第三章

 

ラスト・リヴェンジャー

 

 

嫌な奴

 

現在の時刻はP.M 7:00・・・

ブラウドとの戦いが終結した後で、俺達は白き月へ帰艦した。

皇国軍は現在、破損したジュノーの防衛衛星の修理に当たっている・・・

気に食わないがあいつの演説はEDENの人達を一つにまとめ上げたのだ。

 

現在、格納庫にはGAシリーズ、RAシリーズ、そして、エオニアのゼックイは配備されてある・・・ロキのGA−008も配備されたので、随分と賑やかになったものだと思う。

そう言えばそのGA-008のパイロットであるロキは珍しく誰とも話さずにそのまま部屋に帰っていった・・・てっきり、手を叩いて大喜びするのかと思ったのだが・・・

 

「しかし・・・何でこいつまで・・・」

今、俺が見上げているのはあいつの紋章機だ・・・

GRA-000 アルフェシオン・・・認めたくないが、強引に認めさせられた自他他者共に認める最強の紋章機だ・・・どうやら、収納している時は飛行形態にしているらしい・・・その漆黒のボディは光を吸収しているかのように光を反射しない・・・

ちなみに俺のGA-007やミルフィーのラッキスターとはGAシリーズとRAシリーズを挟んで収納してある・・・まぁ、七番機と仲良くね〜♪なんて感じで並ばせて収納しようものなら即座に喧嘩になって、白き月は壊滅するだろう・・・

「・・・・・・」

正直、俺はこの黒いラッキースター(アルフェシオン)にロクな思い出が無い・・・そのパイロットと一緒に・・・どちらかと言えばパイロットの方が嫌いなのだが、かといってコイツもその少し下ぐらいで嫌いだ・・・よし・・・仕返しといこう・・・

「バ〜カ♪バ〜カ♪」

俺は尻を振って、アルフェシオンを挑発した。

しかし、何も起こらなかっ・・・っでぇ!?

何か硬い物が俺の後頭部に直撃したのだ。

「あ、たたぁ〜・・・・・・な、何だぁ・・・?」

足元を見ると、スパナが落ちていた・・・

・・・・・・・誰かが投げたんだな・・・ちくしょ〜・・・

よぉし・・・こうなったら犯人を暴いてやるぞ!

「犬、シスコン、陰険、インチキ臭い変形・・でっ!!」

またしても頭にメガネレンチ(スパナの一種)がヒットしたのだ・・・

でも今度ははっきりと分かった・・・何故なら、俺は今度は真上をしっかりと見ていたんだからな・・・ものすんごく痛かったけど・・・

メガネレンチはワープをしたかのように俺の頭上現われてヒットしたのだ。

こんな事は人間には出来ない・・・

間違いない・・・犯人は・・・

俺はスパナと眼鏡廉恥(メガネレンチ)を拾い上げた・・・

(字が違う!字が違うってば!!)堯福ΗァΑ─

スパナは1000mm用・・・眼鏡廉恥は口径72mm用・・・

(・・・まったく、人の話を真面目に聞かないのが上手い人ですね・・・)・・・(--#)

まぁ・・・普通の人間が高さ2mから頭に食らえば即死しかねない殺傷能力をもちあわせている立派な凶器だ・・・流石は最強の紋章機・・・選ぶ凶器まで最強クラスだ・・・

さて・・・・・・投げるか。

「こんの紋章の無い紋章機がああああぁぁぁーーーーーー!!!!」

俺は二つの凶器をあいつ目掛けて投げた!

コォォンでは無くて、ゴオォン!という鐘のような音が鳴り響いた。

「うわっはっはっはっ!いい音がなるじゃないか!!」

ヒュン!

それはまさに一瞬の出来事だった・・・

俺の目の前にあいつのフライヤーが一機・・・

「・・・ってマジかよ!?」 (・Д・;)

 

(・・・何やってんだ・・・あの馬鹿は・・・)

俺はアルフェシオンに無視をしろと命令をだした。

 

「や、やる気か・・・この野郎・・・」

俺が七番機へ走っていこうとしたその時、フライヤーが霧散するように消えた。

「・・・?・・・・・・はぁ〜・・・」・・・・・・(´Д`;)

ヒヤっとした〜・・・って・・・この野郎!!

俺は身近にあった怒雷婆(ドライバー)をひったくって投げた。

(苦しい・・・苦しいよね〜・・・)(;--)・・・

スカッ!

しかし、怒雷婆はアルフェシオンをすり抜けていった・・・

・・・・・・・・・(´。`)

それが、俺を更に刺激した。

「こ、このやろーーー!!!」(#゜Д゜)

俺がありったけの眼鏡廉恥と怒雷婆をひったくって・・・

(もう・・・好きにしてください・・・)(´〜`;)

 

「・・・タクトさん!?・・・な、何をしてるんですか・・・」

「え・・・?」

俺が後ろを向くと、そこにはカズヤとリコがいた。

「な、何かその手にごっそり持った工具をアルフェシオンに投げつけようとしていたんですけど・・・?」

「いや・・・その通りなんだけど・・・」

 

「・・・・・・!」

リコがブンブン顔を横に振っている・・・

「・・・・・・え〜と・・・カズヤ・・・リコは一体何て言ってるのかな?」

「は、はい・・・リコ・・・」

そう言ってカズヤは、右手をリコに差し出した。

そして、リコはその右手を左手で大事そうに掴んで右手の人差し指で何かを書いていく・・・・・・この敗北感は一体なんだろうね〜・・・(´ 。`;)

どうでもいいけど、カズヤ・・・それってどこかで見た事があるようなスイ〜ツなイベントだよね〜・・・

「ありがとう・・・リコ。」

カズヤがどうやらリコの言いたい事を理解し終えたようで俺の方に振り返った。

「えっとですね・・・“アルフェシオンは悪い子じゃ無いから苛めるのは止めてください”だそうです・・・」

 

「どこがっ!?」

 

俺は不当な発言に控訴した。

「苛められているのは俺なんだよ!?」

「・・・・・・!?」

俺がリコに詰め寄ろうとすると・・・

ゴチィン!!

「っでぇぇぇーーーー!!!」

またしても空から眼鏡廉恥が落ちてきた。俺の頭めがけて・・・てて・・・コントのタライ落としじゃないんだぞ・・・・・・

(・・・・・・・・・・・・)・・・(Д`;)

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「ほ、ほら!カズヤとリコも見たよね!?今のを見たよね!?」

俺はホラホラと言わんがばかりに主張したのだが・・・

「・・・・・・」

何やら、リコがまた、カズヤの右手に何かを書き始めた・・・

何かさ〜ヒソヒソ話みたいで感じ悪いよ〜・・・

 

そして、解析を完了したカズヤが俺の方に振り返って言った。

 

“そうやって、意地悪するからいけないんですよ〜”だそうです・・・」

「あ、そう・・・・・・」

あ〜そうですか〜・・・そんなにラブラブっぷりを披露したかったんだな〜・・・

いいも〜んだ!俺だってミルフィーともっとラブラブな事するもん〜

(対抗してどうするんですか!?)(`Д´#)

結婚してるからあ〜んな事やこ〜んな事だって許されるんだからな〜!

(そんな事をしたら離婚ですってばっ!!)堯福Д゜;)

 

「そう言えばタクトさん、アバジェスさんが謁見の間に集まるように言っていたの知ってました?」

・・・・・・忘れてた・・・

「あはは・・・もちろんだよ・・・ははははは・・・」(´∀`;)

「そ、そうですよね〜・・・あはは・・・」

この時、僕とリコにはタクトさんが嘘をついていた事が丸わかりだった・・・

 

そして、俺とカズヤとリコの三人は謁見の間へと向かった・・・

「あ、そう言えばミルフィーさんは何処へ行ったんですか?」

「実は、俺も知らないんだよ。ラッキースターの方が先に帰艦していてね・・・」

「謁見の間への呼び出しが伝わっていればいいんですけど・・・」

 

 

そんな事を言っている間に俺達は謁見の間に着いた。

そこには既にエンジェル隊やシヴァ様やアバジェスも着いていた。

あれ・・・ミルフィーがいないぞ?

「ようやく来たか・・・」

シヴァ様が腕を組んで待ち構えていた・・・

「すいません・・・」

ペコペコ・・・(注 リコ)

「すいませんでした・・・」

カズヤとリコが頭を下げて俺をそれにならった。

「あ、遅いわよ、あんた達。」

「ランファ、ミルフィーを見なかったかい?」

「え、ううん・・・見てないけど?一緒じゃなかったの?」

「いや・・・俺は後から帰艦してきて、全然見てないんだ。」

「ああ・・・桜葉姉なら、一番最初に帰り着いていたわよ。」

「テキーラ、その後でミルフィーが何処に行ったのか知らないかい?」

「うう〜ん・・・プディングは何か知らない?」

「あ、リコのお姉たんなら、何か嬉しそうに格納庫から出て行ったのだ。」

「へ?嬉しそうに・・・?」

う〜ん・・・何か嫌な予感がするが・・・

「あれ・・・そう言えば、ちとせさんがいいませんね?」

「ちとせさんなら、お父さんと一緒に医務室にいます・・・」

ヴァニラさんが柔らかい表情で教えてくれた。

こっ・・・こっ・・・こっ・・・

「アバジェス、雅人さんは大丈夫なのか?」

『あっ!?』

「命に別状は無いが、最低でも一週間は安静だ・・・何せ十数年近く眠り続けていたからな・・・体がまだ完全に馴染めて無いからな・・・」

「そうか・・・でも、本当に良かったよ・・・」

「ああ・・・これもレイのおかげだろう・・・」

「あ!?あ、あの野郎はどこにいるんだ!?」

「いや・・・お前の後ろにいるが・・・」

「・・・・・・っ!?」

「・・・・・・」

俺が急いで後ろを振り返るとそこには紅い仮面をつけたあいつがいた。

「・・・ってお前!?」

あいつは背中に誰かを担いでいた。

その姿はまるで獲物を捕まえた猟師のようにも見える・・・って違う!

「ミルフィーに何をしたんだ!?」

「別に・・・」

「別にって気絶してるじゃないか!しかもボロボロだし!」

きゅう〜って目を回して・・・

「うるせぇ・・・俺の知った事か・・・ほらよ・・・」

「あ、危ない!」

そう言ってあいつは背負い投げの要領でミルフィーを俺に投げ渡した!

「マスター・・・すいません・・・予定外の事が起こりまして遅れました・・・」

レイは丁寧に頭を下げた・・・

「構わん・・・気にするな・・・」

「は!」

この野郎・・・明らかに態度が違うじゃないか・・・

というか・・・こいつ、絶対にミルフィーに何かしたなぁ〜・・・

 

 

さて・・・エンジェル隊のメンバーがレイの登場で驚いている間の時間を使って、レイの予定外の出来事を簡潔に説明しよう・・・

 

ブラウドとの戦いが終わった後で、烏丸雅人はレイに肩を借りて医務室まで連れて行かれた・・・

「雅人・・・ここで安静にしてるんだぞ・・・ちとせがもうすぐ来るからな・・・」

「はは・・・こんな様ではちとせに会わせる顔が無いよ。」

「ふ・・・ちとせはお前に会いたがっていたからな・・・せいぜい泣かれるのを覚悟しておけよ・・・」

「ああ・・・ところで、お前の方はどうなんだ?」

「何がだ?」

「シヴァ様だよ・・・」

「・・・実は、さっき一発殴られた・・・これで許してやるとか言って・・・グーで殴るところは流石は俺の娘と言うべきか・・・」

「ん!?うわっはっはっはっはっ!!」

雅人は腹を抱えて笑い出した。

「・・・・・・言うんじゃなかった・・・」

レイはそっぽを向いてしまった・・・

「いや!すまんすまん!は、はは・・・!あははは!!」

雅人はそう言いながらも全然、笑い止む様子が無い・・・

「雅人・・・殺してもいいか?」

「あ、はっはっはっ!そ、それだけは勘弁してくれ・・・!」

「全然、勘弁してくれと言ってるようには見えんが・・・うわっ!?」

「レイ!?」

その時だった、レイの背後から何者かが体当たりのように突っ込んできたのだ・・・

レイは倒れ込んで、その上に誰かが覆いかぶさっている・・・

もう、おわかりかもしれないが、それは妹のミルフィーユだった・・・

「お兄ちゃん!お帰りーーー!!」

「・・・・・・・・・」

既に兄が頭に青筋立てている事に気付かない妹・・・

「・・・・・・・・」

突然の事に口をあんぐり開けている雅人・・・

「もう!心配してたんだからね〜!!」

「・・・・・・・・・」

青筋の数が増えていくレイ・桜葉・・・

彼が死神に戻るまで後、わずかである・・・

レイはむっくりと起き上がった。

どうやら、さっきの衝撃で仮面が外れたようだ・・・

「・・・・・・お兄ちゃん?」

ミルフィーユは座り込んだまま、仮面を付け直す兄を見上げている。

「何だい?ミルフィー・・・?」

こめかみに青筋をたてたまま妹に、にこやかに微笑むレイ・・・

「お帰り・・・お兄ちゃん。」

「ただいま・・・ミルフィー・・・」

そう言って、レイは妹の手をとってエスコートしてやった・・・

紳士だ・・・

「えへへ・・・ありがとう、お兄ちゃん・・・」

「なぁに・・・“可愛い妹”・・・気にするな・・・」

にっこり・・・と口が微笑む・・・

しかし、ミルフィーユは気付かなかった・・・

仮面で隠されたレイの眼が真紅の眼に変わっていた事を・・・

「雅人、俺はこれから“愛する妹”と再会を祝して“ぱーっ”とやる事にした・・・」

「そ、そうか・・・」

「ああ・・・じゃあ、ミルフィー・・・“ぱーっ”といこうか♪」

「うん!」

桜葉兄妹が仲良く医務室を後にした・・・

雅人は確かに見た・・・レイから立ち込める紫色の殺気のオーラを・・・

 

「お、お兄ちゃん・・・どうしてそんなに強く手を握るの?」

妹は通路でレイ引っ張られながら聞いた。

「うん?それはお前が迷子にならない為だよ。」

「もう、そ、そんな子供じゃないよ〜・・・それに私を迷子にさせたのはお兄ちゃんじゃない〜・・・」

「あ〜懐かしい思い出だな〜・・・」

(第二章 ??・??を参照・・・<(_ _)>)

 

・・・・・・この時点で、ミルフィーユは気付くべきだった・・・

兄が言っていた可愛いくて、愛する妹というのがアプリコットであった事に・・・

 

「さぁ・・・桜の思い出が美しい間にぱーっと散ろうか・・・」

 

バキイ!!ゴスゥ!ドゴォ!!ゲシ!ゲシ!!グシャ!

 

・・・・・・(´。`;)

 

そして、現在にいたるうわけである・・・

 

「お前!絶対に何かしたんだろう!!」

俺はミルフィーを寝かせて、あいつに掴みかかった!

「だったら、どうするてんだ!この野郎っ!!」

そして、レイもタクトに応戦しようとした、その時・・・

「静かにしろっ!!!」

アバジェスの怒号が響き渡った・・・

龍の咆哮に二人はシュンと大人しくなった・・・

 

「では気を取り直して、今後の我々の任務を説明しよう・・・」

今回は特にスクリーンはなく説明が開始された。

でも、メンバーは全員気付いている・・・

残された任務はただ一つ・・・

 

「我々はもう一度、NEUEと赴き、ラスト・リヴェンジャーと呼ばれる戦闘機を撃破しにいく・・・NEUE出身者の前では言いづらいが、NEUEは既にラスト・リヴェンジャーに食い尽くされた・・・それが現状だ・・・」

「・・・・・・」

アニス達の顔に悔しさがにじみ出ている・・・

「そして、そのラスト・リヴェンジャーがNEUEを食い尽くせば今度はEDENへと向かって来る筈だ・・・」

「ゲートが使えないのにどうやって・・・」

「・・・そんなのシリウスが“ゲートキーパー”だからに決まっているだろう。」

『・・・っ!?』

「な、何!?」

こ、こいつ・・・あっさりととんでもない事を言いやがった!

「レイ!」

「構いません・・・いずれは分かる事です・・・」

そう言うとレイがアバジェスに代わって喋りだした。

「そして、そんな化け物と俺達はこれから戦う・・・もし、この中に死ぬのが怖い奴は参戦しろとは言わん・・・ここで名乗り出ろ・・・」

「随分な言い草ね・・・」

「勘違いするなよ、ランファ・・・これはEDENの命運をかけた戦いだ。そんな弱者は足手まといにしかならん・・・だから今の内に名乗り出ろと言ってるんだ。」

「弱者で悪かったねぇ・・・」

フォルテはらしくない嫌味を含んだ口調で言い返した。

「ああ・・・足手まといだ。降りるのならさっさとしな。」

「誰が逃げるもんかい・・・」

「・・・お前等、勘違いするなよ。俺達はEDENを守るという重要な任務に赴くのだ。この任に就いた以上、何としてでも成功させなければならないんだ。EDENの民の命を懸けた戦いなんだからな・・・だから、頑張りますや、頑張りましたなんかじゃすまねぇんだぞ・・・分かってんのか?ガキ共・・・」

レイの言う事はまさに軍人そのものだったのだが・・・まだ、エンジェル隊にはレイほどに割り切れないのだ・・・

「お前なんかに評価されるほど、俺達の底は浅くないんだよ・・・」

「ふ・・・白き月での戦い際にあっさり、やられたお前の言う台詞ではないだろう・・・アニス・・・それにお前達の底などたかが知れている・・・俺が評価するにも値せん・・・」

「貴方に評価してもらおうなんて思っていませんわ。」

さすがのミントも、苛立だしさをオブラートに包まずに言い返した。

「馬鹿か、お前は・・・俺が評価しない奴ってのは戦死確定だって事なんだよ・・・分かってんのか?ジャンクのクソチビが・・・」

「そういうのを大きなお世話だとご存知無いのですか?」

「まだ、分からんのか?お前達の命などより、紋章機一機の方が大事だと言ってるんだ。紋章機はお前等の“アクセサリー”でも無ければ“所有物”でも無い。皇国軍の貴重な戦力だ・・・分かるか?皇国軍の戦力は国民の命にも直結する・・・お前等みたいな甘ったれの為に失う訳にはいかないんだよ。」

「本当に随分な言いようだが、我々以外に紋章機を動かせる者はいまい・・・」

リリィとしては淡々と現実を指摘しただけなのだが・・・

「自惚れるな・・・恥を知れ・・・三流め・・・お前達がいなくても紋章機は動く・・・元より、お前達の紋章機は俺のアルフェシオンにより、遠隔操作されて動くサポーター役だ・・・分かるか?H・A・L・Oの場合はテンションの関係上、仕方なく、お前達を搭乗させたが、アンフィニはテンションに関係無く一定の出力を出せる・・・それでも、お前達を乗せてきたのは俺が不在だった事と、テンションが上がればそれなりに出力が上がるからに過ぎん・・・お前達の存在意義なんてそれだけのものなんだよ・・・」

レイの挑発的な言葉の数々が天使との溝を確実なものにする。

只でさえ、レイは前大戦時に死神のメシアとして、天使達と戦い続けた宿敵だ・・・その宿敵からいきなり、お前は戦力外だから紋章機から降りろと言われて反感を持たない方がおかしいだろう・・・

「俺達の存在意義がその程度だって・・・!」

そして、案の定、タクトが過剰に反応した。

「ああ。」

何せ、只でさえ、相性が悪いのに、あそこまで挑発されてはいかに温厚なタクトと言えども黙ってはいられないだろう・・・

タクトはこのレイだけに対しては冷静さを失うのだ・・・

「エンジェル隊は今まで、命懸けでここまで守り抜いてきたんだ!お前の一言で勝手に決め付けるな!それは司令官の俺が保障する!」

司令官であるタクトの言葉には確かな重みがあった・・・

「まるで、子供だな・・・話にならん・・・」

しかし、レイは嫌味では無く、本当のため息をつきながらその功績を一蹴した。

「何だと!?」

二人はまさに一瞬即発だこの二人なら、本当にお互いを殺すまで殴り合うだろう・・・

「さっきも言っただろう・・・頑張りましたじゃ済まないってな・・・それに、功績など戦場で使い物にならなければ紙屑同然だ・・・それに、守り抜いてきたとかほざいたが、この俺から守りきれなかったじゃねぇか・・・ふ、ふふ・・・ははは・・・」

レイは明らかにタクト達を侮蔑していた。

「き、貴様・・・・・・」

タクトが戦闘中に発するかのような声で体を震わせている。

「癇に障ったか?だが、お前は自分で司令官などと言うが、お前が後先考えずにあのラスト・リヴェンジャーシャイニング・サンを放ったせいでNEUEはあんな事になっているんだぞ。分かってんのか?」

レイの口調も先程までの軽薄な感じが無い・・・明らかな糾弾の言葉だ。

「そ、それは・・・」

「分からなかったか?あれほど、再生しているのに・・・少なくとも、あの状況で撃つ必然性は無い筈だ・・・マスターに一言確認すれば済んだ話だ・・・今の状況を作り出したのはお前の過信と技量の無さによるものだ・・・分かっているのか?」

「・・・・・・・・・」

俺は何も言い返せなかった・・・それは揺るぎようの無い事実だったからだ・・・

「あんたみたいにいくら能力が優秀でも、私はゴメンよ。そして、タクトは今まで一生懸命に私達を守ってくれたんだから、あんたみたいな男より、ずっとマシよ・・・!」

ランファ・・・・・・

「偽中華・・・お前、頭の中身が本物のガキ並みだな・・・守ってくれた?馬鹿か、テメェは・・・お前達は皇国を守るエンジェル隊だろうが・・・守られてどうするんだよ・・・それに男だと・・・?くだらん・・・“殺し合いの戦場”に男も女も関係あるものか・・・その程度の思考回路ならばさっさと・・」

 

「それ以上、言ったら許さないから・・・」

 

その声でこの場が静まり返った・・・

 

「・・・・・・・・・」

「ミ、ミルフィー・・・・・・」

 

レイに向かって、口を挟んだのは妹のミルフィーだった・・・

そして、その顔には明らかな怒りが見えていて、その目には涙が溜まっている。

「・・・それ以上、タクトさん達の事を悪く言ったら、絶対に許さないからぁっ!!」

 

ミルフィーユがレイの目を見据えて言い放った・・・

 

「フン・・・」

 

レイさんは短くそう言って謁見の間を後にした。

「あ〜・・・・・・出撃の判断はレイに依存してある・・・各自はそれまで、好きにやっていてくれ・・・以上だ・・・シヴァ様・・・復興支援の方について見ていただきたいものがございますので、こちらへ・・・」

「あ、ああ・・・・・・」

そして、バツが悪そうにアバジェスさんが切り出して、シヴァ様と一緒に謁見の間を後にした・・・

「何よ!あいつ・・・!」

「意地悪なのだ〜!」

ランファさんを始めとして、他の人達も怒りが治まらないと言った様子でレイさんへ悪態をつき始めた・・・

でも、僕はみんなとは違っていた・・・

レイさんが言っていたのが、現実だって事と・・・

レイさんは、エンジェル隊のみんなを危険な目に合わせたくなかったんじゃないのかな・・・と思っていたんだ・・・

何故なら、今度の相手はあのシリウスだ・・・

ブラウドとは違って、話が通じる相手では無ければ、人間としての道徳観念を持ち合わせているとはとても思えない・・・もはや正気な人間では無い。

そして、そんなあいつが今度はEDENを襲おうとしてるんだ・・・あいつは躊躇無くトドメをさしてくるだろう・・・それはあいつと戦ったタクトさんの全身の大火傷を見れば、一目瞭然だろう・・・タクトさんだから死なずに済んだんだろうけど、僕達なら間違いなく死んでいた・・・

今度の戦いばかりはあまりにも危険すぎる・・・

もはや、回避などとかいうレベルの戦いじゃない・・・

ラスト・リヴェンジャーの武器の中には回避できない武器もあった・・・

僕の脳裏にグングニルで焼き尽くされた七番機の姿が蘇った。

もし、自分が七番機に自分が乗っていたとすると、背筋がぞおっとする・・・

レイさんと話がしたい・・・

僕はそう思っていた・・・

そうだ・・・リコはどう思っているんだろう・・・

「ねぇ?リコ・・・あれ・・・」

僕が辺りを見渡すとそこにはリコの姿が無い・・・

別に目が見えないわけでも耳が聞こえないわけでも無いので大して心配する事では無いのだろうが、何だろう・・・リコが傍にいてくれないと不安でしょうがない・・・

僕はそう思って、謁見の間を後にした・・・

 

「タクトさん・・・皆さん、ごめんなさい・・・お兄ちゃんが失礼な事を・・・」

「そう言えば、ミルフィーはいつ頃、起きたんだい?」

「伯父さんの怒鳴り声が聞こえてきたとこぐらいでしょうか・・・びっくりしましたよ・・・伯父さんが怒鳴る事って滅多に無いですから・・・」

伯父さん?ああ・・・アバジェスの事か・・・

「タクトさんエンジェル隊の司令官はタクトさんであって、あの方ではありませんわ。」

「そうね〜・・・あいつの指揮でなんてゴメンだわ〜・・・」

ミントやテキーラが押してくれるのは嬉しいんだけど・・・

「う〜ん・・・でも、アバジェスやシヴァ様はレイに任せたからな・・・」

「だからって御免よあんな奴!」

「俺も姉さんと同じだ!」

確かに俺も御免なんだが・・・

パイロットしての技量も指揮能力もあいつの方が上なのは確実だろう・・・

だからこそ、アバジェスはレイに今回のラスト・リヴェンジャー討伐を任せたのだろう・・・今回の任務が困難なものであるのを知っているからだ・・・

だったら、今ここでレイと喧嘩してる場合では無いんじゃないだろうか・・・

「なぁ・・・みんな・・・聞いてくれ・・・」

そして、俺はこれからの事をみんなに説明した・・・

 

 

「あ!」

僕がレイさんの後を追っているとそこにはレイさんとリコがいたのだ。

「レ・・」

僕がレイさんを呼ぼうとした時だった。

パシィィン

空気が乾いた音を立てた。

「・・・・・・」

僕は口を開けたまま、閉じれなかった・・・

 

何とリコがレイさんをぶったんだ・・・

レイさんの仮面がその衝撃で外れてしまったようだ・・・

「・・・・・・・・・っ!?」

そして、リコは僕に気付いたらしくて、目に涙を浮かべたまま、走り去ってしまった。

「リ、リコ・・・・・・」

レイさんは仮面を拾い上げて目を隠した。

「やれやれ・・・見られたくないところを見られてしまったな・・・」

そして、レイさんが気まずそうに俺に笑いかけてきた。

「レイさん・・・」

 

それから、僕はレイさんが借りている部屋に招かれた。

部屋には何も置かれてない・・・いや・・・机の上に酒瓶が置いてあった・・・

「すまんな・・・リコとの時間を邪魔して・・・」

そう言って、レイさんは仮面を外しながら椅子に腰掛けた。

「い、いえ!僕もレイさんに聞きたい事がありましたから・・・」

「俺に聞きたい事?」

「はい・・・」

その目はミルフィーさんと同じ綺麗な碧眼色だった・・・

それにしても髪の毛以外は本当によく似ているなぁ・・・

「何だ・・・?」

そう言いながら、レイさんは酒瓶をそのままラッパ飲みした・・・

レイさん・・・行儀が悪いですよ・・・

「実は・・・」

「・・・っとその前に一杯飲めよ。」

レイさんが、僕に酒瓶を突き出してきた・・・ってちょ、ちょっと!

「い、いえ!結構です!」

「・・・どうしてだ?」

「い、いえ!そ、その・・・」

「まさか、俺がラッパ飲みしたのが不味かったのか?」

「・・・いえ違います!」

ど、どうして・・・そういう方向に勘違いするんですか・・・あなた方兄妹は・・・

「じゃあ、どういう理由だ・・・?」

レイさんが少し睨んできた・・・戦闘中みたいな声まで出して・・・怖い・・・というか、どうしてそうやって強硬手段に出たがるんですか?最近のリコと似てますよ・・・

「ぼ、僕はまだ、19才なんですよ!?」

「あ?後、一年じゃねぇかよ・・・構いやしねぇって・・・」

「・・・・・・レイさん。」

何か、レイさんって実は決まり事とかがあまり好きじゃないのかな・・・

「ささ、飲め飲め!」

「だ、駄目ですよ!軍機違反になるじゃないですか!!」

20才未満の飲酒は当然ながら、軍機違反だ。

「俺が許す・・・元・皇王のお墨付きだぞ?」

その元・皇王様には前大戦の戦争責任が背負わされているというのを自覚してないんでしょうか?あなたの事ですよ・・・レイさん・・・

「駄目です・・・」

「ちぇ〜・・・カズヤの意地悪・・・」

レイさん、もう酔っ払ってます?

「んなわけねぇだろう・・・俺は酔った事はねぇよ・・・」

「へぇ〜・・・って!」

も、もしかして、また僕の心を読んだんですか!?

「あったり〜♪実はお前が俺に聞きたい事があるってのは最初から知ってたんだよな〜これが・・・」

「はぁ〜・・・・・・」

そんな、ところはロキさんに似てますよ・・・

「ああ〜悪かった悪かった・・・・・・それで、カズヤ・・・」

そして、レイさんの口調が変わった・・・

「はい?」

「この“世界の矛盾”に気が付いたのか?」

「・・・・・・矛盾というかどうかは分かりませんが、気になっている事があります・・・」

「それは何だ?」

創造主って何なんですか?

「・・・・・・」

「ずっと気になっていたんです・・・タクトさんの時もそうでしたけど、あの創造主はあれだけの力を持ちながら、結局・・・僕達をいまだに生かしています・・・その理由が分からないんです・・・」

「理由か・・・」

レイさんはどこか遠くを見るように視線を逸らした。

「僕やタクトさん・・・そして、リコもそうだったんですけど、あの創造主は僕達の体の自由を奪ったり、頭の中に直接話しかけてくるなんて非常識なマネまでしました・・・」

「それはそうだろう・・・創造主の正体を考えればな・・・」

「正体・・・教えて下さい!」

僕はレイさんの目を真っ直ぐに見据えてお願いした。

「・・・・・・」

すると、何やら、レイさんはやれやれといった感じで頭を掻き始めた。

「今のお前が知る必要は特に無いんだがな・・・それでも知りたいのか?」

「はい・・・!」

「ならば、最初に約束しろ・・・この事は絶対に誰にも喋らないとな・・・」

レイさんの目は真剣そのもので、嘘は許さんと言わんばかりの目だ・・・

「は、はい・・・」

僕はその威圧感に呑まれそうになりながらも何とか答えた・・・

「いいだろう・・・絶対にここ以外で喋るなよ・・・」

 

そうして、レイさんは喋り出した・・・神々の創造主について・・・

 

「カズヤよ・・・この世の事には全て因果があるって言葉を聞いた事は無いか?」

「えっと・・・“因果説”というやつですか?」

「まぁ・・・そうだな・・・因果とは原因や結果とも言うな・・・」

「その因果がどうかしたんですか?」

「それが、俺達が創造主と呼んでいる者の名前だ。」

「は、はい?」

「正確には“因果律”と呼ぶべき者だ・・・でないと俺達、創造物の情報量では認識しきれないんだ・・・」

「因果律・・・その概念そのものが創造主だと・・・?」

「そう言う事になる・・・」

半信半疑なんだけど、このレイさんが嘘をつくとは思えないから、ここは素直にその因果律が創造主だとしておこう・・・

「カズヤ・・・考えてみろ・・・因果律とは未来が過去に干渉できないと定義するものだ・・・つまり、タイムマシンが出来ない理由として、人間が定義してきた事だ・・・代表的なものを上げれば、火の無い所に煙は立たない・・・かな・・・」

「え、え〜と、ようするに過去からの積み重ねがあったからこそ、今の僕達があるから、その僕達が己の過去に接触する事は出来ないと言う事ですか?」

「そういう事だ・・・で・・・何か引っ掛からないか?」

「引っ掛かる・・・?」

引っ掛かるって?う〜ん・・・・・・あっ!!

「タクトさんは神界へ行きましたっ!あれって過去への介入ですよね!」

「ああ・・・そうだ・・・」

(正確には死後の世界なんだが・・・)

「おかしいだろう?この世界はその因果律とやらが創造した世界なのに過去への介入が可能になっているんだ・・・つまりは、因果律は絶対では無いという事だ・・・

・・・・・・・・・

ん?カズヤが何も反応しない?

 

駄目よ・・・

 

・・・・・・っ!?

 

教えてはいけない時はこうして時を止めさせてもらうわ・・・

 

まさか、お前の方が出向くとはな・・・本気と言う事か・・・

 

ええ・・・私は実行する時は躊躇無く実行に移すわよ。

あなたと同じ様にね・・・

 

・・・・・・・・・

 

忘れないでね・・・元々、私が時にまで介入し始めたのは貴方デザイアがあの桜の森を永遠に残してとお願いした事が発端なんだからね・・・

 

分かったよ・・・

 

彼の方の事ならある程度まで許可するわ、カズヤが喋りそうになったら記憶を消すだけだから・・・

 

「レイさん、レイさん!」

「あ、すまんすまん・・・」

どうやら、時が動き出したらしい・・・

 

「あの〜引っ掛かる事ってのがどうも、わからないんですけど・・・」

・・・・・・どうやら、カズヤの記憶を一部消したらしい・・・

 

「まぁ、それはいい・・・それよりカズヤよ・・・因果律にはな因果応報というものがある・・・知ってるか?」

「い、いえ・・・そこまでは・・・」

 

「この世には業(カルマ)という罪状がある。それは良い行いには褒美を、悪い行いには罰則をというシステムだ・・・それを因果応報と言うんだ・・・」

「ようするに天国と地獄と言う事でしょうか・・・?」

「そうだ・・・そして、お前達が元凶と呼んでいる者の正体だ。」

「え・・・えぇ!?」

「いいか・・・カズヤ・・・元凶は俺達のカルマそのものだ・・・そして、俺達はそのカルマから逃げる事は出来ない・・・」

「ちょ、ちょっと待って下さい!僕達はまだ、そんな裁かれるような悪い事はしてないじゃないですか!?」

「カルマは何も過去に行った事だけではない・・・未来で蓄積したカルマも降りかかってくるのだ・・・」

「み、未来でって・・・」

カズヤも混乱するか・・・仕方あるまい・・・

「あの神界は死後の世界だ・・・しかし、それは厳密には過去の世界では無い。

「え、え?」

「いいか、カズヤ・・・良く覚えておけ・・・この世界は俺達のカルマの世界だ・・・だからこそ、俺達にはラスト・リヴェンジャーのような災いが訪れた・・・

「あ、あの・・・」

「今は理解できなくても、ここからが重要な事だ・・・良く聞いておけ・・・この世界には正確に並行世界と呼べるものなど存在しない・・・歴史と呼ばれる俺達の記録は巻物のように延々と一本だけで続いている・・・俺達が選ぶ選択肢と結果は全て最初から決まっている・・・それを運命と言う・・・

「運命・・・」

確か・・・運命ってフェイトとも言うんだよな・・・ちょ、ちょっと待てよ・・・確か、タクトさんから聞いた話では体現者達は並行世界の道を一本化する為に戦うんじゃ無かったのか!?その話じゃ体現者達の存在意義が無くなるじゃないか!

「レイさん!」

僕はその矛盾点をレイさんに慌しく・・・・・・・・・・・・あれ?

「どうした・・・?」

「いえ・・・何でもないです・・・」

何だろう・・・何か大事な事を言おうとしたばかりなのに、思い出せない・・・

 

(ふふ・・・駄目よ・・・それをタクトに知らせたら、予定は繰り上げになって、カルマが貴方達を皆殺しにしちゃうわ・・・そして、貴方・・・・・・なのよ・・・更に、デザイアへの復讐も水の泡になってしまう・・・終末の日まで教える事は絶対に許さないわ・・・)

 

「・・・・・・・・・」

レイはカズヤに何が起きたのか分かっていた・・・何故なら、カズヤが気付いた矛盾点はレイは初めから気付いていたのだ・・・

 

「カズヤ・・・いいか、良く聞け・・・今までタクトマスターから得た情報は古い情報として、更新するんだ・・・俺が今から言う事が真相だ・・・」

「え・・・な、何でそんなややこしい事になったんですか?」

「どこかのクソ野郎が、臆病なせいで咄嗟に嘘をついたんだよ・・・真相が早くばれちまったらこれからのあいつの復讐劇が全て水の泡になるからな・・・」

「ク、クソ野郎・・・ってまさか・・・カルマの事ですか!?」

カルマ・・・セルダールに貫通弾を撃ったキチガイの事だ・・・

「そうだ・・・あいつは復讐の日の為に・・・全てを仕組んだんだ・・・神界から今回のシリウスの登場に至るまでの全てはクソ野郎が仕組んだ事だ・・・

「でも、あいつはブラウド財閥に技術を与えただけだと言ってましたけど・・・?」

「あいつの言う事を鵜呑みにしてどうする・・・神皇ことゼイバー・ブラウドも所詮は俺のように操り人形にされていたに過ぎん・・・」

「じゃ、じゃあ・・・NEUEをこんな風にしたのも・・・全部・・・カルマのせいなんですか・・・?」

僕は声が震えそうだった・・・

父さんも母さんもあいつに殺されたんだ・・・

そして、レイさんはそんな僕の心境を読んでいたのか、小さく頷いた・・・

 

「あいつ(カルマ)は、エオニアに黒き月と接触させた・・・そして、エオニアはことの真相も知らずにロスト・テクノロジーにとり憑かれた・・・そして、クーデターを起こした。そして、俺がミルフィーと意識を共通させていたように・・・あいつもエルシオールの乗組員の一人として、潜り込んでいたんだ・・・ミルフィーが最も頻繁に立ち寄りそうな所の者に成りすましてな・・・

「え!?エルシオールに潜り込んでいたんですか!?」

「そうだ。あいつはミルフィーを殺そうと常に機会をうかがっていた・・・ミルフィーの凶運のせいと言われた不可思議な現象も・・・あいつが仕組んだ事だ・・・時にはタクトの命を本気で狙っていたからな・・・エルシオールの位置が常に知られていたのもあいつが指示を出してたからだ・・・俺がミルフィーの中にいたのはそういう事から二人を守る為だ・・・」

「レイさんはその為に・・・」

やはり、この人は悪い人なんかじゃなかった・・・

「今は、少し後悔してるがな・・・」

少し、捻くれているけど・・・

「しかし、ヴァル・ファスクとの戦いの時に俺は最大の過ちを犯してしまった・・・」

「・・・え?」

「俺がラッキースターに施した小細工をあいつが上手く逆利用をしたんだ・・・そして、あいつはもう一人の復讐鬼を創り出した・・・それが・・・いや、いい・・・」

これ以上はあいつが許さないだろう・・・

「レイさん・・・?」

「今、言った事は近い内にわかる・・・近い内にな・・・」

「は、はぁ・・・」

レイさんが何やら言いづらそうだったので、それ以上は聞かない事にした・・・

「そして、舞台がルクシオールに移った時に俺はお前の中に居所を変えた・・・」

「え!な、何でそんな事をしたんですか!?」

・・・て事は僕とリコのあんな事やこんな事まで・・・

「・・・・・・ご馳走様でした。」

「ひ、、酷いですよーーーー!!」

「ああ・・・それをさっきリコに同じ事を言ったらぶたれたってわけだ・・・」

「じ、自業自得ですよ!!だから、何でそんな事をしたんですか!?」

「それはお前とリコをくっつけてあげようと思ってだな・・・」

「余計なお世話ですよ!」

「・・・・・・何てのは冗談だ・・・本当はリコのピンチの際には手助けしようと思っていただけだ・・・そして、ルクシオールの中に潜んでいたあいつを監視する為にもな・・・」

「え・・・?」

な、何で、いきなり真面目になるんですか・・・って、待てよ!

「ルクシオ−ルにもあいつが潜んでいたんですか!?」

「ああ・・・エルシオールの時と似たような場所にいたよ・・・よほど、金の事に興味があったらしくてな・・・」

「お金・・・?」

「ああ・・・その金がカルマを産み出したようなものだからな・・・

 

(そうだよ・・・カズヤ・・・商売・・・競争・・・コスト削減・・・俺を産み出したのは他の誰でもない・・・EDENの奴等だ・・・)

 

「・・・っ!?」

突如、レイさんがハッとしたような顔になった・・・何かあったんだろうか・・・

 

「・・・・・・カズヤ、俺達の行動は常にカルマに見られている・・・それだけは防げないんだ・・・だからこそ、手短に言っておく・・・」

「は、はい・・・」

気のせいかレイさんが慌てているように見えるんだけど・・・

シリウスを討伐した後でエルシオールとルクシオールの乗組員の名簿を見比べてみろ・・・その中に似たような時期に退艦した奴がいる・・・そいつが元凶だ・・・

「は、はい・・・」

「ルクシオールの方はもしかすると・・・あのクソチ・・・い、いや・・・いい・・・」

「は、はぁ・・・?」

何だ・・・レイさんは何をそんなに慌ててるんだろう?

「いいな・・・シリウスとの戦いが終わった後で調べるんだぞ・・・」

レイさんが肩を掴んで、更に目を見据えて言ってきたので、その迫力に負けてしまった僕は・・・

「は、はい!」

と情けなく返事をしたのだった・・・トホホ・・・

 

そうだ・・・もう一つ聞きたい事があった・・・

「レイさん・・・最後に教えて下さい・・・」

「何をだ・・・?」

「神様と僕達の違いってあるんですか?」

「なるほど・・・俺やマスターを見てそう思ったのか・・・」

「はい・・・こうして、レイさんとも普通に話してますし、タクトさんの話によるとアバジェスさんやロキさんも一度死んだみたいですし・・・」

「お前の想像通り、人間とさほど変わりない・・・ただ、人には無い動体視力や身体をもっているだけだ・・・」

「え!?」

「カズヤ・・・お前は混沌と言いうものをどんなものだと思っている?」

「え、えと・・・全ての起源ですよね・・・僕達なんかの有機物や僕達が使っているエネルギーなどの無機物を構成している大元のエネルギーですよね?」

「では、その大元のエネルギーの成分が何であるか分かるか?そして、その混沌を生み出している者が何であるかを知っているか?」

「あ、あの・・・分からないから聞いているんですが・・・」

「そう、分からない・・・それが言わば俺からの回答だ・・・」

「え?あ、あの・・・」

さっぱりわからないんですけど・・・

「マジークに伝わっている魔法などを発生させる因果もテキーラには分からない・・・俺だって混沌を生み出す公式など知らない・・・答えは使えるから使っているだけだ・・・アルフェシオンのインフィニだって、ああいう風に創ったら混沌を汲み上げる事ができた・・・ただそれだけの事だったりする・・・」

「は、はぁ・・・」

「いいか?カズヤ・・・お前達が神と呼んでいた神皇を初めとした神族も所詮、人間がある程度まで認識できる存在だった・・・そして、この俺もな・・・」

 

(ふふ・・・意地悪な人・・・貴方は本物の神様でしょうに・・・)

 

「言わば、誰にも混沌の起源は分からない・・・俺が戦ってきた“外宇宙”の天使達も肉体は持っていなかったが所詮はエーテルという魔法素材で形成されていたに過ぎなかった・・・アストラル・サイドと呼ばれる精神的な世界では無防備だった・・・強いて言うのならそこまでが俺の認識の限界領域といったところだな・・・」

 

(お前が、それを言うか?“無そのもの”であるお前が・・・)

 

「カズヤ・・・このEDENとNEUEの世界は神を気取っている復讐鬼が必死に誤魔化している世界にしか過ぎない・・・最強の戦闘機と言われるアルフェシオンにも限界がある・・・何故なら、“全ての起源の因果律”と名乗っているあいつも元を正せば・・」

 

(それ以上、喋ったらカズヤを処分せざる得ないわよ・・・)

 

「・・・っ!?」

 

また、時を止めたか・・・

 

ここで、俺と本気でやるつもりなら、とことんまでやるぜ・・・忘れたの?私がデザイアEDENの屑をまだ、生かしてあげているのはカルマ(俺)の復讐劇の為よ・・・それを台無しにするのなら、全てを消滅させるだけよ・・・皆殺しにするだけだぜ・・・

 

やれやれ・・・片方ずつ喋れ・・・鬱陶しい・・・

 

仮にも因果律ともあろうものが復讐などという低俗なものにこだわるとは、全ての起源の名も地に堕ちたものだな・・・そして、カルマともあろうものがな・・・

 

黙れ・・・制裁者如きが・・・我に意見するか・・・

 

お前こそ、元・人間の分際で何を偉そうにしてるんだ・・・

 

レイ・・・それまでよ・・・私を本気にさせない事よ・・・

 

ふ・・・その台詞はお前達に返してやる・・・お前達はそうやって、自分を誇示してるが、実際にはEDENを消せなどしまい・・・そうだろう・・・カルマ・・・この程度でお前が健気に下準備をしてきた復讐劇を終わらせるわけにはいくまい?

 

貴様・・・

 

まぁ、いいわ・・・今回はここまでにしておくわ・・・ただし、これ以上カズヤに余計な事を吹き込んだら、あなたと本気で殺り合う事になってでもカズヤを殺すわ・・・私はカルマとは違ってカズヤとフェイトの生死は関係無いの・・・この意味は、あなたにならわかる筈よ・・・全てを知っている貴方だけは・・・

 

・・・・・・・・・

 

それに、カズヤとフェイトの運用については貴方と私達と同じ筈よ・・・

殺り合うのはそれからでも遅くは無いわ・・・・・・

 

「ふん・・・・・・嫌な奴だぜ・・・」

 

「レイさん?レイさんってば!」

「あ、あぁ・・・悪い・・・」

おそらくはカズヤはさっき、俺が教えた事を忘れているだろうな・・・

 

「時にカズヤ・・・リコの事は好きか?」

「そ、そんなのレイさんが一番知っているじゃないですか〜」

「真面目に聞いているんだ・・・どうなんだ?」

え、ちょ、ちょっと・・・レイさん・・・眼が本気で怖いです・・・

「す、好きです・・・」

「どのくらい好きなんだ・・・?」

「・・・っ!?」

待て・・・相手は一応、リコのお兄さんだ・・・

ここで逃げたらリコの彼になる資格は無いだろう!

「誰よりも愛してます!」

「そうか・・・それなら良い・・・」

そう言うとレイさんは酒を飲干した。

「あ、あの〜何の為に聞いたんですか・・・」

「俺は、マスターと違って、お前とリコに別れろなど言わん・・・むしろ、応援する・・・」

「・・・っ!?」

アバジェスさんとは言う事が違う・・・

「例え、リコがお前の事を嫌いになってもとことんまで食い下がれ・・・例え、未練たらしくてもだ・・・それに俺は、お前以外の男は認めん・・・何故ならお前以上の適任者はいない・・・そう考えたからだ・・・だからこそ、“俺はお前を選んだ”・・・」

「はい!僕だって認めません・・・」

この時、僕はレイさんが言っていた僕を選んだという言葉がどれほど、重みのある事かに気がつかなかった・・・

「俺がお前に望むのはただ一つ・・・何があってもリコから離れるな・・・それだけだ。」

レイさんは僕の目をじっと見据えている・・・

僕をリコの彼氏として認めてくれたんだ・・・

「はい・・・リコは僕が守り抜きます!」

あなたの代わりに・・・

 

「・・・・・・ところでだな・・・カズヤよ・・・」

「はい・・・?」

「リコとさっきの事を仲直りしたいんだが・・・」

「自業自得です。自分で何とかしてください。」

「・・・カズヤの意地悪・・・」

「しおらしく言っても駄目です。」

後、その顔でそういう事をされると何か別の意味でやばいので・・・

「ちぇ〜・・・」

「いじけてもても駄目です。」

「フンだ!」

「ふてくされても駄目ですっ!!」

 

 

 

レイ・桜葉に挑戦!〜

 

「何だ・・・俺に用ってのは・・・」

 

俺達、エンジェル隊は謁見の間にレイ・桜葉を呼び出した。

用件は決まっている・・・

 

「俺達と勝負しろ!」

俺は単刀直入に伝えた。

「ほう・・・また、やられたいのか?」

レイは嬉しそうに反応するが、俺達が今から言う事は少し違う・・・

俺達は紋章機で勝負する訳ではない・・・

幸い、エンジェル隊には個性的な能力を持つ者が多い・・・

俺はその能力をこいつに認めさせる為に、昨夜この話を持ちかけた・・・

その結果、以下の者がレイ・桜葉に挑戦する事になった・・・

 

「あたしと格闘技で勝負してもらうわよ。」

「はぁ?紋章機じゃねぇのかよ・・・」

レイは首をかしげたが・・・

「あれ〜・・・レイ・桜葉ともあろう者が逃げるのか?」

俺はおそらく、レイが最も癇に障るであろうワードを突きつけた・・・

「しかし、この俺に挑戦するとはいい度胸だ・・・いいぜ、受けてやるぜ・・・」

闘争心旺盛なレイはあっさりと受けた・・・

意外と単純な奴だな・・・

「まだ、いるか?・・・俺に挑戦する無謀な奴はよぉ・・・」

「・・・あたしと射撃で勝負してもらおうかい・・・」

銃を片手でくるくるまわしながらフォルテがレイに戦いを申し込んだ。

「ふ・・・勝負になればいいがな・・・他には?」

「私とこいつで勝負してもらおう・・・」

そう言って、新しい愛剣を握り締めるリリィ・・・

「マスターに挑んだその蛮勇さに免じて相手をしてやる・・・まだ他に誰かいるか?」

「わたくしとタイピングで勝負していただけませんか?」

「いいぜ・・・テメェは気にくわねぇから、コテンパンにのしてやる・・・」

「気にくわないのはお互い様ですわ・・・オホホ・・・」

レイさんとミントさんが静かに威嚇しあっているのが分かった・・・

「んで、他にはいるか?」

「俺とチェスで勝負しろ。」

「本気か?お前にチェスを教えたのは誰だと思ってるんだよ。」

「そんなの関係ない!勝負しろ!」

「・・・良いだろう・・・テメェは一番気に入らねぇから、二度とチェスをやる気にならなくなる程に実力の違いをはっきりと教えてやるぜ・・・」

睨み合う・・・二人・・・いや、何ていうか・・・今にも、紋章機で戦闘を始めそうな勢いだ・・・正直に言うとこの空気が怖い・・・

「これで、全部か?」

「待って!最後は私と料理で勝負して!」

最後に名乗り出たのはミルフィーさん・・・でも、確かレイさんってミルフィーさんにとってはその料理のお師匠さんになるのでは・・・

こんな事を言うのはミルフィーさんに失礼かもしれないけど、レイさんの料理の腕は確かだ・・・それも、非の打ち所が無いほどに・・・

「上等だ・・・テメェは一番ムカツクから、格の違いというものを教えてやる・・・」

しかし、レイさんもやる気満々だ・・・

 

「俺達がお前に勝ったら、指揮権を俺に委譲してもらうからな・・・」

「・・・良いだろう・・・その代わり、俺が勝った場合はリコに色々としてもらうぞ?」

 

「・・・っ!?」

リコが『そんなの聞いてないですよ〜!?』と表情で抗議するが問題は無い・・・

何故なら、俺には絶対にレイに勝てる秘策がある・・・

その為にはリコというレイのウィークポイントを刺激してレイを上機嫌にしなければならない・・・こいつにある約束事を取り付ければ絶対に勝てる・・・

「上等・・・上等・・・俺は逃げも隠れもしない・・・掛かって来な・・・」

「ああ・・・逃げたら、そこで不戦勝だからな・・・

「ふ・・・この俺が逃げるだと・・・要らぬ心配だ・・・」

「いいから・・・お互いに逃げたら、不戦勝でその場で負けだ・・・いいな?」

「ふ・・・せいぜいお前等の方が逃げ出さない事を願ってやるよ・・・」

「それは了承したという解釈でいいな?」

「もちろんだ。」

「勝負には追加種目もあるかもしれないぞ?」

「ああ・・・気の済むまでかかってくるが良い・・・叩きのめしてやる・・・」

ふっふっふ・・・やった!やったぞ・・・!

勝った!これでレイに勝ったも同然だ・・・

見てろよ・・・いつもいつも、やられてばかりじゃねぇんだからな・・・

最後の最後で悔しがるこいつの顔が今にも浮かびそうで、笑いが抑えられない・・・

みんな・・・最後の俺の秘策を楽しみにしててくれよ・・・

 

こうして、俺達とあいつとの戦いの火の蓋はきられた・・・

 

     第一回戦

  ランファ VS  レイ

 

  対戦種目 

 格闘技

 

勝負の会場はトレーニング・ルーム・・・

「叩きのめしてあげるわ・・・」

そして、自信たっぷりに腕を鳴らすランファさん・・・

でも、ランファさん・・・忘れてませんか?レイさんが神だって事を・・・

「叩きのめされるのはお前だ・・・偽中華・・・」

そして、レイさんも自信満々に返した・・・

 

そんな二人を観戦する俺達エンジェル隊・・・

「ほざいていなさい!」

ランファがあいつ目掛けて駆けて行った・・・

「ふ・・・馬鹿め・・・」

ランファの腕が届きそうな距離まで二人の距離が縮まったその時・・・

俺だけが、レイが何をしたのかが見えた・・・!

レイはランファがの左足を払って、重心のかかっている踏み出してきた右足を軸足にしてランファの右腕を引っ張った・・・

本当に一瞬の出来事だった・・・

「きゃっ!?」

そして、ランファの身体が右に側転するかのように宙に浮いて・・・

そのランファを半ば強引に引っ張って・・・

「あばよ・・・三流・・・」

ダアァァン!!

「だっ!」

受身を取らせずに地面に叩きつけた。

おいおい・・・少しは手加減しろよ・・・

「きゅう〜・・・・・・」

ランファは目をぐるぐる回して完全にのびていた。

「ナノナノ・・・頼む・・・」

「わ、分かったのだ・・・」

ナノナノが完全KOされたランファへ駆けて行った・・・

「ふん・・・トドメを刺さないだけ、ありがたいと思え・・・」

おそらく、ランファはその台詞を他の者から教えてもらう事になるだろう・・・

 

僕達は唖然としていた・・・

目の前で現実を見せ付けられた気がする・・・

 

 第二回戦

   フォルテ VS  レイ

 

対戦種目

ガン・アタック

 

次の舞台はルクシオール内にあるゲームセンターのガン・シュティーングゲーム・・・

ちなみに・・・いくら、ルクシオールが白き月に停泊中とはいえ、この長距離移動は面倒くさい・・・かと言って白き月には射撃訓練場を設けろ等と言おうものなら、俺は更迭確定だろうな・・・

 

「勝負形式はこの最高難易度コースをいかに高得点でクリアするかでどうだい?」

「別にかまわねぇが、ハンデはいらねぇのか?」

「いらないよ・・・」

そうこうして、二人のプレイが始まった・・・

そう言えば、レイが銃を撃つのは何か斬新な感じだ・・・

初めて見たような気がする・・・

こいつ・・・重そうなモデルガンを片腕で撃つのか?

いくら、反動が無いとはいってもな・・・

結果を分かりやすく簡単に説明しよう・・・

 

お互いにミスは無かった・・・しかし、それは防御面での話しだ・・・

攻撃面・・・つまりは射殺した人数と命中した場所などの得点でレイが圧勝していたのだ・・・だって、クリティカル率100%なんだもん・・・ちなみに、これはゲームだからな・・・勘違いしないように・・・

「はっはっはっ!いや〜・・・悪いなぁ〜フォルテ・・・お前の唯一の得意分野で圧勝しちゃって・・・うわっはっはっはっはっ!!」

「く、くく・・・」

体をぶるぶる震わせるフォルテ・・・

ちなみに、あいつは何かで勝って相手を徹底的にけなす事を生きがいにしてるような笑い声をあげる奴だと言う事がわかった・・・嫌な奴だ・・・

 

第三回戦

リリィ VS レイ

 

対戦種目

剣技

 

続いての舞台は・・・再びトレーニングルーム・・・

あ〜・・・これはどうだろう・・・

「貴様・・・舐めているのか・・・」

リリィもさっきのフォルテのように怒りで体を震わせている・・・

まぁ・・・あんなマネをされたら誰でも頭にくるだろうな・・・

「何がだ?これはハンデだ。」

「ハンデだと・・・?その目隠しがか・・・」

簡単に言おう・・・レイは目隠しをしている・・・あの趣味の悪い紅い仮面ではない・・・

すいか割りなどで使いそうな正真正銘の目隠しだ・・・

ちなみに・・・

「うわ〜♪これって、普通に外が見えるんですね〜♪」

「・・・・・・・・・」

あいつの仮面は現在、ミルフィーが装着中だ・・・

ミルフィー・・・頼むから、その仮面はやめてくれないかな・・・

何か、戦闘中みたいで落ち着かないから・・・

さて、何はともあれ、勝負が開始された・・・

ちなみに、レイの許可もあり、リリィは新しい剣を使う事になっている・・・

どうでもいいが・・・下手をすると死ぬぞ・・・

まぁ、あいつが死のうと知った事ではないんだが・・・

 

何はともあれ、勝負開始だ・・・

リリィには悪いけど、おそらくレイが勝つだろうな・・・

 

「しかも・・・剣を構えないとは・・・」

「ゴタゴタ抜かしてないでさっさとかかってこいや・・・オラァ・・・」

まさかとは思うが、ダインスレイブを使ったりしないだろうな・・・

リリィが斬りかかる・・・

リリィは素手のレイを警戒してか、縦には斬りかからない・・・

しかし、リリィが何をしようが、結果は同じだっただろう・・・

何と、レイは目隠しをしたまま・・・

親指と人差し指だけで、リリィが突きで放った剣を摘むように受け止めたのだ。

な、なんちゅう受け止め方をするんだ。こいつは・・・

みんなも今、ふざけんな!ありえねえぇーーーっ!って思わなかったか?

何を隠そう今の俺の心境がそうなっている・・・

「ぐぬぬぬ・・・」

リリィが剣を取り替えそうと力むが、レイの手はピクリとも動かない・・・

あんな、細い腕でありえないだろう!と思うかもしれないが、何ぶん・・・あいつは人間じゃない・・・一応、ボスキャラだ。例えば格闘ゲームのボスってありえねぇ〜!って事を次から次へとするだろう?だから、ここは一つ・・・寛大にご理解の程を・・・って何あいつの擁護をしてんだ俺は!?

結局・・・その後、剣を奪われたリリィの敗北となった・・・

そして、案の定、あいつの追い討ちの如き、笑い声が響き渡ったのは言うまでも無い・・・本当に嫌な奴だ・・・

あ、後、ミルフィーがあいつにド突き倒されて仮面を奪い取られたのは言うまでも無い・・・

 

第四回戦

ミント VS レイ

 

対戦種目

タイピング

 

今度は俺の部屋に設置された二台のノートパソコン・・・

「制限時間は3分だ・・・入力ミスはきっちりと記録されるからな。」

「入力ミスのご心配はそちらの方でされたらいかがでしょうか?」

「その子供みたいな小さい手でキーボードを打てるといいな・・・23歳・・・」

「そちらもご無理は体によくありませんわよ?今年で推定何億歳になりますか?」

しょっぱから、毒舌を披露する二人・・・

どっちもどっちだからなぁ・・・

 

そして、対戦が開始された・・・

互いにキーボードを打つ速度が半端では無い・・・

そして、顔は常にモニターに写された課題を見ている・・・

一文字を一体どのくらいの時間で打っているのかが気になる・・・

おそらく0.1秒の世界だろう・・・比喩ではない。

カタカタカタと音が鳴り止まないのだから・・・

そして、結果が表示された・・・

ミント・・・421文字・・・レイ・・・444文字・・・ってこいつ、ゾロ目を狙ってたな・・・

・・・にしても、3分で400以上も打てる奴なんているのか・・・?

「いや〜まさか、ゾロ目を狙って勝てるとは思わなかったよ。うわっはっはっはっ!」

嘘つけ、大の負けず嫌いのお前がそんな馬鹿な真似をする訳が無いだろう・・・

「ちなみに、俺の題の文字入力数がお前のよりも平均的に二文字多かったのは俺の気のせいか?」

「あら、いやですわ・・・と言う事は覗いていらっしゃったんですか?」

ミント・・・それはレイの言ってる事を肯定する事に等しいんだけど?

「別に反則じゃないだろう?」

「はい♪そうですわ・・・」

「まぁ、別に“俺が”勝ったからいいんだけどな♪はっはっはっ♪」

“俺が”の所を強調するレイ・・・

「ハイ♪ようございましたわ・・・オホホ・・・」

そして、あくまで爽やかに笑うミント・・・

怖いよ〜・・・

 

っと、次は俺の番だな・・・

 

第五回戦

タクト VS メシア

 

対戦種目

チェス

 

舞台は引き続き、俺の部屋・・・

俺とあの野郎は机に座って対峙している・・・

「やれやれ・・・これで、お前が負ける回数はいくらになるかな・・・」

笑いながら、初めから勝つ気でいるあのオカマ野郎・・・

「今回はお前に敗北がつく番だ・・・」

「ふ・・・御託はこれまでだ・・・強い方が勝つ・・・それだけだろうが・・・」

二人は戦闘中のような雰囲気をかもし出している・・・

え・・・っと中継は僕が行う事になるのかな・・・

「タクト・・・シンキングタイムタイムを導入しようではないか・・・」

「何だと・・・」

シンキングタイムとは考える時間・・・

つまりはじっくり考える時間を与えさせない事だ・・・

「俺は無駄な時間の消費が何より嫌いなんだよ・・・ましてや相手はノロマなお前だ・・・結果も俺の勝ちだろうし、別に構わねぇだろう?」

「・・・・・・」

タ、タクトさんが怒っているのが何となくわかる・・・

うわ〜・・・やっぱりこの二人が何かで競い合うのはマズイんじゃ・・・

「シンキングタイムは俺が6秒でお前が30秒・・・五倍の差だ・・・これ以上のハンデはないぜ?何なら30秒で無く、一分でも二分でもいいぜ?」

さすが、メシアさん・・・タクトさんを挑発する事に関しては右に出る者はいないです。

「馬鹿にするなよ・・・!15秒で十分だ!」

「おいおい・・・無理は良くないぜ?」

「うるさい!始めるぞ!!」

「おお怖い♪」

 

こうして、二人の対局が始まったのだが・・・

 

「くっくっくっ・・・」

邪悪に笑う、死神のメシアさんはポーンを上手く使ってタクトさんを翻弄する・・・

タクトさんは一歩しか動かしてないキングを目指そうとするのだけど、メシアさんのポーンが邪魔をする・・・というよりかはとられてしまったといった感じだが・・・タクトさんが前にポーンを出してきた際にはルークででそれを返り討ちにしたのだ。

「くそ・・・!」

ポーンをとられていつものやり方を狂わせられたのか、タクトさんのポーンの壁は面白いように崩されていく・・・ポーンは本来、壁役に徹しさせるものだ・・・

「マズイ・・・」

タクトさんのキングの前ががら空きになったので、タクトさんはビショップをキングの前に出した。そして、メシアさんのポーンはキングの前のポーンを残して、津波のように前へ前へと流れていく・・・正直に言うとメシアさんが攻でタクトさんが防だ・・・

「だから、シンキングタイムを30秒にしてやろうとしたのにな〜♪」

メシアさんは明らかな嫌味をタクトさんに実に楽しそうに投げかけた。

「うるさい!」

「おお、怖い♪」

やがて、メシアさんのポーンがタクトさん側の8(最終)ラインまで2マスというところで、それは起こった。

「そろそろ・・・いくか・・・」

メシアさんはクイーンをタクトさんのキングがいるラインへと移動させたのだ・・・

タクトさんは遂に二つのナイトまで動員させて、メシアさんのポーンを取りにかかるが、そのポーンの後ろで待機していたメシアさんのビショップがタクトさんのナイトを討ち取った。形成は明らかにメシアさんが優勢だった・・・

「いくぜ♪」

メシアさんの一番端っこのポーンがタクトさん側の最終ラインまで到達する・・・

「プロモーション・・・クイーン。」

「んげっ!?」

誤解の無いように説明しておくけど、プロモーションとはナイスバディッ!の事ではなく、相手側の最終ラインまで辿り着けたポーンはキングとポーンを除いた駒に変身する事が出来るんだ・・・つまり、タクトさんのキングの横のラインに伏兵のナイトが現れたようなものだ・・・そして、タクトさんのキングを守るのはいつの間にか独りのビショップのみとなった・・・

「ふっふっふ〜ん♪」

タクトさんを追い詰めているメシアさんは本当にどこまでも嬉しそうだ・・・

結局、その後で、そのビショップも取られてしまい、メシアさんのルークやクイーンがドンドンキングを追い詰めていく・・・

「くそぉ・・・!」

「うわっはっはっはっはっ!」

どうやら、メシアさんは本当にタクトさんをいびる事に喜びを感じているらしい・・・

やはり、メシアさんがSだとすると、タクトさんがMなのだろうか・・・

何か、紋章機での戦いも似ていような図式だったよなぁ・・・

そして・・・

「チェックメイト。」

「あ!?」

メシアさんのナイトがタクトさんのキングを討ち取った・・・

この勝負はメシア・・・いや、レイさんの勝ちだった・・・

 

「いや〜悪いな〜タクトォ・・・お前の専門分野で勝ってしまって・・・お前の立場を潰しちまったなぁ〜いや、ほんまに悪かった・・・くっくっくっ!あーはっはっはっ!!」

「・・・・・・っ!?」

レイさん・・・本当に嬉しそうですね・・・それと、何故に関西弁なんですか?

一方、タクトさんはというと・・・

何故か、上着を脱いでいた!?ちょ、ちょっと・・・?

「タ、タクトさん!?」

「な、何をする気ですか!?」

 

「まだまだぁ!今度はこいつで勝負だぁっ!」

そう言いながら、タクトさんがレイさんに殴りかかった。

「いいぜ!いつかの借りを返してやる!」

 

・・・って、レイさんまで闘る気満々なんですか!?

 

対戦種目変更・・・喧嘩・・・

 

俺は一発で決めようとあいつのストレートを待つ・・・

「くたばれぇっ!」

すると、何と幸運な事にもあいつが右フックを出してきた。

チャ〜ンス♪

俺は狼牙一閃の為に左手を突き出した・・・ってあれ?

何故か、レイの右手は俺の左腕をしっかりと掴んでいた・・・

もしかして・・・狼牙一閃に気付かれていた?というか、俺がハメられたのか?

 

「引っ掛かったなバ〜カ♪」

俺はそのまま、タクトの左腕を極めて一本背負いをお見舞いした!

「うわっ!」

そして、地面に叩きつけたあいつの鳩尾にすかさずトドメの一撃を放つ!

ドゴォッ!

「ぐはっ!!」

 

どうやら・・・タクトさんはKOされたみたいだ・・・

とはいえ、先に仕掛けたのはタクトさんなので、ここでレイさんを責めるのは難しいだろう・・・

その20分後、タクトさんは無事に目を覚ました・・・

 

最終戦

ミルフィーユ VS  レイ

 

対戦種目

料理対決

 

ここは、白き月の厨房・・・

遂に、最後の挑戦者 ミルフィーの挑戦だ・・・

種目は料理・・・兄妹対決というよりは師弟対決の方が正しいだろう・・・

 

「やれやれ・・・俺に勝てるわけが無いだろうに・・・」

「やってみなくちゃ、わからないもん!」

 

何やら、料理漫画のような展開になってきたな・・・こいつは・・・

 

「料理はお前に俺があわせる・・・審査員は以下の三人だ・・・」

 

そう言って、レイが審査員に選んだ三人とは・・・

 

「二人共、存分に競い合うがいい・・・」

一人目はレイの師匠ことアバジェス・・・

 

「お子様ランチ以外で頼むぞ・・・」

いまだに、そんな事を覚えていたレイの娘ことシヴァ様が二人目・・・

 

「・・・・・・・・・」

最後の一人は、二人の妹のリコ・・・・・・

ちなみにミルフィーに手を振っている所を見ると・・・

『お姉ちゃん!頑張って〜!』

と言ったところだろうか・・・

 

にしても、アバジェスにシヴァ様・・・仕事の方はどうしたんですか?

 

「お兄ちゃん、あたしとビーフストロガノフで勝負して!」

「ハヤシライスか?」

「違うよ!ビーフストロガノフだよ!」

「わざとに決まってんだろうが・・・ば〜か・・・」

「む〜!」

レイの先制攻撃の挑発にむすくれるミルフィーも可愛い・・・

・・・じゃなくって、ゴメン・・・ミルフィー・・・俺はずっとハヤシライス=ビーフストロガノフだと思っていた・・・

「ゴホン!」

「フォルテさん・・・?」

カズヤが何やら、咳き込んだフォルテを不思議そうに見ていた・・・

はは〜ん・・・フォルテ・・・君もか・・・

 

そういう訳で、師弟対決の火蓋は切って落とされた・・・

今回は時間の都合上、ビーフストロガノフとハヤシライスの違いとも言える、サワークリームは即席の物を使う事になった・・・にしても・・・

「ふんふんふふふ〜ん♪」

ミルフィーは料理の時になると、やはり朗らかになるな〜・・・

そして、手捌きも相変わらず早いし・・・

 

そして、師匠の方はというと・・・

「・・・・・・」

これまた、弟子とは正反対に無言のまま、野菜から捌いている・・・

手捌きは言うまでもなく、すんごく早い・・・

やはり、刃物の扱いには慣れているか・・・

・・・どうでもいいが・・・レイよ・・・

そのミモレットがプリントされたエプロンはお前のものか?

後、せめて仮面ぐらいは外せ・・・かなり不気味だぞ・・・

 

そして、具を先に煮込みだしたのはレイの方だった・・・

ミルフィーの方はとまだ、野菜を捌いている最中だ・・・

そして、火は弱火だな・・・

 

「・・・勝負あったな・・・」

・・・とアバジェスが、どこぞやの料理漫画のような事を言った。

 

「え!?」

「・・・っ!?」

そして、リコやシヴァ様も律儀に反応した・・・

 

そして、ようやく、ミルフィーが煮込みに入った時、レイが口を開いた・・・

やれやれ・・・またいつものご指摘かい・・・

 

「お前と俺の腕の差はさほど、変わらん・・・」

何が言いたいんだよ、テメェは・・・

「え?」

ほれ見ろ・・・ミルフィーも返答に困っているじゃねぇか・・・

「しかし、勝つのは俺だ・・・」

「・・・っ!?」

これまた、ミルフィーも料理漫画風にショックを受ける・・・

 

「ど、どういう事・・・?」

ミルフィーの綺麗な頬に汗が浮かぶ・・・

「ふ・・・それは完成してからのお楽しみだ・・・」

殴るぞ?テメェ・・・今、言えよ!

 

そして、完成した二人のビーフストロガノフが三人の審査員に振舞われた・・・

ミルフィー・・・後で、君が作った方のビーフストロガノフを分けてくれ。

 

三人は二人の分を何度も交互に食べ分ける・・・

そして、シヴァとリコが驚いた様子で何度も食べ比べている・・・

アバジェスは無表情でレイの方を一口食べた後はミルフィーの方だけを食べている・・・何だ?レイって実は下手くそだったのか?

 

そして、判定が下された・・・

 

ミルフィーの方を選んだのはリコ一人だけだった・・・

つまり、勝ったのはレイの方だった・・・

な、なんだって!?

 

「ど、どうして・・・?」

ミルフィーは自分のものを何度も確認するかのように食べている・・・

「納得がいかない様子だな・・・仕方ねぇな・・・」

そう言うと、レイは自分の作ったビーフストロガノフを新たに盛り付けてミルフィーに手渡した・・・

「食べてみろ・・・そうすれば何が違うのかがわかる筈だ・・・」

「・・・・・・」

ミルフィーはそれを恐る恐る・・・口に入れた・・・

「・・・っ!?」

「お前とて、味の違いくらいわかる筈だ・・・」

・・・いつから、料理漫画になったんだ?これ・・・

 

「う、うそ・・・や、柔らかい・・・野菜がとろけるように柔らかい・・・」

「そうだ・・・言っておくが、俺はお前と同じ材料しか使っていない・・・」

「だ、だったら・・・どうしてこんなに・・・」

「違うのか・・・か?答えは簡単だ・・・それは俺とお前の料理に対する心構えの違いだ・・・分かるか?」

わからねぇよ。

 

「心構え・・・?」

「そうだ・・・俺は料理というものを趣味としては捕らえていない・・・食物への鎮魂際だと思って料理しているのだ・・・」

 

とうとう・・・訳のわからん事を言い始めたよ・・・コイツ・・・

 

「俺が言った事を忘れたか?食材を最大限に活かすのが、料理人の使命だと!」

「ガーン!」

 

師匠の言葉にショックを受けてよろめくミルフィーこと弟子・・・・・・

ていうか、お前もミルフィーも、紋章機のパイロットだろうが!

 

「俺とお前の違いは煮込むまでの時間の差だ・・・スープ系統の野菜煮込み料理は野菜の食感こそに醍醐味がある・・・だからこそ、火加減ひとつの差がダイレクトに響くんだ・・・」

あ〜・・・そうですか・・・

 

「おそらく、お前も野菜は弱火でじっくり煮込むという事は知ってる筈だ・・・」

「う、うん・・・」

「俺は料理の始めに鍋の中の温度を上げていたのだ・・・あらかじめ真水を入れてな・・・こうする事により、中には蒸気が溢れて、野菜が柔らかくなり、同時に調味する際に味が染み込みやすくなる・・・そして、俺は更に、具を捌く時間を最小限に抑えた・・・煮込む時間を稼ぐ為にな・・・もう・・・分かっただろう・・・」

「ま、参りました・・・」

 

へなへなと座り込む・・・ミルフィー・・・

 

その参りました・・・は俺達全員の敗北を意味するものだった・・・

 

「さぁ〜って♪リッコ〜♪」

 

あいつはと言うと賞品に飛びつく寸前だ・・・

 

しかし・・・最初に言ったと思うが、俺には秘策がある・・・

 

「ちょっと、待て・・・」

俺は秘策を実行に移す事にした・・・

「何だよ・・・?」

不機嫌そうにあいつが振り返った・・・

「レイ・・・最初に言ったよな・・・追加種目があるってな・・・」

「・・・ああ、そうだったな・・・」

「そして、たった今、追加種目が出来たんだ。」

「チッ・・・誰だよ・・・」

 

俺は座り込んでいるミルフィーの手を握った。

「タ、タクトさん?」

不思議そうに見上げる彼女を俺は引き上げてあげた・・・

 

「まさか、その馬鹿女だなんて事じゃないだろうな・・・」

「まさかも何もそのつもりさ・・・」

「何を馬鹿な・・・ん?・・・・・・っ!?」

レイは今頃になって俺の秘策に気付いた。

「ま、まさか・・・」

「そうさ・・・最後はミルフィーと麻雀で勝負してもらうぞ。」

「馬鹿な!汚ねぇぞ!!」

「目的の為には手段を選ばないって言ったのはお前だろう?」

「い、いや!それは・・・」

焦ってる♪焦ってる♪・・・おもしれぇ〜!!

 

「タクトさん!私、麻雀なんて、こないだ始めたばかりですよ!?」

 

俺は不安がるミルフィーの手を両手で包み込んで・・・彼女の目を見据える・・・

「タ、タクトさん・・・?」

「ミルフィーになら・・・出来るさ・・・必ず・・・信じてるよ・・・」

「タクトさん・・・」

「だから、俺に君の力を貸して欲しい・・・」

「分かりました!あたし、やります!」

 

「・・・って何、ラブコメやってんだよっ!!」

 

「黙れ!死神のメシア!」

タクトは死神のメシアことレイ・桜葉をズビシ!と指差した。

「はあ?」

そして、指摘されたメシアは『お前、頭は大丈夫か?』と言いたげな呆れた様子で見ていた・・・

「俺とミルフィーと勝負しろ!」

「・・・色んな意味で嫌だな〜・・・」

メシアは参ったなぁ〜といった様子で髪を掻いた。

すると・・・審査員の三人が・・・

 

「父上!この勝負を受けないのは卑怯ではないか!?」

と娘が・・・

『コクンコクン』

と小さい方の妹がシヴァに賛同するかのように頭を振り出した・・・

 

「お、おいおい・・・こんな勝敗の決まりきった勝負をけしかけてくる方が・・」

 

「レイ・・・命令だ・・・闘えっ!」

その一言がトドメになった・・・

 

「あーーー!もう!分かりましたよっ!!」

 

と言う訳で最後の勝負が始まった。

 

・最終戦

タクト&ミルフィーユ VS  死神のメシア

 

舞台はミルフィーの部屋・・・

 

牌はすでに用意されている・・・

 

俺はミルフィーに指示を出すだけだ・・・

そう、これこそが、俺のやり方だ・・・

 

「この方法でお前を倒すっ!」

タクトはメシアをズビシッ!と指差した!

「その馬鹿女の運に頼っているだけじゃねぇかっ!!」

メシアの指摘はごもっともだった・・・

 

「いくよ・・・ミルフィー・・・」

「はい!タクトさん!」

二人は決戦に赴く前のシュチュエーションで牌を洗牌(準備)する・・・

ジャラジャラ・・・

「くそ〜・・・絶対にあり得ね〜ぞ・・・こんな、三文芝居なんて・・・」

ロマンチストな二人に対してメシアは至って、現実的だ。

 

そして、勝負が始まっ・・

 

「あ、ツモだ!」

「あ、本当です〜♪」

 

・・・てすぐに決着がついた・・・

 

「やっぱりーーー!!」

 

立ち上がって喜びを分かち合う勝者の二人に対して、テーブルに肘を立てたまま頭を抱え込んで、理不尽な現実を見せ付けられる敗者・・・

 

ミルフィーユは最初からあがっていたのだ・・・

これを役満の天和と呼ぶ・・・

そして、ミルフィーユが親だった為に得点は48000点・・・

そして相手の持ち点は最初のままの25000点・・・

つまり、メシアは何をする事も許されずに撃破されたのだ・・・

まさに、紋章機の戦いの時とはまるで立場が逆である・・・

 

「約束だ・・・指揮権は俺に委譲してもらうぞ?」

 

「・・・きたねぇ・・・きたねぇよ・・・」

 

俺はテーブルに居座ったまま、ブツブツとぼやいているあいつに約束通り、指揮権の委譲を求めた。

「おい・・・聞いてるのか?」

 

「くそ・・・覚えてろよ・・・絶対にこのままじゃ済まさねぇからな・・・」

 

まだ、何かブツブツ言ってるよ・・・

 

「おい!」

 

俺があいつの肩に手を乗せた瞬間、あいつはその手を振り払って・・・

 

「ちっくしょーーー!覚えてろよーーーー!!!

 

「お兄ちゃん!?」

 

漫画で見る悪役のような捨て台詞を残して部屋を飛び出した・・・

ぷ、ぷぷ・・・くくく・・・ご、ごめん・・・もう、限界かも・・・

 

「うわっはっはっはっ!お、おかしずぎる・・・!ははは!あははは!!」

 

僕はひたすら笑い転げるタクトさんを見ながら、リコにこっそりと聞いてみた。

「リコ・・・レイさんが少し、かわいそうに思えたのは僕だけかな・・・?」

そうすると、リコは苦笑しながら、頭を小さく横に振った・・・

 

 

「・・・と言う訳で、決戦の日までお前達に紋章機の使い方を教える事になった・・・」

 

次の日、あいつは昨日とはうって変わって真面目な様子で淡々とアバジェスからの命令を伝えてきた。

「教えるって具体的に何をするんですか?」

「なぁに・・・カズヤ・・・難しい事じゃないよ・・・」

真面目になったかと思いきや、意地悪モードの口調に変わるあいつ・・・

本当に奇怪な奴だ・・・

 

「俺のアルフェシオンと戦う“だけ”・・・ただ、それ“だけ”の事だよ・・・あはは♪」

 

『・・・っ!?』

 

その場にいた全員が凍りついた・・・

 

「もう一度、言うぞ♪ただ、俺と戦う“だけ”だからさ♪」

 

その“だけ”が強調されているあたりにもの凄い悪意を感じる・・・

 

「と言う訳で、今すぐに紋章機に乗り込むこと♪・・・さもないと・・・・・・」

 

さもないと・・・の辺りでトーンが下がっていく・・・

 

「今、殺す・・・」

 

こうして、俺達の地獄の訓練が始まったのだ・・・

 

訓練の最中にあいつは・・・

 

「別に昨日の事を気にしてるわけじゃないからな♪」

 

などと抜かしやがったが、絶対に根に持っていたとしか思えない程の猛攻撃だった・・・ちくしょう・・・ストレス発散かよ・・・

 

ちなみに、カズヤとリコには激甘な攻撃だった・・・

このエコ贔屓め・・・

 

ちなみに、レイの恨みは凄まじく、初日で紋章機達はカズヤとリコを除いて全機がほぼ大破・・・さすがのアバジェスが怒って、その次の日からはシュミレーションになった・・・最初からシュミレーションにすれば良かったんじゃないのかよ・・・あの野郎・・・

 

〜決戦前夜の月

 

訓練を始めてから1週間・・・

 

「馬鹿共め・・・」

レイのアルフェシオンのフライヤーがいつも通りにタクト達を打ちのめしていく・・・

「く・・・!」

シュミレーション(バーチャル)の中とはいえ、タクトとレイの戦いは凄まじいものだった・・・アバジェスとの特訓の成果かエクスカリバーを二本扱えるようになったタクトは何とか、レイのダインスレイブを受け止めれるようにまでなっていた・・・

(とは言え・・・少しは成長したと言う事か・・・)

レイは七番機から距離をとって、今度は変形して背後に回りこむと同時にタクトをかく乱する。

「そこっ!」

「・・・っ!?」

しかし、俊敏に機体をロール(旋回)させて、レイのバックアタックに対応する。

 

タクトは明らかに強く成長していた・・・

 

きたる最凶の敵との対決の日の為に・・・

 

その夜・・・アバジェスの部屋では・・・

 

「なるほど・・・タクトがそこまで、強くなっていたとはな・・・」

「ええ・・・少し、驚きました・・・以前とはまるで、別人でしたよ・・・」

「別人か・・・」

「はい・・・いくら、かく乱しても冷静に俺の仕掛けてくるポイントを掴んできます。」

「ならば、そろそろ頃合だろうな・・・」

ラスト・リヴェンジャーを討ちに行きますか?」

「だな・・・出撃は二日後の午前だ。つまり、明日の夜が決戦前夜と言う事になる・・・タクトに教えておきたい事があるのならば、早い内にしておけ・・・」

「了解しました・・・時にロキを見かけないのですが・・・?」

「あいつは、皇国に戻った・・・」

「まさか、の事で落ち込んでいると言う訳では無いでしょうね・・・」

「それは、無いさ・・・あいつだって人の親だ・・・いつまでもくよくよはしないだろう・・・あいつが皇国に戻ったのは皇国軍の再編成だ・・・ルフト一人では無理があるだろうしな・・・」

「・・・・・・なるほど、ラグナロクへの準備ですか?」

「ああ・・・お前もその時にはいないんだろう・・・」

「はい・・・どうあがいてもその運命は覆りません・・・」

「そうか・・・・・・飲むか?」

アバジェスが酒瓶を差し出した。

「はい、いただきます・・・」

 

皇国歴 422年・・・6月5日・・・

 

「何だよ・・・話って・・・」

「いいから、紋章機に乗って宙域に出るぞ・・・」

 

俺はレイに言われるがままに七番機に乗り込んで、宙域に出た。

白き月をジュノーから発せられる光が照らしている・・・

今回はまわりには誰もいない・・・

俺の七番機とあいつの零番機だけだ・・・

正直に言うと、今からでも本気で闘り合えそうな状況だ・・・

 

「いいか・・・ラスト・リヴェンジャーの攻撃は回避できるものではない・・・」

奴は唐突に切り出してきたが、俺は驚きはしない・・・俺も同じ事を思っていたからだ・・・更に悪い事にあのラスト・リヴェンジャーの攻撃力は脅威的だ・・・七番機でも耐え切れるかどうかがわからなかった・・・

「紋章機の装甲はオリハルコン製にして今回は全機にASフィールド発生器まで取り付けて置いた・・・それでも、ラスト・リヴェンジャーの攻撃力を抑えきれるとは思えない・・・お前も薄々気付いていたんだろう・・・」

「まぁな・・・」

「そこでだ・・・今日は最後の特訓になる・・・」

「ちょ、ちょっと待て!明日出撃するのか!?」

「そうだ・・・既にエンジェル隊にもマスターの口から伝えられているだろう・・・それに、あまり時間が掛れば、NEUEがあいつに喰い尽くされてしまうからな・・・」

「・・・・・・」

そうだ・・・俺の不注意で事態を悪化させたんだ・・・だからもう、こいつが気に食わないからと理由は通用しないだろう・・・それに今度の戦いは過酷だろう・・・ならば、今回は素直に言う事を聞いておこう・・・

「話を戻すが、最後の訓練日である今日は、お前だけに特別訓練だ・・・」

「何をする気なんだ・・・」

「いいか・・・七番機は本来半径10万kmまでの味方機を防御できる広域型の強化型ASフィールドを持っている・・・

「広域型のASフィールド・・・」

「それを今回の訓練で会得できなければあいつとの戦いで勝つのは難しい・・・下手をすれば死人が出る・・・今回ばかりはマジでな・・・」

「ああ・・・なら、早速始めようぜ・・・それで、何をするんだ?」

「俺の攻撃を受け続ければいい・・・ASフィールドが展開されるまでな・・・」

 

正直に言うと嫌なのだが、事はエンジェル隊の命に直結する事だ・・・

今回ばかりは失敗は許されない・・・

逃げる気は無いが、逃げる場所など無いのだ・・・

 

結局、俺はあいつのフライヤーに滅多打ちにされたが、フィールドが発生する事は無かった・・・何か、損をした気分だ・・・

 

そして、その夜・・・俺はアバジェスに呼ばれた・・・

 

「よく来た・・・」

「タクトさん・・・お久しぶりです・・・」

俺がアバジェスの部屋に行くと、そこには懐かしい顔があった・・・

そして、俺にとっては彼女がそこにいる事が信じられなかった・・・

「ル、ルシャーティ・・・・・・」

俺は以前、ルシャーティが惨い殺され方をされた悪夢を見た事がある・・・

そして、彼女が行方不明になっていたのを知って、もしかしたら、あの悪夢が現実のものではないかと危惧していたのだ・・・

「僕もいるよ・・・マイヤーズ・・・」

「ヴァイン!?」

今度こそ、たまげた・・・アバジェスの背後から現れたのはあの死んだ筈のヴァインだったのだ・・・

「久しぶりだね・・・本当に・・・何年ぶりかな・・・」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!どうして君が・・・」

頭の中が混乱しそうだ・・・

 

「それは、私と同じで隊長にクローニングされたからだ・・・ヴァインもメシア隊の一員だよ・・・シリウスが入ってから、戦線から離れたいたがな・・・」

背中から聞き覚えのある男の声が聞こえてきた。

 

「エ、エオニア・・・」

「久しぶりとは少し、違うかな・・・」

俺の背後に立っていたのはあのエオニアだった・・・

バッサリと髪を短くカットしたパイロットスーツのエオニアにはかつての廃太子としての面影は無い・・・でも、そのエオニアの助言のおかげで俺は何とか冷静さを保っていられた・・・まったく、最近はずっと驚きっぱなしだ・・・

 

「それで、二人はあいつに蘇らされたって事なのか・・・?」

 

「そうだ・・・」

「・・・っ!?」

 

今度はエオニアの背後から噂をすればのあいつが出てきた・・・

いきなり、背後から現れるなビックリするだろうが・・・このサド・・・

 

「お前は、俺を驚かせるのが趣味なのか・・・?」

「フン・・・そんな暇な事をするか・・・このマゾめ・・・」

嘘つけ・・・この間は妙に乗り気だった癖に・・・って!

 

「誰が、マゾだと!?」

この野郎・・・また、人の心の中身を見てやがったな・・・

「だったら、くだらねぇ事を考えてんじゃねぇよ・・・」

「本当の事を考えて悪いか!?」

「この野郎・・・ここで殺してやろうか・・・」

「やってみろ!」

 

「んんっ!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

アバジェスの咳払いで静かになる二人・・・

 

「今日、ここにお前を呼んだのは他でも無い・・・シリウスの事だ・・・」

 

再会の会話すらさせずにアバジェスは話をきり出した。

 

「シリウス・・・」

そうだ・・・今度の相手はあのシリウスだ・・・

 

元は惑星リウスの皇子でミルフィーによく懐いていた普通の子だったんだが、メシア隊のメンバーとして現れた時はまるで、別人と化していた・・・特にあの言動は普通の人間のものでは無い・・・

そして、先の闘いでは、あのような形で生きながらえていたし・・・

ともあれ、結果的に言うとあいつは、とにかく俺が気にくわないらしくて、執拗に俺をつけ狙っていた・・・

「実はね、マイヤーズ・・・あの時、僕を襲撃したのは他ならぬ、シリウスの戦闘機だったんだよ・・・」

「な、何だって・・・」

 

な、何だ・・・何か、ぼやけていたパズルが・・・埋まっていくような・・・

 

「あの時、一機の戦闘機が僕が乗っていた七番機を襲った・・・僕は必死に逃げたんだけどね・・・あいつもとことんまで追いかけてきたんだよ・・・その戦闘機にシリウスが乗っていたのを知ったのは蘇った後でだけどね・・・」

 

「・・・シリウスはあの時、既に紋章機を動かしていたのか・・・」

 

「ルシャーティ・・・君は部屋に戻っていてくれないか?」

アバジェスが突如、ルシャーティに退室を求めた。

「え、は、はい・・・」

「すまんな・・・・・・」

 

ルシャーティが去った後で、アバジェスはスクリーンを呼び出した。

「タクト・・・レイやエオニアは目を通したが、かなり刺激の強い映像だ・・・いいか?」

「神界の時に慣れたよ。」

「なら・・・お見せしよう・・・これは、ヴァインがリウスで偶然に発見した映像だ・・・」

 

「・・・っ!」

その映像が映された時、俺は顔をしかめた・・・

その映像は惨殺された死体だった・・・

 

「ヴェ、ヴェレル・・・なの・・・か・・・・?」

 

顔は全く判別できないほどに砕かれているが、その服や翼から彼であったとギリギリでわかる・・・

「そうだ、あのヴェレルだ・・・奴は密かに生き延びていた・・・もう、分かっていると思うが、ヴァル・ファスクの評議員とヴェレルは元は同じブラウド財閥出身だからな・・・」

 

「し、しかし・・・一体、誰がこんな事を・・・」

 

ヴェレルの体はあちらこちらを引きちぎられていた・・・まるで、楽には死なせないと言わんがばかりの殺し方だ・・・ヴェレルはクーデターの首謀者だったから、恨みはかっていただろうが・・・しかし、これは幾ら何でも異常だ・・・まともに残っている場所が無い・・・

 

「シリウスに決まっているだろう・・・人間の体を引きちぎるだけの化け物などおらん・・・ヴェレルの死体はどこも、喰われてはいない・・・」

「シ、シリウスだと・・・」

確かに今のあいつならここまでしてもおかしくないだろうが・・・何故、同じブラウドの人間まで殺すんだ?

「タクト・・・被害者はヴェレルだけではない・・・リウスには他にも数名のブラウドの人間の死体が放置されていた・・・被害者の共通点は全員が、ミルフィーユ強奪に加担していた連中だ・・・あの事件に関与したものは行方不明になっているか、死体として発見されるかのどちらかしかない・・・」

「ちなみにリウスの人間は一人も発見できなかったよ・・・遺体すらもね・・・」

ヴァインが淡々と報告した・・・

「ああ、ヴァインは私の命令によって、リウスを調査していたんだ・・・」

「リウス・・・リコの話によればシリウスがもう帰る場所は無いとか言ってたな・・・」

リウス・・・俺達が一度だけ、立ち寄った皇国に属さぬ中立の星だった。

「当たり前だ。ラスト・リヴェンジャーが起動した際にリウスの人間を一人残さず喰い尽したんだろう・・・」

「待て・・・だとすると、ラスト・リヴェンジャーがリウスにいた事になるぞ・・・」

「だから、そうだと言ってるだろう・・・お前達も見ている筈だ・・・ラスト・リヴェンジャーの初期段階の姿を・・・飛行形態だった頃の姿をな・・・」

「ちょ、ちょっと待てよ・・・だとしたら・・・」

あの時、あの戦闘機を動かしたのは・・・

「ああ、もう・・・じれってぇなぁ・・・ラスト・リヴェンジャーを起動させたのはあの馬鹿女だと言ってるんだよ!

「な!?」

「ラスト・リヴェンジャーはそのスペックの高さから、本来はお前か桜葉家の血を引くものにしか、動かせないように厳重なセキュリティをかけてたんだよ・・・なのに、あいつが、シリウスにそそのかされて、起動させちまったんだよ・・・」

「まさか・・・う、嘘だろ・・・」

「事実だ・・・おそらく、シリウスはカルマに本能を刺激されたんだろう・・・宇宙への探求心を刺激されたんだ・・・カルマの得意技だからな・・・」

カルマ・・・元凶のクソ野郎だ・・・

「と言う事はラスト・リヴェンジャーを仕組んだのもあのクソ野郎か・・・」

「ああ・・・しかし、現状の問題はそこではない・・・一度、起動してしまったラスト・リヴェンジャーを止める事はできないという事だ・・・」

「どういう事だ・・・」

「あれは、本来、カルマに対抗する為にお前専用の紋章機として開発された・・・あれは混沌から無制限にエネルギーを摂取できて、学習するんだ・・・最終的にはいかなる攻撃への防御策も得るだろう・・・言わば無限の進化を遂げる戦闘機だと思って構わない・・・」

「何で、その紋章機がリウスにあったんだよ・・・」

「リウスにあったのではない・・・リウスの民があの星に呼び込まれたのだ・・・ラスト・リヴェンジャーが起動した際の生贄としてな・・・そして、リウスの民が抱く他星への憎悪心と復讐心をあいつはずっと、摂取してきた・・・そして、起動した際にその魂と体を喰い尽した・・・あいつにとって、人間の魂は何よりもの好物だからな・・・

「まったく、とんでもない化け物ですね・・・」

「な、何だよ・・・そんなのふざけてる・・・!」

「ふざけていようが、それが現実だ。俺はあの当時、最強クラスの封印を施して封印していたんだが、ラスト・リヴェンジャーは復讐心を持った人間を何よりもの好物にする・・・そして、カルマはその栄養を与える為に時空震を起こすように俺に命じた・・・

「お前!だからってあいつの言う事に素直に従ったのか!?」

(ふふ・・・嘘つき・・・)

「やめろ!」

あいつに掴みかかろうとした俺をエオニアが立ちはだかって制した。

「エオニア!どいてくれ!そいつだけは・・・!!」

「フン・・・忘れたのか?セルダールの事を・・・」

「おあいこだとでも言いたいのか!?」

「馬鹿・・・違う。最後まで良く聞け・・・カルマは二つの要求をした・・・一つは時空震を起こして、クロノ・スペースを凍結する事・・・そして、もう一つの案はEDENを全て滅ぼすという提案だ・・・お前なら、後者を選ぶか?忘れたか?カルマは創造主だ・・・俺でも抗えん程の化け物なんだぞ・・・俺がしなければ今頃、EDENは存在そのものが間違いなくなくなっているだろう・・・セルダールのように、あいつはやる時は躊躇無く実行に移す・・・だから、やむを得ず実行に移した・・・」

「・・・で、でも、お前はあいつを撃破したじゃないか・・・」

俺の頭の中にカルマのゼックイを瞬殺した光景が蘇る・・・

「馬鹿・・・戦闘機を撃破されたぐらいであのカルマ消滅するわけがないだろう・・・あれはあくまで概念に過ぎん・・・俺達の攻撃などが通用する相手ではない・・・お前とて、白き月での闘いの際にその力の片鱗を見せ付けられただろう・・・」

(第二章 最終 〜終幕の天使〜を参照・・・)

「タクト・・・あまり、レイを責めないでくれ・・・そうでなければ、俺達の存在はありえなかっただろうからな・・・」

「・・・・・・わかったよ。」

釈然としなかったが、レイを責める事ができるのはカルマを倒せる者だけだろう・・・

ならば、これ以上責めるのは筋違いだろう・・・

 

「マイヤーズ・・・問題はそこじゃ無いんだ・・・これを見てくれないか?」

そう言って、スクリーンに現れたのは・・・

「・・・・・・」

その映像を見て俺は背筋が凍りついた・・・

足元がふらつく・・・

「ルシャーティ・・・なのか・・・」

「ああ・・・」

いや、それだけではない・・・

これは、俺が夢で見た映像だ・・・

荒れ果てた納屋に放置された変わり果てたルシャーティ・・・

生死は問うまでもない・・・

あの夢ではルシャーティは何者かに殺された・・・

そう、少年の姿をした殺人鬼に・・・

(第一章 ブラウド財閥 後編を参照・・・)

 

「まさか・・・これも、シリウスが・・・」

「ああ・・・だが、これは隊長(レイ)が用意してくれた精密な人形だ・・・」

そ、そうか・・・少し、安心した・・・

でも・・・もし、本物が同じ目にあっていたかと思うとゾッとする・・・

それ程までに、この殺害方法は凄まじい・・・

ヴェレルと同じように彼女のつけていた装飾品と飛び散った彼女の毛髪でかろうじて、彼女と断定できるだけで、他の箇所で断定するのは難しい・・・

「な、何で・・・こんな事を・・・」

 

「分からないか?これらの被害者の共通点は全てミルフィーユ・桜葉にある・・・他にもルルの遺体もリウスから発見されている・・・」

 

ルル・・・彼女も・・・殺されたのか・・・

 

「これは・・・私の落ち度だな・・・リウスは皇国との交流を避けていたからな・・・隠れ蓑にするのはにはうってつけの星だ・・・そして、ラスト・リヴェンジャーによって干からびた大地もホログラムで誤魔化せばまず、分からないだろう・・・」

 

「僕とルシャーティがリウスに着陸した際にはあそこには何も無かったよ・・・瓦礫と岩石以外のものが何もなかったよ・・・おまけに大気はバイオハザードを起こして汚染されている・・・あそこは既に復興できるような星じゃない・・・死の星だ・・・」

 

バイオハザード・・・有害な菌類が外部に漏れる事・・・

 

「ラスト・リヴェンジャーが全て喰い尽したというのか・・・水ひとつ残さずに・・・」

「ああ・・・このまま行けば、NEUEを喰い尽して今度はこちら(EDEN)へと進出してくるだろう・・・ゲートキーパーであるシリウスを介してな・・・

「そうだ・・・何で、シリウスがゲートキーパーなんだよ・・・」

 

(くっくっくっ・・・まだ、分からねぇのかよ・・・シリウスの正体がよぉ・・・)

 

「そこまでは知らん・・・ただ、ブラウドが大規模の部隊を動かす時は常にシリウスを介していたのは事実だ・・・」

(嘘つき・・・悪い人・・・今、本当の事を教えてあげればデザイアは間違いなく、シリウスを殺せないわ・・・どう?面白そうだからやってみない?だって、自分の・・)

「黙れ!」

突如、レイが声を荒げたので俺達の視線はレイに集中した。

「な、なんだよ!?」

「隊長・・・?」

「す、すまん・・・」

「・・・・・・・・・」

しかし、アバジェスだけはレイに何があったのかに勘付いていた。

 

「とにかく、明日俺達は出撃する・・・いいな?」

「ああ・・・わかった・・・」

 

俺は、みんなに出撃の事を伝えるべく、アバジェスの部屋を後にした・・・

 

 

「・・・・・・行ったか。」

俺はタクトが部屋から離れたのを確認して最終的な確認を取る事にした。

 

「ヴァインとルシャーティはシリウスを消滅させるまで、引き続きここで待機しているんだ・・・いいな?」

「は!」

「そして、エオニア・・・お前は引き続き、この白き月の警護にあたれ。」

「お待ち下さい!私は戦えます!」

「駄目だっ!」

レイは食い下がるエオニアを強く拒否した。

「何故ですか!?相手はあの化け者ですよ!?」

「だからこそ、駄目だと言ってるんだ!」

「わ、私が足手まといだと・・・」

「そうだ!」

「・・・っ!?」

レイははっきり断言した。足手まといだと・・・

「お前のゼックイにはオリハルコン装甲ではない・・・そして、ラスト・リヴェンジャーとの戦いは回避を競うわけではない・・・回避できない攻撃もある!今度は本当に殺されるぞっ!」

「死を恐れてなどはいません!」

「奴に殺されれば、魂を喰われる・・・そうなれば、俺でも再生はできん!」

「エオニア・・・レイが言っているのは本当の事だ・・・事実、我々が、被害者をお前達のように救済できないのはそれが理由だ・・・魂は天然なるもの・・・いかに俺やレイといえども、魂までは複製できない・・・もし、ラスト・リヴェンジャーに殺されればそれは本当の消滅を意味するぞ・・・」

「そして、ラスト・リヴェンジャーはインフィニの出力を保つ為に、無制限に人の魂を摂取する・・・間違いなくお前は殺される・・・」

魂・・・それは、絶対者でさえ、介入できない天然から生まれでたもの・・・

インフィニの動力源である・・・

アンフィニとインフィニの違いは魂の有無にある・・・

インフィニといえども、魂がなければアンフィニ並みの出力しか発揮できない・・・

現在の七番機零番機のように・・・

 

「エオニア・・・お前はもう、十分に戦ってくれた・・・お前には人生がある・・・そして、俺は既に長く生き過ぎた・・・だから、こういう戦いは俺に任せてお前は生きろ・・・

 

「隊長!まさか・・・」

ヴァインがハッとなってレイを見た。

 

「馬鹿・・・俺を誰だと思っている・・・死ぬ気などさらさら無い・・・

「それを聞いてはますます、退けません・・・隊長一人で行かせられません!」

「馬鹿!お前一機いなくても何も変わらん!なのに、わざわざ殺されに行く必要が何処にあるんだ!ゼックイを破壊してでもお前に出撃はさせないからなっ!」

「エオニア・・・これ以上は命令違反になる・・・だから・・・」

「構いません!私は既に一度、死んだ身・・・そして、多くの命を殺めて来ました・・・そして、己の死を恐れて己の罪すら償えずに何が軍人でしょうか!?」

「そんな事にこだわるな!お前はまだ、これから先がある!」

「それは、隊長とて同じ事でしょう!シヴァやシャトヤーンを残してどうするおつもりですか!?」

「そ、それは・・・」

「お願いです・・・私は死にに行く訳ではありません・・・しかし、最後まで私も一緒に戦わせてください!」

 

(ふふ・・・可愛い子・・・殺し愛してあげるわ・・・)

 

「だ、駄目だ・・・やめろ・・・今度は本当に殺されてしまうぞ・・・」

レイの声は既に震えている・・・

「レイ・・・」

 

「今、隊長が私の為に泣いてくれている・・・それだけで、十分です。」

「ば、馬鹿野郎が・・・」

 

(そうね・・・でも、私は純粋で馬鹿な子が好きよ・・・だから、殺し愛してあげるわ・・・可愛いらしいあなたの死に方は美しいものにしてあげる・・・)

 

この時、エオニアが死神に死の宣告を言い渡された事に気付く筈が無かった・・・

レイ・桜葉を除けば・・・

 

 

〜By Side Of DESIRE

彼女のそばに・・・

 

俺は明日の出撃予定時間をメンバーに伝えた後、自室で考えていた・・・

シリウスが俺を憎悪する動機を・・・

あいつはずっと夢の中で語りかけてきた・・・

“お前を殺してやる”・・・と・・・

あいつは俺を襲う理由をこう言っていた・・・

“お前が俺から全てを奪っていたからだ”・・・と・・・

 

(俺がお前から全てを奪っていったからだ・・・)

 

そして、シリウスに惨殺された被害者全員の共通点は全員が、何らかしらの形でミルフィーに関与していた事・・・シリウスがいくら、ミルフィーに心酔していたとしても、あそこまで、狂うのはおかしい・・・

何かが頭の中で引っ掛かっているんだ・・・

ピー・・・

うん・・・誰だろう・・・もう、遅いぞ・・・

「タクトさん、あたしです。」

「ミルフィー・・・どうしたの?」

俺がドアを開けるとそこにはミルフィーがいた・・・

そして、俺は彼女の異変に気が付いた・・・

彼女は寝巻きすがたのままで、その体は小刻みに震えていた・・・何かがあった・・・

「ミルフィー・・・何かあったのかい?」

「すいません・・・あたし・・・とても怖い夢を見てしまって・・・」

「ともかく、入りなよ・・・」

俺はミルフィーを部屋に招きいれた。

 

「それで、怖い夢ってなんだい?」

俺はミルフィーをベットに横たわらせて聞いた。

「それが・・・その・・・」

彼女が俺の顔を何回か見て言いづらそうにしている・・・まさか・・・

「その夢が俺に関係する事なんだね・・・」

「・・・・・・」

ミルフィーは小さく頷いた。

彼女の前世はあのルシファーだ・・・そのルシファーには未来を垣間見る能力が備わっていた・・・だからこそ、彼女の夢は無視できるものじゃない・・・

おそらくは現実に起こりえる事態なのだろう・・・

「とっても、怖い夢でした・・・タクトさんが・・・タクトさんが・・・」

彼女の怖がり方は尋常では無い・・・おそらく、俺がそれほど危険な目に会っているのだろう・・・

「ミルフィー・・・俺はここいるから・・・」

俺は彼女の背中を擦ってあげた・・・

「すいません・・・」

どうやら、ミルフィーは少し落ち着きを取り戻したようだ・・・

落ち着きを取り戻した彼女はゆっくりと語り出した。

「タクトさん・・・明日の戦い・・・本当にタクトさんも出撃するんですか?」

「ああ・・・俺が司令官なんだから、当然じゃないか・・・」

「駄目です・・・今度ばかりは本当に殺されちゃいます・・・」

やっぱり、そんな内容の夢だったのか・・・

「相手はシリウスだね・・・」

「そ、そうなんですけど・・・少し、違うんです・・・

何か歯切りが悪いな・・・

「え?少し、違うってどういう事・・・?」

「ご、ごめんなさい・・・夢の中の話ですから・・・」

いやいや・・・君の夢の中だからこそ、聞きたいんだけど・・・

「話すのは嫌かい?」

「ごめんなさい・・・」

ミルフィーの体がまた、震え出したので俺はそれ以上聞くのをやめた・・・

例え、俺が死んでしまう夢をミルフィーが見たとしても、俺は今度の戦いを辞退するつもりはない・・・逃げる事は許されないんだ・・・

それにあんな殺人鬼をこれ以上、放ってはいけない・・・

 

「タクトさん・・・一つ、お願いしていいですか・・・」

「・・・・・・何だい?」

「今夜だけでいいです・・・私と一緒に寝てくれませんか・・・?」

ミルフィーの顔は真面目そのものだった・・・

それは羞恥心すらも超えた彼女の本心だった・・・

「ああ・・・今夜だけでなくてもいいよ・・・」

 

そして、俺は彼女と一緒に布団に潜り込んだ。

「すいません・・・明日は必ず元通りになりますから・・・」

「ああ・・・分かってる・・・」

「えへへ・・・すいません・・・」

(大丈夫・・・俺が君を守るから・・・)

「タクトさん・・・暖かいです・・・」

「ミルフィーこそ・・・」

彼女の花の香りと体温が彼女がそこにいる事を実感させてくれている・・・

「タクトさん・・・私は何があってもタクトさんの傍にいますから・・・

「俺もだよ・・・」

 

二人は、口を重ねた後、自然に眠りについていった・・・

 

 

〜By Side Of FATE

彼女の傍に・・・

 

僕は今自分の部屋のでリコと一緒に寝ている・・・

最近はすっかり、寝る時は彼女と一緒だな・・・

情けないって言われても仕方が無いけど、僕は寝ている間にリコが何処かに行ってしまいそうで怖かったんだ・・・

「・・・・・・」

リコはすやすやと寝ている・・・

本当に天使のような寝顔だな・・・

この戦いが終わったら・・・僕はリコと・・・・・・

だからこそ・・・生き残らなきゃ・・・

そして、平和な世界を取り戻して、リコと暮らしたい・・・

タクトさんとミルフィーに負けないくらいの結婚式をあげるって約束したんだ・・・

駄目だな・・・僕は・・・

正直になれよ・・・カズヤ・シラナミ・・・

僕はラスト・リヴェンジャーが怖いんだ・・・

だから、彼女の傍にいたいんだ・・・・

情けない・・・これじゃあ、ロキさんにぶん殴られそうだ・・・

しっかりしろ!カズヤ・シラナミ!

僕が怖気づいてどうするんだ!?

ブレイブハートの名が泣いてるぞ!

 

僕はルクシオールの窓から見える白き月を眺めながら・・・

ラスト・リヴェンジャーとの決戦への決意を固めた!

 

 

皇国歴 421年 6月6日・・・

 

ラグナロクが始まった!

 

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