第三章

 

ラスト・リヴェンジャー

 

〜正夢〜

 

「タクト・・・もうすぐだ・・・」

俺はどうやら、また例の夢を見ているらしい・・・

「ひたすら、ただひたすらにこの時を待っていた・・・」

「お前は一体何者なんだ・・・」

「俺?・・・くっくっくっ!もうすぐ分かる・・もうすぐなぁ・・・!」

「もうすぐ・・・?」

会いに行くよ・・・俺の愛するタクト・・・」

「会いに行く・・・」

 

 

事実上、本星に戻る事も叶わなくなったエンジェル隊達はゼイバー・ブラウドが指定したセルダールへと向かう前に紋章機の修理に着工していた。

着工して既に三週間近くがたっていた・・・

現在、運用可能なGA−002、005、006、RA−000,001、003の三機・・・

GA−001にはちょっとしたトラブルが起きて、動かなくなったのだ・・・

トラブルの原因はインフィニの制御回路の損傷だ・・・

アルフェシオンへハイパーキャノン発射した際に放出したエネルギーが膨大な量だった為にチップが焼き切れてしまっていたのだ・・・そして、インフィニはその特殊な機構の為に扱いを一つ間違えると宇宙一つが消えてしまいかねないので、アバジェスは大事をとって稼動の休止を決定したのだ。

「こ、これが、私のカンフーファイターなの・・・」

ランファは新しく生まれ変わった愛機を見て驚いていた。

「へへ・・・こいつには特に力を入れておいたぜ。」

ロキはカンフーファイターにコードが繋がれたコンピューターを弄くりながら、自慢げに語った。ロキはこう見えて、機械には強い方なのだ。

右翼、左翼にはエネルギーシールドが追加され、ボディには黄龍が描かれていた。

「一応、改良点を教えておくぜ。」

ロキは煙草を加えたままの顔で、ランファにコンンピューターを見るように促した。

モニターには新生カンフーファイターのヴァーチャル映像が映っている

「GA−002にはアルフェシオンと同じ、ステルス機能を追加しておいた。

ここからは他の機体と同じなんだがASフィールド発生器を取り付け、装甲もアルフェシオンのものと同じオリハルコンで作り直しておいた。この素材は加工は難しいが、軽量かつ頑丈だから今まで以上の接近戦が可能になったぜ。

「ほんと!」

「おうよ!しかもこのカンフーファイターには新武装が一つ追加されているんだ!」

ロキはそう言うとコンピューターのアクティヴと入力する・・・

するとモニター内のカンフーファイターがシュミレーションに入った。

「こんな風に敵のゼックイが現れたとするわな・・・」

カンフーファイターの前にゼックイが現れた。

「そこで、従来通りにアンカークローを撃つ!」

カンフーファイターのアンカークローがゼックイの装甲に食い込む。

「ところが、こんな風にゼックイの装甲が強化されていると、そこで意味が無くなるそんな時にこそ新武装の出番て訳だ。」

カンフーファイターが突如、画面から消えた。

いや、正確には半透明になった・・・

「こんな風にステルスで接近しながら、中距離ミサイルと交換した・・」

中距離ミサイルはカンフーファイターの下腹部にあったミサイルポッドの事だ。

「新しい武装“チェイサー”で切断しちまうってしれものだ!」

「ちょ、ちょっと!本当にこんなのが追加されたの!?」

「おいおい・・・これは、遊びじゃないんだぜ?」

「じゃあ、本当に?」

「ああ・・・正式名称 追撃用レーザーブレード・・・確かに取り付けたぜ。」

ロキは親指を立ててキラリと歯を輝かせた。

「すごい!すごーい!!」

ランファはロキの手をとっておおはしゃぎだ・・・

「うわっはっはっはっ!そうだろうそうだろう!」

そして、この5秒後に案の定、ロキがランファのお尻に触ってぶっ飛ばされたのは言うまでもないだろう・・・

それから、ロキが残りのメンバーへ機体の説明をしていた時だった。

「敵襲だ!修理の完了した機体は全機出撃しろ!」

アバジェスから敵襲の知らせが入ったのだ・・・

 

死神のメシア再び

 

僕をリーダーとしたエンジェル隊達は白き月の周囲で敵を待ち構えていた。

「カズヤさん・・・私、もう迷いません。」

「うん。」

リコの声には自信が溢れている・・・依然とは違うパイロットの心構えだ。

そして、それは僕も同じ事だった・・・

タクトさんが戦えない今は僕がタクトさんの分まで戦うしかないんだ!

(お〜お〜女が出来ると男って奴はこうまで見栄をはりたいのかねぇ〜くっくっく・・・)

「カズヤ!私達の指揮はあんたに任せたからね!」

「カズヤさん、ヨロシクお願いしますね。」

「はい!任せてください!!」

「・・・白き月は絶対に守って見せます・・・」

「ママ・・・」

現在、待機しているのは

クロス・キャリバー、ブレイブハート、ファーストエイダー、カンフーファイター、ハーベスター、そして、イグザクト・スナイパ−だ。

案の定、ロキのこだわりにより、脳波リンクシステムは天使の輪という形で継続されている・・・しかし、もはや天使のテンションが下がったからといってエンジンの出力が下がる事はない・・・テンションが上がれば上がるほど新生紋章機は強くなる・・・というより、これが本来の紋章機なのだがな・・・

「にしても、補給がいらないなんて嘘みたいね・・・」

ランファの頭に今までエネルギーに悩まされていた記憶が蘇った・・・

アンフィニ搭載機として生まれ変わった新生紋章機のエネルギーは無限・・・

そして、実戦用エンジンの最大の特徴とも言えるエネルギー出力の向上と位相調整の厳密化により、主力兵器とも言えるレーザー兵器の攻撃力の上昇・・・

後は、敵がどれほどの規模でくるかが問題なのだが・・・

そして、敵がようやく到着したらしい・・・

 

ギリギリ・・・カシャン、カシャン・・・

この戦闘機のコックピットからはギアーが回る音や、シリンダーが上げ下げする音がする・・・そして、パイロットの顔はひたすら嬉しそうだ・・・

 

「来るぞ!」

アバジェスがそう言った次の瞬間、前方より、比較的小柄な戦艦が多数、ドライブ・アウトしてきた。そして、アバジェスはその戦艦に見覚えがあった・・・ドライブ・アウトしてきた戦艦達はブラウド財閥の戦艦達だったのだ・・・

「やはり、ブラウドか・・・ちっ!」

ロキは煙草をすり潰しながら舌打ちをした。

「阿部殿・・・奴等は、一体・・・」

(妙だな・・・セルダールに来てもらいたいゼイバーが攻撃をしてくるのは明らかに不利だ・・・ここで、万が一俺達を襲撃したのが分かったらゼイバーの顔を潰す事にもなるし、セルダールに向かう前に俺達が倒れれば、ブラウド財閥が批難を浴びる事にもなりかねん・・・ゼイバーがこんな馬鹿な事をするとは思えん・・・

「阿部殿・・・?」

シヴァはアバジェスを怪訝そうに見上げる・・・

「譲ちゃん・・・どちらにしろ奴等が白き月を落とそうとしているのは間違いないようだぜ。見てみな・・・」

シヴァはロキに言われた通りにモニターを見ると・・・

「な!ゼ、ゼックイだと!?」

ゼックイ・・・ネオ・ヴァル・ファスクの量産タイプの人型戦闘機だ。

旋回速度に優れており、戦艦相手にうってつけの戦闘機であり、飛行タイプの紋章機に対しても有効な戦闘機でもある。

「そして、ゼックイの後ろに戦艦が一機潜んでいる・・・」

「え?」

 

仕掛けてくるのはブラウド以外に考えられない・・・なら、これはブラウド製のゼックイなのだろうか・・・しかし、見た目は何一つ変わらないんだけど・・・

「カズヤさん、見てください!」

「え?・・・あ、あれは!?」

ゼックイの群れの奥に戦艦が一隻あった・・・

「ラ、ランファさん・・・あれって・・・」

「嘘でしょ・・・」

ムーンエンジェル隊はその戦艦に見覚えがあった・・・

「いえ・・・見間違いではありません・・・あれはヴァル・ファスクの・・」

 

「阿部様!敵戦艦より、通信が入ります!!」

「・・・遂にスパイが顔を出すか・・・」

「スパイ・・・?」

シヴァが隣の阿部を見上げた時、モニターにシヴァも見覚えのある顔が映った。

「シヴァ陛下・・・それに阿部大将殿・・・お久しぶりです・・・」

モニターに現れたのはあのジーダマイヤーだった。

「ジーダマイヤー!?」

オペレータの中にもその顔を見知った連中がいたのかどよめきの声が上がっている

ジーダマイヤー・・・元、皇国第二方面軍の総司令を務めていた人物でその悪評は常に拭いきれない男だった・・・そして、この男はエオニアによるローム襲撃の際に生存が確認されずに戦死されたものだとされてきたのだが・・・?

「阿部大将では失礼でしたね・・・神王 アバジェス様・・・」

「いつまで、老人ぶるつもりだ?ゼウスよ・・・」

「ゼ、ゼウス!?」

ゼウス・・・十二傑集の長とされる神だ・・・

「これはこれは失礼しました・・・」

ジーダーマイヤーの姿が一瞬にして若い男の姿に変わった・・・

「それと、神王様に会いにきたのは私だけではございませぬ・・・」

そして、ジーダマイヤーの声も若い男のものへと変わっていた・・・

「神王様・・・お久しぶりです・・・」

そう言ってゼウスの隣に現れたのは・・・

「お、お主はロウィル将軍!?」

ロウィル将軍・・・かつてヴァル・ファスクのNo.2と言われた男で、こちらはヴァインの裏切りによって間違いなく死んだ筈なのだが・・・?

「やはり、お前も共犯だったか・・・アレスよ・・・」

「私は神皇様に従う者です・・・そしてロキ殿・・・お会いにかかれて光栄です。」

「俺は光栄じゃねぇがな・・・」

「それは残念です・・・私は拳神と呼ばれた貴方を尊敬していたのですが・・・」

「俺も残念だな・・・かつては軍神と呼ばれた男がここまで堕ちてしまったのが・・・」

「ロキ殿・・・」

「お、お主達が阿部殿が言っていたブラウドのスパイだったのか!?」

「はい、私は皇国に、そしてこちらのアレスはヴァル・ファスクで内政を操作しておりました・・・神皇様の命に従い、ブラウドの繁栄の為にと・・・」

「裏工作とはな・・・十ニ傑衆の質も堕ちたものだな・・・」

「はい・・・復讐鬼と化した貴方の手ににより、我が十二傑集も4人まで減りました・・・そして、十数年前にあの制裁者にヘルメスとアテナも制裁された為に残ったのは私とこのアレスのみとなりました・・・」

「良かったじゃねぇか、これで頂点から堕ちる事は無いだろう・・・

「はい、私ももはや十二傑衆の座に興味はありません・・・」

ゼウスは口元を楽しそうに歪める・・・

「あなた方をここで始末すれば私は神王になれますからねぇ・・・

「随分と大きく出たな・・・ゼウス・・・」

「私とて何の切り札もなくここに来たわけではありません・・・」

「ところでお前達はどうやってここ(EDEN)まで来たんだ・・・?」

もう一人のゲートキーパーですよ・・・我等専用のね・・・」

『もう一人のゲートキーパー・・・?』

しかし、ロキとアバジェスはその回答に笑った。

「・・・?何がおかしいのです・・・」

「ばーか・・・」

ロキは面倒くさそうに作業着の胸ポケットから煙草を取り出した・・・

「な、何!?」

ゼウスは大きく目を見開いた。

「切り札とかベラベラ喋っている時点でお前の底は知れているんだよ。」

ロキは煙草を咥えて続けた。

「お前じゃ話にならないから、怪我しない内にとっとと帰りな・・・」

ロキはシュボっとジッポーで咥えた火をつける・・・

「くっ!・・・ならば、底が見えるかどうかその目で確かめれば良いでしょう!」

ゼウスは通信をきった・・・

「子供か?あいつは・・・」

「お前は気付いてないかもしれんが、今の挑発はレイにそっくりだったぜ。」

「あん?」

「さて・・・仕掛けてくるな・・・」

アバジェスはカズヤ達に呼びかけた。

「エンジェル隊・・・敵を殲滅せよ・・・!」

 

『了解!』

 

カズヤ達の前方からゼックイと高速艦が接近してくる・・・

「にしてもロキさんも・・・相変わらずだなぁ・・・」

緊張しなければならないのに何故か緊張感が抜けてしまった。

「すいません・・・あんな父で・・・」

リコが謝ってきた・・・

「はは・・・リコの父さんだから我慢するよ・・・」

「本当にすいません・・・」

ちなみに、リコはロキさんが煙草を吸っている事に気が付いていない・・・

教えるべきかなぁ・・・と僕が考えていると・・・

「オラァ!無駄話してねぇで、さっさと指揮を取れ!」

「は、はいィ!!」

もしかして、今、言った事を聞いてました・・・?

心なしか声に殺気が篭ってるんですけど・・・?

「カズヤ・・・紋章機は確かにパワーアップしたが、ゼックイ達の操者であるロウィル将軍ことアレスは軍神と呼ばれた程の実力者だ・・・くれぐれも援軍に注意しろよ・・・」

「りょ、了解!」

僕は気持ちを切り替える・・・

敵の先兵との距離は86000辧ΑΑ

 

「リコ!ハイパー・ブラスターをMAXで!!」

「はい!!」

クロス・キャリバーの砲身にビーム粒子が充填されていく・・・

「そして、ちとせさん!アルテミスで、旗艦をお願いします!!」

「任せてください・・・」

ちとせはアルテミスの充填を開始する・・・

狙うのは敵の旗艦のブリッジ・・・

旗艦さえ落とせば、この戦いは終わる・・・

「ゼウス様・・・オ・ケスラを下がらせます。」

ロウィルはそういうや否や、旗艦を後退させていく・・・

 

敵の先兵との距離は80000km・・・

クロス・キャリバーのゲージレベルは既にMAXのギガにある・・・

「いきます!ハイパー・ギガ・ブラスターーー!!!」

クロスキャリバーの砲身から黄金色のビーム砲が発射された!

「で、デカイ!?」

「す、凄いのだ・・・」

初めて見た二人の反応は予想通りだった・・・

巨大な二連のビーム砲は敵の群れをあっという間に薙ぎ払い・・・

「・・・誤差修正よし!いけっ!」

ヒュドッ!と音を立てて一撃必殺の矢がオ・ケスラ目掛けて走っていく。

イグザクト・スナイパーとオ・ケスラの距離は約170000km

しかし、それはオ・ケスラのブリッジではなく砲台を貫通しただけだ。

「外れた!?」

 

「上手いな、即座に距離を開けた。それがコンマの差となり、直撃を避けられた・・・」

「アレスの強さはモノホンだからな・・・どこかに伏兵を忍ばせている筈だ・・・」

「奴の狙いは間違いなくタクトだからな・・・」

「ああ・・・」

 

一方、タクトはミルフィーユと共に部屋にいた・・・

「・・・俺の視力はいつ回復するんだろうなぁ・・・」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。」

「だと良いけど・・・」

「もう、タクトさん、最近何か暗いですよ?」

「ごめんごめん・・・」

あれほど、嫌いだった戦闘だったけど、今では戦闘に出れない事にもどかしさを感じている自分がいる・・・何でだろう・・・

そんな二人の様子を見ている者がいた・・・

(そう言うなよぉ〜カズヤの出番も必要だろう・・・?それに・・・心配しなくてもテメェの出番はちゃ〜んと後で用意してあるらよぉ〜・・・)

 

僕達は残存部隊との交戦に入っていた。

ゼックイの装甲は以前よりも強化されているらしくて、以前はフライヤーの一撃で撃破できたのに、今回は3撃ぐらい入れないと撃破できない・・・

「いいわ〜!この新しい武器最高〜!!」

ランファさんは例の新武装の追撃用レーザーブレード“チェイサー”を使って、ゼックイを確実に仕留めている。

「もう、エネルギーを気にする必要も無いのだ!」

ナノナノもちとせさんに近づこうとしているゼックイに目掛けてチャクラムタイプのレーザー兵器で確実に損傷を与えて、ヴァニラさんがトドメを刺している。

「今度こそ、守ります・・・!」

 

「・・・いけっ!!」

僕は12機のフライヤーを一機に三機ずつ配備して、ゼックイを蹴散らせて行く!

そして、その間にリコは残りわずかな戦艦をビームで沈めていく。

 

「アレス!このままでは・・・!!」

押されているゼウスは弱気だ・・・

「ご心配には及びません・・・これより、攻守が入れ替わります・・・」

「何だと・・・?」

「既に伏兵は奴等の近くまで到着しております・・・」

「ふ、ふは!ふははは!うわーはっはっはっ!!そうか!そうか!」

ゼウスは愉快そうに膝を叩いて喜んでいる。

 

死神は奮闘するカズヤ達を見ている・・・

(見つけたぞ。フェイト・・・)

 

(イメージ曲 ブレス・オブ・ファイア 后 ̄鵑じ討喟次

 

(タクト・・・俺を感じるか?)

「・・・っ!?」

今、俺の背中が凍りついた・・・

今の声は・・・あいつの声だった・・・

しかし、それは俺だけではなかった。

「タ、タクトさん・・・今、聞こえましたか・・・」

「え、え?」

「今、何と言うか頭の中にお兄ちゃんの声が響いてきました・・・!」

「ミ、ミルフィー・・・俺もだよ!」

「タクトさんも!?」

 

僕達は敵の部隊をほぼ壊滅させて、残るは敵の旗艦とそれを守護するゼックイ三機のみだった・・・この数なら、ハイパー・ブラスターを安心して撃てる!

「リコ!旗艦を叩こう!」

「はい!」

 

『おっとぉ・・・まだ、早いぜ・・・』

 

「・・・っ!?」

今の声は・・・神・・・いや、タクトさんが言っていた悪魔だ・・・

 

『カズヤ・・・フェイトを守れるかな?』

「また、お前か!?」

「カ、カズヤさん!?」

どうやら俺だけに話しかけているのか・・・

「今度は何をする気だ!!」

『は!決まっているだろう?調子に乗ったガキにお仕置きをしてやるのさ・・・』

「僕が調子に乗ったガキだって言いたいのか・・・!」

『はは・・・悪い悪い・・・だが、俺はお前達を応援するぜ?

「何・・・?」

『お前達が一緒になるのを応援してやるよ・・・』

リコの事か!?

「余計なお世話だ!」

『ありゃりゃ?嫌われちまったよ・・・』

「二度と現れるな!」

『そうはいかないなぁ・・・それに俺が、現れるかどうかはお前次第だぜ・・・

「黙れっ!!」

「カズヤさん!どうしたんですか!?」

「いや・・・何でもない・・・」

「何でもないって・・・」

「本当に何でも無いんだ・・・」

これ以上、あの悪魔にリコを近づけたくは無いと僕は思った・・・

(あははは!それは無理な注文だ・・・!)

 

その時、僕はこちらに向かって襲いかかってくるフライヤーを感知した!

「く・・・っ!」

「わ!?」

僕は機体を反転させて、フライヤーの攻撃を回避した!

「い、今のは・・・レーザー・・・」

ミントさんの扱う通常のフライヤーはプラズマ集束による攻撃だが・・・

今の、フライヤーは貫通性に優れたレーザーだった・・・

このタイプのフライヤーを使うのはあの人のフライヤー・・・サーヴァントだ。

「まさか・・・あの人なのか・・・」

僕は辺りに目をこらすが、敵機は確認できない・・・

 

ブラック・アウト

 

「カズヤ!今のは何よ!?」

「みんな、気をつけて下さい!敵が近くに潜んでいます!」

「本当ですか!?」

その時、僕は見た・・・ちとせさんの背後にいる死神(アルフェシオン)を・・・

「ちとせさん!後ろ!!」

言うと同時に僕は死神に向けてフライヤー6機を射出した。

もし、あの人ならば、あっさりと回避されるだろうけど・・・

ちとせさんから引き離す事はできる!

「・・・っ!ちとせの後ろに!」

ランファさんもどうやら、死神に気付いたようだ・・・

 

プシュー!プシュー!

 

死神は己に向かって来るフライヤーを感知し、機体をちとせから離した。

「・・・?」

おかしい、いくらなんでも、距離を取りすぎだ・・・

手加減しているにしてもこれは明らかにおかしい・・・

やがて、フライヤーのレーザーが直撃になろうとしたその時・・・

何かが、アルフェシオンの近くに現れてアルフェシオンへの攻撃をその大きな盾で防いだ・・・そう、これはエオニアのゼックイだ・・・!

「ちょっと・・・あれってエオニアのゼックイじゃない・・・!」

「カ、カズヤ!後ろなのだ!!」

ナノナノの指摘に僕ははっと気付いて機体をその場から引き離した。

うっかりしていた・・・僕の背後にはシリウスのゼックイがあったのだ・・・

「お兄ちゃん・・・シリウス君・・・」

リコのくぐもった声が聞こえてきた・・・

リコ・・・悪いけど・・・敵は待ってはくれないんだ・・・

そして、再び、登場したメシア隊は恒例の挨拶も無しで仕掛けてきた!

 

「来たか・・・あれが切り札か・・・」

「動きを見た所、ピコを襲った連中と見ていいだろうな・・・」

「生まれ変わった紋章機を上手く使いこなせよ・・・」

 

「こいつ!」

ランファの機体にS.ゼックイがマークしている。

しかし、速度ではわずかにランファの方が早い。

「ランファさん!反転しないで!」

反転すればS.ゼックイのデスクローにやられる!

「助けるのだぁ〜!!ニードルフレシット!!」

ナノマシン形成のフレシット弾(針弾)がS.ゼックイに襲いかかるが・・・

そのフレシット弾の大半が巨大なビームにかき消され、S.ゼックイはランファから離れて、メガ・ビーム・キャノンを放ったE.ゼックイの元へと戻って、レッグ部の8連ミサイルランチャーをナノナノに向けて発射した。

「・・・っ!」

しかし、ナノナノとてエンジェル隊の一員、迫り来るミサイルを軽快に回避した。

 

「いっけぇー!」

ブレイブ・ハートから射出されたフライヤーが死神のフライヤーと対峙する!

 

シュコー!シュコー!

死神はフライヤーの数を20機に増やした!

「チィ!」

カズヤもフライヤーを新たに15機射出して。対抗する!

「フライヤー!GO−−!」

二機のフライヤーはまるで小規模のドッグファイトのように互いを撃墜しあう・・・

互いにナノマシン形成の為に弾数に限りは無い・・・

 

ちとせはアルフェシオンのコックピットを目掛けてアルテミスの照準を定めている。

「あれは・・・父様をさらった人・・・!」

ちとせは前回の白き月での決戦で既に死神を敵として認識してあるので迷いは無かった・・・

やがて、充填が完了するのと同時にアルテミスを発射した!

一撃必殺の矢がアルフェシオンに向かうが、それは回避されてしまった。

「かわされた!?」

 

「今のはちとせさんか!?」

僕は、アルフェシオンが何かをかわしたのが見れた・・・

何だろう・・・反応だけは以上に早い・・・

でも・・・フライヤーの扱い方が・・・

僕のフライヤーが一サイクル(一周期)で軌道を変更しているのに対して

死神のフライヤーは軌道を変更するのに3サイクルも掛っている・・・

もしかして・・・こいつ等・・・

「ランファさん!」

「何!」

「シリウスのゼックイはフライヤーを使ってきましたか!?」

「え!?」

「フライヤーです!ゼックイはフライヤーを撃ってきましたか!?」

「いえ!使ってないわよ!」

・・・やっぱり・・・

僕はみんなに呼びかけた。

 

「みんな!このメシア隊は偽者だ!」

 

「え、えぇ!?」

リコは素っ頓狂な反応をした。

「カズヤさん、何か根拠があるんですか?」

「はい、確実とは言えませんが・・・」

「思い出してください!シリウスのゼックイはフライヤーを使用してきた筈です!」

「そういえば・・・そうね・・・って・・・わっ!」

カンフーファイターにS.ゼックイが斬りかかってきた。

「このぉ!舐めるんじゃないわよ!」

ランファはS.ゼックイを振り切って機体を反転させる。

そこに襲い掛かる死神のサーヴァント!

「ランファさん!」

カズヤのフライヤーがランファに襲いかかろうした死神のフライヤーを迎撃した!

「ナノナノ・・・!」

「分かっているのだ!ママ!」

ハーベスターのホーミング・レーザーがS.ゼックイに襲い掛かり

ファーストエイダーのチャクラムがアルフェシオンに襲いかかる!

案の定、すぐさまにE.ゼックイがシールドで死神の援護防御に入った!

「もらいました!」

そして、ちとせのアルテミスはEゼックイのシールドを目掛けて放たれた!

さすがのシールドもアルテミスの威力には耐え切れずに装着されていた右腕ごと粉々に砕け散った!

シュコー・・・シュコー・・・

死神は鎮静剤を吸引しているマスクに覆われた口を苛立しげに歪めた。

(タナトス、ヒュプノス・・・引き上げるぞ・・・)

 

「・・・・・・っ!?」

偽・メシア隊の連中がそのまま旗艦の方まで逃げていく・・・

「逃がすか!!」

「ピコの人達の仇はとります・・・!」

 

(おっとぉ・・・まだ、早いぜぇ・・・)

 

僕達が偽・メシア隊を追撃していると旗艦が見えてきた・・・

その時だった・・・

旗艦の周りを徘徊していた一機のゼックイがこっちに向かってきたのは!

「くっ!」

僕はそのゼックイに5機のフライヤーを飛ばしたのだが・・・

(くっくっくっ!死神のメシア様を甘く見るなよぉ・・・)

何と、そのゼックイはビームサーベルを取り出して僕のフライヤーを全て撃墜した!

「な!?」

「ちょっと、何よ!こいつ!?」

量産タイプのゼックイは通常は自律回路をセットされた無人兵器だ・・・

少なくとも、フライヤーを切り払うゼックイなど今まで見た事が無い・・・!

(あったり前だぁ・・・俺に常識は通用しないぜぇ・・・

偽・メシア隊がどんどん遠ざかっていくがそれどころではない・・・!

「こいつ・・・強い!!」

明らかにさっきの連中より腕が上だ・・・!

「カズヤ!ナノナノにお任せなのだ!」

ナノナノのチャクラムを発射した。

(なのだ〜って・・・バカ○ンか?オメェは・・・)

「私も行くわよ!」

「一人では危険です・・・」

ヴァニラがレーザー砲で援護し、ランファは距離詰めていく。

「カズヤさん!私達も!」

「う、うん!」

そうだ!怖気ついてどうするんだ!

 

(ひょい、ひょい、ひょ〜い♪)

ゼックイ?はチャクラムやレーザー砲を回避していく。

「ぶっとべぇー!アンカークロー!!」

ランファはゼックイ?の背後を取り、アンカークローをゼックイ?目掛けて発射した!

(遊んでやるよ・・・金髪・・・)

何とゼックイ?は反転してランファの方目掛けて飛んだのだ!

アンカークローはランファの方を目掛けて飛んでくる!

「・・・っ!?」

ランファは間一髪のところで自分の攻撃を回避した!

(あはは!面白くなってきた!)

ゼックイ?の腕にロジックが集まっていき、やがてそれはレーザーライフルとなった。

「あれは、ナノマシン形成!?」

(それはちと違うぜ・・・

ゼックイ?はレーザーライフルを構えて僕達に撃ってきた。

しかも、ゼックイ?の狙いは百発百中でまったく外れ弾が無いのだ!

新素材の装甲が幸いしたけど・・・このままじゃ負けるのは時間の問題だ・・・

「キャア!」

またしてもレーザーがカンフーファイターに直撃するが、ASフィールドが遮断した。

(くっくっくっ・・・よかったなぁ・・・オリハルコン装甲の性能に助けられて・・・)

「いっけぇーーー!ハイパー・ギガ・ブラスターーーー!!」

今度はリコのハイパー・ギガ・ブラスターが襲い掛かるが、このゼックイ?それすらもあらかじめ予想していたかのように少し、早めに回避してやり過ごした・・・

(お、引き上げたか・・・)

どうして・・・!?どうしてここまで、当たらないんだ!?

僕の頭が混乱しかけたその時だった・・・

ドゴォォーーンッ!!

何と、ゼックイ?が爆散したのだ!!

「な、何だったのよ・・・あいつは・・・」

「メシア隊には逃げられましたね・・・」

(フェイト・・・また会おう・・・)

「・・・っ!?」

この感じ・・・ちとせさんと戦った時の・・・!?

「リコ・・・どうかしたの?」

「カ、カズヤさん・・・今・・・」

「え?」

それから僕達は白き月へと引き上げた・・・

白き月を守る事には成功したんだけど・・・

 

幕開け

 

ゲート・・・それは混沌を時で結ぶ扉・・・

ありとあらゆる時代とありとあらゆる場所に通じている扉・・・

 

時の扉

クロノゲート

 

運命の三女神はその力を使って時を渡り旅をした・・・

長女は過去へと・・・

次女は未来へと・・・

そして、三女は二人の姉が示した安定した世界にて安息の生活を送る・・・

しかし、それをした者がいた・・・

その者は混沌そのものを乖離する事で、三女神の時の旅を妨害したのだ・・・

その名は・・・

 

死神のメシア

 

運命の三女神は自身の力を封じ込め人として転生し

その時代に生きる事を選んだ・・・

しかし、死神のメシアはそれすらも許さなかった・・・

死神のメシアが次女を恐ろしいまで憎悪していたからだ・・・

それは今でも続いている・・・

運命の三女神にはそれぞれ司る概念がある・・・

それは彼女等に生まれつき備わっていた概念だ・・・

三女フェイトは運命を・・・

そして、次女デザイアは願い、欲望を・・・

そして、長女が司るものは今だに不明である・・・

何故なら、それを知る者がいないからだ・・・

長女は全ての起源により生み出された神故に誰も知らないのだ・・・

 

死神のメシアはデザイアに備わった願いと欲望という概念から生まれた・・・

故に何よりもデザイアを憎む・・・

その憎悪はデザイアを殺しても晴れない・・・

だからこそ、復讐劇を始めたのだ・・・

そして、その欲望に流されたEDENの民も憎む・・・

その憎悪は濃すぎ逆転して愛情になってしまった・・・

彼にとって、憎くて殺すのがデザイアで・・・

愛しているからこそ殺すのが人間なのだ・・・

殺して愛する

 

殺し愛

 

本来、運命の三女神以外にゲートを開けれる者などいない・・・

それ以外の者が開けたとしてもそれは、正確には違う・・・

四人目のゲートキーパーが彼女に代わって開けているからだ・・・

 

「それで、そのゼックイに妨害を受けたという訳だな?」

「はい・・・」

カズヤは力なく頷いた。

ここは白き月にあるアバジェスの部屋・・・

部屋の中は何も置かれていない・・・

何故なら、彼には資料などというものが必要ないからだ。

「・・・カズヤ・・・」

アバジェスが突如カズヤの目を見据えた。

「な、何ですか・・・?」

アバジェスさんの目が真剣だったので僕は思わずうろたえてしまった。

「いいか?これから何がお前に聞こえてこようと無視をしろ。

「・・・・・・?」

僕はアバジェスさんが何を言いたいのかが一瞬わからなかった・・・

(ほぉう・・・舐めた真似をしてくれるなぁ・・・神王・・・)

に話しかけられても無視をするんだ。」

「・・・っ!?気付いていたんですか!?」

「まぁな・・・戦闘中に叫んでいたからな・・・ロキも気付いている・・・」

「そ、そうでしたか・・・」

「・・・・・・カズヤ、お前に一つだけ聞いておきたい・・・」

「はい?」

今度はアバジェスさんは目を閉じて聞いてきた。

「お前はアプリコット・桜葉を愛しているか?」

「は、はい!?え、ええ!?」

「カズヤ・・・」

アバジェスさんの声がふざけて聞いているのでは無いという事が良く分かる・・・

「は、はい・・・僕はリコを愛しています・・・」

「・・・もし、お前にリコと別れろと命令したらお前はどうする?」

な!?ど、どういう事だ!?

「・・・・・・どういう事ですか?」

僕はあらぶる心を押し殺して聞き返した。

「軍事規則には時として例外的にプライバシーにまで干渉できる場合がある・・・」

「な、何ですか!それ!?」

「例えば、国家の運営に支障をきたしたり、国民への命が危険にさらされる場合などには例外的に認められている・・・お前が国民であるのならばそれに従わなければならない・・・何故なら、お前も国に守られ、養われている国民だからだ・・・分かるか?」

「分かりません!第一、僕がリコを愛しているのが危険な事なんですか!?」

カズヤ・・・・・・

『くっくっくっ!無駄だぜぇ・・・そいつは既にフェイトに魅了されているんだ・・・』

「・・・っ!?」

アバジェスさんの顔が一瞬、何かに驚いたように固まった・・・

「ア、アバジェスさん・・・?」

『アプリコットの花言葉にもあるだろう・・・誘惑って・・・』

「い、いや・・・何でもない・・・」

「ほ、本当に大丈夫ですか・・・顔色が悪いですよ・・・」

『そいつもその誘惑に抗えない・・・タクトのようにな・・・』

「カズヤ・・・今の話は忘れてくれ・・・悪ふざけが過ぎた・・・」

「え・・・と・・・は、はい・・・分かりました・・・」

何だ・・・アバジェスさんもタチの悪い冗談を言うなぁ・・・

『本能には抗えない・・・あの馬鹿女が定めた情欲には逆らえないんだよ・・・』

「部屋に戻って良いぞ・・・」

「は、はい、失礼しました。」

カズヤが一礼をして部屋を出て行った・・・

『早く、セルダールに来いよぉ〜・・・』

「言われなくても行く・・・お前の罠にかかってやろうというんだ・・・」

『だから、セルダールに手を出すなってのは無しだぜぇ・・・』

「何故だ、NEUEの民には恨みは無い筈だろう・・・」

『もち!その通り!!』

「なら、何故だ?」

『俺は誰よりもNEUEの民を愛している・・・そして、運命の天使達もな・・・』

リコを誘拐しといてよく言う・・・

『あ?あれか?なぁにあれはを覚醒させてやっただけさ・・・荒療治ってやつ?』

「よくも抜け抜けと・・・」

『いいから話を聞けってばよ・・・お前が素直に聞いてくれないと物語が進まないんだよ。いいのか〜・・・?いずれは知る事になるこれからの運命の道標なんだぜ?』

「物語だと・・・こんな矛盾だらけの復讐劇がか・・・」

『あはは!手厳しいお言葉だが、ちゃ〜んと最後には真実を教えてやるぜ?』

「・・・それで、何だ?」

『あん?』

「何故、セルダールを選んだのかだ・・・」

『ああ!そうだったな・・・いいか?俺はNEUEの民を愛している・・・しかし、それはあくまで俺に従属する者だけだ・・・ソルダムの奴が素直に従えば良かったんだが・・・』

「何を要求したんだ?」

『ああ?いやなぁに・・・生贄を50万人よこせって要求しただけだが・・・』

生贄・・・魂・・・ま、まさか・・・!?

「・・・お前・・・まさか・・・あの欠陥品を起動させたのか!?」

『ああ・・・着実に成長していってるよ・・・』

「何と馬鹿な事を・・・EDENとNEUEの全てを食い尽くすぞ!!」

『なぁに・・・俺が制御すれば済む話だ・・・』

「馬鹿な!?あれはそんな生易しい化け物では無いぞ!!」

『そう、心配すんなって、本当にそうなったらリセットするから・・・それにさっきも言ったが、俺の目的の為には犠牲も必要だろう?それがどんなに大きい犠牲でも・・・』

 

犠牲

サクリファイス

 

「・・・・・・」

『それでな、ソルダムの妖精の二匹がやかましかったんだわぁ〜・・・』

「ケルシーとサンタローザーをどうした・・・?」

『消した♪ばっかだよなぁ〜俺に歯向かうなんてなぁ・・・』

「お、お前は・・・」

『俺はなぁ・・・人間如きがカリスマなんてムカツクんだよ・・・』

「シャトヤーンも同じ理由か・・・」

『あ?まぁあれはが欲しかったってのもあるがな・・・』

「貴様・・・」

『おいおい・・・俺は別にお前達の要望を聞く必要は無いんだぜ?』

「・・・・・・」

『お前だって説明役で置いているだけだ・・・』

「説明役だと・・・」

『あまり、俺を舐めるなよ・・・消す時は消すぞ・・・

「消せるものなら、消してみろ・・・!」

『そうはいかねぇんだよ・・・俺が降臨するまではなぁ・・・』

「ちっ・・・!」

『くれぐれも、カズヤとリコの邪魔だけはするなよ・・・』

「・・・・・・」

『どうせ、止められない・・・フェイトはカズヤを選んだのだ・・・それは・・・』

 

運命

 

『そして、カズヤもフェイトを選んだのだ・・・何を危惧する必要がある・・・?』

「・・・これが、俺達の運命だというのか・・・?」

 

ふふふ・・・さぁ・・・お遊びの時間は終わりだ・・・

これからは、死ぬ奴は死ぬ・・・

そして、その運命には逆らえない・・・

さぁ、始めよう・・・俺の復讐劇を・・・

 

 

〜サクリファイス〜

 

現在、紋章機達の復旧率はほぼ完了していた・・・

「ふわ〜・・・安部はんも、こき使いすぎや〜」

格納庫ではコロネを中心とした作業員がダウンしていた。

「・・・そう言うな・・・俺だって手伝っているんだ・・・」

「ロキさんって大将さんじゃろう?何で、こんな雑務をするんですかい?」

ロキの隣でへばっていたクロワが当たり前の質問をした。

「しょうがねぇだろう・・・手が足りねぇし、お前達だってアンフィニの事を知らねぇんだから・・・俺だってしなくて済むならしねぇよ・・・あ〜煙草がきれちまったよ・・・」

「め、面目ねぇ・・・」

「そや、ロキはんはどうやって大将になれたんや?」

「あ、あ〜その事か・・・秘密だ・・・」

「そんな、殺生な〜・・・」

「お前のおっぱいで教えてやらない事もないぞ〜」

「お断りや!」

「そいつはレイの後釜で入ったんだ・・・書類を偽造してな・・・」

「んげ!」

「阿部はん!?」

コロネの目にはロキの背後で呆れた顔で立っているアバジェスだった・・・

「お前、そんな事ばかりしているとまたエレナに殺されるぞ・・・」

「うぐ!」

それはまずい・・・ってか!

「テメェ!今までどこで何をしてやがった!」

ロキがアバジェスの胸倉を掴み上げた。

「俺だって遊んでいた訳ではない・・・」

アバジェスはロキの手を鬱陶しいそうに振り解いた。

「じゃあ、何をしていたんだよ・・・」

「お前の給与を見直していた。」

「マジかよ!?」

「冗談だ・・・」

「この野郎!!」

それからクロワ達がロキを必死にとめたのは言うまでも無い・・・

 

「それで・・・セルダールに向かうって言うんだな・・・」

「ああ・・・」

「ですが、七番機は全く手をつけてないんですぜ・・・」

クロワの言う通り、七番機はあの戦い以来、まったく手をつけていないのだ・・・

「しょうがない・・・七番機は自己修復でしか修復できない・・・

「まぁ、そろそろセルダールに向かわないと、譲ちゃんへの不信感がつのるしな・・・」

「だからこそ、セルダールへ向かう・・・」

「ちょっと、待ちぃや!ここはトランスバールやで!?」

そう、EDENのクロノ・ゲートはジュノー付近にあるのだ・・・

「あっちは、ブラウドのゲートだ・・・俺達が使うのは俺達のゲートだ・・・」

「どういう事なん?」

「ジュノーのゲートはブラウドの奴がヴァル・ファスクを送り込む目的で設置したもので、ブラウドがEDENに介入する際に使っていたゲートだ。何があるか分からん・・・」

「おそらくは大艦隊の歓迎会があるだろうしな・・・」

 

「タクトさん、これが何本だかわかりますか?」

ミルフィーの指がぼんやりと見えている・・・

「・・・三本。」

「あ、当たりですよ〜」

俺の視力は確実に回復の兆しを見せていた・・・

アバジェスによれば、俺の体は普通の人よりも治癒能力が高いらしい・・・

あれから、俺は毎日、アバジェスとの二刀流の訓練をしていた。

そのせいか、左手が右手を同じように使われるようになってきた・・・

というより、左手を使う事に違和感を感じないといった感じだ。

「俺ももうすぐ、復帰できるかな・・・」

「タクトさん・・・」

ミルフィーが俺を心配そうに見ている。残念ながら、視界がぼやけている為にどんな目をしているのかが分からないが、彼女の声が不安を含んでいるのが分かった・・・

「あたしが頑張りますから、タクトさんには戦場に出て欲しくないです・・・」

「ミルフィー・・・それは・・・」

「あたしみんなから聞きました・・・タクトさんがお兄ちゃんと戦っていた時の事を・・・」

お兄ちゃん・・・レイ・桜葉の事だ・・・

「その戦いの様子も聞きました・・・タクトさんが何度も怪我をした事も・・・」

「それは、ミルフィーのせいじゃない・・・俺が弱かったからだよ・・・」

「でも、タクトさんは司令官なんです!パイロットじゃないんですよ!?」

「分かっているよ・・・」

「分かってないです!このままじゃ本当にタクトさんが死んでしまいます!」

「死ぬなんて、そんな・・・」

「今回もタクトさんは奇跡的に失明をしなかったんです。でも・・・」

ミルフィーが顔を俯けたのが気になった・・・

「でも・・・?」

「今度の戦いは嫌な予感がするんです・・・」

「嫌な予感・・・?」

「はい・・・私にもよくわからないんですけど、落ち着かないんです・・・」

「落ち着かない・・・」

それは俺も同じ事だった・・・実はあの悪夢を見続けているのだ・・・

結局、俺はミルフィーに七番機には乗らないと言えないままに彼女を帰してしまった。

正直に言うと心が痛い・・・

それは、ミルフィーが俺を心配してくれているのが分かるからだ・・・

でも・・・相手がゼイバー・ブラウドならば俺が出ない訳にはいかない・・・

何故なら、俺がはじめてゼイバーと会った時に感じた悪寒は俺が先の戦いの最後で出会ったあのキチガイと同じものだったからだ・・・

つまり、ゼイバー・ブラウドの正体はあのキチガイだとういう事だ・・・

 

一方、白き月の来賓室ではヴァインとルシャーティが密かに滞在していた。

待機させたのはこのだ・・・

何故なら、この二人の生存が復讐鬼に知れれば、二人共殺されるからだ。

復讐鬼によって・・・

「なるほど・・・ロウィル将軍が・・・」

俺は二人にロウィルの生存とその正体を説明した。

「ああ・・・しかし、ロウィルは別にお前に対して執着心などもってはいない。」

「私達の命を狙っているのはですか・・・」

「というより、あいつはお前達を殺したと思っているんだ。

「なるほど・・・」

「アバジェスさん、ピコの事は聞きました・・・」

「・・・・・・」

「経緯は違いますけど、結果はリウスと同じですね・・・」

ルシャーティは悲しそうに表情を曇らせた。

「ああ、ピコの住民達もあの化け物に喰われてしまった・・・」

「そして、今度はセルダールというわけですか・・・」

命を懸けてでも止められればいいのだがな・・・」

「もう、既に手遅れというわけですか・・・」

「おそらく、セルダールの民も同じように喰われてしまうだろう・・・」

「酷い・・・何の罪もないのに・・・」

「これが、の求める犠牲ですか・・・」

「ああ・・・犠牲だ・・・」

 

サクリファイス

 

ここは・・・カオス・シーにあるブラウド財閥の本拠地・・・

そして、その総帥であるゼイバーの部屋には三人の男がいた。

一人は主のゼイバー、そして残りの二人は配下のゼウスとアレスである。

「いよいよですね・・・」

ゼウスは待ち切れないといったような笑顔でゼイバーに話しかけた。

「ああ・・・」

「神皇様、こちらがあの紋章機の稼動効率になります・・・」

神皇・・・彼等はゼイバーを本来の名前で呼ぶ・・・

そして、その配下であるアレスはゼウスとは対称的な真面目な様子で今回の戦闘で得たあの紋章機の稼動効率の時間グラフを提出した・・・

「・・・低いな・・・」

「はい・・・先の戦闘での損傷も響いているのでしょう・・・」

「・・・出来るだけこれ以上の犠牲は出したくは無かったが、仕方あるまい・・・」

「アレを実行に移すのですね・・・」

「ああ・・・そこでだゼウス。」

「は!」

「お前はEDENへ赴き、行動に移れ・・・連中がこちらに辿り着くのは後、三日だ。」

「三日ですか!?あのお荷物をしょってですか?」

ゼウスが言うお荷物とは白き月の事だ・・・

「あちらにはゲートキーパーアバジェスがいる事を忘れるな・・・」

「は、はい!失礼しました・・・!」

「行け。」

「は!」

ゼウスはそう言うと姿を文字通りくらました。

彼らは神故に人間の移動手段などは不要なのだ。

「俗物が・・・」

ゼイバーはゼウスが消えた跡を見てゼウスを侮蔑した。

「神皇様・・・」

「のう・・・アレス・・・創造物は所詮、争い(競争)から逃れなれないのだろうか・・・」

「はい・・・それが闘争本能ですから・・・」

「最初は平穏なNEUEを築く筈だったのだがな・・・」

「神皇様は尽力なされた・・・それは事実です・・・」

 

タクト達がNEUEに飛び立つ前の前日の夜・・・

アバジェスの部屋に一人の男が訪れていた。

「お久しぶりです、マスター・・・」

「よく来たな・・・レイ・・・」

そう、訪れた男こそ、前大戦の首謀者、死神のメシアことレイ・桜葉である。

「ブラウドの艦隊を片付けたのか?」

「はい、ジュノーにはびこっていた艦隊は全滅させました。」

彼こそが最強のパイロットである・・・

「助かる・・・白き月を連れて行くのはさすがに不利なんでな・・・」

「はい、今日はその件についてお話があってきました。」

「ほう・・・何だ?」

「ふ、マスターも人が悪い・・・私が言おうとしてる事はお分かりでしょう?」

「はは・・・すまん・・・」

「白き月をジュノーまで行かせて下さい・・・」

「やはり、決戦の舞台はジュノーになるか・・・しかし、白き月は狙われているぞ?」

あいつタクトを狙っています。白き月を狙うのはゼウスぐらいのものです・・・」

「しかし、ゼウスがいかに馬鹿だとはいえ、十二傑集の長だぞ?」

「本当に人が悪い・・・だからこそ、私が警護すると言っているのです。」

「そうか・・・シャトヤーンも喜ぶだろう・・・」

「実はたった今、会ってきました。忘れ物を取りにですが・・・」

「忘れ物・・・?」

「これですよ・・・」

そう言って、レイは胸元から花の髪飾りを取り出した。

「・・・・・・リコのか?」

「はい・・・これを持っている時は絶対に負けないんですよ・・・

「ふ・・・願掛けとは最強のパイロットらしくもない・・・」

「ふふ・・・確かに・・・私もまだまだ甘いようです・・・」

「妹もいいがシヴァには会ってやらないのか?」

「いえ、前回に引き続き、今回の件で私に腹を立てているでしょうから・・・」

「・・・!あっはっはっはっ!!た、確かにな・・・!」

アバジェスは遂に笑い出してしまった。

「マスター・・・今のは笑わせようと思って言った訳ではないのですが・・・」

「す、すまん・・・すまん・・・」

「・・・・・・マスター・・・疲れていませんか?」

レイは突如そんな事を言い出した・・・アバジェスも面食らうかと思いきや・・・

「ああ・・・そうだな・・・ここ一ヶ月間、徹夜だよ・・・」

「ふふ・・・私も前回はそうでしたよ・・・」

「辛いな・・・軍人は・・・」

「そうですね・・・」

「なぁ、レイ・・・」

「はい・・・」

「本当にセルダールはどうにもならないのか?」

「・・・・・・」

遂に本音を漏らしたアバジェスに対してレイは沈黙した・・・

「お前が、本気になっても止められないのか?」

「・・・すいません・・・私はあいつの制裁者です・・・逆う事はできません・・・

それに、あいつの妨害をすれば、セルダール以外の星にも被害が及びます・・・」

「しかし、このまま黙って見ておくのは耐えられん・・・」

「マスター・・・とはいえ、私も黙っている訳ではありません・・・」

「・・・?」

「最大限の努力はします・・・そして、ブラウド財閥の本性を暴いてみせます。」

(エオニアや雅人の為にも・・・)

「できるのか?皇国軍の放送機関も完全にブラウドに占拠されているぞ?」

「はい・・・私は完全の体現者です・・・やれる事は完全にやり遂げます。

「ならば、ここは敢えてブラウドを泳がせておくのだな?」

「はい・・・奴等は暴れれば暴れる程に奴等に跳ね返る事になります。」

「しかし、俺達の行動をあいつが黙認するかな・・・」

とてまだ、完全体とは言えません・・・の意識がカズヤとリコに向いている間に行動を移します・・・結果的に盛り上げればとて報復処置はしないでしょう・・・

「すまんな・・・であるお前に・・・こんな事を押し付けて・・・」

「はは・・・これは手厳しい・・・しかし、混沌が滅びるまでは私は味方ですよ・・・

「ふ・・・そこまで言わなくても俺はお前を信じるよ・・・」

「はい・・・ではゲートは既に開いていますので、明日の11時に出現するでしょう・・・」

「助かる・・・」

「いえ、あの馬鹿女の運が発動すると厄介ですからね・・・」

 

そして、翌日俺達は白き月にロキを残して、セルダールへ向かう事にした。

こちらの戦艦は強化改造されたルクシオールのみだ・・・

「諸君、最初に言っておく・・・セルダールにブラウドの艦隊が待ち受けているのは間違いないだろう・・・場合によっては向こう(NEUE)についた瞬間に戦闘になりかねない・・・だから、そのまま紋章機の中で待機していて欲しい・・・」

『了解!』

「ではこれより、俺達はNEUEへ向かう。シヴァ様・・・よろしいですね?」

「頼む、阿部殿・・・」

「了解・・・」

エンジェル隊には分からなかっただろうが、ブリッジではルクシオールが発光していた・・・そう、これこそがアバジェス達のゲートだ・・・見えないゲート・・・

 

「カズヤ、戦闘に入った時の指揮は任せたよ・・・」

「はい!タクトさん。任せてください!」

「そして、ミルフィー・・・久しぶりの戦闘なんだから無理はしないでくれよ・・・」

「もう、もう少し、信用してくださいよ〜」

「でも、お姉ちゃんの紋章機だけ改造されてないんだよ。」

妹のアプリコットが心配そうに言った。

「リコも心配性なんだから・・・」

「あんたねぇ・・・少しは緊張感を持ちなさいよねぇ・・・」

「ランファさんのおっしゃる通りですわ、足を引っ張らないで下さいまし。」

「あう〜ミント・・・言う事がキツイよ〜・・・」

「あはは・・・でもねぇミルフィー、ミントの言う事は本当だよ。今回の戦闘は激しいものになるよ・・・相手はおそらく、私達を呼び寄せて殲滅する気だろうからねぇ・・・

「フォルテさん・・・」

「それに、陛下がブラウドの指図など受ける筈が無い・・・!」

「十中八九、あいつらに脅迫されているんだろうな・・・」

アニスは拳の関節を鳴らしている・・・

「ああ!だからこそ、何としても陛下を救出せねば・・・」

「その為にはブラウドの艦隊を全滅させなければなりませんね・・・」

「ちとせの言う通りだ・・・敵は交渉の通用する連中じゃない・・・」

「そうです・・・セルダールをピコの二の舞にだけはさせません・・・」

「ナノナノも頑張るのだ!」

「ナノナノ・・・あなたも無茶をしないで下さい・・・」

「分かっているのだ!」

「本当にそうですかに〜・・・ご主人様もそうは思いませんかに〜・・・」

「・・・・・・」

しかし、テキーラは黙り込んだままだった・・・

「ご主人様?」

「え、何?」

「テキーラ・・・どうかしたの・・・?」

カズヤが心配そうにテキーラに呼びかけた。

「・・・何か嫌な予感がするの・・・」

「嫌な予感・・・」

(リベンジ・・・お前に喰らった一撃・・・リベンジしてやるぞ!)

「・・・っ!?」

テキーラはハッとなって辺りを見渡した。

「ご主人様?」

「い、いえ・・・ごめんなさい・・・気のせいね・・・」

 

そして、ルクリオールはセルダールに辿り着いた。

 

『くっくっくっ!・・・タクト・・・きたな・・・』

 

『デザイア・・・ここで始末してやる!!』

 

タクト達は知るよしも無かった・・・

 

セルダールで最凶復讐鬼が二匹、待ち構えている事に・・・

 

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