その間に俺を止めに入った警備の者をどうしたかは覚えてないが・・・俺の姿が血塗れだった事は覚えている・・・

そして、シャトヤーンの寝室へと向かった・・・

(止まれ!止まれ!止めろ!止めろ!止めろ!止めろ!)

もはや近くには生きた者はいない・・・

悲鳴を上げる間も無く・・・俺が殺した・・・

俺には動作も無い事だ・・・くっくっくっくっ!!

見張りにはジーダマイヤーとヘルメスがついている

俺が部屋を開け放つとシャトヤーンがいた・・・

俺の姿を見るなり、目を見開いて体を震わせている・・・

「ハッピーバースデー♪愛しの培養人間さん♪20才のお誕生日おめでと〜♪」

「あ、あなたは・・・」

「俺?あんたの創造主だよ♪」

「わ、わたしに何の用ですか?」

「分かってるんじゃねぇの?あんたは転生を繰り返す・・・

いや・・・クローニングされ続けられている皇国のアイドルか?

それを犯して犯して犯して犯して犯し続けたら俺も有名人の仲間入りだよなぁ・・・くっくっくっく・・・あはははっははははははははっは!!ひゃーっはっはっはっはっはっはっはっはっ!」

「・・・ッ!」

俺に恐怖する・・・人造アイドル・・・いいねぇ・・・そそる・・・

が壮絶な運命に耐えられるようにEDENに与えた

最高のロスト・テクノロジー・・・!

このEDENで最高の人形だ!

 

(動け!動け!動け!動け!動け!動け!動け!動け!)

「あ♪いい事を思いついたぞ!とっても面白い・・・ゲームをなぁ・・・!!

おい、人形・・・お前、エオニアって知ってるよな?」

「・・・ッ!!」

「あはははは!そうだよなぁ?お前等、両思いなんだろ?

いいねぇ・・・麗しき愛の形だぁ・・・

壊しがいがある・・・こういうのを壊すのがたまらなく面白い!

「まぁ・・・俺は殺し愛が一番好きなんだが・・・」

俺は人形に眼を見せたさまざまな色に変わる混沌の眼を・・・

ってプレゼント忘れてた・・・

「これ、誕生日プレゼント、産地直送だ♪」

俺はシャトヤーンの足元に護衛の女の生首を投げつけた・・・

一番いい奴を選んだ。きっと気に入ってくれるだろう・・・

「・・あ・・・ああ・・・!」

人形の精神は限界だ・・・しかし、壊れるのは後でもできる・・・

今しか味わえない味を味わおう・・・本能の赴くままに・・・!

俺は金縛りになって動けない人形へ近づいていく・・・

(誰か俺を殺せ!俺を殺せ!俺を殺してくれーーー!!)

「ああ・・・先に言っておくけど、お前が逃げたらこの宇宙にいる者達を全員・・・人間であろうが動物であろうが植物であろうが機械であろうが・・・全員、全員!全員一人残らず生爪を剥ぎ眼を耳を潰して内臓を引きずり出して手と足を食いちぎって、頭を砕いて脳をバターにして小さい心臓に塗りたぐって焼いてから喰ってやる・・・全員が死んだら俺が再び蘇らせて延々と続けてやる・・・これは俺の愛情表現だ・・・愛すると書いて殺し愛だよ・・・くっくくくっくっくっくっく!あはははは・・・あははははは!AーHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA−−−ー!!」

(どこまでも腐った奴め・・・!フィノリアだけでは飽きたりないのか!?)

本能に惑わせられながらも理性にしがみつく人間共は特に愛してやる!殺し愛してやる!殺し愛してやる!!殺し愛してやっるっるうぅぅぅぅぅーーーーーやらぁ!!!」

シャトヤーンの目から涙が・・・くっ!負けてたまるか・・・!!

「さぁ・・・ぐ!!」

俺の姿をしたの動きが止まる・・・

「・・・に・・・げ・・ろ・・・」

搾り出すようなレイの声・・・

あん!?舐めてンのか!?

レイだからこそ、ここまで出来たのだ・・・今、彼は全ての起源に対抗しているのだ・・・

「・・・に・・・げ・・ろ・・・あ・・べ・・の所へ・・・行け!」

あ?あははは!おもしろい!捻り潰してやる!!

しかし、シャトヤーンは呆然と俺を見つめている・・・

何をしている!早く逃げろ!!この馬鹿が!!

シャトヤーンは手を開いて俺に向かって笑いかけた・・・

好きにしろと言っているのだ!

「ふざ・・・けんな・・・!あ・・き・・ら・・めるな・・!」

いや、あきらめろよ♪

「い・・ま・・なら・・俺を・・・殺せる・・・はや・・・く・・・!」

シャトヤーンは首を横に振って服を脱いでいく・・・

何で・・・何で・・・あきらめるんだよ!?

そして・・・やがて・・・俺の限界が訪れ・・・

「うほほ♪さぁ・・・男を教えてやるぜ・・・人形♪」

が・・・俺がシャトヤーンに襲いかかった・・・

三文芝居の始まりだった・・・

薄れゆく意識の中で・・・

「お?七回目にしてようやくヒットか!やったぜ♪これで心置きなく楽しめるぜ♪」

なんて聞いた気がする・・・

 

〜絶望〜

 

俺が目を覚ますとそこには行為独自の匂いが充満していた。

ムアっとした暑苦しい空気だ・・・

好きじゃない・・・

首が自分の意思とは別に横に向けられた・・・

シーツは乱れところどころに血が飛び散っている・・・

そして、寝転がっているシャトヤーンの体の節々には痣の後がある。

俺はまだ、こいつに乗っとられているらしい・・・・

(よう、おはよう・・・)

耳障りな声が響いてくる・・・

安心しろこいつは生娘だった・・・だから生かしてやる・・・あ、間違えたこいつはまだまだ利用させてもらうぜぇ・・・)

お前を殺してやる・・・

(あははは・・・!できるものならな♪

俺は制裁者ではない・・・俺は死神だ・・・

(どうぞ、お好きに♪)

背後からノックの音がしてくる・・・

「神皇様・・・___とヘルメスでございます・・・」

「入れ・・・」

が俺の声で二人を招きいれる・・・

そこに入ってきたのはジーダマイヤーの姿をした___とヘルメスがいた・・・

お前等も殺してやる・・・この俺がな・・・

「神皇様・・・これからのシナリオも予定通りで?」

「そうだ・・・俺の姿をジェラールに合成しておけ・・・若い男よりもジジィに犯されたとなれば、エオニアも黙ってはいまい・・・後、この人形の中のガキの事も教えてやるんだ・・・・

「は!」

「ジェラールとジーダマイヤーは処分したのか?

「はい・・・だからこそ私がこうしているのです。」

「ふ・・・上出来だ・・・ヘルメス・・・GA−006は奪還したか?」

「はい・・・パイロット共々・・・」

「パイロット烏丸 雅人は名誉の戦死としておきました・・・」

雅人・・・すまん・・・

「いいねぇ・・・グッジョブだ!」

「神皇様・・・そろそろブラウドへ戻らねば・・・」

「分かっている・・・しかし、もうしばらく遊ばせろお前等はエオニアに反乱を促せ・・・」

「は!お任せ下さい・・・」

そう言って二人は出て行った・・・

「これから・・・面白くなるぜぇ・・・ルシラフェル・・・俺は少し引っ込む・・・その間にその人形で遊んでな・・・もう中古だけどよ・・・まだまだ使える余地はあるぜ・・・」

そう言うとどうやら体が思い通りに動く事になる・・・

俺は既にする事を決めていた・・・手にダインスレイブを召還してそれを心臓に突き刺した。しかし、痛みだけで意識は遠のかない・・・

(あ、そうそう、言い忘れてたけどお前が死のうと思っても何度でも俺が蘇らせてやるからな・・・)

俺はその後何十回自分を殺そうとしただろうか・・・

マスターロキのように・・・

やがて、俺があきらめてしまって放心していると

隣のシャトヤーンが目を覚ました・・・

「・・・う・・・ん・・・ッ!」

シャトヤーンが苦痛に顔をしかめる。無理もない・・・彼女の唇は切れて出血している・・・

「・・・あなたは・・・」

シャトヤーンが俺の顔を覗き込んでいる・・・

お前が俺を殺せるというのなら俺を殺してくれ・・・

しかし・・・シャトヤーンは何故か・・・俺に笑いかけていた・・・

狂っているのではない・・・俺に微笑んでいるのだ・・・

悪意はない・・・こいつの心には光が今だに残っている・・・

俺はそれが理解できず、激怒した!

「この馬鹿野郎!何で笑ってやがるんだ!!」

そう、昨日も・・・

「・・それは、嬉しいからです・・・」

「な、舐めてんのか・・・!!」

もしかしたら俺はシャトヤーンに八つ当たりしているのかもしれない・・・

「・・あなたが今、泣いているからです・・・そして、昨日も・・・

だからあれ以上・・・貴方が苦しむのを見たくは無かったんです」

は?イマコノオンナハオレニナンテイッタ

「さっきの貴方の行為と、今の貴方を見れば大体の察しがつきました・・・」

オマエ・・・スベテミテイタノカ・・・?

それはオレあいつのどちらの言葉だろうか?

「だから、貴方は気に病まないで下さい・・・」

「・・・しかし・・・お前はエオニアと・・・」

「はい・・・でも・・・今は貴方の事が気になってしょうがありません。」

「同情は止めろ・・・!!」

「違います!私は・・・あなたの・・・」

俺はそこから飛び出そうとした・・・しかし・・・

「くっくっくっ!言っておくが・・・エオニアが来たらその手を払いのけるんだぜ?さもないとお前等全員皆殺しにしてやる・・・」

「・・・ッ!」

俺とシャトヤーンが息を呑む・・・

こいつは・・・・

そして、俺の体は皇居へと向かっていた・・・

そして・・・

 

トランバール暦 403年 5月5日・・・

二番目の妹 アプリコット・桜葉が誕生した・・・

 

皇居へ住み着いてから数ヵ月後、ジェラールに扮した俺に侍女らしきものが詰め寄ってきた・・・

「陛下!エオニア様に見せたあれは一体なんの真似なのですか!?」

「あれとは何の事だ?シェリー・・・」

ジェラールは白々しくシラをきった・・・

「よくもそのような事を・・・!」

女の名前はシェリー・・・エオニアに仕える侍女のエリートだ。

シェリーの体が怒りで震え出す・・・

「フン、侍女風情が・・・分もわきわえぬ犬が・・・八つ裂きにするぞ・・・?もはやエオニアのアイドルは純潔を失った・・・今ならシャトヤーンの美しさと比べると1ランク下のお前の容姿でも奴を慰める事もできるぞ?」

「・・・ッ!」

「この偉大な皇王に感謝しろよ、私は二流のお前にもチャンスをくれてやったんだ・・・むしろ感謝しろよ・・・くっくっくっくっ!」

「きっさまあぁぁぁぁーーーーー!!」

完全に激怒したシェリーが腰の短刀を出そうとした瞬間!

奴の手刀がシェリーの左頬をざっくりと深く切り裂いた・・・

一気に吹き出る彼女の鮮血・・・・

「−−−−!−−−−!!」

激痛にのたうちまり、声にならない悲鳴をあげるシェリー・・・

「せいぜい頑張れよ・・・二流・・・ぺっ!」

はうずくまるシェリーにツバを吐き掛け高笑いをあげながら

俺の体を使って寝室へと向かった・・・

そして、数年後

トランスバール暦 407年 6月6日・・・

エオニアは復讐の鬼と化し反乱を起こすが失敗した・・・

しかし・・・はエオニア達を追放しただけで終わらせた・・・

いや・・・奴はそんな生易しいキチガイではない・・・

「エオニアに黒き月と接触させろ・・・システムはすでに構築済みだ・・・」

「はい・・・仰せのままに・・・」

エオニアを奮い立たせ、反乱を画策したジーダマイヤーは今はこの俺、ジェラールの姿をした俺の元にいた・・・俺の体はいっこうに奴の成すがままだ・・・

今回のゲームはきっと面白くなるぞ・・・」

「同感であります・・・意外と成りすますというのも面白いものですね・・・・」

「はっはっは!違いねぇな!!」

馬鹿笑いを続けるジェラール・・・

俺の絶望の日々はまだ続いていくみたいだ・・・

 

「う、嘘だ・・・」

シヴァは目を見開いて体を震わせていた。

「・・・もう、お分かりでしょう・・・シヴァ様、レイ・桜葉はあなたの父親です。

「そ、そんなのデタラメに決まっている!」

「デタラメではありません。あなたには一目でレイの娘だという事を証明できるものがあります。」

「それはなんだ!?」

「それはです。その目はレイから受け継いだものです。シャトヤーン様にはそのような目はございません・・・その目は竜の眼と呼ばれるものです・・・」

「竜の眼・・・?」

「私にはもうありませんが、竜の力を受け継いだものははっきりとその眼が現われます・・・本来その眼を持つ者には膨大な魔力が宿ると言われています・・・」

「でも、何故母上は・・・」

「それはレイから口止めされていたからです・・・あの事件の後、レイは己の戸籍を全て抹消しました。そして、ジェラールとして動かされていたのです、神皇によって・・・」

「俺達の敵は神皇という事だな・・・」

「その話をする前にどうしても言っておかないといけない事がある・・・リコ・・・今度はお前に関係してる事であり、レイが死神のメシアになった最大の理由でもある・・・

 

トランスバール暦 408年・・・

「アバジェス・・・レイの様子はどうだ?」

「・・・神皇が抜けた後は物の抜け殻でまさに酒に溺れる毎日だ・・・あんな事の後だから・・・・無理もないか・・・」

「やれやれ・・・まるで昔の俺だな・・・・」

神皇に指名手配扱いにされたアバジェスこと阿部准将は白き月の最深部に隠れていた・・・

「しかし、いつまでもこのままという訳にはいきまい・・・・

神皇はエオニアを利用して大騒動を起こす気だぞ?」

「だが・・・このままタクト達が勝ち残り、タクトが奇跡の体現者に選ばれるまでは我慢するしかない・・・分かるだろう?またトカゲの尻尾切りをされてはかなわん・・・今度こそ神皇を滅ぼす・・・・」

「・・・わかったよ・・・しかし、絶対領域のヘパイストス(製造所)に残してあるGRA−001はどうするんだ?あれはミルフィーレイ揃わないと回収しにいけないぞ?」

「・・・そうだな・・・もう、時間もない・・・・ロキ・・・荒療治だ・・・」

「皇居の警備は厳しいぜ?」

「ふ・・・それは人間にとっての話だろう?俺達には関係ない。」

「やれやれ・・・久しぶりに盗賊家業かよ・・・」

「違う・・・俺達はカウンセラーさ・・・・」

 

皇王の寝室ではジェラールが呆然としていた・・・・ここには何人も近寄れない、近寄ろうとしない・・・・神皇の本能という名の誘惑の応用で人間は本能的に近寄ろうとしない・・・・

ジェラールはこの寝室の中だけレイ・桜葉戻る。今のレイ・桜葉にあるのはもはや絶望だけだ・・・今まで負けたことのないレイは今まで___に抗い続けた・・・しかし、抗っても___のゲームの準備を止める事はできなかった・・・・

人間を常に束縛するもの

・・・因果・・・運命・・・必然・・・

すべてのものには因果が存在する・・・それは必然だ・・・

人はその運命からは逃れられない・・・

これらは絶対の法則だ・・・

この因果律の世界においての絶対の法則・・・

因果律が定めたシナリオ・・・それは運命・・・

俺達はその運命の輪(メビウス・リング)を永遠にまわり続ける・・・

故に誰かがこの運命の輪を断ち切らなければ

世界はリセットを繰り返す・・・永遠に・・・

俺の悪夢は終わらない・・・

完全が絶対になれない理由・・・絶対を脅かす唯一の存在・・・

因果律の天敵・・・それは奇跡・・・俺には無いものだ・・・

この禁断の寝室に始めての訪問者が現われた。

「レイ・・・」

「・・・・・・」

ロキが寝室のベットに腰掛けているレイに話しかけた。

レイの顔にかつての覇気はない・・・

黙っているレイはまさにルシファーの顔と見分けがつかない

寝室の周りは空き瓶ばかり・・・誰も入れない為に

広い筈の寝室は空き瓶で埋まっていた・・・

「何やってんだよ?数年間もこんなところで・・・」

「・・・・・」

レイは何も聞こえてないように反応を示さない・・・・

「・・・妹が生まれた・・・アプリコットという可愛い娘だ・・・」

「・・・・・・」

この時のレイは後の最愛の妹にすら興味をしめさなかった・・・

「・・・後、シャトヤーンも娘を出産したぞ・・・名前はシヴァと名付けられた・・・シャトヤーンはお前を待ってるぞ・・・」

シャトヤーンの名前を出すとレイの体が一瞬震えた・・・

「・・・いつまでここでふてくされている気だ?」

「・・・・・・」

レイは一向にロキの方を振り返ろうとしない・・・

「お前なぁ・・・ミルフィーなんか本気でお前が旅行に出てると思い込んでいて・・・あの髪飾りを気に入って今でも色んなものを集めているぞ・・・それでも家に帰らない気か?」

「・・・・・・」

レイは相変わらず反応を示さない・・・

「ち・・・!」

その態度にしびれをきらせたロキはレイに近づいて・・・

「ほら!とっとと帰るぞ!」

その腕を強引に引っ張ってベッドから強引に立ち上がらせようとした

次の瞬間!

「・・・ッ!」

レイがロキの手を引き剥がした。

「・・・くっ!いい加減にしろ!このガキッ!シャトヤーンやエオニアを傷ついたのはお前が弱かったせいだ!だがな・・・だからってこんなところで腐ってもしょうがねぇだろうがっ!!」

「・・・ッ!!」

レイがロキの首を跳ね飛ばそうと左手でなぎ払った。

「・・・っつ!!」

ロキは間一髪でかわすが頬をざっくりと切られた。

「・・ってぇじゃねぇか・・・この野郎・・・!」

ロキがレイの眼を睨みつけた。

そして、レイの眼は真紅に変わっていた・・・

それはレイが戦闘態勢に入った事を意味する・・・

「・・・このガキが・・・・上等だぜ・・・・」

そしてロキの眼も黄金色に変わっていく・・・

これはロキが本気になった事を意味する・・・

二人が始めたのは勝負などではない

ロキはレイを倒すつもりで・・・レイはロキを殺すつもりで・・・戦っているのだ。

ロキは神界の英雄であのアバジェスをも凌ぐほどの格闘センスを持つと言われている最強の格闘家だ・・・そのロキが本気を出しているのにも関わらずロキは苦戦を強いられていた・・・何故なら敵がロキをも凌駕しているからだ・・・敵は計算の極限・・・その動きにはわずかな隙もない・・・

「チィ!」

レイの手刀がガードにまわったロキの手をざっくりと切り裂いた。ロキの体は鋼と言われた程の硬さを持っている・・・

しかし、羅刹と化したレイの前では何の意味もなさない・・・

戦況は修羅が不利であった。

アバジェスは結界を張っている為に援軍にはこれない・・・

レイは狼牙一閃を知っている為、手刀しか使ってこない・・・

ロキに遠心力を与えないように攻めてくる・・・

かつてアバジェスは自らの死を望んでわざと狼牙一閃を喰らった・・・しかし、今相手をしている第二のアバジェスはロキを排除する為に襲い掛かっているのだ・・・

「・・・負けるわけにはいかねぇんだよ・・・!」

血だらけになったロキは依然としてレイの目から目を離さなずにその動きを観察している・・・格闘の基本は相手の目を見て相手がこちらのどこを狙っているのかを探る事である。

「・・・家族が待っているんだよ・・・」

ロキは己の心を澄ませていく・・・勝つ為に・・・わずかな隙を見つける為に・・・格闘家の第一の終着点にして第二の出発点・・・それは明鏡止水の心だ・・・今のレイにならわずかな隙があるかもしれない・・・

レイが飛翔する、レイが放つのは陰月流 空蝉 時雨敵の死角の上から拳圧でロキは前転してレイに接近する。

レイが両手を交差させてかまいたちを引き起こしてロキを切り裂こうとしたが・・・

「馬鹿野郎っ!」

ロキがレイの足を抱き込んで地面に叩きつけた。

柔道の朽木倒しを応用したのだ。

そしてそのままサブミッションに持ち込もうとロキはレイの足を決めにいこうとするが、レイの起死回生のボディブローがマウントを取っているロキに向かって放たれた。

ドゴォッ!

そして、それよりも早くロキの右ストレートがレイの鳩尾に決まっていた・・・

陰月流に打ち勝つ為の陽輪流だって事を忘れたか?」

ロキは気絶したレイの横に横たわり荒い呼吸を繰り返した。

「はぁ・・はぁ・・・ったく手間取らせやがってこのガキが・・・」

 

俺が目を覚ますと車の後部座席のシートに横たわっていた。

「・・・俺は・・・一体・・・」

「目が覚めたか?レイよ・・・」

「・・・ッ!マ、マスター!?」

俺の隣に座っていたのはマスター・アバジェスだった。

「お、俺は一体・・・」

「コラ、このクソガキ・・・人を殺しかけといてそれはないだろうが・・・」

どうやらこの車を運転しているのはクソ親父のようだ。

「惜しかったなレイ・・・もう少しでお前の勝ちだったんだが・・・」

「オイコラ・・・」

「・・・?マスター・・・自分には・・・眠りに入ってから後の記憶が無いのですが・・・」

「マジかよ・・・」

ロキはステアを豪快にきりながら呆れていた・・・

そして、ロキの車がついたのは桜葉家だった・・・

ロキは二人を降ろして車庫に車を移動させにいった・・・

「マスター・・・自分は絶対者に負けてたくさんの者を傷つけ、殺めました・・・そんな俺が今更・・」

「・・・俺は神皇に負けたんだ・・・お前の場合は相手が絶対者だ・・・誰であろうが抵抗などできるものか・・・」

「マスターも分かっているのなら俺を皇居に戻してください・・・今の俺に再びあいつが憑依すれば間違いなくミルフィーを殺します・・・だから俺を皇居に戻してください。」

「悪いがそれは許可できん・・・もしミルフィーを殺しそうになったら耐えるんだ。それはお前の使命だ・・・その使命から逃げるな・・・

「そ、そんな・・・!」

「ふふ・・・相変わらず心配性だな・・・心配するな・・・俺とロキが万全の体勢でサポートする・・・だから戻ってやれ・・・妹達が待っているぞ・・・」

こうして俺は渋々桜葉家に戻る事になった・・・

 

「リコ・・・君は覚えてないだろうが、レイはその後で君と出会った・・・」

「私は・・・あの人と会った事なんて覚えていません・・・」

「それはそうだ・・・レイは君の記憶から自分の事だけを封印したんだからな・・・」

「ど、どうしてそんな事を・・・」

「・・・その前にカズヤ、君はレイから何か聞いていないか?」

「カズヤさん、何か知っているのならそれを教えて下さい!」

「・・・・・・わかったよ。」

メシアさん、すいません・・・リコが真剣に聞いているんです・・・

俺はあの事を話します・・・

「リコ・・・レイさんはもう長くないんだ・・・

「え・・・長くないって・・・」

「メシア・・・」

「今、あの人の中には神皇の血が流れていて定期的に・・・その・・・」

カズヤは言いづらそうに顔をしかめた・・・

「カズヤ・・・俺が代わろう・・・リコ。レイは定期的に君の血を摂取しないと神皇になってしまうんだ。

「え?」

「君には気付かないようにしていたが、レイは定期的に君の血を摂取してきた・・・しかし、その回数も最近は増えてきている・・・おそらくはもうすぐ、限界が近いのだろうな・・・」

「でも、どうしてあの人は私の血を・・・」

「・・・それは俺のせいだ・・・」

「叔父さん?」

「話そう・・・死神のメシアの誕生の真相を・・・」

 

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