創造主 因果律に認められたタクトはその後、平穏な日々を過していた・・・

しかし、忘れてはならない・・・

 

人のカルマは消えないと・・・

 

そして、この世には絶対に分かり合えない者がいるという事を・・・

私は貴方に教えたと思うが・・・

この物語は感動を与えよう等と思って創作したものでは無い・・・ただ、現実を見せる為だけに私はこの物語を創作した・・・

世の中にはびこる遺恨・・・

それを、今回あなたは目にする事になる・・・

 

では、枠開けと行こう・・・

 

 

 

 

 

 

 

逆襲の堕天使

 

其の壱

 

予兆

 

 

 

 

 

 

吹き荒れる荒れ果てた町の中で、二人組の男がその惨状を目の辺りにしていた・・・

二人が見ていたのは大量の死体・・・

 

何一つ自然に死んだ者はいない・・・

 

誰一人、被害者達の中に原型をとどめている者はいない・・・

 

ここはまさに常人の精神を破壊しかねない程の地獄と化していた・・・

 

しかし、それくらいで表情を変える程、この二人の身体も精神はヤワでは無い・・・

 

「マスター・・・これが今回私に見せたかったものですか・・・」

 

マスターと敬語を使ったのはレイ・桜葉・・・

 

かつて、外宇宙から死神のメシアとして恐れられた最強の戦士である・・・

 

「ああ・・・これだけはロキには任せられないと思ってな・・・」

「確かに・・・」

 

「同じだ・・・あの時と・・・」

 

町を静かに見渡す男は阿部竜ニことアバジェス・・・

 

かつて、神界で右に出る者はいないと言われた最強の騎士である・・・

 

その惨状はかつてのフィノリアをそっくりそのまま再現されたかのようだ・・・

 

かつて、神界時代・・・

 

黄金の騎士 アバジェスと覇王 ギュスターヴが建立し、神界時代を謳歌した神界最大の都市・・・

 

フィノリア・・・

 

そして、そのフィノリアを一夜足らずにして地獄と変えさせた悪魔がいる・・・

 

カルマ

 

人の業・・・と名乗った、史上最悪の悪魔・・・

 

未来のEDENのクローン技術で生み出されたカズヤとアプリコットの娘エクレア・桜葉のクローン体・・・

その純粋な魂を持ったクローン体に様々な怨念が集まっていき、“カルマ”は誕生した・・・

 

カルマの目的はただ一つ・・・

 

この世に復讐をする事・・・

それだけである・・・

 

その為にカルマは自分自身で新たなる歴史を始めた・・・

 

自身を因果律と見せかけ、永遠と続く戦いの世界を創造したのだ・・・

 

運命の輪

 

その復讐はいかなる残虐な殺戮を繰り返しても晴れる事は無い・・・ただ、永遠とカルマは復讐を続ける・・・

 

カルマ・・・混沌の体現者・・・

 

「・・・あいつが戻ってきたというわけか・・・」

「はい、おそらく狙いはタクトとあの馬鹿女でしょう・・・仕掛けてきますね・・・」

 

ラスト・リヴェンジャー

 

「そして、雅人の証言もあって、“スパイ”も判明した・・・材料は揃ったな・・・」

「はい、おそらくはカルマをEDENに招いたのもその“スパイ”の仕業でしょう・・・全く・・・外宇宙も相変わらず姑息な手段ばかり・・・」

「しかし、その外宇宙の連中の本当の狙いはお前だぞ・・・レイ。」

「はい・・・しかし、どちらにせよこれから自分がとる行動は変わりありません・・・害虫は排除するだけです・・・」

「油断するなよ、レイ・・・今まで、運命の輪から離れていた奴等がお前が存命している事を知りながらここまで見え透いた挑発をしてきたのには何かそれだけの切り札があるからだ。」

「マスター・・・敵がどんな切り札を用いてきても俺は守らなければならないんです・・・」

「・・・・・・だな。」

アバジェスは軽く笑って弟子の出来の良さに感心していた・・・

しかし、同時に弟子の行く末を心配していた・・・

 

〜外宇宙〜

 

「なるほど・・・それで、エンジェル隊を呼び戻そうとしているわけか・・・」

「ああ、相手の戦力が未知数な以上、こちらも貴重な戦力を遊ばせておく余裕が無いのでな。」

 

皇居のブリーフィングルームへ呼び出されたタクトはアバジェスから現状報告を受けていた。

 

現在、ブリーフィングルームにはアバジェスとシヴァ・・・そしてタクトとレイが打ち合わせに参加している。

 

「おい・・・お前は外宇宙と戦っていたんだろ?ならば、奴等の戦力ぐらい把握できているだろう?」

 

タクトは嫌悪感を交えた声で天敵に質問した。

 

「お前に言っても言わなくても戦況は変わらん・・・だから、でしゃばらずに引っ込んでろ・・・ヘタレ・・・」

 

同じくレイも鬱陶しそうに天敵をあしらう・・・

 

「何だと!もう一回言ってみろ!」

 

タクトは今にもレイに掴みかかる勢いだ・・・

 

「言い方を変えればお前等(エンジェル隊)のようなガキがいてもいなくても戦況は変わらないと言っているのが分からないのか?」

 

「こいつ!」

 

「タクト!止めぬか!父上も!」

 

「フン!」

「チッ!」

 

シヴァの叱責に二人は大人しくなる。

 

「・・・どちらにせよ、一つの星が滅ぼされたのに変わりは無い・・・そして、ブラウド財閥亡き今、このような暴挙を成すのは外宇宙の連中以外に考えられん・・・従って、ここはエンジェル隊を呼び戻し、臨戦態勢を整えておくべきだと思う・・・レイ・・・お前も今回の件に異論は無いな?」

 

「・・・はい、マスターがそう仰られるのなら・・・」

 

「フン・・・」

 

タクトは不愉快そうにため息をついた・・・

 

 

 

火の無い所に煙立たず・・・

 

このことわざを知っている方は多いだろう・・・

 

火は人が初めて作為的に起こした破壊行動のひとつだ・・・

 

私が、言いたいのはあの“カルマ”も人の手により、作為的に生み出されたものだとという事だ・・・

 

「・・・なるほどね・・・こいつが最初から仕組んでいたってわけだな・・・」

 

ロキは“真の元凶”の資料を見てから心底腹ただしそうに咥えた煙草をすり潰した。

 

「ああ、因果律・・・エクレアも所詮はこいつの策略通りに動かされていたに過ぎん・・・そして、こいつがEDENの民をあの愚行へと意図的に走らせた・・・」

 

「チッ!気にいらねぇ!」

 

「雅人・・・お前が襲撃を受けた時、お前を襲ったのもコイツで間違いないんだな?」

 

「ああ、こいつはブラウド財閥と外宇宙の橋渡し役だった・・・それを、俺が偶然にもその事を知ってしまった為にゼウスを利用して俺を襲撃したんだ。まったく、よくも、まんまとちとせを騙したもんだ・・・」

 

“ガブリエル”・・・お前の狙いは、俺なんだろう?)

 

レイはミーティングルームの机の上に置かれていた写真をじっと見ていた・・・

 

そこには、かつてエンジェル隊と面識のある顔が映し出されていた・・・

 

〜外宇宙の逆襲〜

 

ここは、ゲート周辺を監視している管制塔・・・

 

「・・・何だ?」

「ん?何かあったのか?」

「いや・・・一瞬何かがセンサーに引っ掛かったんだが、すぐに反応がロストしてしまって・・・」

 

すぐに、しかも、“普通”に殺してしまったらつまらねぇだろうが・・・

 

「にしても、デブリが多い・・・イイイイイイ!」

 

「イギギィ!!」

 

次の瞬間、二人は木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

高出力パルスによる誘電加熱作用だ・・・

 

帰ってきたぜ・・・

 

さぁ・・・殺し愛といこうじゃねぇか・・・

 

楽しみだ・・・

 

ゲートからは次々と外宇宙の戦闘部隊が侵入してきていた。

 

無論、それは近くで待機していた白き月に感知される。

 

そして、レイ・桜葉は即座にアルフェシオンで出撃する。

 

「ち・・・性懲りも無く・・・」

 

レイはインフィニ稼動のプロセスを組み上げていく・・・

 

来るが良い・・・見せてやろう・・・

 

お前に多くの同胞の命を奪われた我々が、長い長い年月をかけて、開発した“最終兵器”をな・・・

 

「レイ・桜葉・・・アルフェシオン・・・出る。」

 

白き月より、守護神である漆黒の紋章機が出撃する。

 

GRA−000 アルフェシオン・・・

 

かつて、外宇宙から死神と共に恐れられた最強の紋章機である・・・

 

「来たな・・・」

 

真の元凶も己の紋章機を起動させる・・・

 

「“ガブリエル”だ・・・“オメガ”・・・出るぞ・・・」

 

外宇宙の旗艦と思われる超弩級の戦艦より、エメラルドの紋章機が出撃した。

 

外宇宙の戦闘部隊は動かない・・・

 

そして、ゲートを守護する皇国軍も、下手に軍を動かさない・・・

 

その中で唯一、動いているのはお互いの“頭”である。

 

「久しいな・・・ルシラフェル・・・」

 

「お前もな・・・ガブリエル・・・いや、今はまだ“ロバート・ヒュウガ”か?」

 

「名前などお互いにどうでも良いことだろう?因果律の片割れ・・・」

 

「だな・・・」

 

二機は戦闘態勢をとる・・・

 

 

「ど、どういう事ですか!?何でヒュウガさんが!?」

 

ちとせは突然の事態に困惑していた。

そして、困惑する娘に父親は諭すように話しかける。

 

約二十数年前の出来事を・・・

 

「ちとせ・・・いいかい、あのエストレイヤから脱出したのはあのヒュウガとブラウド財閥の者達だけだ。」

 

「え、えぇ?」

 

「あの事件は全てあのヒュウガが仕組んだ事だったんだよ。」

 

「雅人さん・・・つまり、外宇宙とブラウド財閥を結び付けていたパイプ役の男があのヒュウガだった・・・そういう事ですか?」

 

「そうだ・・・奴等はブラウド財閥と技術情報の交換も行っていた・・・おそらくは“インフィニ”の情報も外宇宙には伝わっていると思った方がいいだろう・・・」

 

インフィニ・・・シャイニング・スター、アルフェシオン、ブレイブハートに装備されている最強のエンジン・・・

その動力源は混沌である為に、その出力量は無限大とも言われている・・・

 

「そして、ヒュウガはあのカルマの共犯者だ。」

 

そして、アバジェスは衝撃の事実を明かした。

 

「カルマ・・・」

 

カズヤの脳裏にはあのセルダールでの惨事が蘇る・・・

 

 

一方、宙域ではレイとガブリエルの紋章機が戦闘を開始していた。

 

「・・・・・・」

 

アルフェシオンから数十機のフライヤーが射出され、一斉にヒュウガの紋章機“オメガ”に襲い掛かる!

 

「さすがは、死神のメシア・・・しかし・・・」

 

「・・・っ!」

 

何と、オメガからも数十機のフライヤーが射出され、レイのフライヤーと撃ち合いを始める。

 

「ち・・・猿真似が・・・」

 

しかし、レイもフライヤーだけでなく、アーム部から粒子状ワイヤーカッター・・・通称“サタンテイル”を射出して、オメガを拘束しようとする・・・

 

「悪いが、また猿真似だな・・・」

 

そして、ヒュウガもアーム部より、同じ粒子状のワイヤーカッターを射出し、レイのワイヤーカッターともつれさせて、その動きを封じ込めた。

 

「ちっ・・・!」

 

レイは珍しく苛立だしげに舌打ちをする。

 

「な、何だ・・・あいつは・・・」

 

今まで、あのレイ・桜葉に勝てる者はおろか、互角に渡り合える者など皆無に等しかったというのに・・・

 

「レイさんは本気で相手を倒そうとしているのに・・・」

 

「あいつ・・・間違いなく強いな・・・それに頭もいいぜ、下手に艦隊戦を仕掛けずにレイに一機で挑んだ・・・レイは集団戦を得意とするパイロットだ・・・あいつはそこまで計算済みなんだ。」

 

「ああ、本気で殲滅しようとしてくるレイを相手にしてここまで、生き残っている・・・それだけで、あいつの技量が桁外れだという事は確かだ。」

 

 

(さすがに四大天使も何万年もすれば、ここまで成長するものか・・・)

 

レイはアルフェシオンを急反転させて、オメガの背後に回りこもうとするが、ガブリエルのオメガもアルフェシオンと同等の反転速度で背後を取らせない。

 

(間違いない・・・あれはアルフェシオンを真似て造られた模造品か・・・ちっ・・・ブラウドめ・・・厄介な情報を渡してくれたものだ・・・しかし・・・)

 

「どうした?死神のメシアも地に堕ちたのか?」

 

(それでも、勝機は俺にある!)

 

次の瞬間、アルフェシオンがサマーソルトを描きながら、脚部に発生させたダインスレイブ・フェイカーでオメガに攻撃を仕掛ける!

 

「・・・っ!?」

 

最初の一撃をスウェーで回避して、レイのアルフェシオンから距離を離す。

 

「ちっ!」

 

突然の奇襲攻撃により、距離を詰められてしまったガブリエルは接近戦に答えざるをえない・・・

 

「さすがにそう簡単にいく相手では無いか・・・」

 

ヒュウガはオメガの両手とその両足に粒子状のサーベルを召喚して、レイに応戦する。

 

「いくぞっ!オラア!!」

 

二機は壮絶な斬り合いを始めた!

 

「ヒュウガ・・・死んでもらう。」

 

「それはこちらの台詞だ・・・死神・・・“貴様に殺された者達の仇”はとらせてもらう・・・」

 

「・・・少しぐらい渡り合えたからって勝てると思うなよ・・・」

 

長時間にも及ぶ戦いの流れはレイが徐々にヒュウガを押しつつあった。

 

「戦いにかける集中力・・・それが勝敗を分ける最大要素となる・・・」

 

「それはどうかな?」

 

突如、ヒュウガはレイから距離を離していく。

 

「逃がすと思うか・・・!」

 

それを追撃するレイ・・・

 

(まさか・・・)

 

そして、オメガはその存在意義とも言える対アルフェシオンの兵器を発動させた。

 

それは黄金色の翼・・・

 

そして、それは即座に起きた。

 

ビィーーッ!ビィーーッ!

 

「・・・っ!?」

 

アルフェシオンのモニターに警告表示が現れ・・・

 

「死神・・・さっき、お前は俺に集中力が勝敗を分ける最大要素だとほざいたが・・・俺はそうは思わない・・・」

 

「ちっ!イニフィニの出力が・・・」

 

そして、アルフェシオンのインフィニが完全に停止してしまった・・・

 

「父上!?」

 

「これは、アンチ・ナノマシン・ウィルスの新種か・・・」

 

「戦いの勝敗を分ける最大要素・・・それは、“戦いにかける執念だ”・・・」

 

「・・・やはり、こうなっちまったか・・・」

 

俺は、外宇宙の連中が何かしらの切り札を用意しているとは思っていた・・・そして、それが必ず俺をどうにかできる程の性能を持っていることもな・・・

 

しかし、それが分かっているからといって、あの馬鹿と馬鹿女を出撃させるわけにはいかなかった・・・

 

・・・まったく・・・らしくない事をするからこんな事になったんだろうか・・・

 

「レイ!」

「タクトさん!行きましょう!」

「ああ!カズヤ、リコ!出撃するぞ!」

 

「了解!!」

「了解です!」

 

タクトとミルフィーユはエクストリームを・・・

 

カズヤとアプリコットはRA−000とRA−001を起動させる!

 

「さて、邪魔が入らないうちにトドメを刺すとするか。」

 

ヒュウガがアルフェシオンに斬りかかろうとした・・・次の瞬間・・・

 

(・・・っ!?ドライブ・アウト反応!?)

 

〜未来より舞い降りる天使〜

 

「・・・っ!?」

 

何も無い空間から、突如ビームが発射され、オメガに着弾した。

 

「増援だとっ!?」

 

突如の奇襲攻撃に驚いたヒュウガは辺りを見渡すが、周辺には誰もいない・・・

 

何故なら、その死神は姿をくらましているからだ・・・

 

「隊長・・・助けにきました・・・」

 

シリウス・・・?シリウスなのか?

 

「そこか!?」

 

ヒュウガはフライヤー11機を背後へ飛ばす!

 

そして、フライヤーから発射されたビームは何かのバリアに弾かれた。

 

「姿を現せ・・・小ネズミ・・・」

 

「小ネズミとは酷い言い草ね・・・」

 

「フン・・・ステルスを解除する・・・」

 

次の瞬間、その天使がその姿を現した。

 

「オ、オリジン・・・」

 

レイはその紋章機をそう呼んだ。

 

オリジン・・・先の大戦末期、カルマに憑依されたカズヤがフェイト(リコ)と共に起動させた最初の紋章機であり、そのトータルスペックはアルフェシオンを凌駕するとも言われている・・・

 

「あ、あれは、オリジンじゃねぇか!」

「・・・一体どういう事なのだ・・・?」

「・・・・・・」

スクリーンに映ったオリジンに驚きを隠せないロキとシヴァを他所にアバジェスは落ち着いた様子でスクリーンを見守っていた・・・

 

「レイ・・・少しばかり、油断しすぎよ・・・」

 

「お前は、エクレアなのか・・・」

 

「ほう・・・まさか“因果律”自らのお出ましとはな・・・」

 

エクレア・桜葉・・・かつて、この世界を創造した因果律の片割れ・・・そして、カズヤとアプリコットの娘でもある。

 

「ガブリエル・・・“あの子”は何処にいるの?」

 

「よくそのような事を聞けたものだな・・・“カルマ”を捨てたのは他ならぬお前ではないか・・・」

 

「そうね・・・でも、“あの子”をこれ以上あなたの思うままには動かせたくないの・・・」

 

「傲慢だな・・・エクレアよ・・・」

 

「ええ、否定はしないわ・・・でも、私はあなたに対してはいくらでも傲慢になるわよ・・・」

 

「ガブリエル・・・“カルマ”を引き渡せ・・・さもなければ・・・」

 

「その要求に従わなければ力づくで奪い取るという気か?因果律の騎士・・・」

 

「そこまで、分かっているのなら、話は早い・・・と言っても、俺はお前が素直に従うとは思えないんでな・・・」

 

オリジンはその背中にその翼を生やした。

 

かつては終末の翼と呼ばれた十二枚の翼は今はもう無く、四枚の翼が生えているだけだ・・・

 

「ふ・・・今はまだその時では無い・・・と言いたいところだったのだが、どうやら“カルマ”がそれを許してくれそうになさそうだ・・・」

 

言うが早いかヒュウガはフライヤーによる先制攻撃を仕掛ける。

 

「・・・っ!」

 

シリウスはそれをすんでのところで回避する。

 

しかし、ヒュウガはワンテンポ早く、六連ミサイルランチャーを発射する。

 

「やらせない・・・」

 

それをフライヤーで撃ち墜とすエクレア・・・

 

「堕ちろ!」

 

シリウスはオリジンに内蔵されていた多彩な火器を発射してヒュウガに牽制をかける。

 

「ふふ・・・あの死神に比べればどうという事はない。」

 

ヒュウガは敢えてその弾幕の中へ飛び込み、匠に回避していき、一気にオリジンとの距離を縮めにかかる。

 

その時だった・・・

 

何者かがオメガを弾き飛ばしたのは。

 

「ぐっ!?」

 

「・・・・・・」

 

「タ、タクト!?」

 

「タクト・・・」

 

オメガを弾き飛ばしたのはタクトの紋章機エクストリームだった・・・

 

「お兄ちゃん!大丈夫!?」

 

「お前に心配されるほど堕ち潰れちゃいねぇよ・・・」

 

「お前なぁ・・・」

 

「ミルフィー・・・」

 

(デザイア・・・)

 

「・・・シリウスとエクレアなんだろう?話はさっき聞いていたよ・・・」

 

「・・・・・・」

 

「話は後で聞く・・・だから、今は力を貸してくれ。」

 

「いいわ。シリウス・・・」

 

「フン、分かっている・・・」

 

「これはこれは・・・タクト殿・・・」

 

「・・・ヒュウガ少佐・・・お前が今回の騒動を全て起こしたのか・・・」

 

「だと言ったら?」

 

ヒュウガは相変わらず無表情だ。

 

「ここで倒すだけだ。」

 

「相変わらずの短絡思考だな・・・お前もレイと同じ末路を辿るがいい・・・」

 

「僕を忘れるな!」

「私達だって、戦えるんですから!」

 

(パパ・・・ママ・・・)

 

「ほぉ・・・誰かと思えばNEUEの騎士とフェイトか・・・フェイト・・・ミカエルもお前に惹かれさえしなければ死なずに済んだものを・・・」

 

そう言いながらガブリエルは死神を一瞥した。

 

ガブリエル・・・もう我慢できない・・・

 

仮でいい・・・俺を出してくれ。

 

カルマ様・・・それでは戦闘に支障をきたしますが?)

 

構わん・・・俺を出せっ!

 

「了解しました。」

 

そう言って、ガブリエルことヒュウガは目を閉じた。

 

「・・・っ!?」

 

アプリコットは背筋が凍る感触を覚えた。

 

「リ、リコ・・・感じたかい?」

 

「はい・・・この感覚・・・あの時と同じです!」

 

かつて、数多くの命を毟り取ってきた悪魔が出現する前の予兆と・・・

 

カズヤの脳裏にセルダールでの悪夢が蘇る。

 

「タクトさん・・・来ます。」

 

「ああ・・・間違いない!」

 

「シリウス・・・来るわ・・・カルマよ。」

 

「ああ。」

 

ヒュウガが目を開けると既に黒点などは無くそこには虹色一色の眼があった・・・

 

「久しぶりだな・・・天使共・・・」

 

「生きていたのか・・・カルマ・・・」

 

俺は死なないと言ったろう?カルマは消せないと・・・」

 

ヒュウガことカルマは愉快そうに笑い出した。

 

「カルマ・・・」

 

「デザイア・・・相変わらず、のうのうと生きてやがるのか?気に入らねぇ・・・とっととくたばっちまえばいいってのによぉ・・・」

 

「カルマ・・・あなたは・・・」

 

相変わらずの悪態をつくカルマをエクレアは複雑そうな表情で見ていた。

 

「フン・・・エクレアと負け犬も一緒か・・・」

 

「負け犬?その台詞はそのままお前に返してやるぜ。」

 

「カルマ・・・一体、今度は何をしに来た!?」

 

「カズヤ・シラナミ・・・」

 

カルマの正体はアキト・桜葉・・・

 

カズヤとアプリコットの娘 エクレアのクローンでもある。

 

(カズヤ・・・分かったか?“この世界の矛盾”に・・・)

 

「フェイト・・・お前が裏切ったりしなければ俺の復讐は完遂されていたというのに・・・」

 

「私は二度とあなたの思い通りにはならない!」

 

「ふん、しかし、この世界は俺の復讐が完遂されるまで終わらないのだぞ?」

 

運命の輪・・・永遠と繰り返される世界・・・

 

(違う・・・この世界の継続を願っているのは・・・)

 

「あなたの経緯は知ってる・・・でも、他の犠牲者の人達は・・・」

 

他の奴なんて関係ねぇんだよ!デザイアァッ!!」

 

そう・・・他の犠牲者など口実に過ぎない・・・

 

カルマ・・・強引すぎたな・・・

 

お前の存在意義はもう無いに等しいというのに・・・

 

「ふふ・・・しかし、すでに俺の“殺し愛”は既に始まっている・・・」

 

殺し愛・・・そう、カルマが唯一この世界で愛している者がいる・・・カルマをこの世界に呼び込んだ者・・・

 

「あれは、あなたがした事なの!?」

 

馬鹿女が言っているあれとは数日前に起こった虐殺事件のことだ・・・

 

「だと言ったら、酷いとでも言う気か?よく言う・・・貴様等の“料理”という娯楽と同じだと言うのに・・・」

 

「違う!」

 

「何が違う!?自分で死体にした獲物を木っ端微塵に解体して、思い通りに調理する・・・俺の“ゲーム”も同じ理屈では無いか?」

 

「あ、あなたという人は・・・」

 

「ふふ・・・お前の作るデザートやケーキに使われる“卵”だって命を持つ者・・・いや、持とうとした者なのだ・・・それをかち割って利用する・・・これが、虐殺でなくて何だと言うのだ・・・」

 

「・・・っ!?」

 

「お前だって、動物達から見れば立派な殺戮者だ・・・包丁と鍋を用いて様々な殺戮を繰り返してきた殺戮者だ・・・」

 

「わ、私がしてきた事って・・・」

「ミ、ミルフィー・・・?」

 

カルマの指摘は現実的だ・・・

 

「私は鶏さんの子供を・・・」

 

それが、ミルフィーユの現実認識能力を低下させていく。

 

「そうとも・・・立派な“殺し”だ。」

 

「あ、ああ・・・わ、私は・・・」

 

デザイア・・・良い名前だな・・・欲望・・・願い・・・情に素直で、目的の為に包丁を振るうお前にぴったりの名前ではないか・・・あっはっはっはっ!あーはっはっはっはっはっ!!」

 

(デザイア・・・フェイト・・・そう名付けたのもお前ではないか・・・

 

「やめてーーー!」

 

ミルフィーユは頭に響いてくるカルマの馬鹿笑いに堪えきれずに耳を押さえる。

 

「馬鹿!耳を貸すな!!」

 

「くっくっくっ!お優しいお兄ちゃんではないか・・・」

 

「くそっ!やめろ!!この野郎!!」

 

「くっくっくっ!お優しい旦那ではないか・・・」

 

「カルマ・・・いい加減に“素直”になったらどうだ?」

 

「・・・・・・」

 

その言葉に邪悪な笑みを浮かべていたカルマは凍りついた。

 

「いい加減に“現実”を見たらどうだ?」

 

「げ・ん・じ・つ?」

 

カルマが震えるような声を出す。

 

カルマの脳裏には“忘れていた記憶の一部”が蘇る・・・

 

それが、このギャラクシーエンジェルの起源でもある。

 

物語は人の数だけ存在する・・・

 

「う、うわあああああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

カルマが突然、常軌を逸した叫び声をあげる。

 

「な、何だ!?」

 

「お、俺は主人公なんだぞ!?」

 

「・・・そうだ・・・お前がこのギャラクシーエンジェルの主人公である事に変わりは無い・・・しかし・・・」

 

「だ、黙れ!ダマレ!ダマレ!ダマレ!ダマレ!ダマレ!ダマレエエェェぇーーーーーーーーー!!!!」

 

そして、オメガは姿を消した。

 

「カルマ・・・可哀想な子・・・」

 

「フン・・・」

 

「ミルフィー!しっかりするんだ!」

 

「タクトさん・・・私・・・私は・・・」

 

「あんな奴の言った事なんか気にしちゃ駄目だ!君の料理は皆を笑顔にしてくれるじゃないか!」

 

タクトはミルフィーユの肩を力強く掴んで話しかけるが、ミルフィーユは沈んだままだった・・・

 

この後、レイとアルフェシオンは白き月に無事に回収され、タクト達はエンジェル隊への再編へ乗り出す事になる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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