最終章A 2

 

最終決戦 

 

タクト・マイヤーズ VS レイ・桜葉  

 

〜漆黒は確か、されど有限、白きは不確か、されど無限〜

真の絶対者因果律が限りの無い並行世界を一本化する為に開いた三人の候補者により殺し合い・・・・最後の勝者の願い・・信念がこれからの道となる・・・・候補者達はこの殺し合いに参加させられる運命・・・この因果律の世界ではこの運命には誰も逆らえない・・・・

混沌の体現者 神皇が滅んだ今・・・・残った候補者(体現者)は

奇跡の体現者完全の体現者の二人・・・・

最後の候補者、奇跡の体現者タクト・マイヤーズは

決闘の場所ガイエン星系へ向かっていた・・・

タクトが望む世界それは不安定でも幸せな世界・・・・

新しいものが生まれる世界・・・・毎日が変化する世界・・・・

相手は宿敵にして最強の敵 レイ・桜葉

最初の候補者にして

完全の体現者・・・不変の世界を望む者・・・・

安定した世界を望む者・・・・

タクトとは正反対の世界を望む者・・・

進化を否定する者・・・・

神皇から家族を守る為に様々な罪を被った者・・・

その為に、エオニアやシリウスを初めとした犠牲者達・・・

レイは神皇を引き寄せる為に、セルダールを見殺しにしたのだ。

それがタクトにはどうしても許せなかった。

思えば、タクトはいつもレイに負けてばかりだった・・・・

そして決着はまだついていいないのだ・・・

 

(イメージ曲 MD15 番 FINALFANTASY パンデモニウム城 )

「・・・・分かる・・・・もう近くまで来ている・・・・」

ガイエン星系の暗礁中域まできたタクトはレイの波動を感じていた。恐らくはわざと場所を教えているのだろうが。

宙域周辺は惑星はおろか基地などもない、巻き添えの心配もなく思う存分戦え、人目につくことも無い。まさに決闘にはうってつけの場所なのだ。

「でてこい!!いるんだろう!!」

するとタクトの真正面にアルフェシオンらしき機体が現われた。

別れた時よりも形状が優美さを増し、死神のメシア時代のアルフェシオンを思い出させる。

「ようやくきたか・・・待ちくたびれたぞ・・・シャイニング・スターにブレイブハートのブースターを取り付けたとはな・・・」

「そっちこそ改造しただろうが・・・」

「馬鹿を言うな、これが本来のアルフェシオンだ。神皇の呪縛が解け神界戦争の時と同じレベルまで回復したんだよ。」

「本来の姿だと・・・?」

「そうだ。はっきりと決着をつけたいのは俺も同じだ。だから俺も今回は全開でやらせてもらう。」

「始める前に聞いておく、お前はシリウスがああなっていくのを分かっていたんじゃないのか?止めれたんじゃないのか?」

「ああ、しかし、止めれば神皇が出てきて被害が広がるのが予測できたからわざと泳がせていた。」

「だとしても!お前が見捨てたのには変わりないだろう!!シリウスも殺された人達も!!」

「ふん、自分だけが正義の ヒーローだと思うな!それに俺はお前みたいに理想主義者ではない、全力で家族を守るだけだ!」

「こ、この・・・!他の人達がどうなってもいいと言うのか!?」

「助けられるのなら助けるさ。しかし、限界がくれば家族を優先する。それに文句は言わせん!」

「限界だと!?それだけの力を持ちながら・・・!!」

「事情も知らず、家族すらロクに守れないひよっ子にどうのこうの言われる覚えはない!」

「分かったよレイ。やはりお前と分かり合える事などない!」

「馬鹿が、今頃気が付いたか・・・?」

この世には必ず相いられない者達がいる。お互いの信念をぶつけ合い。絶対に話し合いでは解決しない天敵が・・・

「始めようぜ。これが最後の戦いだ!!」

 

タクト・マイヤーズの天敵はレイ・桜葉

 

「初めに言っておくこれは果し合いではない殺し合いだ!!」

 

レイ・桜葉の天敵はタクト・マイヤーズ

 

光と闇、白と黒、不安定と安定、未完成と完成、対極にして相いられないもの・・・・タクト・マイヤーズとレイ・桜葉のように。

「レイィーっ!!」

「タクトォーッ!!」

因果律を脅かす二機が己の命と信念をかけ交差する。白き彗星、七番機シャイニング・スターと黒き彗星、零番機アルフェシオン。レイはタクトとの接近戦を避け、アルフェシオンの豊富な遠距離の武器でタクトを攻撃し、タクトは勝算の望みが無い遠距離戦を避けわずかな望みのある接近戦に持ち込もうとレイを追跡する。

「今度こそ貴様との因縁を終わりにする!!」

「それはこっちの台詞だぁぁーー!!」

しかし機動力でアルフェシオンを上回る者はいない。取り付けたブレイブハートのブースターで追いかけてもぐんぐん離されていく。状況はまさにレイが有利だった。

「当たれっ!!」

七番機を振り切ると容赦なくフライヤー60機とデス・ブラスター・キャノンの制裁を加えるレイ・・・フライヤー高出力レーザーが宙域の暗礁区域を数にものをいわせ確実にタクトを狙いながらなぎ払っていく、タクトが苦し紛れに放ったフライヤーも潰されていく。タクトは暗礁区域の中で回避するのが精一杯だった。

「どうした!?逃げ回るだけか!?」

「く、くそぉ・・・・」

レイのフライヤーは七番機の中心を確実に狙ってくる。ハイパーキャノンを撃とうとするならフライヤーの大歓迎が待っている。

タクトは回避しながらレーザーファランクスで牽制するが、レイは無駄なく最小限の動きで回避してくる。

「おいおいこちらはまだ本気じゃないんだぜ・・・」

レイが挑発してくるが今のタクトに応える余裕などない。

「く・・・このままじゃあ・・・」

「やれやれ・・・仕方あるまい終わりにするか・・・」

レイがそう言うとアルフェシオンの姿が消えてタクトの視界は全て闇に閉ざされた。

「まさか、テリトリーか!?」

 

テリトリー・・・・神皇が所有していた自分が所有する空間。

この空間の中では術者の思い通りに因果律を操れる禁断の神族魔法。術者の魔力により因果律をどの程度まで操れるかが決まる。

「ようこそ俺のテリトリーへ・・・この空間こそが俺の領域だ。故にここでは俺に抗う事すら許されない。」

タクトは手を動かそうとするが全く動こうとしない。

このレイの領域にいる内はタクトには拒否権がない。

「感謝しろよ、タクト・・・俺の切り札を見せてやったんだからな・・・」

「何だと!?」

因果律より制裁者の俺に授けられた究極の封印魔法・・・

「タルタロス!」

次の瞬間タクトの存在はかき消された。

タルタロス・・・永遠の牢獄・・・

ここに送られた囚人は二度と出てくる事は叶わない・・・

「あっけない・・・」

しかし、突如レイのテリトリーが解け通常空間に戻る。

「な、何だ・・・?テリトリーが消失した・・・?」

そして、レイの目の前に消えた筈の七番機が現われる。

「戻ってこれた?体も動く!」

「タクト!?ば、馬鹿な!どうなってやがる!」

この時レイは確信した。こんな事を出来るのはもう一人の自分しかいないと・・・

「ルシファーなのか?いや、因果律か?」

(たいした奴だよお前は・・・あいつがここまで入れ込むとはな

「レイ!もう小細工は通用しないぞ!!」

(・・・・調子に乗りやがって・・・・)

レイがバイザーを外す・・・・

碧眼の目が真紅の眼に変わり、タクトを睨みつける。

「な、なんだ?息が詰まる・・・!!」

「そうだな・・・小細工はもう止めだ。望みどおり正々堂々と勝負してやる・・・生かしては帰さんがな・・・」

その瞬間、ガイエン星系に戦慄がはしる。

最強の存在が遂に本気になったのだ。

(この殺気!今までの比じゃ無い!!)

「どうやら、因果律の奴は正々堂々と決着をつけろと言っているらしい・・・思えばここまでお前が生き残ったのは因果律がお前を奇跡の体現者として、完全の体現者の俺と戦わせる為に仕組んだことなのかも知れんな・・・・・。

「俺が奇跡の体現者・・・・・」

「だが、タクト・・・因果律が用意した“運命”なんてものにこれ以上従うのはシャクにさわらねぇか?」

「俺だって運命なんてものは嫌いだ!」

「そうだ・・・俺達の決着は俺達だけでつけようじゃねぇか。」

「来い!!レイ・桜葉!!」

「いい返事だ。悔いの残らないように全開バトルといこうぜ!」

(イメージ曲 MD 16番  ガンダムSEED 強襲ドミニオン )

言うと同時にさっきの倍はあるフライヤーが飛んでくる。

「ちぃっ!」

タクトは避けようとするが15発の直撃を受ける。

「ぐあぁぁぁっ!?」

さっきまでレイは中心を先読みで撃っていたが、今度はあえてディレイをかけて狙ってきた。タクトがかわせなかったのはレイが意図的にリズムを崩したのだ。ハイレベルな戦いでは相手のリズムを崩すのが有効なのである。

「どうした?もう死ぬ覚悟ができたか?」

「ふざけるな!!」

再びレイは百は近いフライヤーを飛ばしてくる。しかし、今度はフライヤーのビームがフライヤーを反射して二段階の射軸を展開する。人間に避ける事は不可能に近い。

「反射!?ぐあっ!!」

今度は37発が被弾する。そしてレイは容赦なくフライヤーを使っていく。タクトもレイをロックオンしようとするが最高の機動力を持つアルフェシオンをロックオンする事など不可能である。

「・・・・悪く思うなよ、俺に常識は通用しない!!」

タクトの戦い方を知り尽くしているレイはタクトのリズムを確実に狂わせていくが、レイの戦いを熟知していないタクトには真似する事が出来ない。

いや、元よりレイにリズムなど無い。完全な臨機応変の戦闘スタイルこそがレイを最強と言わしめる所以である。レイはその場その場で最高の判断力を発揮する。

レイが距離をとろうと離れればタクトがブーストを全開にして追いかけてくる。

力で攻めていくのがタクトなら技で攻めていくのがレイである。

(やはり追いかけてくるか・・・ならばドッグファイトのテクを見せてやる。)

レイは前進したままデス・ブラスター・キャノンの発射準備をする。

「くそ、追いつけないのか!?」

(時にはあきらめるのも肝心だぜ・・・)

レイはリアブースターを切り、フロントブースターを入れてバックして、鮮やかにタクトの後ろについた。

「なっ!」

「なまじ速度があったのが仇になったな!!」

タクトは機体をアルフェシオンの方に向き直ろうとするが、機体の速度がありすぎてタイムロスを出してしまった。

そしてレイはチャージしていたデス・ブラスター・キャノンを撃つ!タクトはぎりぎりで回避するが、左手を持っていかれる。

「こ、このままじゃ・・・」

「ちんたらやってんじゃねぇぞっ!!」

再び距離をとったレイはタクトの射程外の距離から出し惜しみなくフライヤーを飛ばしてくる。シャイニング・スター以外の機体ならとっくに決着がついているだろう。

「全方面から!?」

タクトは一転突破で被害を最小限にとどめる。

しかし、ダメージは蓄積していく一方だ。

「どうした?白き月での方がまだ良かったぞ?まさかお前、俺がシリウスや神皇如きと同じくらいのレベルだとか思っているのか?」

(そんな事はない、こいつはいつも俺を圧倒してきた。正直シリウスや神皇との戦いを怖いと思った事はない。だが俺が本当に恐れていたのはこいつだ。こいつには底が見えない俺の一秒はあいつに10秒の余裕を与える。)

距離を詰めようとするが、レイはその距離を崩してはくれない。

まさに、出口のない詰め将棋である。

思えば、レイを本気にさせた時点で勝負は決まっていたのかもしれない・・・

本気を出したレイを相手にするのは無限に広がる絶壁にテニスの打ち込み練習をするものである。壁は絶対ミスをせず、こちらがミスをして受け損ねればそこで勝負は決まる。レイがタクトにしているのは勝敗の決まった詰め将棋なのだ。

「やられて・・・たまるかぁーっ!!!」

今までの経験とレイから譲り受けた直感で猛攻撃を避け続けるタクト。しかし、レイはタクト以上の経験をつんでいる。

「単調な動きだな・・・・ぶっ潰してやる!」

過去のラグナロクの使用により心を痛めたルシファーを見てトラウマを覚え、それ以来、本気を出せず牙を失った。

しかし、そのレイがエオニアの死によりトラウマを取っ払い

死神のメシアという牙を取り戻したのだ。

(奴が再度回避するのは3,1秒後・・・)

死神のメシアに戻ったレイは最小限の動作でタクトの脱出経路を無限のフライヤーで潰していく。

「ちぃっ!!」

タクトは残った脱出経路を探していく。

この因果律が動かす世界で絶対者であった神皇でさえ無の力を操れる存在でしかなかった・・・無は人が想像できる限界の賜物であるが絶対的な存在では無い。結果を左右する因果律こそがその上に位置する絶対的なものである。しかし因果律には意思が無い。ならば因果律を操れた者が絶対者なのだ。

「いつまでも逃げられると思うな!」

しかし現実には使いこなせる者はいない。そして、タクトの最後の敵であるレイは不変を突き詰めた完成品、隙などは存在しない。

そしてタクトは変化という名の奇跡で神皇に抗い続け生き抜いてきた未完成品。因果律に限り無く恵まれてきた戦士である。

「逃げ切れない!?ならば!!」

タクトが180°旋回しレイの方へ突撃する。

「突撃だと!?」

何発かが被弾するがタクトの七番機は最高の耐久性を持っている。タクトはラインを変える事無く突撃する。

(フライヤーの死角はアルフェシオンの周辺にある!威力が高い故にアルフェシオンを巻き込む撃ち方は出来ない筈だ!!)

「なめるなぁ!!」

レイはデス・ブラスター・キャノンで真正面の敵を向かえ撃ち、更に発射の反動でタクトとの距離を稼いでいく。

「くっ!!」

デス・ブラスター・キャノンを避けても衝撃波が七番機を揺らす。レイを追いかけようとスロットルを開けるがその揺れが機動方向が不安定にさせる。

「俺がそんな隙を見逃すと思うか!?」

レイがヘル・バイスの射程に七番機を捉えた。

「!ま、まさか!?」

アルフェシオンの必殺技 ヘル・バイス・・・標的の空間ではなく、レイがイメージしたもの、つまりは標的そのものを縮退化させてしまう反則的な兵器である。タクトは急いで距離を離すが遅かった。ヘル・バイスは発動したが最後、逃げることはできない。

 「死ねえっ!!」

七番機の縮退化が始まった。タクトはAS(アブソリュート)・フィールド全開で現象の沈静化を図るが絶対の領域をもヘル・バイスが侵食していく。遂にバリアが突破され七番機を襲う。

「ぐあぁぁぁぁーっ!!」

いかに装甲が強くても縮退化の前には紙切れ同然である。

「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

やがて縮退化が収まった頃には勝敗は決していた。

「ぐ・・・・ま・・だだ・・・まだまだぁ・・・・」

「無駄だナノマシンも96,7%死滅させたから自動修復には丸一年掛かる。悪あがきはやめてあきらめて死ねよ・・・・」

「こ・・と・・わる・・・・!」

「今まで奇跡に頼ってきたお前みたいな弱者にあいつは任せられないんだよ。あんな馬鹿でも大事な妹だからな。」

「奇跡に・・頼って・・・きただ・・と?」

「そうだ!俺はあいつと意識を共有しながらでお前達の戦いをずっと見てきてたんだよ・・・あいつお前いきさつもな・・・確かにお前はあいつを幸せにした・・・しかし、今のお前はまた些細な出来事であいつと喧嘩をして・・・傷つける。」

「だが・・・それでも・・・・ミルフィーと仲直りして見せる・・・・!!」

「ふざけるな!お前はその分あいつを泣かす事になるんだよ!!どうして自分を見つめ直さない!?」

「・・・・・・」

「お前・・・あいつを泣かした後も本気で自分を見つめ直そうとしたか!?あいつが強運をなくした時も、ヴァインの時もお前の無神経があいつを傷つかせたんだぞ!!お前はそれを分かっているのか!?

「分かっている・・・だからこそ俺は彼女の気持ちが分かるように努力してきたんだ!」

「この馬鹿野郎っ!!努力する様な事か!?大体、どうせ・・・お前のモットーは皆と仲良くだろう?」

「だと・・・言ったらなんなんだよ!?」

「お前・・・まだ分からないのか?ルシャーティーの時も俺が仕組んだとはいえ、あいつの事を最優先で考えたのか!?」

「そうだ!」

「ならば何故、多少強引にでも誤解を招くような状態を回避しようとしなかった!?」

「しかし、それはルシャーティーを傷つける事になるじゃないか!」

「馬鹿がっ!お前の一番大事な奴は誰だ!?ルシャーティか!?その過度の仲良し思考と、いい加減さが今までの原因なんだろうが!!」

「なんだと!?」

「皆と仲良くなりたいそれはいい・・・ただその行動が恋人を傷つける場合はあいつ一番優先させ一番先に考えてやるものだろうが!?お前は一度でもそういう事をしたか!?

「・・・だけど!」

「だけど何だ!?いい加減にしろっ!お前は男だろうが!?

心を強く広く持ち、自分の大事な者を守るのが男だ!!

「皆が大事だからこそ誰も傷つけたくないんじゃないかっ!!」

「現実的に見ろ!今までそれが出来たか!?全て中途半端じゃねぇか!!お前のその曖昧な態度がランファやミントそしてちとせを傷つけたんだろうが!」

「確かに傷つけた・・・だから出来るようになりたいんだ!!」

「ふざけるな!それはお前の願望だ!!お前みたいな能無しが出来るようになりたいとか努力するとか喚く前に、今から出来る最低限の事をしろってんだ!!」

「だが!」

「本当に馬鹿な奴だ!これではシリウスも浮かばれないだろう!!俺が代わりに止めをさしてやる!!」

レイのフライヤーが七番機の頭部を吹き飛ばした。コックピットが激しく揺らされる。

「ぐっ!!」

(ふん、気絶したか、せめて夢の中で引導を渡してやる・・・)

レイがタクトにデス・ブラスターキャノンの照準をを合わせる・・・

・・・がそのトリガーが引けなかった・・・・

(・・・何故俺は頭を狙ったんだ?コックピットを狙えば良かったのに何故迷っているんだ!?今もトリガーが引けない・・・!!)

レイは死神のメシアに戻りきれずに・・・自分の甘さに葛藤していた。

「なんてことだ!」

(認めたくは無いが・・・こいつは・・・この男は似すぎているんだ・・・!

こいつは・・・タクトは“あいつ”と似すぎているんだ!!それだけじゃない・・・俺の中にあいつの思念がまだ残っているんだ・・・だからこんなに感傷的になり、今でも俺は迷っているのか?)

「く・・・くそぉっ!!」

レイはいらだたしげにモニターを殴りつけた。

 

誰かの声が聞こえてくる・・・誰だ?

俺が目を開けると真っ白一面の世界に死んだ筈のシリウスが立っていた。

「シ・・リウス?」

「よう、タクト。久しぶりだな・・・」

シリウスは穏やかな表情で話しかけてきた。復讐が果たせる事を喜んでいるからだろうか?

「勘違いするなよ・・・もうそんな気は無いさ・・・」

「・・・そんなに恐い顔していたか?」

「あぁ、これ以上はないってくらい面白い顔していた♪」

シリウスが堪えきれずに笑い出す。

「まいったなぁ・・・」

「俺、死んでから見てたよ神皇との戦いを・・・人は醜いが、団結すると神皇すら倒してしまう程の力を発揮できる。例え不確かだとはいえ、人を出来損ないと言うのには早すぎる。人はこの宇宙に必要とされ生まれたのだから、その期待にいつか応える事が出来るはずだと思ってるんだ。」

「シリウス・・・」

「因果律の女神みたいな奴の力が無意識の内に俺たちを面会させたんだろう全つくづく凄いのを奥さんにしたよなぁ。」

そう、こんな事をできるのは彼女の運しかない。

「それに俺だけじゃないぜエオニアやカミュもきてるよ。」

「久しいなタクト・・・」

「久しぶりだねタクト・マイヤーズ」

「エオニア!カミュも!」

「全く隊長を本気にさせるとはなぁ大した奴だよお前は。」

「まるで歯が立たなかったけどね・・・」

「まぁハニーのお兄さんだからねぇ・・・」

「ところで君達は俺を迎えにきたのかい?」

三人が突如笑い出す。え〜と・・・

「違うよ、追い出しにだよ。多分因果律の女神も同じ事を考えているよ。」

「もう時間が無いし、シェリーも待たせてあるから言っておくがお前の言う事も隊長の言う事もおかしい事では無い。」

「そう、ただ僕はハニーを優先してやれといいたいねぇ」

「だから、もう一人の因果律の女神を救ってやってくれ

あの人はもう十分に苦しい道を歩んできた・・・だからもう許してやってくれ。」

「そうだ。隊長にはシヴァの父親として、シャトヤーンの夫として楽隠居してくれと伝えてくれ。」

「わかった・・・!俺、あいつを叩きのめしてくる。」

三人が満足そうにうなずく。それでいいんだと。

「さぁ、行こうか・・・」

俺の背中を誰かが叩いてくる。何とロキとアバジェスだった。

「あんた達も来てたのか。」

「あぁまだダウン1回だ。だからまだ勝負は決まってないぜ。お前とレイの信念はどちらも正しい。前も言っただろう?ならば後は互いの信念をぶつけて戦うだけだ。勝った方の信念が因果律が選んだ道となる!だから自分の信念を貫きたいなら何としても勝て!!一生懸命なんてのは言い訳だ。勝たねば自分の全てを持っていかれる。理不尽だがそれが因果律が定めたこの世の絶対の掟だ!俺との戦いを思い出せ!明鏡止水の心を忘れるな!

と言いながらロキが右手を持つ。

「さぁ、あのひねくれ者を叩きのめしてこい。」

そしてアバジェスが左手を持つ。

「分かってる、もうあいつには負けない!俺は自分の信念を貫き通す!どんな事をしてもあいつに勝つ!!」

ロキとアバジェスがその意気だと励ましながら俺の手を引っ張っていく。

「勝てよ・・・もう一人の俺。」

俺は薄れていく意識の中で最後にありがとうと返した。

レイは異状に気が付いた。

シャイニング・スターが見る見るうちに再生していくのだ。

奇跡の体現者は死なない・・・かつてのロキのように・・・

「な、なんだと!!」

レイは即座にデス・ブラスター・キャノンとフライヤーで止めをさそうとするが七番機は全て避わしていく。

「まさかタクトが目を覚ましたのか!?」

「もうお前になんか負けない・・・絶対に・・・絶対に負けないからなぁ!」

(イメージ曲 MD 17 番 Eternal Love ) 

「な、なんて奴だ・・・・ば、化け物め・・・・!」

レイは初めてタクトに対して戦慄をおぼえた。こいつは得体の知れない化け物だと。

「俺はどんなに罵られても、皆と助けあって生き抜いて見せる!そして彼女を幸せにして見せる!!」

「きれい事を抜かすなぁ!!答えになってないんだよぉっ!」

アルフェシオンのフライヤー約120機ばかりが襲ってくるが

タクトは次々に避わしエクスカリバーで切り払っていく。

「答えなんか要らない!!」

「何!?」

「ミルフィーが俺の事を忘れても嫌いになっても何度だって振り向かして見せる!!」

(調子に乗りやがって!!)

「よく聞け!レイ!俺の信念を否定するのなら俺を倒してからにしろ

この闘いを制した者の信念が全てだ!だからこそ俺はお前を倒し、俺の信念を貫く!!」

「それはこちらの台詞だ!ならば、俺が貴様を完膚無きまで叩きのめしてこの秩序を守り抜く!!いくぞ!!タクト・マイヤーズ!!」

フライヤーが数を増し七番機を襲うが、パワーアップした七番機のフィールドはフライヤーのビームを弾いた。

「何!?」

「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」

タクトがこの機に乗り距離を詰める。

「ちぃっ!!ならば・・・・」

レイはヘル・バイスでタクトに反撃する。ヘル・バイスが発動するが縮退化現象が起きなかった。

「お前・・・一体・・・一体何をしたんだ?」

「分からないか?ミルフィー、シリウス、エオニア、カミュそしてロキやアバジェス・・・・そして皆が力を貸してくれてるんだ!!」

(ふざけんな!!!)

「このガキィっ!!!」

レイは高速粒子ワイヤーでタクトに切りかかろうとするがタクトの剣はアバジェスの置き土産 最強の聖剣 エクスカリバー いかなるものも無の力で切断していく。

「ちぃっ!!」

しかし追い込まれてもそこは最強のパイロット レイ・桜葉

距離を稼ぎ戦いの糸口を見つけ出そうとタクトの攻撃を誘発させようと動き回る。

「さすがに一筋縄では行かない!!」

(エクスカリバー相手にAS・フィールドは役に立たない・・・ならば機体を相転移してかく乱して隙を見出すしかない。)

「消えた!?」

(タクトには俺を感知できる直感がある・・・・ならば一気に仕掛けて終わらせるまでだ・・・!!)

(ロキとの戦いを思い出せ!ロキは明鏡止水の心で自分より強かったアバジェスやロキを倒したんだ。まさに今がその時じゃないか!)

タクトは背後にレイを感知しレイの剣にエクスカリバーを合わせやり過ごす。

(怒りでは無く澄んだ心で相手を見るんだ)

唯一、レイが真似できなかったもの・・・それが明鏡止水の心

(く!やはり俺の相転移先を見切っているのか・・・・?)

しかしレイの剣 ダインスレイブはレイ自身が造り上げた最強の魔剣・・・様々な形状を取れ分裂する事も可能な究極の接近用の武器である。二刀目の魔剣がなぎ払われタクトの機体を襲う。

「!」

タクトはエクスカリバーで鍔迫り合いながら機体をニ刀目のラインと水平に浮かし避けて後方に逃げる。

「ちっ!」

獲物を逃がした死神が苛立たしく舌打ちをしながらステルスをかけ再度チャンスを狙う。

「来る!?そこだぁ!!」

今度は片手で受け止め、また鍔迫り合いになるが、ダインスレイブは二本ある。

「ち!もう一本あればいいんだろう!?」

七番機の空いた手にもう一本のエクスカリバーが現れ、二刀目を受け止め、レイも即座に七番機を蹴りはがす。

!?・・・・並行世界から召還したというのか!?化け物め!追い詰めれば追い詰められるほど強くなりやがる!

「でやああああぁぁぁーーーーー!!」

タクトは即座に斬りかかっていく。いくら装甲がパワーアップしたとはいえ相手は最強の紋章機とパイロットである。少しでも油断をすればその瞬間にやられるだろう。

「チィィィ!!」

かつてこの最強の天才にこれ程食いつけた者はいただろうか・・・

レイ・桜葉はもはや本気でタクトを潰しにかかっているのだ。

否、レイは気付いていた自分は天才では無い、最初から完全な者だったのだ。それに対して未完成ながらも制限無しに強くなっているタクト・マイヤーズこそが真の天才だと言う事を・・・

「くそ!なんなんだよ!!てめぇは!!」

「アバジェス・・・・この戦いどちらが勝つと思う?」

「俺が負けてなければルシラフェルが勝つと言うところなんだがな」

「だな・・・レイは確かに完全な者だ。技量面ではタクトでは追いつけはしまい・・・だが、レイはある事に気付いていない・・・それがタクトに勝機を残すだろう。」

「ふふふ、そうだな“ルシラフェルは一度も負けた事がない”正確には“本気で”タクトに負けた事は無い。」

「タクトに狼牙一閃喰らった時にレイは気付くべきだったな・・・あの時点でレイはタクトに油断をして負けた事を・・・・」

「もっともあいつもいい加減に認めてきているみたいだがな・・・タクトの強さと・・・恐ろしさをな。

「ああ、俺やお前がタクトに負けた理由に奴は気付いていた。しかし、レイのプライドがそれを許さなかった・・・」

「お前に似て強情ぱっりな所がるからな・・・」

「は!よく言うぜ!師匠(お前)に似たんだろう?」

「違う、“父親”(お前)に似たんだよ。」

「ち!まぁいい・・・レイに一つアドバイスだな・・・」

“あいつはタクト以外の相手になら負けない”だろうがな・・・今の相手はあのタクトだ・・・タクトの強さは・・・・」

「タクトはこれからが本番なんだ。追い詰められれば追い詰められるほど強くなる。相手が強ければ強いほど無限に進化していく・・・それに対してレイは計算が全てだからな・・・明鏡止水の域にまではどうしても辿りつけはしないんだ・・・レイ、ここからだぜ?タクト・マイヤーズの本当の恐ろしさはな・・・」

「くそ!何故だ!?この俺が本気で潰しにかかっても倒せないのか!」

レイに焦りを覚えさせたのはタクトが初めてだろう。

タクトや他の者達は今でもレイの実力を底なし沼だと思っているが正確にはタクトがレイの底が見えないだけである。

レイ=ルシラフェルは完成された不変をモットーとした戦士なのだ。完全な者にも底はある。それに対し、タクトはその実力に反した成果を挙げてきた。、メベト、アバジェス、ロキ、シリウス、神皇・・・・これらは全て人の手におえない実力者だった。

しかし、タクトは勝ち残ってきた。

幸運が重なりに重なって今までを生き抜いてきたのだ。

“運も実力のうち”

そう、タクトこそが底なし沼なのである。無限の可能性を秘めた真の天才なのだ。いかにレイが完全の体現者だとしても相手のタクトは常に何%かの勝機を持っている奇跡の体現者のだ

完全を脅かすもの奇跡

完全が常に抗うもの奇跡

完全が常に許せないものそれが奇跡

奇跡が常にくつがえすものそれは完全

奇跡完全は互いを否定し続けるもの

奇跡完全など無いと主張し、

完全奇跡など無いと否定する。

タクト(奇跡)レイ(完全)は相いられぬ者同士

「もう、これ以上負けてたまるかあぁぁぁーーー!!」

「調子にのってんじゃねぇぞ!コラァーーー!!」

七番機シャイニング・スターと零番機アルフェシオンの剣がぶつかり合う。タクトが斬り込み、レイも反撃で斬りかえす。かつてこれ程激しく、高レベルな戦いがあったであろうか?

「もう、負けられない、負けられないんだああぁぁーー!!」

「やかましい!!!」

レイはアルフェシオンの背中から三本目の手をスカートから四本目の手が伸びて七番機をそのツメで引き裂く。

「チィィ!デ、デスクローか!?」

「どうした!?一人前なのは口だけか!?力の無い理想主義者など偽善そのもの、気持ちだけ持っていても、実行できなければ愚の骨頂だぁ!!」

「違う!気持ちがあるから俺はそれに向かっていけるんだ!」

再び二機の剣がぶつかり合う。

「いつかはまたいつかはと!そうやって進むだけで何を得られてきた!?お前の人生はお前だけのものでは無いだろうが!!」

「そうだ!!俺はみんなが仲良くしていける世界を築きたい!その手助けがしたいんだよ!!」

「まだそんな事を言っているのか!?100年しか生きられない貴様がどうやってできる!?神皇達を見ただろう!奴らは共存など望んではいない!!この世界全部が自分と同じなどと思うな!!」

アルフェシオンの爪がシャイニン・グスターの右肩をえぐった。シャイニング・スターも蹴りで反撃する。

「俺達を愚だと言うのならそして俺達を排除しようというのなら俺は戦う!!この世界を守ってみせる!!」

「シリウス一人助けられなかったお前に何ができる!?」

「お前こそ!!」

エクスカリバーとダインスレイブがぶつかりあうたびに共鳴音を出す。

「できもしない癖に理想だけを並べ立てるなぁっ!!」

「勝手に決め付けるなあぁぁーーーーー!!」

更に激しくぶつかり合う二機。

「そんなに理想を追求したいなら一人で行け!周りを巻き込むな!!」

「巻き込んでなんていない!!皆、俺のやろうとしてることを認めてくれている!」

「それはお前に合わせているだけだろうが!それもみんな仲良くか?寝言も程ほどにしろ!!」

「何だと!!」

「力も頭もないガキが喚いてんじゃねぇ!!」

アルフェシオンが反転して襲い掛かり、タクトも反転して応戦する。

「進む事ばかり考えずにたまには退く事も考えろ!!所詮お前の理想は独りよがりにすぎん!!」

「独りよがりなんかじゃない!!この世界が答えだ!!ルシファーが創造したこの世界が俺に教えてくれた!!」

(・・・・・・っ!?明鏡止水を破る方法が一つだけあったぜ・・・!!)

「ふふふふ・・・あははは!」

「何がおかしい!!」

「似ているとは思っていたが、ここまで似ているとはな・・・」

「何が言いたいんだ!?」

「この世界を創造したのはあいつではない、この俺だ!」

「な、なんだと!」

「この世界はあいつが俺に依頼して創造したものだ。アイデアはあいつが出し、俺はあいつの注文どおりに製作した!あの馬鹿もお前と同じ理想をぬかしていやがった・・・しかし、その結果はどうだ!この世界ではあいつの理想に反し、現実に分かり合えぬものがいる。俺と貴様のようになぁ!!」

「ルシファーを馬鹿にするな!!」

「馬鹿にするさ!!こんな世界を考えたんだからな!」

「この野郎!!!!」

(ふふ、まんまと挑発に引っ掛かるとはな・・・)

(それぐらいの小細工で明鏡止水の心は砕けない・・・)

レイがタクトを蹴り剥がし、デス・ブラスター・キャノンをチャージする。

蹴り剥がされたタクトもハイパーキャノンをチャージする。

「ならば、俺を倒してみろ、倒して証明して見せろぉ!!」

「言われなくても、そのつもりだあぁぁーー!!」

二機は互いに胸部へ照準を定めて胸部より発射した。

桜色の巨砲と漆黒の巨砲が激しくぶつかり合いガイエン星系を揺さぶる。

黒(闇)はいかなる色を混ぜても変化は起こさず安定と絶望をかねそろえた完成品。確かな現実のみを確保するレイ。

白(光)は様々な色彩の変化をもたらす不安定と希望をかねそろえた未完成なもの、不確かながら希望を求めるタクト。

両者の信念は対極的だがどちらも間違ったことではない。

故に、二人が分かり合う事などはない。

両者とも己の信念を信じているのだから・・・・・。

両機のパワーはほぼ互角、二つの巨砲はやがて消え去る。

「もうお前には負けない!負けられないんだあぁーーー!!」

「猿真似如きで威張ってんじゃねぇっ!!」

白き彗星と黒き彗星は再びぶつかり合う、二つの彗星は互いを打ち破る為に幾度もぶつかり合う。

「オラアァァーー!!」

「でやあぁぁーー!!」

二機の戦いの速度は人の目では追いきれない程の速さ。二機の剣がぶつかり合うたびに不快な音と激しい振動がパイロット両名を襲う。しかし、神であるレイにはこの程度のことはどうという事は無い。

(頭がグラグラしてきた・・・・でも!俺は、もう負けられない!)

激しい戦闘の衝撃にタクトの肉体が悲鳴を上げている。しかし、タクトは退かずにレイと斬り合い続ける。

「何故だ・・・・?お前の体はもうぼろぼろの筈なのに・・・・」

「言った筈だ!ミルフィー、シリウス、ロキ、アバジェスや皆が俺に力を貸してくれているんだ!どんなに罵られようとも俺は差し伸べてくる協力の手を借りて目標を成し遂げて見せる!!」

「自分一人の力で勝ちきれない弱者の奇麗事など聞きたくもないわ!!」

タクトはレイに根性と仲間の力を借りてしがみつく。情け無いかもしれないが、最強の敵相手に真正面から挑むのはそれこそ愚の骨頂である。

「俺は一人で戦ってきたわけじゃない!人は助けあって今日まで生きてきてるんだ!!」

シャイニング・スターとアルフェシオンの剣が激しく幾度もぶつかり合う。

タクト・マイヤーズ・・・・今日まで過酷な戦いを仲間と勝ち抜いてきた戦士・・・・

不安定な奇跡を望むもの。

因果律に選ばれた奇跡の体現者

 

「仲間がいない時どうやって敵から身を守るというつもりだ!騎士は常に一人で守り続けていくものだ!!」

レイ・桜葉・・・ルシファーを守る為に独りで創造主 神皇に抗い神皇を倒し、家族達を影ながら守ってきた最強の戦士・・・・

安定した完全のみを望む者。

因果律が送った完全の体現者。

「わざわざ一人で戦い続ける必要はない!!」

「この軟弱者が!!」

「違う!皆がお前みたいに強くはないんだ!!」

「同じ事だ!この馬鹿が・・・・!!」

タクトとレイは反転したり、距離を離しながらも磁石のようにぶつかり斬り合い続ける。

「だから俺達は助け合い今日まで生きてこれたんだ!!」

「言いたい事はそれだけか!?」

タクトとレイの違いは互いの境遇にある、レイは今だに負けたことが無い、故に負ける男というものを許せない。タクトはレイに負け続け人の絆を知り、戦いに抜いてきた・・・故に人の結束力を否定する事が出来ない。

理屈ではレイの言うとおり一人でも戦い続けるのが正しい。しかし、この世の中、理屈だけでは人は動かない。

「今でも俺は皆の力を貸してもらっているんだ!!」

「御託ばっか並べてないで俺を倒してみやがれ!!」

レイは完全主義者、ミスと変化を許さない者。

対してタクトは非完全主義者、ミスを許し、不変を嫌う者。

故にタクトはルシファーに選ばれた。

自分の代わりにルシラフェルを止める者を・・・・・

斬り合いの最中、エクスカリバーがアルフェシオンの肩をかすめた。

「何!?」

「分かったか!完全などありはしない!!まだ分からないのか!?ルシファーがお前に教えたかった事が何かを!!」

遂に完全を奇跡が侵食した。

レイ・桜葉今まで避けようとしたものは全て完全にかわしてきた・・・いわばレイの完全神話がここに終わりを告げた。

「・・・一撃ぐらいで調子に乗ってんじゃねぇっ!!!」

アルフェシオンのデスクローがシャイニング・スターの胸部をえぐりハイパーキャノンの発射口を潰した。

「ぐ!まだまだぁーーーーっ!!」

タクトはカウンターでアルフェシオンの腹部に蹴りを入れた。

「ちぃ!!舐めた真似しやがって・・・・・!!」

 ダメージはタクトの方が大きい、しかし、自分の十八番のカウンターを食らわされたレイの精神的ダメージの方が大きい。

今まで本気で倒そうとして倒せなかった者などいなかった・・・

しかし、目の前のタクトはその常識を打ち破った・・・

「蹴りってぇのはこうやるんだよ!」

「!」

アルフェシオンの蹴りに悪寒を感じたタクトは直感的に下に逃げる。シャイニング・スターの頭の上を巨大なビームサーベルがかすめていく。レイはアルフェシオンの足にダインスレイブを発生させたのだ。

「くっ!」

レイは続いて二本のダインスレイブで交差させたけさ斬りで襲い掛かってきた。

「甘い!」

その単調な攻撃をタクトは軽々とかわしたが、何と今度は振り下げられたアルフェシオンののエルボーからダインスレイブが現われ襲い掛かってきた。

「甘いのはお前だ!」

「く!」

完全にはかわしきれず、シャイニング・スターの肩を切り裂かれてしまった。

この剣の名前はダインスレイブ・フェイカーナノマシン形成の為・・・

オリジナルに比べると威力は若干おちるが、いかなる場所からでも出現させられる究極のサポート接近戦用兵器である。

「なるほどさすがは完全の体現者か?これで流れはルシラフェルの方に傾いたな・・・しかし・・・」

「このまま終わりにしてやる!」

レイは再び二本のダインスレイブでタクトに斬りかかる。

「負けるかよぉぉぉぉーーーーー!!」

タクトも負けじと二本のエクスカリバーで対抗する。

「だが、タクトはまだあきらめていない・・・タクトの強さの秘訣はその希望にある・・・

レイは先がわかりきった秩序を守ろうとする使命感だけだ・・・しかし、タクトはルシファーから受け継いだ希望をかなえる為に限界以上の力を搾り出そうとするんだ。

レイのダインスレイブは後ろに逃げてはならない。剣先にいてはならない。何故ならダインスレイブは伸縮自在なのだ。

鍔迫り合う中、レイは再び足のダインスレイブで狙ってくる。タクトが足をかわすと待っていたかのようにレッグのダインスレイブが襲ってくる。タクトはまるで先読みをしていたかのように華麗にかわし、レイに斬りかかる。

(何故だ!?奴の心の中は丸見えなのに・・・・俺の想像とは違う結果になる!)

レイはエクスカリバーをダインスレイブで受け止めながら始めての事態に驚いていた。実力はレイが上まっている。レイはタクトの頭の中を読んで次の動きに対して完全に対処している・・・なのにタクトはレイの予想を次々と裏切っていく・・・

(言っただろう?明鏡止水の心は砕けないと・・・)

「この化け物め・・・!!」

(だがなぁ・・・奇跡なんていい加減なものに・・・これ以上、負けるわけにはいかねぇんだよ!!)

レイは機体を後転させアルフェシオンの上下を逆さまにして再び斬りかかって来た。

「ちぃ!」

一方いきなり視角を変えられたタクトはアルフェシオンの足を狙う。

「馬鹿め!!」

レイは逆さまのままかわしてカウンターでシャイニング・スターの胴をなぎ払いにかかる。

「く!」

タクトは間一髪でエクスカリバーで受け止めるが、レイの猛反撃は止まらず、今度は足のダインスレイブが襲ってくる。

「多ければいいというものじゃない!」

足のダインスレイブをかわしたタクトはそのまま機体を前転させながら斬りかかり、レイは後方に逃げてやり過ごす。

「く!?」

レイとのポジションを元に戻したタクトは猛反撃に出る。

レイが攻める側から受ける側にまわる。

タクトがレイに負けない条件は二つ。

一つは暗礁区域などの自分の動きに制限を受けるところには絶対に入らないこと。

もう一つは接近し続けアルフェシオンを動かさせない事。

この内の一つでも怠ればタクトはレイに負けるだろう。

故にタクトは退かない。退けばそこで負ける。

「うおおおおおーーーー!!」

エクスカリバーで何度もアルフェシオンのダインスレイブに叩きつけてアルフェシオンを揺らす。

「タ、タクト・・・!貴様あぁぁーーー!!」

今度はレイが仕切りなおしてタクトに斬りかかりに出る。最初は右手からの斬撃。

(フェイント!?)

タクトはフェイントの一撃目のダインスレイブにエクスカリバーを出すふりをして決二撃目の左手からのダインスレイブに右手のエクスカリバーで受け止め、右足からのダインスレイブを左手のエクスカリバーで受け止めた。

「何!?」

レイがバランスを崩し、初めて“本物の隙”を見せた。

「いっけえぇぇーーーー!!!」

タクトはその隙を見逃さず強引に体当たり(シャイニング・タックル)をしてアルフェシオンをはじき飛ばす。

「ぐぅ!!テ、テメエェェェェーーーー!!」

(このまま押し切ってたたみかける!)

初めて直撃を受けたレイは怒りながら体勢を立て直す。タクトもこの絶好の機会を逃さず更に斬りかかるが・・・

「勝てるとおもってんじゃねぇっ!!!」

アルフェシオンの剣から槍が新たに突き出しシャイニング・スターの肩を貫き、思わず後方に逃げてしまったシャイニング・スターを捕獲者のような速さで槍が剣に擬態し頭部を跳ね飛ばす。

「くっ!」

しかし、タクトもアルフェシオンの左手を切断していた。

(明鏡止水とは一つの事に極限まで集中する事と知れ・・・)

「何!?この俺が・・・・・」

アルフェシオンはほぼ全てナノマシンで構成されている為、即座に新しい腕が生えてきたがレイは驚きを隠しきれなかった。

「完全と究極を超えるものは奇跡とイレギュラーさ・・・レイ・・・」

(はぁ・・・はぁ・・・やはり一撃ではすぐ回復してしまうか・・・それにあのダインスレイブを何とかしないと・・・)

「この俺をここまで追い詰めたのはお前が初めてだ・・・しかも、もう・・・お前の中が見えない・・・ルシファーがお前を守っているのか・・・・・・だがなぁっ!!」

(今こそ賭けに出る時だ・・・・・!)

今度はレイの剣が相転移してタクトの背後から襲いかかってくる。

「カズヤ・・・すまない!!」

タクトは一か八かでシャイニング・スターの背中にドッキングしてあるブレイブハートをわざとダインスレイブにぶつける。

「何を!?」

ダインスレイブがブレイブハートを切断した瞬間、レイは直感的にシャイニング・スターから距離を離す。しかし既に散布されたウィルスがアルフェシオンにも付着していた。

アルフェシオンのコックピット内に警告アラームが鳴り響く・・・

「出力低下・・・?アルフェシオン!どうした・・・!?」

レイは損傷画面をチェックして驚愕した。

「こ、これは“アンチ・ナノマシン”!?馬鹿な!残していたのを持っていたか!?」

アンチ・ナノマシン・・・レイが神皇にアルフェシオン乗っ取られた時に備えて開発していた対アルフェシオン兵器である。微量ながらナノマシンを死滅させながら増殖を繰り返すウィルスである。シャイニング・スターはナノマシンの構成率がアルフェシオンほど高くないので影響は受けない。しかし、構造上の理由でナノマシンの構成率が高いアルフェシオンには多大な悪影響を及ぼしていた・・・・

互いに使用できる武器は剣とシャイニング・サンとオメガ・ブレイクだけだろう。

「これで互いに再生はできないだろう!」

「・・・貴様ぁ!舐めた真似を・・・!!」

「これで新しい腕も出せない筈だ!正々堂々両手だけで勝負しろ!!」

「・・・だがなぁ・・・俺は追い詰められてからが本番なんだよ!!こんな小細工如きで勝てると思うなよ!!」

『・・・な、なんだ!?』

次の瞬間、二機は異空間へと飛ばされていた。

 

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