俺は、全てに嫌気がさしていた・・・

 

仕事をしていても、腹黒い人間の中身しか見えてこない・・・

 

休みなど、一ヶ月に一回でもあればいい方だ・・・

 

労働基準法なんて、公務員の為だけにあるような言葉だ・・・

 

なのに、人権は全ての者に平等にありますってか?

 

嘘付け・・・ムナクソが悪い・・・

 

この世界は、臭いものに蓋をせよだ・・・

 

だが、生きていく為にはこんなムナクソの悪い世界で働いていかなければならない・・・

 

 

 

夏の残暑が照りつく中、二人の若い男が製鉄所内の鉄板の上で、電線を入線する配管の支持物を溶接していた。

 

「おい、亮・・・」

「何だ?」

「この前見たGAって面白いのか?」

「ああ・・・って、この前も同じ事を聞いただろうが・・・」

「あ、そうだったな・・・」

「今度、続編でムーンリットラヴァーズが出るらしいぜ。」

「お前も好きだな・・・」

「っるせぇなぁ・・・璃子(妹)もそうだろうがよ・・・」

「お前もあいつも相変わらずだな・・・」

 

二人は、現在20代後半・・・

 

亮と呼ばれた男・・・

最終学歴・・・県立専門学校 電気科を卒業・・・

 

もう一人の男は高校を卒業してから、電気工事士として働いている・・・無論、資格などは持っていない・・・

 

ましてや、不良あがりの二人の就職できるところなど、そうは無かった・・・

 

二人は製鉄所の設備の保全(メンテナンス)を担当している電気工事店に勤めている。

 

要するに彼等の仕事は製鉄所を休む事無く動かす事にあり、老朽化の進んだこの製鉄所では休みなど無いに等しい・・・ましてや、この製鉄所は世界で二番目に汚い現場とも呼ばれ、体を壊す者や、命を堕とす者も毎年出てくるという魔の製鉄所だ。

 

そして、二人が所属する会社は収入を広げる為に外からの仕事も受注する・・・

 

二人はコンビで外の現場にも出ていた・・・

 

しかし、二人はある事の話題で盛り上がっていた。

 

それが、ギャラクシーエンジェルだった。

 

現場へ向かう中古の軽トラックの中で・・・

 

「俺なら、もっと盛り上げられるのになぁ・・・」

「はぁ・・・またそれか・・・」

亮は聞き飽きたと言いた気にハンドルをきる。

「だってよ、ヴァインかと思ったら、あのジジィがそのままボスで出てくるんだぜ?」

 

亮はこの時、相方も随分とオタク化したものだと思った。

 

「・・・にしても、あのBADENDは衝撃的でむかつくよな・・・」

 

相方が言ってるBADENDとはヒロインの紋章機が暴走するというシュミレーションで敗北すると、ヒロインが戦死するというものだった。

 

「おいおい・・・」

 

相方は普通とは違う生活環境で育ってきた為か非常に感受性が高い・・・ようするに仮想と現実の区別をつけるのが出来ない人間だった・・・設備の100%近くを知る仕事についていたからこそ、この世の限界と裏を知った・・・

 

人の業“カルマ”を知っていたのだ。

 

そして、この相方は既に自分のギャラクシーエンジェルを小説という形で表現している・・・それを見せられるのは決まって、亮なのだが・・・

 

「そうだ!あのシリウスとかいうキャラに復讐をさせてみたらうけそうじゃねぇか?」

 

「また。それかよ・・・」

 

初代GAをクリアした際にはタクトとミルフィーユを戦わせたら受けるだろうとか言って、レイ・桜葉というキャラを創り上げた。

 

「サプライだよ、サプライ・・・」

「何が、サプライだよ・・・」

 

相方の面白いという基準はいかに見る者を驚かせるかだ・・・つまりは、“ウケ”を重点的に考えていると言えるだろう・・・

 

そして、数ヵ月後、コミデジでGA兇梁減澆肇▲廛螢灰奪函桜葉が紹介された時、友人の興奮する様は凄かった・・・

 

「小説も大幅に変更しなきゃならねぇな・・・」

 

相方は仕事の最中にいつもそのことばかり考えていた。

そして、この時俺達の約束は

 

GAを最後まで見届けるまで何としてでも生き残るだった・・・

 

台風が三連続で上陸した後、製鉄所はおろか、自分達の作業所の屋根も半壊していて、即座に修理が必要な事態となっていた・・・

 

しかし、肝心の屋根の修理専門の職人達は全て製鉄所側が連れて行ってしまい、俺達、協力会社の者達は各自で修理しなければならない状態へなっていた。

 

当然、こういった作業は一番年の若い自分達の役割となる。

 

今、思い出せばアレも運命だったのだろうかと考えてしまう。

 

 

 

 

 

 

逆襲の堕天使

 

理想と現実の狭間で・・・

 

 

 

 

 

 

「シリウス・・・」

「タクト・・・」

 

白き月の謁見の間・・・

 

そこで、二人は再会を果たした・・・

 

互いにかつて、本気で殺し合った敵だ。

 

ましてや、精神的に不安定だったミルフィーユは、レイによる応急処置を受けている・・・

 

タクト達の思考回路はいつも通りとは言えない・・・

 

「待って、私達はあなた達が知っているシリウスや私では無いわ・・・私達は未来から来たの・・・」

 

「・・・ならば、どうしてオリジンを動かせる?」

 

「それは、ブレイブハートとクロスキャリバーを私達の時代で調整したからよ。」

 

「にわかには信じがたいな・・・」

 

「フン・・・別にお前に信じてもらおうと等とは思わない。」

 

「こいつ・・・」

 

「シリウス・・・」

 

「フン!」

 

「君達は、本当に未来から来たのかい?」

 

「ええ、新皇国歴が始まった年よ・・・」

 

「し、新皇国歴!?」

 

「レイ・桜葉の開発によって、クロノゲートは自由に利用できるようになったの・・・事実、EDENとNEUEは合併した事になったの・・・その証として、皇国歴を更新したのよ・・・そして、その年だったわ・・・ヒュウガがクローン技術を公に公表したのは・・・」

 

「それが、やがて“カルマ達”を生み出す事になったのか・・・」

 

「・・・カズヤそれは厳密には違う、“カルマ”は最初から存在しているんだ・・・」

 

「レイさん!」

「お兄ちゃん・・・お姉ちゃんは?」

 

「精神安定剤を射っておいた・・・しばらくはそっとしておけ・・・」

 

「レイさんはカルマについて何か知っているんですか?」

 

「ああ・・・今、言える事はあの“カルマ”は近い内に自然に消滅する・・・それだけだ・・・」

 

「お前・・・まだ、何か隠しているのか?」

 

苛立ったタクトはレイに詰め寄る・・・

 

「頭を冷やせタコ・・・今、その事をお前達に教えられない事情があるからだと分からんのか?馬鹿女が寝込んだぐらいで俺にまで八つ当たりをするな・・・」

 

しかし、レイは冷静にタクトをあしらう・・・

 

「こ、この・・・!」

 

「タクトさん、落ち着いて下さい!」

 

「くそ・・・!」

 

「隊長・・・ご無事で何よりです。」

 

シリウスは至って、真面目な態度でレイに再会の挨拶をする。

 

「お前達のおかげだ・・・すまん・・・」

 

「レイ・・・こうしてあなたと顔を合わすのも桜葉家の運命かしら・・・」

 

「エクレア・・・」

 

二人の死神がお互いの顔を見比べる・・・

 

以前、タクトが最後に戦った因果律ことエクレア・桜葉はミルフィーユとそっくりの顔立ちをしていたが、今タクト達の前にいる少女はどちらかと言えばアプリコットに似ていると言えるだろう・・・

 

「レイ・・・私が許せない?シャトヤーンやエオニア達の事も含めて・・・」

 

そのエクレアの言葉に緊張が走った・・・

 

因果律の画策により、エオニア達は命を落とし、シャトヤーンも心を傷つけられたのだ・・・

 

「お前が気にする必要は無い・・・お前は、エクレアだ・・・カズヤとリコの子供・・・それだけだ・・・“因果律とはカルマの事だからな・・・”」

 

「・・・っ!?どういう事だ!?因果律は彼女ではなかったのか!?」

 

「ふん・・・“カルマの演出”にまんまと騙されてどうする・・・あいつも言っていただろうが・・・“主人公は自分だ”ってな・・・」

 

「どういう意味だ・・・?」

 

「・・・・・・説明してもいいが、お前の思考回路では無理だ・・・」

 

「ふざけるなよ・・・」

 

「馬鹿・・・お前達が認識しきれないという意味だ・・・この世界で生きているお前達ではな・・・

 

「・・・?」

 

タクト達がレイの言葉に首をかしげているとロキとアバジェス、そして、シャトヤーンとシヴァが姿を現した。

 

「父上、ならびにエンジェル隊の諸君・・・防衛の任ご苦労であった・・・」

 

「・・・あなた、体の方は大丈夫ですか?」

 

シャトヤーンはレイの肩に軽く手を置き、心配そうにレイを見る。

 

「気にするな・・・アレぐらいでどうにかなる程、貧弱では無い・・・」

 

「けっ!何が気にするなだよ。テメェがお釈迦にしちまったアルフェシオン・・・あいつのエンジンはもう使い物にならねぇぞ。」

 

「言われなくても分かっている・・・」

 

「・・・っ!?ロキ、今の事は本当なのか!?」

 

「本当に決まってんだろうが・・・こんなんで嘘をついても仕方ねぇだろう・・・インフィニを制御するチップ・・・及び、カオスフィルター・・・この部分がインフィニの心臓と言えるんだが、アルフェシオン全体に新種のバイオ・ウィルスが寄生していて、交換すらままならない状態だ・・・とりあえず、二次災害防止ってことで宙域で隔離してあるがよ・・・」

 

「アルフェシオン・・・」

 

アプリコットにとって、最も印象の強い紋章機・・・それが、アルフェシオンだ・・・それも、無理も無い・・・アルフェシオンは如何なる時も彼女の味方だったのだ・・・

 

「お父さん、お願い!アルフェシオンを直してあげて!このままじゃ・・・あの子が可哀想だよ・・・」

 

「リコ・・・」

 

ロキの目が真面目な父親の目に変わる・・・

 

「わりぃが・・・インフィニは下手にいじれる代物じゃねぇんだ・・・下手をすれば、宇宙全てを飲み込む程の爆発を起こすか、全てを飲み尽くすブラックホールになるかだ・・・」

 

「そ、そんな・・・じゃあ、アルフェシオンはどうなるの!?」

 

「そ、それは・・・」

 

アプリコットの必死にすがるような問いかけにロキは言葉を詰まらせる。

 

「いいんだ、リコ・・・」

 

「え?」

 

レイは仮面をつけたまま、妹を見下ろして続けた。

 

「アルフェシオンが感染した以上、二次災害の恐れもあるのでこのまま放置という訳にも参りません・・・従って、アルフェシオンは破棄します。

 

破棄・・・それは、機械にとって“死”を意味する。

 

「ひどい・・・」

 

アプリコットは搾り出すような声を上げて兄を見上げた。

 

レイは最初から妹から批難を受けるだろうと分かっていたのか目線を合わせない・・・

 

「どうして、そんなに簡単に決め付けれるの!?あの子はお兄ちゃんにとって、それぐらいの価値しか無いの!?」

 

アプリコットの目には涙が浮かんでいる・・・

 

「紋章機は所詮、戦争の道具・・・戦えて・・・守れてこそ価値のある“物”だ。」

 

「・・・っ!?」

 

「周囲に被害をもたらす危険性を持っている以上、アルフェシオンをこのまま放置しておくわけにもいかない・・・即座に解体し・・・」

 

パァン!

 

レイが最後まで言い終わる前にアプリコットの右手がレイの左頬をはたいていた。

 

レイの仮面が外れて左頬が赤くなったレイの素顔が晒される・・・その目は閉じたままだ・・・まるで、弁解はしないと言わんばかりに・・・

 

「お兄ちゃんの馬鹿!」

 

アプリコットはそう言って、謁見の間を後にした。

 

謁見の間を気まずい空気が流れる・・・

 

「レイさん・・・」

 

カズヤは赤くなったレイの頬を心配そうに見ている。

 

「構わん・・・リコが俺を殴りたくなる気持ちはよく分かっているつもりだ・・・俺のことは良いからリコを頼む。」

 

「は、はい!」

 

カズヤもアプリコットを追う為に謁見の間を後にした。

 

「レイ・・・本当にいいのか?」

 

アバジェスの眼はアルフェシオンを解体してもいいのかと問いかけている。

 

「構いません・・・“老兵去り逝くのみ”です。これからは、アンフィニを搭載したゼックイで戦います。」

 

「ちょっと待って・・・アルフェシオン・・・何とかなるかもしれないわよ?」

 

エクレアがレイの方を見て言った。

 

「・・・本当なのか?」

 

人に頼る事を何よりも嫌っているレイが、今回ばかりは素直に頼ろうとしている・・・

 

「ええ、ただし保障はできないわよ・・・そして、その修理にはあなたの同行が必要よ・・・何しろ、“私はあの子によく思われてないから・・・”詳細は後でじかに話すわ・・・」

 

「・・・?どうしてだ?」

 

「子供の頃、あの子をよく苛めて遊んでいたから・・・」

 

「は?・・・???」

 

タクトはエクレアの言っている意味が理解できずに首をかしげる。

 

「何にせよ・・・今はエンジェル隊が戻って来てくれるのを待とうぜ・・・いざとなれば俺とアバジェスの紋章機もあるしな・・・な?な?前向きに行こうぜ。」

 

ロキが沈んでいた連中を励ますかのように、腕を打ち鳴らした。この辺の気遣いがロキらしさと言えるだろう・・・

 

「ああ・・・そうだな・・・」

 

そして、エクレアを中心とした打ち合わせが始まった・・・

 

エクレアが出した提案は大胆なものだった・・・

 

それは、ヒュウガがクローン技術を発表する当日にヒュウガの正体を公表し、クローン技術の危険性を訴えかけるというものだった・・・そして、それを口実にクローン技術に関する情報の全てを消去する・・・

そして、アルフェシオンはレイがエクレアの時代へと赴き、修理するという事だった・・・

 

「クローン技術の危険性か・・・難しいところだな・・・」

 

アバジェスは腕を組んだまま正直に答えた。

 

「阿部殿、それは何故ですか?」

 

「シヴァ様・・・例え、市民の全員がクローン技術の危険性を知ったとしてもです・・・世の中にはそういう技術を敢て研究したいと思う連中がいるのです。」

 

「そ、そんな・・・」

 

「人間には寿命というものがあります・・・故に研究者達は自分が生きている間に誰もが成し得なかった技術を開発したがるものなのです・・・その“名誉欲”を完全に抑えるのはほぼ、不可能に近いでしょう・・・」

 

「ええ・・・実際的には姿を現したヒュウガを討伐するというのが、本来の趣旨だし・・・」

 

「問題はあの“オメガ”をどうするかだな・・・あのウィルスは全くの新種だ・・・おそらくは外宇宙が試行錯誤を重ね続けて生み出されたウィルスだ・・・そう簡単に防げるものじゃないだろうな・・・」

 

「抗体ウィルス・・・おそらく、オリジンにはその新種のウィルスに対する抗体が出来ている筈だ・・・だからこそ、ヒュウガもまともに戦おうとしたんだろうな・・・」

 

「レイ・・・その抗体ウィルスの開発にはどのくらい時が必要になる?」

 

「・・・正直に言いますと、分かりません・・・まずはオリジンを解析することから始まりますからね・・・いくつもある候補の中から、抗体ウィルスを見つけるのは正直、どうしても時間が掛ります・・・」

 

「お前がそう言うとなると今までに無い重作業になるという事か・・・」

 

「時間に関しては方法はあるわ・・・私とシリウスが力を合わせればある程度までなら過去にさかのぼる事ができるの・・・」

 

「なるほど・・・それが現状でベストだな・・・では、その作業の間、白き月の警備は私達とタクト、カズヤの四名で行おう・・・」

 

「しかし、シャイニング・スターはミルフィーがいないと100%稼動しない・・・正直に言うと厳しい・・・」

 

「レイ・・・ミルフィーは結局、精神的ストレスが原因か?」

 

「はい・・・まったく、あの“キチガイ”の言う事を鵜呑みにして戦闘不能になってしまうなど・・・同じ身内として恥ずかしい限りです。」

 

「お、お前、いい加減に・・!」

 

タクトが言い終わる前にロキが凄みの聞いた声でレイに言い放った。

 

「黙れよ・・・テメェ・・・」

 

ロキの本気の眼光をレイに浴びせる。

 

「フン・・・」

 

「どちらにせよ、ここでくすぶっていても敗北は目に見えているわ・・・レイ、あなたは明日の正午までに一緒に来てもらうわよ?今夜までにアルフェシオンの設計に関わる資料を全て用意しておいてね。」

 

「ああ・・・」

 

「あなた・・・」

 

シャトヤーンが寂しそうにレイを見つめる。

 

「悪い・・・シャトヤーン・・・今夜は寝ている暇すらなさそうだ・・・」

 

「いいえ・・・私は待ってますから・・・」

 

その後、メンバー達は各自解散となった・・・

 

 

俺はミルフィーユの見舞う為に白き月の医務室を訪れていた。幸い、彼女は起きていた・・・

 

「ミルフィー、大丈夫かい?」

「はい・・・すいません・・・心配をかけちゃって・・・」

「いや、いいさ・・・ミルフィーが無事ならね。」

 

俺は笑顔のまま彼女を安心させようと思ったのだが、やはり彼女の顔は沈んだままだった・・・

 

「タクトさん・・・」

「・・・うん。」

 

彼女の目から彼女が言おうとしている事がよほど、重大な悩み事だと感じ取った俺は慎重に彼女の目を見る。

 

「私・・・今まで、ご飯を食べて皆が笑顔になってくれるのが何よりも嬉しくて色んな料理を作ってきました・・・昔の私がお兄ちゃんの料理を食べて元気になっていたように・・・」

 

「うん・・・」

 

「でも、私のしていた事は動物さん達からすれば只の・・」

 

「やめるんだ・・・」

 

その先の言葉を君の口から聞きたくない・・・

 

「でも・・・」

 

「あいつの言う事なんか気にする必要は・・」

 

「あります・・・私がしてきた事は事実ですから・・・」

 

「ミルフィー・・・」

 

まずい・・・彼女は責任感が強い・・・そして、それが今、災いしているんだ・・・どうすればいい・・・くそっ!カルマめっ!

 

その時、クロノクリスタルが電波を受信した。

 

「タクト、悪い!すぐに格納庫まで来てくれ!シャイニング・スターの奴が俺の言う事を聞いてくれないんだ!」

 

「は、はぁ?」

 

何だそれは・・・

 

「タクトさん・・・行ってあげてください・・・」

 

「う、うん・・・じゃあ、行ってくるけど・・・あまりに気にしすぎないようにね・・・」

 

タクトはそう言うと医務室を後にした・・・

 

「・・・・・・」

 

ミルフィーユの脳裏にはカルマの言葉が焼きついている。

 

“お前だって、動物達から見れば立派な殺戮者だ”

 

「・・・っ!」

 

ミルフィーユは耳を押さえるが、何度もカルマの声が復唱される・・・

 

お前だって、殺戮者だ。

 

お前だって、多くの敵を撃墜してきた殺戮者だ。

 

そして、この俺をこの世界に引き込んだ元凶・・・

 

俺は常に言い続けてきた・・・

 

殺し愛・・・と

 

この意味が分かるか?

 

「・・・っ!?」

 

身に覚えの無い言葉が聞こえてきて、ミルフィーユはたまらず医務室を飛び出す!

 

「お、お姉ちゃん!どうしたの!?」

 

医務室に向かおうとしていたアプリコットは姉が医務室から飛び出してきたので、驚いてしまった。

 

「リ、リコ・・・」

 

「お姉ちゃん!顔色が悪いよ!どうしたの!?ねぇ!?」

 

アプリコットは姉の肩を抱きとめて心配そうに顔を覗きこむが、姉は自分の方を見てはくれない・・・

 

桜・・・桜葉・・・

 

俺がこの世で唯一好きだった植物・・・

 

しかし、それも昆虫のエサとなる・・・

 

エサだ・・・エサ!エサ!!エサ!!

 

お前のよく使う卵もエサ!魚もエサ!!豚の頭や脳もエサ!!ソレを食す人間の内蔵もエサ!ソレを吸収する腸もエサ!!脳もエサ!心臓もエサ!!腕もエサ!!

 

「〜〜〜っ!!」

「お、お姉ちゃん!?どこに行くの!?」

 

ミルフィーユはアプリコットを押しのけて走り出す!

 

 

エサを欲するは欲望・・・

 

デザイア・・・

 

お前だ!!

 

この世界で最も気に喰わなかった存在・・・

 

現実を知らぬガキ・・・

 

臭いものに蓋をする人間の典型的な存在・・・

 

その犠牲になっている命の事などこれぽっちも考えずに包丁を振るう死神・・・

 

年に一回か、月に一回謝ればその罪が許されると履き違えている愚か者・・・

 

レイ・桜葉の存在意義はそれをお前に知らしめる為にある。

 

気まぐれでお前に似せた訳では無い。

 

この世界を創り上げたのはこの俺だ・・・

 

しかし、創らせたのは他の誰でもない・・・

 

お前だっ!

 

お前だ!お前だ!お前だ!お前だ!お前だ!お前だ!

お前だ!お前だ!お前だ!お前だ!お前だ!お前だ!

お前だ!お前だ!お前だ!お前だ!お前だ!お前だ!

おまえ!おまえ!おまえ!おまえ!おまえ!おまえ!

おまえ!おまえ!おまえ!おまえ!おまえ!おまえ!

おまえ!おまえ!おまえ!おまえ!おまえ!おまえ!

オマエ!オマエ!オマエ!オマエ!オマエ!オマエ!

オマエ!オマエ!オマエ!オマエ!オマエ!オマエ!

オマエ!オマエ!オマエ!オマエ!オマエ!オマエ!

オマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエ

オマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエ

オマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエ

オマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエオマエ

 

「イヤアアアァァァーーー!!」

 

ミルフィーユは目を閉じ、耳を押さえながらうずくまる。

 

この程度では許さない・・・

 

確かにオリジンに集いし犠牲者達はお前を許した・・・

 

しかし、お前の犠牲になった者達の悲しみは未だに俺の中に存在している・・・

 

“呪い殺してやる・・・”

 

殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!

 

「た、助けて・・・」

 

誰が、お前など助けるものか・・・

 

常に助けられてばかりの弱虫など、誰が助ける?

 

また、誰かに助けられて逃げ切るつもりか?

 

守ってください?

 

ふん、自分の身ぐらい自分で守りきれないのか?

 

ゴン!!

 

ミルフィーユは頭に走った強烈な痛みに目を開けた。

 

「通路を塞ぐんじゃねぇ・・・邪魔なんだよ。」

 

そこには兄がいた。

 

育ての親とも言うべき兄が・・・

 

「お、お兄ちゃん・・・助けて・・・」

 

ミルフィーユは先程までの出来事を説明した。

 

「お願い・・・助けて・・・」

 

「・・・・・・ふざけんなよ、テメェ・・・」

「・・・っ!?」

 

レイはミルフィーユの胸倉を掴み上げた。

 

「何が、助けてだ・・・自分の身ぐらい自分で守れ・・・守れないと言うのは・・・助けてくれなんていうのは手足が無い者が言うべき事だ・・・お前が言っている助けてくれなど、ただ単にお前が甘ったれてるだけだろうが・・・

 

レイは素顔をさらしたまま、妹を睨みつける。

 

「・・ひっく、・・・っく!」

「チッ!」

 

ミルフィーユはもう泣きじゃくるだけだった・・・

 

「・・・・・・来い。」

 

しかし、レイはそんな事などお構いなくミルフィーユを強引に引き連れて行った・・・

 

レイが連れて来たのは誰もいない寂しい第二の厨房・・・

おそらく、今のミルフィーユが最も、立ち入りたくない場所だろう・・・

 

そして、まな板の上の横の水槽には大きな魚が一匹泳いでいる・・・

 

「・・・おい、馬鹿・・・これから、俺がする事をよく見ておけ・・・」

 

レイはどこから取り出したのか餌用の生きたエビを水槽の中に放り込む・・・

 

餌を感知した魚は一斉にエビを目指す。

 

放流されたエビは迫り来る捕食者から逃げようとしたが、あえなく喰われてしまった・・・

 

水槽には、エビの頭の一部が浮いている・・・

 

「・・・・・・」

 

そして、レイはその魚を何なく、掴みあげてまな板の上に置く・・・魚は当然、暴れる・・・

 

「・・・っ!?」

 

ミルフィーユは兄が何をしようとしているのかを感じ取り、目を閉じる。

 

「馬鹿野郎!目を閉じたら、魚の代わりにテメェを捌くぞ!コラァ!!」

 

「ご、ごめん・・・」

 

ミルフィーユが目を開けた途端、レイは、魚を一度叩きつける。そして、魚は失神したのかピクリとも動かない・・・

 

そして、レイは魚の頭部と尻尾の付け根にある急所に包丁を素早く入れる・・・

 

この時点で、魚の死は決まっていた・・・

 

「・・・・・・」

 

レイは手についた魚の最後の生き血を丁寧に洗い落とした。

 

「・・・何か言いたそうだな?」

 

「・・・・・・」

 

「お前の思った通り、コレは立派な“殺し”だ。」

 

「・・・っ!?」

 

「何せ、俺は死神のメシアだからな・・・」

 

ミルフィーユは批難の眼差しで兄を睨みつけた。

 

「ほぉ・・・お前にもそれぐらいの度胸はあるか・・・」

 

レイはその目を妹から逸らさない・・・

 

「お兄ちゃんは、わざわざこんな事を見せるける為に私をここに連れてきたの!?」

「ああ。」

「・・・っ!?私・・・帰るから!」

 

「・・・・・・確かに、料理は殺しと言えば、殺しになる・・・」

 

「・・・?」

 

厨房を出て行こうとしたミルフィーユだが、レイの言葉に呼びとどめられてしまった・・・

 

「そして、カルマのしている“殺し愛”もあいつからすれば料理となるだろう・・・」

 

「何が言いたいの・・・」

 

「分からんか?俺が言ってる事が・・・」

 

「全然、わからないよ!」

 

兄の抽象的過ぎる言葉にミルフィーユは声を荒げた。

 

「料理に使われる材料・・・命ある者・・・しかし、それらには抵抗する意思と能力が備わっている・・・つまり、喰われるのが嫌ならば、抵抗すればいい事・・・それが、命を懸けた戦いだ・・・」

 

レイは魚を再び、捌き始める・・・

 

「肉食動物が人間に襲い掛かる理屈と同じだ・・・“料理による殺し”は悪では無い・・・」

 

「・・・そんなのおかしい・・・」

 

「今のお前ではそうとしか受け取らないだろうな・・・しかし、お前は既に料理の世界に脚を踏み入れた・・・捕食者の道を辿りながらな・・・そして、それが命ある者が避けては通れぬ道・・・弱肉強食の世界だ・・・

 

「・・・・・・」

 

「それは、戦いにおいてもそうだ・・・どんなに正しい主張をしようが、戦いに負ければ、“正義とは戦勝国の理屈が基準となる・・・”

 

「その世界で生きるのが嫌ならば、止めはせん・・・勝手に死ね。」

 

「・・・っ!?」

 

「食事への責任感も背負えない弱虫など生きるに値しない・・・ただ泣くだけの弱虫などな・・・」

 

レイの目がミルフィーユの目を見据える・・・

まるで、お前に言っていることだと言わんばかりの目・・・

事実、レイはミルフィーユに向けて言っているのだ・・・

 

「俺はその責任を背負う覚悟がある・・・だからこそ、こと“戦いと料理”については手を抜かない・・・完全にこなして見せる・・・お前はどうだ・・・?」

 

「わ、わたし・・・私は・・・」

 

「昔、俺はお前に言った筈だ・・・料理人には食材を使う事への責任感がいるってな・・・」

 

レイは魚を見事なまでに盛り付け終わった・・・

 

「お前が、桜葉家の者だと言うのなら・・・俺の妹だと言うのなら、これぐらいの事で取り乱すな・・・」

 

「・・・・・・私・・・もう取り乱したりしないよ・・・」

 

「それでこそ、お前らしい・・・」

 

レイはそれだけ言うと、厨房を後にしようとした。

 

「ちょ、ちょっと待って!このお魚さんはどうするの!?」

 

「俺は食わん・・・お前が食え・・・」

 

「駄目だよ!私が強引にでも食べさせるんだから!」

 

(ふ・・・その意気だ・・・)

 

「わぁったよ・・・」

 

二人は久しぶりに一緒に食事をした。

 

「・・・ミルフィー・・・」

「・・・何?」

珍しく兄がちゃんとした名前で呼んできたのでミルフィーユは少し、驚いた。

 

「お前はもう大人だ・・・だから、もう俺に頼るのはやめろ・・・」

 

レイは清酒を飲みながら言い放った・・・

 

「・・・・・・」

ミルフィーユの箸が止まる・・・

 

「しかし、お前は女だ・・・頼るならタクトに頼るべきだ・・・さっき言った事に矛盾するかもしれんが、現実的に考えれば難しいからな・・・」

 

「う、うん・・・お兄ちゃん・・・私にも頂戴・・・」

 

「これか?ほらよ。」

 

レイは自分の飲んでいた清酒をミルフィーユに渡した。

 

「ありがとう。」

 

ミルフィーユの桜色の唇が酒瓶に触れる・・・

 

(待てよ・・・俺、何か大事な事を忘れちゃあいないか・・・?)

 

ゴク・・・ゴクッ・・・

 

レイが禁断の黙示録に気付いたのはミルフィーユがジュースを飲むような勢いで酒瓶を飲干した後でのことだった・・・

 

「ヒック・・・」

 

「し、しまったあああぁぁぁーーーーー!!!」

 

「よくよく、考えればどうしてあの時、私は頭をどつかれなきゃいけなかったんだろ・・・ヒック・・・」

 

(逃げよう・・・)

 

この後、レイは結局捕まってしまい、先程の仕返しをたっぷりとされたそうな・・・

 

「レイ・・・その傷はどうした・・・」

 

「・・・・・・すいません、これだけは黙秘させてください・・・」

 

「まったく、こんな忙しい時に暇を出せと言って、帰ってくればそのような傷を負ってくるとはな・・・タクトかロキとでも喧嘩したのか?」

 

「・・・俺を襲ったのは二人を遥かに超越する者ですよ・・・マスターにも、心当たりがあるでしょう・・・」

 

「・・・・・・」

 

アバジェスはしばらく考えた後で凍りついた。

 

「飲ませたのか?」

 

「・・・正確には飲まれたようなものですが・・・」

 

「同じ事だ!馬鹿者―――っ!!」

 

「す、すいません・・・」

 

バタッ!

 

それだけ言い終えると力尽きるようにレイは倒れてしまった。

 

〜因果律〜

 

俺は、羨ましかった・・・

 

ギャラクシーエンジェルの世界で生きている全ての生物が・・・命を捨ててこの世界に生まれ変われるのなら俺は喜んでこの命を差し出しただろう・・・

 

しかし、俺の望みはこの命を捨てたとしても手に入らない・・・

 

叶えられない・・・

 

DESIRE

 

何故かって?

 

そんなのは決まっている・・・

 

ギャラクシーエンジェルの世界は現実では無いからだ。

 

仮想の世界だからこそ、美しいのだ・・・

 

当たり前の事・・・そう、当たり前の事・・・

 

しかし、繰り返されるつまらない現実の世界で生きていた俺はその仮想の世界を望み、信じていた・・・

 

生きていけるだけの給料で、娯楽をする時間すらもない職場で・・・命を賭けて・・・いや、よそう・・・

 

その信じる事だけが、この俺を支えているものだった・・・

 

ようは只の現実逃避だった・・・

 

この世の現実を認識した時、俺はきっと精神崩壊を起こしていた事だろうな・・・

 

それほどまでに“俺の天使”は美しかった・・・

 

その天使だけが俺をかろうじて支えていた・・・

 

だが、俺にはどうしても許せない存在がいた・・・

 

タクト・マイヤーズ・・・

 

何故、お前なんだ?

 

お前みたいな奴に・・・

 

要領がいいだけのお前が・・・

 

俺の天使に選ばれた?

 

真面目に働き、お前以上の身体能力と知識を備えた俺を差し置いて・・・

 

俺の命を懸けても得られない者を・・・お前みたいな奴に・・・

 

俺だったら彼女を悲しませたりはしない・・・

 

この世界がタクトを容認し、俺の存在を認めないのならどんな手段を使ってでも認めさせてやる・・・

 

見ていろ・・・

 

このギャラクシーエンジェルの世界の主人公はこの俺だ・・・そして、この甘っちょろい世界をグロテスクでリアルなものに変えてやる・・・

 

そうすれば、いやでも俺の存在を認めざるを得ないだろう・・・

 

そして、あの馬鹿(タクト)の脆い部分も見えてくるだろう・・・

 

完全な奴などいはしないのだ・・・

 

この俺を除いてはな・・・

 

だから、この俺の代わりにこの役目を果たせ・・・

 

レイ・桜葉よ・・・

 

その為にお前はこの世界で最強でいるのだ・・・

 

俺は感動を与える為にこのギャラクシーエンジェルの世界を創造した訳では無い・・・

 

俺を容認せず・・・

 

甘っちょろい世界で生きているクソ共に制裁をするのだ。

 

その為にどんなシュチュエーションも用意してやった

 

フェイトもこの世界に呼び寄せてやった・・・

 

しかし、お前は最後までこの世界を庇い続けた・・・

 

だから、この俺が直々に制裁をする事にした・・・

 

レイ・桜葉・・・時は来た・・・

 

タクト・マイヤーズを木っ端微塵にする時が・・・

 

〜未来の楽園〜

 

翌日・・・誰に告げるとも無く、レイとエクレアはアルフェシオンの修理の為に未来へと旅立った・・・

 

そして、シヴァ達は来る外宇宙との戦いに備えての作戦を立てていた。

 

「・・・今回の戦いにおいては奴等に二つの有利な点があります・・・」

 

現在、皇国軍の運営を担っていると言っても過言ではない阿部竜二ことアバジェスはモニターを踏まえながら状況の説明をしていた。

 

現在、この席にいるのは各将校とタクト・マイヤーズのみ・・・

 

「一つ目・・・奴等は何万年もの間、我々への対抗策を思案してきました・・・それは、おそらく策略的なものではなく、技術的なものと考えていいでしょう・・・ブラウドの技術力を支えていたのも彼等でしょうからね・・・」

 

「技術力・・・確かに辛いところだな・・・」

 

シヴァは手元に渡された過去にレイが撃墜してきた敵機の資料を何度も読み返していた。

 

「そして、二つ目・・・厄介な事に連中がゲートを介入して侵入してきてましたが、どうやら今回出現したヒュウガの一味を見る限り、ゲートを介さずともこちらに侵入できるようになっているみたいです。」

 

「何と!それはまことか!?」

 

ルフトは読んでいた資料から目を離してアバジェスの方を見上げた。

 

「ああ・・・“因果律”が消滅した今、ゲートを操れるのはレイとミルフィーユだけだからな・・・それに万が一にゲートを使用しようとしてもレイがゲートをフリーズさせてしまえばそこで終わりだからな・・・」

 

「フリーズ・・・レイがヘパイストスで使ったアレの一種か?」

 

タクトの脳裏にレイとのヘパイストスでの最終決戦が蘇る。

 

「ああ・・・あれは正確に言うと因果そのものを消去してしまう事だからな・・・」

 

「そうか・・・そこで、連中は別の手段で介入する事を考案したって訳か・・・」

 

「ああ、おそらく今回のタイミングで仕掛けてきたのはその技術が実用段階まで完成したからだろう・・・」

 

「しかし、その“別の手段”とは?」

 

「断定はできませんが、私の記憶に照らし合わせて考えられるのはただ一つ・・・ゲートに介入できるもう一人の人物・・・フェイト・・・つまりはアプリコットを利用してるかもしれないのです。」

 

「な、何!?」

 

「セルダールの伝承も本来はフェイトがいればこその話です・・・“この世界”では・・・」

 

俺は、アバジェスの言った言葉に妙な引っ掛かりを覚えたが今は聞かない事にしておく事にした・・・

 

「とはいえ、フェイトにそこまで干渉できる者は限られています・・・同じ細胞と血を受け継ぐ者・・・それも兄弟以上に近い存在・・・そう“子供”がいれば可能です。」

 

・・・・・・アキト・桜葉・・・カルマ・・・

 

カルマ・・・全ての元凶・・・

 

「はい・・・奴等は今まで因果律ことエクレア・桜葉を介して侵入を試みてました・・・しかし、彼女は奴等を拒絶した・・・レイ・桜葉という最強の守護神を門番に立てて・・・」

 

くっくっくっ・・・因果律がエクレアだとまだ、思っているのか?

 

言ったろう・・・主人公はこの俺だってな・・・

 

「そして、どういう経緯かはしりませんが、奴等はカルマを手に入れた・・・死んだ筈のカルマを呼び寄せる事に成功したのです・・・」

 

い〜や・・・死ぬのはお前達だぜ・・・

 

「阿部殿・・・我々は外宇宙の組織を全く知らぬに等しい・・・そなたの知ってる範囲でいいから教えてもらえぬか?」

 

「・・・外宇宙の構成は実に単純です・・・とは言ってもそれはレイが発見した“HEAVEN”と呼ばれる世界だけについてです・・・つまりは私達が把握できている外宇宙とはその“HEAVEN”だけなのです。連中がこちらに介入できないのと同時にこちらも向こうには干渉できませんからね・・・

 

世界を繋ぐ扉・・・ゲート・・・

 

「さて、そのHEAVENの構成ですが、基本的に彼等は自分達を人間と表記はせずに“天使”と表記しています・・・そして、奴等の世界には階級があり、上級天使・・・中級天使・・・下級天使・・・と分けられています・・・奴等の生活は基本的にこの階級を上っていく事にあります。この階級には神界時代のEDENに似ているところがあり、上級天使と呼ばれる者達はHEVENの“様々な思念”を司る・・・つまりは管理をしているという訳です・・・

 

「まどろっこしいんだよ・・・ようは十二傑衆と同じって言えばいいだろうが・・・」

 

と割り込んできたのはロキ・・・

 

「ロキ・・・大事な事だ・・・少し、黙ってろ・・・」

 

「・・・・・・」

 

「すいません、続けます・・・先程の階級の上には最上級と言われる位があり、そこにいる天使達は四大天使と呼ばれてます・・・この四大天使こそが・・・我々が把握しておく“敵”です・・・何故なら、HEAVENを動かしているのがこの四大天使と呼ばれている者達だからです。この四名の中から選ばれた者がHEAVENの長たる“天使長”に選ばれます・・・この天使長が如何なる権利を保有している・・・つまりは侵略や防衛に対する外宇宙の行動はこの天使長の一存にあるといえます・・・」

 

「その天使長は?」

 

「その天使長があのミカエルでした・・・しかし、前にも言った通りミカエルはレイにより消滅させられました・・・ミカエル亡き今、四大天使はラファエル、ウリエル・・・そして、ガブリエルの三人・・・そして、行動範囲の広さを考慮したところガブリエルが現在の天使長と判断していいでしょう・・・」

 

「ガブリエル・・・」

 

状況はどうであれ、あのレイ・桜葉を倒した敵だ・・・その技量と実力はいたい程に知っている・・・

 

「ガブリエルは元々、HEAVENの管理者でした・・・そして、ミカエルがカリスマ的な指導力を発揮してHEAVENを二人で導いてきました・・・しかし、この支配体制をよく思わない天使がいました・・・ウリエル・・・異端者を捌く厳格な天使・・・の筈なのですが、どうもこのウリエルという奴は評判がよくないらしく、特にミカエルとはいざこざが絶えなかったようです・・・」

 

「待ってくれ、何でそんな奴が四大天使に選ばれたんだよ?」

 

「それはこいつを四大天使に選んだのがHEAVENの神だったからだ・・・」

 

「神・・・?」

 

シヴァは訝しげに聞き返した。

 

・・・天使長の上に位置する絶対無二の存在です。天使はその名の通りの使者・・・そして、天使達はそのに仕える事に存在意義を見出しています・・・ミカエルの人気の理由も限りなくに近い力を保有していたからです。しかし、こともあろうか、そのミカエルが外宇宙からは悪魔と言われているレイに敗れた・・・当然、外宇宙の士気は下がり、HEAVENの治安も悪化しました・・・いわばレイはHEAVENの天使達の怨敵なのです・・・今回のオメガもまさにその執着心がうみ出したものだと言っていいでしょう・・・」

 

「・・・もしかして、その神というのがカルマなのか?」

 

「・・・・・・そうだ。」

 

「な!そ、そんな馬鹿な事があるものか!第一、奴はガブリエルの策により、誕生したクローンではないか!」

 

そう・・・それがこの世界の矛盾の一つ・・・

 

「すいません・・・無茶苦茶な理屈ですが、それが事実だとしか私も言いようが無いのです・・・」

 

「・・・俺も信じたく無かったけど、あの戦闘機にカルマが憑依したとなれば信じるしかない・・・シヴァ様・・・」

 

タクトはシヴァの前に出てその目を見据えて続けた。

 

「エンジェル隊の再編成を要請します・・・編成は自分に任せてください・・・今度で終わりにします・・・本当に・・・」

 

「・・・・・・」

 

意気込むタクトをロキは複雑そうに見ていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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