第三章

 

ラスト・リヴェンジャー

 

EDENのジュノーの宙域はきたるブラウド財閥との決戦に備えて哨戒任務の艦隊が配備されていた・・・そして、その艦隊に守られながら、白き月でも紋章機とパイロット達の心のケアに労力を注いでいた・・・

 

そして、そのジュノーへ先陣をきって向かっていたのはブラウド財閥をリーダーとしたEDENとNEUEの複合艦隊だ・・・彼等は正義の名の元に集った勇者達である・・・とEDENの者達は思っているだろう・・・

先陣のブラウド艦隊の後ろからはシヴァの退位に乗じて評議会代表代理に選任されたジーダマイヤーが率いる皇国軍が追いてきている・・・

 

ブラウド艦隊だけでもその規模の大きさはネオ・ヴァル・ファスクよりも大きい・・・

主力である第一艦隊はゼイバー総帥の超弩級戦艦 ラスト・ジャッジメントを旗艦として編成されている・・・無論、浮遊要塞に重戦艦・・・巡洋艦そして、ゼックイなどの編成数も半端ではない・・・かのメベト・ヴァル・ファスクが率いていた大艦隊が可愛く見えるくらいの数だ・・・

 

そして、第二艦隊を率いるのは猛将 ロウィルである・・・第一艦隊とは性格がうって変わって高速艦とゼックイのみという至ってスピーディな艦隊であり、大抵は第一艦隊の補佐をする・・・本来は第一艦隊と共に滅多に動かない艦隊だ・・・ちなみにこの第二艦隊の旗艦はロウィルの本当の戦艦でもあるアレスだ・・・

ブラウド艦隊は全部で13艦隊まで存在する・・・

第一艦隊ラスト・ジャッジメント、第二艦隊アレス、第三艦隊ゼウス、第四艦隊ポセイドン、第五艦隊アテナ、第六艦隊アルテミス、第七艦隊アポロン、第八艦隊 ヘラ、第九艦隊アプロディテ、第十艦隊ヘスティア、第十一艦隊デメテル、第十二艦隊ディオニソス・・・

そして、神皇ですら詳細を知らない幻の第十三艦隊 ヘパイストス・・・

 

現在、第十三艦隊 ヘパイストスを除く十二の艦隊で実際に指揮を取っているのは第一艦隊のゼイバーと第二艦隊のアレスそして、第三艦隊のゼウスだけだ・・・他の者は全て自律回路で動いている・・・もし、この艦隊が13まで完成して、完全に配備されていれば、その戦力の規模は検討もつかない・・・

 

「もうすぐだ・・・俺の望みは叶えられる・・・」

 

ラスト・ジャッジメントのブリッジから宇宙(そら)を見ながらゼイバーは呟いた。

 

〜たとえ言葉は通じなくても・・・〜

 

話はタクト達がラスト・リヴェンジャーから逃げてきた時までさかのぼる・・・

 

帰艦してから一日目の深夜・・・

「陛下・・・」

イーグルゲイザーの前でリリィは呆然と立ち尽くしていた・・・

セルダールは消失したのだ・・・

それはソルダム陛下だけでなく、親も失った事でもある・・・

それは・・・ゼイバー・ブラウドの策略により・・・

そして、現在・・・それを阻止できなかった後悔の念が誇り高き騎士であったリリィを攻め立てている・・・そして、偶然にも現在、格納庫には誰もいない・・・

「陛下・・・今、参ります・・・」

リリィは右手で剣を抜くと己の喉下に突きつけた・・・

本来、自害する者は腹部を刺す・・・

にも関わらずリリィは喉を選んだ・・・

通常の人間ならとても喉などつけたものではない・・・

たとえ、その後で死が待っていようとだ・・・

リリィが愛剣で首を掻っ切ろうとしたその時・・・

「早まるなっ!」

何者かがリリィの右手を掴んだ・・・

それはアバジェスだった・・・

リリィの右手はピクリとも動かせない・・・

「離せっ!離してくれ!!」

リリィは気が違えたように暴れる・・・

しかし、それでも右手はピクリとも動かない・・・

「・・・っ!馬鹿者がぁーっ!!」

バキィ!!

「・・・っ!?」

アバジェスは容赦なくリリィの右頬を殴った。

あまりの威力にリリィは剣から手を離していまい、倒れこむ・・・

リリィの切れた口元は出血している・・・

アバジェスはリリィの剣を拾い上げる・・・

「今のお前には、騎士たる資格も剣士たる資格も無い・・・」

アバジェスが剣を握り締めるといとも簡単にリリィの剣は粉々に砕け散った。

「あ、あぁ・・・」

倒れ伏したリリィの目の前に剣の破片が降り注いでいく・・・

「き、貴様ぁ・・・!」

リリィは口元を拭ってアバジェスを睨みつけた・・・

その目にはもはや騎士としての輝きは残っていない。

「・・・痴れ者が・・・」

そして、アバジェスは敵を見るかのようにリリィを睨みつけている。

人間ならば縮み上がるアバジェスの威圧感も今のリリィには通用しない・・・

「うおおおーーー!」

リリィはアバジェスに殴りかかった!

そして、リリィの拳がアバジェスの頬に命中するが、アバジェスは呻き声どころか表情すら変えない・・・そして、特に出血もしない・・・アバジェスは人間では無い・・・

「・・・お前如きの拳でどうとなる俺では無い・・・」

ドウッ!!

「ガハッ!」

リリィの鳩尾に綺麗にアバジェスの膝が命中していた・・・

そこで、リリィは気絶した・・・

「ロキ・・・いるんだろう?」

アバジェスは格納庫の入り口から一部始終を覗いていたロキに呼びかけた。

「・・・たく、やり過ぎなんだよ。お前は・・・」

入り口からロキがやれやれと頭を掻きながら現れた・・・

ロキは倒れているリリィを抱え上げた。

「お前も覗き癖が治っていないだろうが・・・」

「か、関係ないだろうが・・・」

ロキがバツの悪そうに顔をしかめた・・・

「まぁいい・・・それよりも少しやり過ぎた・・・内臓にダメージがいってる・・・ヴァニラに診せてやってくれ・・・」

「ああ・・・なぁ・・・タクトはどうするんだ?一応、応急処置だけして自室で眠らせているがよ・・・あのチョコはもう製造できないしよ・・・」

「・・・あれは呪いによるダメージだ・・・俺達ではどうにもならん・・・」

「おい・・・このまま死なせるなんて事は無いだろうな・・・」

ロキの鋭い眼光がアバジェスを射抜く・・・

「そんな事はしない・・・俺にとってタクトは可愛い弟子だ・・・」

「俺の弟子なんだよ・・・」

「俺の弟子だ・・・」

「俺のだ・・・!」

二人はこんな状況下にも関わらず子供のように睨みあう・・・

「大体、テメェにはあのクソガキがいるじゃねぇか・・・!」

レイレイ・・・タクトタクトだ・・・」

「何だ!そりゃあ!?」

「いいから行け・・・俺はタクトをどうにか出来るに頼みに行く・・・」

「どうにか出来る奴・・・?ってオイ!」

ロキの言葉を待たずにアバジェスは自室へと帰っていた。

 

帰艦してから二日目・・・

 

「タクトさん・・・お願い・・・目を覚ましてください・・・」

ミルフィーユが心配そうに見守っているのはタクト・マイヤーズだった・・・

全身の皮膚は焼けただれていて、焦げている箇所もある・・・

アバジェスによると全身を大火傷しており、極めて危険な状態なのだ・・・

まぁ・・・あの狂犬シリウスとの戦いでまだ生きているだけでも奇跡的なのだが・・・

タクトは静かに眠っている・・・

 

そして、もう一人戦闘不能者がいた・・・

 

「そんな・・・こんな・・・事が・・・」

 

帰艦してから僕はずっとリコの部屋で彼女の看病をしていた・・・

特に外傷は無かったとはいえ、気を失ったままだ・・・

僕は無理を言ってリコの看病を任してもらっている・・・

ブレイブハートの整備はほったらかしだけど、今は彼女の傍にいたい・・・

だって彼女と傍にいると約束したし、僕が傍にいたいと思うからだ・・・

そのかいも会って彼女は目を覚ましてくれた・・・

 

「リコ・・・!」

「・・・・・・」

彼女の呼吸音がさっきより良く聞こえてくる・・・

リコは僕に気付いて少し笑って微笑んだ・・・

そして、何かを喋っているかのように口を動かした・・・

「・・・ッ!・・・ッ!?」

「・・・ッ!?・・・リコ・・・」

驚いたのは僕とリコの両方だ・・・

「・・・っ!・・・・・・ッ!?」

リコは仕切りに何かを言おうとしている・・・

しかし、それは空気を歪める音だけで、声にはならない・・・

それから、幾程の時間がたったかは時計を見てないので分からない・・・

そして、既にリコも喋る事を諦めている・・・

 

「そんな・・・こんな・・・事が・・・あるのか・・・」

彼女が患ったのは失語症だ・・・

後日、アバジェスさんに見せたところそう診断された・・・

アバジェスさんの医者としての腕は確かだ・・・

まぁ・・・神様だからね・・・

失礼な言い方だけど今では精神カウンセリングのみの担当になっているモルデンさんは僕がリコの支えになってくれと頼まれた。ミルフィーさんはタクトさんの看病をつきっきりでしていて目が離せないし、僕自身そのつもりだ・・・

 

「リコ・・・もう、平気かい・・・」

「・・・・・・」

ベットに腰をかけたままリコはコクンと頷いた。

その顔には笑顔が戻っている・・・

シリウスの事がよほど衝撃的だったんだろうけど、どうやらリコ自身も軍人としての心構えが出来ていたらしくて、そこまで引きずっていないらしい・・・

(それは現実逃避しているだけだろうがよぉ・・・ば〜か・・・)

 

「う〜ん・・・何かする事が無いね・・・」

リコは苦笑して頷いた。

「・・・・・・」

リコがメモ用紙に何かを書いている・・・何々・・・

 

“カズヤさんは私といて退屈じゃないですか?”

 

っておいおい・・・リコ・・・

「あはは・・・そんな事ないよ・・・リコとこうして二人きりでいるだけで、ドキドキしっぱなしだよ・・・」

今度はリコは左手で僕の右手を掴んで右手の人差し指で何かを書いている・・・

 

“わたしもです”

 

・・・リコ・・・今までもときたま思ったけど、君って以外に大胆な事を言うよね・・・

リコは僕の右手を握ったまま顔を赤らめて俯いている・・・

・・・そこらへんはロキさんに似てるというか・・・

いやいや!そんな事は考えてないよ!と僕は頭の中でリコに言い訳をする・・・

「・・・!」

僕がそうやって頭をブンブン振っていたのが不味かったのか、リコは僕がどんな事を考えているか大方の予想がついたらしく僕から手を離してそっぽを向いてしまった。

そして、こっちを振り返らずに指で宙に“バカ”と書いた・・・

・・・・・・あ〜あ〜・・・どうして・・・僕って奴は・・・

 

僕が頭を抱え込んでため息をつくとリコが近づいてきて僕の顔を覗き込んできた・・・にしても本当にリコって良い香りがする・・・・・・ってうわわわ!!?

「うわっ!」

「・・・っ!?」

お互いに驚いて離れてしまった・・・って驚かせたのは僕か・・・

あ〜リコも“ど、どうかしました!?”なんて顔をしてるよ・・・

「ゴ、ゴメン・・・」

リコは顔を横に振って僕の右手を掴んできた。

いつもなら大胆だね・・・なんてからかうところだけど、今回は状況が状況だ・・・

軽はずみな冗談は言わない・・・

それに、本当はリコが一番辛い筈なんだ・・・

僕の前で無理に笑っているんだ・・・

さすがに鈍感な僕でも付き合っているとそれぐらい分かる・・・

 

「それで・・・さっきは何て言おうとしたの?」

僕は自分からリコに右手を出した。

そして、リコは僕の手に右手で書き始めた・・・

 

“バカというのはウソです”

 

さらにリコは書き続ける・・・どうやらカタカタの方が書き易くて良いようだ・・・

 

“あいしてますカズヤさん”

 

・・・っ!?リコ・・・それ反則だから・・・

 

「・・・っ!?」

そして、リコは最後にハートマークを書いて不意打ちのようにキスをしてきた・・・

僕は思わず口元を押さえて後ずさってしまい、リコがハッと心配そうな顔で僕を見て紙とペンを拾い上げてにこう書いた・・・

 

“キス嫌でしたか・・・?(泣)”

 

リコ・・・(泣)って・・・僕を悩殺したいのかい?

「い、いや・・・僕は嬉しいよ・・・でも・・・リコは・・・・・・んっ!?」

リコは頭を横に振って、顔を寄せてきて再び口を重ねてきた・・・

でも今度は僕もリコから離れようとはしない・・・

唇からはお互いの体温が伝わってくる・・・

・・・もう、駄目だ・・・

 

(やはり、フェイトの誘惑には耐えられぬか・・・)

 

「・・・っ!?」

僕は口を重ねたままリコを押し倒してしまった・・・

我ながら、けっこう僕って悪い奴かもしれない・・・

リコは最初は驚いた顔で見ていた・・・

「リコ・・・僕は・・・何があっても君の傍にいるから・・・余計な心配はいらないよ・・・僕はずっと君の恋人でいるから・・・」

今度は僕の方から口を重ねた・・・

僕の両手はベットについて体を支えていてリコの両手は僕の背中に回された・・・

リコが僕を受け入れてくれてる・・・

それだけで、嬉しい・・・

僕は体を起こそうとした・・・のだが、リコは背中に回した手を離さない・・・

「あ、あの・・・リコ・・・?」

リコの顔は赤いままでその目は潤んでいる・・・

な、何だろう・・・リコの眼を見ていると・・・引き込まれるような感覚が・・・

その碧眼が・・・美し過ぎて・・・目を逸らせない・・・

 

リコは言葉を発せない口でゆっくり言葉をつむいでいく・・・

 

“は・な・れ・た・く・な・い”

 

「・・・・・・っ!?」

それって・・・まさか!?

「リ、リコ・・・き、君が言ってるのって・・・」

僕は心臓が爆発しそうなコンディションで何とか普通に喋れた。

リコはコクンと頷く・・・

おそらく今までのような添い寝の事ではない・・・

リコは・・・僕と男と女の関係になりたいと言っている・・・

しかし、三年たったぐらいであのリコがここまで大胆になるのだろうか・・・

それとも女の子ってこういうものなんだろうか・・・

そう言えば、誰か言ってたよな・・・女は男よりも度胸があって大胆なものだと・・・

 

で、でも・・・まだ戦いは終わっ・・・ってえええぇぇぇーーーーーー!!!!

リコが上着を脱ぎに掛った・・・!!

・・・って何をしてるんですかああぁぁーーーーーーーー!!堯福ΗァΑ─

僕は疾風迅雷の如くリコの手を止めた・・・

不思議そうな顔で僕をみつめてくるリコ・・・

いや・・・そんな不思議そうな顔で見られても・・・

リコの口が再び動いた・・・

“イヤなんですか・・・?”

 

「ち、違うって!ああいやそうじゃなくってっ・・・!!え、ええとぉ!!」

僕の思考回路の中は只今エマージェンシーだ・・・

ちょ、ちょっと待ってくれよ・・・リコ・・・ちゃんとした回答を導き出すから・・・って!

“イヤなんですね・・・”

勘違いしたリコが涙目に・・・!

あ〜!ああーーーーどぉぉーーーうしようーーーーっ!!!((;´Д`;))

 

「いいじゃん!そのままいっちゃえっ!」

 

いや、そういう問題じゃないだろうっ!?・・・って・・・?

「って、ロキさんこんな所で何をしてるんですか!?」

「・・・・・・っ!?」

リコもビックリして服装を正した。

「え、いや・・・ロックが空いていたからさ・・・」(・Д・;)

(い、いや・・・本当に悪気は無かったんだが・・・)

しまったああぁぁーーーーーー!!!!

僕は・・・僕は・・・何て・・・(T〜T)

「馬鹿だな。」

ロキさんはうんうんと頷きながら僕の気持ちを代弁してくれた・・・じゃなくて!!そんな事ばかりしてるから覗き魔だって言われるんですっ!・・・でもなくて・・・!!

 

「出て行ってくださいーーーーーー!!!」(#`Д´)

「う、うおぉぉーーー!?」三三三堯福ΗァΑ─

ロキはカズヤにぶっ飛ばされて部屋から追い出された・・・く、くく・・・

カ、カズヤの火事場の馬鹿力が鬼を超越した瞬間だった・・・ぷっくっくく・・・!

その様子を見ていた死神はコックピットの中で転げまわる・・・

「うわっはっはっはっはっはっはっはっ!!」

 

*注 笑い転げているのは皆さんもご存知のあの方です・・・<(_ _)>

「ヒィィーーーヒッヒッヒッヒッヒッ!!」

 

*注 しつこいようですが・・・人目の無い所で笑い転げているのがこの人の秘密です・・・(´_ゝ`)ぷっ

「あっはっはっはっ!は、腹がイテェーーー!おかしいぃぃーーーーー!!」

 

*注 本当にしつこいようですが・・・これが彼の本性です・・・後、おかしいのはあなたの神経です・・・一体、何がそんなに面白いのかを教えて下さい!(`__´#)

 

*注 くどいようですが自分のしてる事が大嫌いな父親の覗きと同じ事に気付いていない意外にお茶目なところがあるのが萌えポイントです・・・男ですけど・・・(Д`;)

「か、勘弁してくれーー!!これ以上は、く、苦しいからさっ!!」

 

*注 いい加減にしろ!とお思いでしょうが、これで最後です・・・<(_ _)>

というか貴方がこれ以上は苦しいから勘弁して下さい・・・(T〜T)

 

「はぁ・・・はぁ・・・リコ・・・?」

リコは既に掛け布団で顔を隠していた・・・

だろうね・・・おそらく泣いてるな・・・僕だって泣きたいんだから・・・(T T)

でも、言う事は言っておかないと・・・

・・・っと、その前にドアの鍵を閉めてっと・・・

僕はベットに座って言う事にした。

「リコ・・・約束しただろう?結婚はこの戦いが終わった後だって・・・」

リコが掛け布団からひょっこりと顔を出した・・・

あ、涙目・・・やっぱり、泣いてたか・・・

リコは健気な泣き顔でコクンコクンと頷いた・・・

「・・・・・・・・・」

・・・少し、迷った・・・いやいや・・・!

「だから、この戦いが終わってから・・・ね?」

「・・・・・・」

僕がそう言うと少し顔を赤くしてリコは小さくコクンと頷いた。

何気に凄い事を会話してないか・・・?僕達は・・・

ふぅ・・・何か疲れた・・・何せ付きっ切りで看病してたから・・・

「それじゃあ、リコ・・・僕は部屋に戻って寝るよ・・・」

起きたらミルフィーさんと交代してあげよう・・・

ハシッ・・・

ベットから腰を浮かせようとした瞬間、リコが僕の右腕を掴んだ・・・

「ん?どうしたの?」

「・・・・・・」

リコは少し恥ずかしそうに僕の右手の平に何かを書き始めた・・・

・・・・・・

「あ、お腹が空いていたんだね!あ、あはは・・・分かったよ・・・リコの為なら頑張って取って置きのデザートを用意するよ・・・」

リコは首を振って“違います”と表現してるけど、敢えて見ない事にしよう・・・

「それにしても、リコもミルフィーさんに似て甘い物に目が・・」

「!!!!」

ポカン!

「・・・って!?」

リコにポカンと頭を叩かれてしまった・・・

「すいません・・・」

リコが言ってきたのは“そいねしてくれませんか?”だった・・・

リコはベットのスペースを半分空けてきた・・・

う、う〜ん・・・

「しょ、しょうがないなぁ〜リコは〜・・・」

僕は照れ隠ししながら布団に潜り込んだ・・・

リコの体温で布団がホカホカに暖まっている・・・

そう言えば、リコってエネルギー節約とかいって暖房は使わないからなぁ〜・・・

「う〜ん・・・リコって節約上手なお嫁さんになるかもしれないなぁ〜」

「・・・っ!?」

ボン!

「ん?・・・どうしたの?」

リコが口で表現する・・・

“カズヤさんってだいたんですね”

・・・・・・・・・

リコ・・・その言葉だけは君には言われたくない・・・

「リコ・・・頼むから、あんまり僕を“誘惑”しないでね?」

今でも君の体温が伝わってきて僕の方は大変なんだから・・・

そして、リコはにこやかに・・・

“イヤです”

と言ってきた・・・・・・

僕は寝る前に思った・・・たとえ、言葉が通じなくても気持ちは伝わるし、僕とリコの気持ちは既に繋がっているんだ・・・と・・・

 

・・・とここまでは良かったんだけど・・・

翌朝・・・

 

「う、うぅ〜ん・・・」

僕が目を覚ますとそこはリコの部屋だった。

「ふあ〜あ〜そうだ・・・リコの部屋で寝てたんだ・・・」

そして、隣にいる筈のリコを驚かせようと思って、おもむろに顔を振り向かせようとリコの肩を掴んだ・・・そしてこの時、僕は最大の過ちを犯してしまったのだ・・・うぅ・・・

「リコ・・・おはようのキスを・・・」

「え、え!?」

あ、あれ・・・?リコの声じゃないぞ・・・

というか体が硬い・・・リコの体は柔らかい・・・いくら何でもこれはおかしい・・・

・・・本当はもう、隣にいる人が誰なのかに気付いている・・・

いや、言われなくても分かってはいるんだけど・・・

どう、オチをつけて誤魔化していいのかが分からないんだ・・・

君ならこういう状況ならどうする・・・?

 

      1.「何て言うわけ無いじゃないですか〜!」と笑って誤魔化す。

      2.「何をしてるんですかーーーっ!!」とりあえず突っ込む。

      3.ここは敢えて「桜葉が好きだから・・・」と言って開き直る・・・

 

俺は面白そうなので迷わず三番を選ぶ事にした・・・悪い・・・カズヤ・・・

俺・・・自分の好奇心には逆らえないんだ・・・悪魔だし・・・

後、三番は敢えて言うよりかヤケクソとの表現の方が正しくねぇか?

 

「桜葉が好きだから・・・」

「え、えぇ!?そ、そうだったのか・・・!?」

僕は彼女?の顔に手を添える・・・何かじょりじょりする・・・

気付け〜・・・僕〜・・・気付け〜・・・引き返すなら今だぞ〜?

 

1.いい加減に現実を受け入れる

2.いや、妄想王国バンザ〜イ!

 

二番!!(即答)

 

「当たり前じゃないか・・・愛しているよ・・・」

「う、う〜ん・・・参ったなぁ〜俺にはそっちの気がねぇからなぁ〜・・・」

 

もう、無理です・・・気付かないフリは無理です・・・現実逃避は無理です・・・

もう、あきらめました・・・現実を受け入れます・・・

もう、僕で遊ばないで下さい・・・僕はMじゃないんです・・・

MはマイヤーズのMです・・・(オイオイ・・・)

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

バタバタ!!

「・・・・・・っ!!?」

僕の悲鳴に驚いたリコが歯ブラシを咥えたまま飛び出してきた・・・

リコ・・・気持ちは嬉しいけど、少し行儀が悪いよ・・・

はい、現実逃避はこれまで。

 

「な、ななな・・・何をしてるんですか!?」

いやいや・・・本当に・・・

「え、いや・・・モーニングコールに・・・」

「いりません!普通に起こしてくださいよ!というかわざとでしょう!?」

「さぁ・・・?」

確信犯である隣のロキさんは大袈裟に天秤の手にした・・・

 

「・・・・・・」

あ、リコが歯ブラシを落とした・・・

「おはよう、我が娘よ。」

状況を飲み込まずに気楽に挨拶をするロキさん・・・絶対に楽しんでるでしょう・・・

「さっきな・・・カズヤに告白されてしまった・・・どうしよう・・・」

「・・・・・・っ!?」

ハッと真に受けるリコ・・・オ〜イ・・・

「違う!そんな事言ってない!!」

リコ〜・・・常識で考えたら分かる事だよ〜・・・

しかし、その後というか案の定リコは泣き出して、僕とロキさんがリコのご機嫌をとるのに膨大な時間を費やしたのは言うまでも無い・・・はぁ〜・・・

 

〜神々の酒宴〜

 

話は早朝か昨夜へと巻き戻る・・・

「よく来てくれたな・・・」

「いえ、遅れてしまいました・・・申し訳ありません・・・」

アバジェスの部屋では久しぶりに師匠と弟子が再会していた・・・

「いやいや・・・急な呼び出しだったからな・・・」

「お気になさらないで下さい・・・」

レイは鬱陶しそうに紅い仮面を外した・・・

仮面の下には女性と見間違えそうなほどに整った顔が現れた・・・

しかし、今は心なしか口元がにやけている・・・

「ときに、レイよ・・・何か面白い事でもあったのか?

「い、いえ!!そのような事は決して!」

レイはその整った口を引き締めた。

「まぁいい・・・」

慌てているレイはまさに怪しさ大爆発だったのだが、アバジェスは敢えてそこに突っ込まない事にした・・・

「用件は先に伝えた通りだ・・・」

「タクトの事ですか・・・」

「ああ・・・あの傷ではタクトといえども長くはもちまい・・・」

「でしょうね・・・グングニルを直撃で喰らって生きている時点で奇跡的ですから・・・」

「そこで、お前に治癒してもらいたい・・・」

「お断りします・・・」

「レイ・・・」

「ラスト・リヴェンジャーの特性を知っておきながらあいついつものように後先考えずにシャイニング・サンを放ったのです・・・その結果NEUEは覚醒したシリウスとラスト・リヴェンジャーに食い尽くされます・・・奴はそれだけの罪を犯したのです・・・その結果、死ぬというのであればそれは当然の事です・・・」

「これは命令だ・・・」

命令・・・その言葉にレイが怯んだ。

「・・・っ?い、いかにマスターの命令と言ってもこれだけは譲れません・・・!」

実はレイ・桜葉がここまで嫌がるのには治癒方法に原因があるのだ・・・

「・・・これを見ても同じ事が言えるかな・・・?」

そう言うとアバジェスは後ろの棚から一本の酒瓶を取り出して机の上に置いた。

「・・・こ、これはもしや!?」

「ふっふっふっ・・・そうだ・・・銘酒 ゴクツブシ・・・この間ダイルから送られてきた試作品だ・・・まだ開封もしていないぞ?ロキにも当たらせていないぞ・・・?」

アバジェスはレイにちらつかせるようにまたは催眠術のように酒瓶を振り始めた。

「ほぉ〜れ♪ほぉ〜れ♪」

「・・・・・・」

レイは羞恥心のせいか少し顔を赤らめて酒瓶を目で追っている・・・

「試作品だから幾ら金を出しても手に入らない一品だぞ〜♪」

「・・・・・・っ!」

この悪魔ことルシラフェルを子供の頃から育ててきたアバジェスには既にレイの興味が完全に酒瓶に向いている事に気付いていた・・・実はレイは父親のロキとは正反対のようで、結構似ているところがある・・・ちなみに桜葉家の人間は実は全員がアルコール類が大好きという事実がある・・・龍は酒に弱い・・・そして、ロキやレイは何杯アルコールを摂取しようが酔わないのだが、桜葉家の女性はめっぽう酒に対する抵抗力がゼロに近い・・・

この事については後に明かされる事になるだろう・・・ちなみにこの事について、ロキは『ミルフィーには絶対に飲ませるな!』としか言っていない・・・少なくともミルフィーユが酒を飲んだ時があるのは事実だという事だけは分かっている・・・

「・・・どうする?」

「・・・・・・はぁ〜・・・マスターは本当に人が悪い・・・」

レイは前髪も手で押さえてため息をつきながら悪態をついた。

「それは了承という解釈でよろしいかな?」

「はい・・・」

次の瞬間、二人の手元にグラスが現れた。

文字通り、何も無い所から現れたのだ・・・

とは言え、彼らにしてみればどうと言った事もない芸当だ・・・

アバジェスは構築者でレイもその弟子なのだから・・・

アバジェスが栓を空けて二人分のグラスに注いだ・・・

「む・・・ダイルも腕をあげましたね・・・」

レイが飲んでもいないのに言った。

「ほう・・・分かるか?」

「はい・・・この輝きは素晴らしい・・・余計なものが含まれていません・・・樽の口にもかなりこだわっていますね・・・木屑が入っていない・・・」

この二人の視力は人間レベルではないので公開は控えておこう・・・

二人が早速、飲もうかとした時だった。

「おいおい・・・俺を呼ばないとはどういう了見だ?」

アバジェスの部屋に無断で入ってきた男はロキ・・・

彼と二人との関係を簡単に復習しておこう・・・

ロキ・・・アバジェスの一番目の弟子にして因縁のライバル・・・

レイ・・・ロキの長男にしてアバジェスの二番目の弟子だ・・・

 

「・・・・・・何でお前を呼ぶ必要があるんだよ。」

レイがその碧眼色の眼で睨むが、ロキはその程度で引く男ではない・・・

ちなみに、レイは怒ったり、本気になったりする時には真紅の眼に変わる・・・

「俺が飲みたいからだ。」

ロキは至って自分の欲望に素直だ。

良く言えば素直・・・裏表が無い・・・悪く言えば只のワガママだ・・・

「・・・・・・マスター、迎撃の許可を。」

レイはその整ったこめかみに青筋を立ててアバジェスへ許可を求めた。

ちなみにその綺麗な眼の色も真紅へと変わっている。

「まぁ、待て・・・そういきり立つな・・・ここで争えば折角の酒も台無しだ・・・」

そう言ってアバジェスはロキの分のグラスも用意してやった・・・大人である・・・

「かっは〜!ダイルの腕は相変わらずだなぁ!オイ!!」

ロキは酔っ払わないというより、一年中酔っ払っているようなものだろう・・・

「・・・・・・チっ」

レイはどこか憮然とした顔持ちで酒を飲んでいた。

「・・・ったく、こんな上物を俺に隠れてコソコソ飲むとはいい度胸だぜ・・・」

“隠れて”という言葉がレイを刺激した。

「別に隠れてなどいない・・・お望みとあらば対決してやるぞ・・・」

「ほう・・・やってみろや・・・クソガキ・・・」

「後悔するなよ・・・クソジジイ・・・」

グラスを置いて本気で闘る気満々の親子・・・

こんな二人がミルフィーユやアプリコットと同じ血を引いているとは考えづらい・・・

「待て、二人共そこまでにしろ・・・酒が不味くなる・・・」

「し、失礼しました・・・・・・ふん・・・」

レイはフンとロキから眼を逸らしてグラスを取り直した。

「ちっ!」

ロキも舌打ちをしてグラスを取り直した。

「ちなみにダイルからお前が2〜3本よこせと脅迫しながらかっぱらっていったので、レイにあげる分が無くなったと聞いているが・・・?」

アバジェスはロキに事実確認質問をした・・・

「さぁ?」

すっとぼけるロキ・・・アバジェスの言った事が真実であるか否かは、ここまでロキという鬼を見てきた者なら既に答えは分かっているだろう・・・

「テメェなぁーーーっ!!!」

怒ってロキに掴みかかったレイも先程述べた鬼を見てきた者である・・・

それから二人の衝突をアバジェスが上手く避けさせて酒の席も終わりに近づいていたその時、アバジェスはレイにもう一つの本題を尋ねる事にした。

「時にレイよ・・・ブラウド財閥のでっち上げをどう崩すつもりだ?」

「・・・・・・なるほど、それが聞きたかったのですか・・・」

レイはグラスを置いてアバジェスに向き直った。

「さっさと言えよ、クソガキ。」

「うっせ、黙れ、ば〜か・・・」

「・・・・・・上等だ・・・このクソガキ・・・」

「二人共・・・シヴァの将来に関わる事だぞ?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

二人は憮然とながらも大人しくした。

「それで、レイ・・・どうやって崩そうと言うのだ?」

「ご安心下さい・・・既に切り札は揃っていますよ・・・入れ。」

レイが指を鳴らすと何者かが入ってきた・・・

「お久しぶりです・・・神王様・・・」

「うむ・・・久しぶりだな・・・白虎・・・いや、今はソルダムと呼ぶべきか?」

入ってきた何者かとはセルダールの国王ことソルダムだった・・・

「いえ・・・伝説の黄金の騎士様からそのような心遣いを受けるのははむしろ恐縮で・・・正直、困ります・・・」

 

しかし、アバジェスは手を横に振った・・・

「白虎よ、俺は既に神王ではない・・・お前の方こそ、そのような気遣いは不要だ。」

「しかし・・・」

「白虎・・・ここに来る前も言っただろう・・・俺の事を冥王などと呼ぶなと・・・」

「は!御意!」

「いや・・・だから、そういうのを止めろと・・・まぁいいや・・・」

 

「なるほど・・・これで後は雅人が目覚めれば全ての切り札は揃うと言うわけか・・・」

「神王様・・・恐れながら申し上げます・・・」

「ん?どうした・・・?」

「先代の神皇・・・拳神ロキ様の前でお話するのも心苦しいのですが・・・」

そう言ってソルダムこと白虎はロキに目線を向けた。

「かまわねぇよ・・・」

「は!」

ロキこそが先代の神皇である・・・

もっとも、神王とは違って神皇には職務などは存在しないが・・・

「ゼイバー・ブラウドの演説を拝見したのですが、あれでは自分を討ってくれと言わんばかりの内容です・・・万が一にもあの演説が虚偽のものであると知れればゼイバーはその信頼を完全に失い、自らが討たれるでしょう・・・」

 

ロキが真面目な声でソルダムに話しかけた。

「白虎・・・」

「はい?」

それこそがゼイバー・ブラウドの望みなんだよ・・・戦争を引き起こさせ、平穏を全て混沌に変えてしまう・・・それは例え、己自身が討たれても遺志を継いだ者によって実行される・・・そして、その遺志を継いだ者こそが三代目の神皇だ・・・

「遺志を継いだ者・・・ま、まさか・・・」

「そうだ・・・それは決して人ではない・・・つまりは混沌の体現者さ・・・」

「混沌の体現者は平穏や勝利などは望んでいない・・・ただこの世を混沌で覆い尽くすだけだ・・・奇跡の体現者完全の体現者はどちらにしろ、人を生かす事を前提にして進むべき道示す・・・しかし、混沌の体現者は違う・・・混沌を制御しうる者人を死滅させる事を前提に進むべき道を示す・・・もしくは道を閉ざしてしまう・・・」

「混沌を制御するには“混沌”に認められなければならない・・・そして、混沌が認めているのは正義や生きる事や進化への道などでは無い・・・混沌が認めるのはあくまでこの世に答えを出さない者・・・常に迷う者だ・・・この意味が分かるか?白虎・・・」

「・・・迷う者・・・つまり、それは・・・フェイトを否定する者ですか?」

「そうだ・・・運命とは既に決められた道・・・それは混沌の望んでいるものではない。永遠の世界・・・永遠に繰り返す混沌の世界・・・矛盾を混沌で誤魔化している世界・・・それは混沌自身がこの世界の継続を望んでいるからだ・・・己の復讐を永遠に繰り返す為に・・・殺すだけでは混沌の復讐は終わらない・・・混沌は単体の意思で動いているわけでは無い・・・それ故に混沌・・・混沌は既に自分自身で動く事が出来ないのです・・・動く時は常に総意の元で動きます・・・」

「レイよ・・・その混沌の復讐とはまさか・・・」

「はい、ご想像の通りです・・・マスターはもう、この世界の仕組みが大方理解できていると思います・・・この混沌の復讐劇を私は運命の輪と呼んでいます・・・」

レイが何かを聞かせたがっているのが分かった・・・

「・・・・・・ロキ、白虎・・・少し、俺とレイを二人きりにさせてくれないか?」

「あ?」

「了解しました。」

悪態をつくロキとは正反対で白虎は素直に出て行った・・・

「ロキ・・・」

アバジェスもさすがに困っている・・・

「構いません・・・私がマスターに話したがっている事はそのクソジジイにも関係してる事ですから・・・」

「誰がクソジジイだと・・・コラ?」

「ロキ、少し黙ってろ。」

「チッ・・・」

ロキは懐から煙草をふかして静かになった・・・

そんなロキを見てレイは『はぁ〜』とため息をついた。

「レイ、教えてくれ・・・これから起こる事を・・・のシナリオを・・・」

そして、レイは語り出した・・・

 

この世の創世から終焉までの経緯を・・・

 

「そ、それが、奴の復讐劇か・・・そして、それがあいつ正体か・・・」

・・・ト

「はい。」

「本当にとことんまで腐った奴だぜ・・・絶対にさせてなるもんかよ!」

ロキは苛立だしげに灰皿に煙草を押し付けている。

「ロキ・・・これから起こる事は全て運命によって定められている。阻止する事はできない・・・できるとすればそれは“アトロポス”のみだ・・・」

アトロポス・・・運命の切り手・・

スレイヤー・オブ・デステニー・・・

「阻止なんて出来るわけが無いだろうが!!」

「ならば、その“直前”までは素直に従え・・・さもなければ消されるだけだ・・・

「カズヤとリコが互いを求め合っているのは“その予兆”だったのか・・・」

「はい・・・リコの失語症はあの馬鹿女が強運を無くした時と同じです・・・馬鹿女はデザイアとして覚醒するのが早すぎた為に一時的に偶然性という概念から遮断されたのです・・・まぁ・・・あいつのドジっぷりは今に始まった事ではありませんが・・・」

「・・・そのドジッ子の下着を洗濯したり、こっそり着服していたのは誰だ?」

「洗濯させられていたのは俺だが、後者はお前だ。

「着服とは失礼な・・・匂いを嗅いだりしたぐらいだ!ちゃんと返したぞ!?」

「それは、既に変態の領域だ・・・ちなみにリコに同じ事をしたら殺すぞ・・・」

「あ、別にいつ闘ってもいいけど、リコにも既にやってあげたな〜

「制裁だ・・・この変態野郎っ!!」

こめかみに青筋マークのついたレイがロキに掴みかかろうとした次の瞬間・・・

「お前等・・・俺を舐めているのか・・・」

アバジェスが殺気混じりの声で二人を威嚇した・・・

「あら、いや〜ん♪怒っちゃだ〜め♪」

「・・・・・・・・・」

アバジェスは無言のまま立ち上がる・・・

どうやら、ロキの言葉が龍の逆鱗に触れたようだ・・・

「お?闘る気かテメェ?」

ロキは喧嘩上等と言わんがばかりに立ち上がる。

「す、すいません!マスター・・・!!」

レイはタジタジとプッツン寸前のアバジェスに謝っている・・・

「・・・・・・まぁいい・・・話を戻すが、ミルフィーユはタクトの危機を救う為にラッキースターに願った・・・そしてそれをデザイアが聞き入れた訳だな?」

(願う・・・デザイア・・・ふふ・・・デザイアか・・・)

「はい、そうです・・・そしてリコの場合は約束をしたからでしょう・・・約束とは運命との仮契約みたいなものですから・・・」

「あ〜・・・な〜るほど・・・あのこっ恥ずかしい、プロポーズがきっかけか・・・」

「なるほど・・・リコはその約束を忘れまいとずっとその事を気にかけていたからか・・・それが募りに募ってフェイトへの覚醒を始めたのか・・・」

「はい・・・そして、その願いが成就に近づいた時にそれは仮契約から本契約となり、混沌の海に運命の道標が定められます。絶対に覆る事の無い因果が揃います・・・その時、奴が降臨します・・・あのデザイアとあの馬鹿が契約を結んでがあいつが誕生したように・・・」

「とは言え、俺は妨害なんてしたくねぇ・・・」

「それは、お前の判断に任せる・・・だが、俺はこのまま見届ける・・・カズヤがどの道を選ぶのかはカズヤ自身が決める事であり、俺達には選択を強要する事はできない・・・マスターは以前、カズヤに強要しようとしましたね?」

「オイオイ・・・」

「ああ・・・そしたら、あいつから脅迫されたよ・・・」

「それは最後通告です。マスター・・・これ以上、あの二人に介入するのは避けて下さい・・・あいつは気まぐれですから、いつ予定を繰り上げるか分かりません・・・

「ああ・・・気をつけるよ・・・」

(ふふ・・・そうだ・・・運命に抗わなければ良い・・・我の定めたシナリオに従ってさえいればお前には何もしないよ・・・)

「あと、新型のアンフィニ搭載型紋章機を二機持ってきました・・・白き月の最深部に偽装しておいて置きました・・・」

「・・・俺とアバジェスの分か?」

「ああ・・・」

「俺達も戦闘に参加してもいいのか?楽勝になってしまうが・・・」

「いえ・・・今回はロキだけに出撃せよとのあいつからの指示です。」

「・・・・・・なるほど、あいつとの決着をつけろってか・・・」

「・・・本当に悪趣味な奴だな・・・その上、無敵ときたもんだ・・・」

「我々は自分の理解を超えた者を全ての起源と呼び、混沌と名付けました。認識した証として・・・我々は“混沌”という名の曖昧さであいつ認識できているのです・・・

しかし、あいつとて我々人間の想像力の範疇での戦い方しか知りません・・・人間の想像力の範疇でしか行動できないのなら倒す事は出来る筈です・・・あいつの正体を考えれば分かる事です・・・」

 

〜騎士道の矛盾

 

「う・・・ここは・・・」

リリィ・C・シャーベットが目を覚まして辺りを見渡すとそこは自室だった・・・

正確には白き月で割り振られた部屋だが・・・

「・・・っ!?」

リリィはいつも懐に置いてある剣が無い事に気が付いた・・・

「そうだ・・・私の剣は・・・もう無いのだ・・・」

それに私にはもはや剣を持つ資格など無いのだ・・・

守るべき国は既に無い・・・

『今のお前には、騎士たる資格も剣士たる資格も無い・・・』

アバジェスから突きつけられた言葉が脳裏によぎる・・・

アバジェス・・・神界で最強と言われた剣士にして黄金の騎士・・・

私とは剣士としての才能も経験も違う・・・

おそらくはアバジェスの言う事にこそ剣士たるべき心構えがあるのだろう・・・

 

「・・・体の方はもういいのか・・・?」

「・・・誰だっ!?」

私はまったく侵入者の気配に気が付かなかった・・・

ここまでなまっているとは・・・

「俺だ・・・」

「お、お前は・・・」

侵入者は何と今、一番顔を合わせたくない者だった・・・

「俺はこれでも今回の戦いの指揮を任せられている・・・隊員のコンディションの調整も職務の一つだ・・・とは言っても大抵はお前達に戦って来いと言うだけだがな・・・何せ、俺達は防戦するしかないからな・・・騎士道のようにな・・・」

「騎士道・・・」

アバジェスはリリィの目を見据えて話しかけた。

「のう・・・リリィよ・・・お前にとって騎士道とは何だ?」

「私にとっての騎士道・・・」

「セルダールの騎士道は俺が伝えたものだ。セルダールの先住民がまだ武器を持たない時代に剣と騎士道を教えたのだ・・・そこからセルダールの建国が始まった・・・

「な、何・・・!?」

「俺やレイはNEUEの開拓にあまり関われなかったから直接、干渉できたのはセルダールやマジークのみだ・・・レイがどこにどう干渉したのかまでは分からんがな・・・そんな事よりもだ・・・お前の騎士としての心構えは何だ?」

「それは・・・それは・・・」

「まぁいい・・・騎士道・・・主に忠誠を誓い、養われた優れた戦闘能力・・・常にその心は勇気に溢れ、清らかに高潔で正直・・・更に礼儀正しく崇高な行いをなして信頼を得てその統率力を維持して軍を率いて主と国を守る・・・弱者を守る・・・

「・・・・・・一つ足りない・・・」

「それが、お前に足りないものだ・・・」

「私は寛大では無い・・・そう言いたいのか?」

「その答えはお前が一番知っている筈だ・・・」

「私は寛大のつもりだ・・・!」

「自覚してないとはほとほとに呆れた・・・寛大さを身につけようと思うのなら、騎士道は守れないのだ・・・そんな事も分からずに騎士の剣を振っていたのか・・・」

アバジェスはため息をついて目を閉じた・・・

「何だと・・・」

「寛大に振舞う為には時には嘘をつかねばならん、敢えて邪(カルマ)を見逃さなければならない時もある・・・お前にはそれが出来まい・・・いや出来なかっただろう・・・」

「・・・しかし、それでは騎士の道に反するではないか!」

「だから言っただろう?寛大さを身につけようとするのなら騎士道は守れないと・・・」

「馬鹿な・・・それでは騎士道とは・・・」

「騎士道が夢理想論でしか無いから俺やレイ騎士をやめて戦士となったのだ・・・

「せ、戦士・・・?」

「まぁいい・・・騎士の十戒というのを知っているか?」

「戒めの事か?それがどうした・・・」

「戒めとはわざと過ちをおこさない為に自分に課す制限の事だ・・・」

「・・・・・・」

「しかし、現実には戒めなど実際の戦闘では邪魔でしかない・・・お前は知らないだろうが、俺やレイが剣を振るって戦っていた頃の戦場は常に欺瞞に溢れていた・・・それでもレイは騎士道を最後まで守り続けた・・・

「あの死神のメシアが・・・信じられん・・・」

リリィの知っているレイ・桜葉は死神のメシアとして様々な欺瞞で自分達を苦しめてきた騎士には程遠い強敵だった・・・

「レイが騎士を辞めたのは外宇宙からEDENを守り抜いた後だ・・・レイは最強の守護者としてアルフェシオンと共にEDENへ介入しようとしてきた外宇宙の連中を追い払ってきた・・・しかし、それはあくまで綺麗な戦い方だった故に外宇宙の介入は後を絶たなかった・・・そして、奴はシャトヤーン暴行の際に騎士を辞め、外宇宙の連中がリコを誘拐した際に最強の戦士と化した・・・その後は前に話した通りだ・・・悪魔と化したレイの報復攻撃を見せしめられた連中はそれ以来、介入してこなくなった・・・

「見せしめ・・・」

見せしめ・・・それは明らかに騎士の道に反する・・・

「騎士道には反したが、結果的にレイは今日までEDENを守り抜いた・・・」

「・・・私は守れなかった・・・」

「お前の泣き言など聞くつもりはない・・・ついて来い・・・」

 

戦士

 

一方、ルクシオールでは・・・

「やれやれ・・・何で俺がこんな事を・・・」

レイ・桜葉はぶつぶつ言いながら、タクトの部屋を目指していた・・・

手順としては妹のミルフィーユの所へ行くのが先なのだが、ミルフィーユの事を誰よりも知り尽くしているレイは妹がタクトの部屋にいる事を直感的に感じていた・・・

レイは時計などはしてないが時刻が深夜の2時を示している事を知っていた・・・

 

「間違いなく、二人共寝ているだろうな・・・」

俺に言わせれば、あの天然馬鹿女(ミルフィーユ)はこの時間に寝てなかった試しが無い・・・というか起きていたら俺がボディブローKOして寝付かせていたんだがな・・・

(*あんたは悪魔ですか!?)

 

「何か、俺はずっとあのバカップル(タクトとミルフィーユ)に振り回されている気がするぞ・・・そう考えると何か腹が立ってきたな・・・」

俺は誰もいない通路を進みながらバカップルへの復讐を考えていた・・・

 

 

一方、静まり返った白き月の謁見の間ではアバジェスと彼に引っ張り出されたリリィが対峙していた・・・

フローライトだけが二人を照らしている・・・

「こ、このような所まで引っ張り出して何のつもりだ・・・!」

「何のつもりも何も・・・果たし合いだ・・・」

そう言ってアバジェスは二つの騎士剣を召還して二本を床に突き刺した。

木刀では無く、本当に人を殺傷できる真剣(本物の剣)だ・・・

それも床に突き刺さるほどの鋭さと強靭さをかねそろえた名剣だ・・・

「な!?斬り合う気か!?」

「仮にも剣士の家系に生まれた者がそんなにうろたえる事ではなかろう・・・」

アバジェスはそう言うと自分の方に突き刺さった黄金の剣を引き抜いた・・・

その剣の名は黄金の剣バルムンク呼ぶ・・・

またの名を魔剣 グラム・・・

アバジェスが黄金の騎士と呼ばれ活躍していた時に使われていた剣だ・・・

そして、とある事情でこの剣を叩き折られたアバジェスが新しく創り直したのが、タクトが所有するエクスカリバーだ・・・

「剣を取れ・・・7分後にお前に斬りかかる・・・」

「くっ・・・!」

「それが今、お前が置かれている状況だ・・・」

リリィはアバジェスから放たれている本物の殺気を感じて自分の方に突き刺さった剣を抜こうとした・・・しかし、剣は抜けなかった・・・

「なっ!?」

「・・・その剣がお前を戦士だと認めてない・・・故にお前には抜けない・・・」

「わ、私は・・・!!」

リリィは全身全霊をかけて剣を抜こうとするが一向に抜けない・・・

「お前は剣士なんだろう?」

「・・・っ!?」

「だから抜けない・・・」

「馬鹿な!?剣が剣士を拒絶するなど・・・!?」

「その剣は誠実な者を選ぶ訳では無い、正義を選ぶ訳でもない・・・認めた者が例え悪鬼羅刹のような者であればその秘めたる力を発揮するであろう・・・

「そ、それではまるで・・・魔剣ではないかっ!?」

「魔剣の名にも二つ意味がある・・・それは禍々しい呪いをかけられたティルヴィングのようなものと、この我がグラムのように魔力を込められたものもある・・・

「今は名前などどうでもいい!」

「そうだ・・・それが最大のヒントだ。」

「な、何・・・?」

「急げ・・・後5分だ・・・」

「・・・っ!」

リリィはアバジェスの方を睨む暇も無く剣と戦っていた。

「その剣の名前はデュランダル・・・不滅の剣と呼ばれている・・・」

「不滅・・・折れる事の無い剣・・・」

私は自問自答していた・・・

矛盾した騎士道・・・剣に見放された剣士・・・

そして、数分後には私は目の前の男に斬られる・・・

「・・・逃げても構わない・・・追跡はせん・・・」

私はその言葉で目覚めた・・・

そうだ・・・私は誇りの為にではなく守る為に戦ってきた・・・

そして、守り抜く為に諦めなかった・・・

それは私達エンジェル隊がそうであったように・・・

私達の天敵だった死神のメシアは何と言っていた?

『俺は目的の為には手段は選ばない・・・』

そして、死神のメシアはEDENを守り通してきた・・・

騎士の誇りを失っても諦めずに・・・

いや・・・気付いたのだ・・・偽りの誇りというものに・・・

そして私も今、気が付いた・・・

しかし、誇りは必要だ・・・

誇りとは人から与えられるものでは無い・・・

自己心酔した妄想から生まれた幻想でもない・・・

真の誇りとは・・・必ず成し遂げようとする信念だ。

何としても守りたい・・・

先のセルダール戦の際に私の胸にあった思いだ・・・

守りたいのならば、時には邪に染まる事も必要だ・・・

守り抜きたいのなら、手段を選ばずに最後まで諦めないのが本当では無いのか?

ならば、どうすればいい・・・

ならば、ここで殺されては駄目だ・・・

第二のセルダールを創りたくなければここで死んでは駄目だ・・・

ならば、今のこの状況を打破する為にはどうすれば良い・・・

あの男を倒せ・・・戦え・・・諦めるな・・・

しかし、私は正直怖かった・・・

相手は神・・・人間を超越した神だ・・・

ましてや相手ははその神々の頂点である、神王の座に実力で上り詰めた強者だ・・・

私とは才能も実力も経験も桁違いだろう・・・

しかし、今の私の胸の中にあるのは恐怖心だけでは無い。

守りたいと思う願いだ・・・

諦めないという誓いだ・・・

この真の誇りだけは誰にも譲れない・・・

 

「後、ニ分だ・・・」

 

ならば、戦え・・・そして、生き残れ!

戦士になれ!!

 

「私は戦士だあぁぁーーーーーっ!!」

そして剣はいとも簡単に抜けた。

「・・・・・・」

「す、すごい・・・」

凄い・・・軽い・・・こんなに長いのに重みを感じない・・・

デュランダルは非常に細長い形をしていた・・・

刀身は全て銀一色でまさに銀の剣だ・・・

 

「・・・剣が揃ったな・・・ではいざ尋常に勝負・・・」

アバジェスが口元を隠し、剣を釣竿のように構えた・・・

そして、見ているのは私の口元だ・・・

これこそがタクトから聞いたアバジェスのカウンターの構え・・・

しかし、もはや同じ過ちはしない・・・攻めに守ってもやられるが、まだ勝機はある・・・しかし、守りに入れば間違いなくやられる・・・これこそが、アバジェスのトラップ・・・強烈なカウンターで相手を受身状態にさせて、隙を狙って斬りかかる・・・あの死神のメシアと同じ様に・・・ならば、前に進んでアバジェスを討つ!

「うおおぉーーーー!」

私は迷わず踏み込んだ!

刃先はこちらの剣の方が長い!

そして、私がけさ斬りしようとした次の瞬間、アバジェスの姿が消えた。

そして、私の首の横に鈍い痛みがはしった!

斬られたのだ・・・

「っ!」

どうやら跳ね飛ばされはしなかったようだが・・・

 

リリィには見えなかっただろう・・・これがアバジェスのカウンター・・・

見えないカウンターだ・・・

陰月流 大蛇薙

数々の強者を斬り捨ててきたアバジェスの剣だ・・・

アバジェスはリリィが振りかぶろうとする前に宙にムーンサルトを描きながらその剣で軽くリリィの首の横をかっ斬ったのだ・・・

「いいぞ・・・悪くはない・・・あのまま守りに入ろうものなら首を跳ね飛ばしていたところだ・・・」

アバジェスはあっさりと怖い事を言う・・・

リリィは知らないだろう・・・

アバジェスにとって命は二の次なのだ・・・

人の死に感傷を持ち込まずに、常に現状を把握する・・・

あのレイですら立ち入れない戦士としての領域にアバジェスがいる・・・

その技量と精神的な心構えはレイ・桜葉をも凌駕する・・・

「怖いか?」

もちろん怖い・・・人は首を刎ねられれば死ぬ・・・

それは古来よりの絶対の鉄則・・・

だが、それを乗り越えられてこそ、真の戦士・・・

「ほざくな!」

私は剣の柄を60度回転させてアバジェスを薙ぎ切る!

アバジェスはそれをあの魔剣で受け止めた。

しかし、その魔剣はいとも簡単に砕け散って・・・

「ぐっ!?」

横腹に棒で殴られたような衝撃を受けて私は倒れ込んでしまった。

「俺は戦いの道具の一つとして剣を用いているだけで、基本的には相手から斬りかかられた時のみに抜く・・・それが俺の誇りだ・・・俺はこの体で剣以上の戦闘を可能とする・・・故に俺の戦い方は騎士では無く、戦士なのだ。」

体がこれっぽっちも動いてくれない・・・

「分かるか?リリィ・・・剣で斬り合う時に人の意識は剣の刃先に集中してしまうのだ・・・そして、それ以外の情報があやふやなものになりやすい・・・さっきのお前もそうだ・・・そして、そこに俺の回し蹴りが当たったと言う訳だ。」

「・・・・・・」

私はそれでも手をついて起き上がろうとした・・・

まだ、意識はある・・・

まだ、戦える・・・!!

その時、アバジェスが近づいてきて、私の首に触れてきた・・・次の瞬間、斬られた痛みは消えて、体は軽くなった・・・

「な、何のつもりだ・・・?」

「・・・・・・」

アバジェスは私の質問には応えずに弾き飛んでいった銀の剣を拾い上げた。

「リリィ・C・シャーベットよ・・・ソルダムの無念を晴らしたいか?」

「・・・お前に言われるまでも無い・・・!」

「晴らすまで戦い続けると誓えるか?」

そうか・・・アバジェスは私の迷いを・・・

「ああ、最後の最後まで戦い抜く・・・!」

そう言って私はデュランダルを受け取った。

「お前も戦士の端くれならばその剣に誓え、何が何でも生き残るとな・・・」

そう言って、アバジェスはリリィの元から去っていった・・・

そして、リリィはもはや自暴自棄な顔では無く、決意に満ちた顔だった・・・

「もし、ゼイバーと対面した時にはこの手で陛下の無念を晴らす・・・」

リリィは謁見の間に差し込んでいるフローライトの光にさらすようにデュランダルを掲げた・・・

新たな戦士が誕生した瞬間だった・・・

 

「ふぅ・・・この体に入るのもこれで何回目だ・・・?」

俺はタクトの部屋に潜入するなり、その傍で眠りこけていた馬鹿女の体を借りる事にした・・・つまり現在、俺の体は空っぽの状態で俺はミルフィーの体を使っているという状態だ・・・理解していただけたか?ならば、作業に入ろう・・・

タクトの火傷は確かに致命的だった・・・

何せ、人の身でアレを喰らったのだ・・・生きているだけでも奇跡的だ・・・

まったく・・・人間って奴はしぶとい・・・

本来ならこんな馬鹿は放っておいて、とどめを刺しておくところだが、マスターの命令だ・・・仕方ない・・・しかし、自分の体ではないにしろ、こんな事はしたくない・・・

「・・・・・・」

俺は馬鹿女の唇を少し噛み切って血を滲ませてタクトの傷口に当てた・・・

あ〜死にたい・・・

そう、この馬鹿を助ける方法は一つ、それはこの馬鹿の体に根付いている馬鹿女の細胞を活性化させるしかない・・・

馬鹿女の血が少しでも入れば後は勝手に治るだろう・・・

あ〜気持ち悪ぃい・・・

俺は馬鹿女の唇を治癒して元の状態に戻す・・・

そして、自分の体に戻る事にした・・・

「さて・・・引き上げるとするか・・・」

俺にはやる事がある・・・

おそらくブラウド達は二日後に辿り着く、それまでにブラウド艦隊の第四〜十一艦隊を壊滅させなければならない・・・

 何としてでもガイエン星系までで仕留めなければならない・・・  

 

・・・・・・と、それはそれとして・・・

俺はいいご気分で眠っているバカップルを見て仕返しを実行する事にした。

ここはこうして・・・っと・・・

それでもって風邪をひいたら悪いから掛け布団をかけてっと・・・

最後に同じ時間に起きるように魔法をかけて・・・・・・

よし、任務完了だ・・・

引き上げよう・・・

 

そして、翌朝・・・

 

俺は・・・目を覚ました・・・

もう、悪夢は見ない・・・

それもそうだろう・・・俺は悪夢を見せていたシリウスと戦ったのだから・・・

でも、俺なんでベッドで眠っているんだろう・・・?

確か、俺はシリウスにやられたような気がするんだけど・・・

幾らなんでもあんな化け物を倒せたわけがない・・・

ならば、どうやって・・・

「・・・ぁ・・・ふあ〜あ・・・あれ?あたし・・・」

ん?誰だろう?

と言って俺が横に顔を向けると、そこには・・・

ミルフィーがいた!

タクトさんがいた!

というかミルフィーは何も着ていない・・・

まずい・・・ミルフィーにはルシファーの時の記憶が無いんだった・・・

という事を冷静に踏まえると・・・

「イヤアアアアアアーーーーーー!!!」

となったのであった・・・

 

俺はミルフィーにぶたれた右頬をさすりつつ白き月の中を歩いている・・・大体の事は怒っているミルフィーに聞いたのだが、俺はかなり重度の火傷だったらしい・・・

「とは言っても火傷の跡なんかないしなぁ〜・・・」

ミルフィーはプンプン怒りながらも今こうしてピンピンしてる事が信じられないと驚いていた・・・あぅ〜・・・右の頬が痛い・・・

「お、お前!生き返ったのか!?」

アバジェスの部屋に向かおうとしていたら今、最も、会いたくて最も会いたくない奴と遭遇した。さて・・・殴るか・・・!

「朝っぱらから何て事をしてくれたんだよ!」

と言いながら殴りかかるタクト・・・

「朝っぱらから何トチ狂っているんだよ。」

バキィ!!

「ぐはっ!?」

それから俺はロキにKOされてアバジェスのところまで連行されていった・・・

 

「以上があの後で起こった事だ・・・」

俺は足元がぐらつくのを感じた・・・

「そ、そんな・・・俺がシャイニング・サンを撃ったせいで・・・」

俺はシリウスとの戦いの最中で欠陥紋章機 ラスト・リヴェンジャーは混沌を糧に無限の進化と修復を可能とした紋章機だとシリウス自身から聞いた・・・

しかし、そのせいでNEUEが消滅の危機に瀕している事に気が付かなかった・・・

ラスト・リヴェンジャーは今でもNEUEを喰い荒らしているそうなのだ・・・

ラスト・リヴェンジャーは混沌だけでなく人の魂も喰らう・・・

まさに最凶の紋章機だ・・・

 

そして、今回の騒動を口実にブラウド財閥がジュノーに総攻撃を仕掛けてこようとしている事まで聞いた・・・

バン!!

「でっ!?」

「落ち込んでる場合じゃねぇぞ・・・今度の戦いは練習じゃねぇんだ・・・死ぬ奴は死んでしまう・・・もう少し、シャキとしねぇか・・・!」

俺はロキに背中を叩かれて気合を入れなおした・・・

そうだ・・・決戦の時が来たんだ・・・

「そうだな・・・今度こそこんな戦いは終わりにしてやるさ!!」

「おう、その意気だぜ!」

 

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