逆襲の堕天使 

 

 

現在、我々皇国軍は二つの部隊に分かれて行動している。

 

一つは現代のEDENHEAVENから守護する為の私、アバジェスの指揮下にある本隊・・・

 

そして、もう一つは未来に本拠地を置く外宇宙を討伐に行くタクトが率いるエンジェル隊だ。

 

本来、我々はひとつで防衛線を張る予定だった。

 

しかし、未来からの使者 エクレア・桜葉の突如の作戦変更により、我々は二つに分かれることになった・・・

 

もちろん、シヴァ女皇を初めとした上層部はこの事に対して不快感をあらわにした。

 

しかし、事態が事態ゆえに今はエクレアの責任を問うべきではないとの結論で何とか治まった・・・

 

 

「エクレア・・・どういうことなのかもう一度、教えてくれ。」

 

俺は、未来から来た天使の見据えて聞いた。

 

「ふぅ・・・意外にタクトって淡白なのね・・・」

 

「はは、それは認めるよ。」

 

「タクトさん!」

 

現状を読んで下さいと言わんばかりのカズヤの声。

 

現在、タクト達の軍勢は何とルクシオールと紋章機のみ・・・

 

とても、最終決戦へ赴く軍勢とは言い難い。

 

「そう急くなよ・・・」

 

タクトは苦笑しながらカズヤをなだめる。

 

現在、俺達はクロノ・ドライブ中でエンジェル隊の全員がブリーフィングルームに集合している・・・

 

「さてと・・・エクレア、これから想定される事態を教えてくれ。」

 

正確には“いつ戦闘が始まる”かだが・・・

 

「・・・私たちが行き着く先は未来のジュノー・・・」

 

「ジュ、ジュノーって・・・!」

 

かつてのEDENの祖が生き続けていた言わば皇国の故郷でもある。

 

「そこを、私達は“HEAVEN”と呼ぶことにした・・・」

 

HEAVEN・・・天国

 

「戦争終結後、EDEN(楽園)に飽き足りた一部の権力者達は力を合わせてジュノーを拠点とした娯楽施設を開拓し始めた・・・何せ、ジュノーには神秘的な空気が漂っていたし、NEUEからの観光者も多かったわ・・・」

 

「だから、そこで商売を始めるのも当然か・・・」

 

「ジュノーの評議員達もこれには反対しなかったわ・・・何せ、EDENNEUEの交流の架け橋になれるんですもの・・・ジュノーの民は純粋にNEUEとの交流を求めていただけなのよ・・・」

 

「だが・・・その後で・・・」

 

「そう・・・前大戦でカルマが明かしたかもしれないけど、それから幾年が過ぎていくにつれ、人は堕落していった・・・文化の発展を望み過ぎていって・・・」

 

「どういうことなのだ〜?」

 

「ナノナノ・・・その原型とも言えるのが、貴方達ナノ・テクノロジーなのよ・・・」

 

「?」

 

ナノナノは不思議そうに首をかしげる。

 

それは、他のメンバーも似たようなものだった。

 

「ナノ・マシンは確かに万能薬よ・・・しかし、怪我が重度な程に大量のナノ・マシンを消費する・・・それは、今でもそうなのでしょう?」

 

と、エクレアの目はヴァニラを見る。

 

「はい・・・結局はナノ・マシンは破損したものを復元しているに過ぎません・・・」

 

代価・・・

 

「そう・・・みんな、気付いていた?“ナノ・マシンも資源”なのよ・・・」

 

資源・・・数に限りがあるもの・・・

 

「未来のEDENではナノ・マシンの摂取が非常に困難になった為に別の代用品を考案したのよ・・・」

 

俺は、薄々感づいている・・・

 

「別の代用品・・・それがクローン技術よ・・・」

 

そう・・・それが、カルマが誕生した理由・・・

 

「その代のシャトヤーンは反対したわ・・・新しいものを開発するのではなく、敢えて、過去の文化に戻り、資源の利用方法を考え直そうとね・・・でも、当然、そうなると職を失ったり、財を失う者もでる・・・そういった連中がシャトヤーンの存在が無駄だと訴えて彼女を葬ったのよ・・・」

 

「ひどい・・・」

 

ミルフィーユの脳裏にシャトヤーンは剥製にされたとのカルマの言葉が蘇る。

 

「そして、彼等はこともあろうに白き月を拠点にして、クローン技術の開発に取り組んだ・・・その開発者達はやがて、寿命に関係なく研究を続けれる不老不死の体を手に入れようとも考え、自分の体もエーテル体へと変えてしまった・・・」

 

「・・・っ!?それが、天使達か!?」

 

「そうよ・・・タクト・・・ミカエルやガブリエルもその開発者達の子孫に当たるわ・・・」

 

「子孫・・・」

 

「ええ・・・もしくは子孫ではなく本人そのものが生き延びている可能性もあるかもしれないけどね・・・後、ガブリエルが搭乗していたアルフェシオンの贋作には恐らくはその開発者達の技術が備わっている筈よ・・・」

 

「・・・つまり、あの紋章機もどきの機体には僕達の機体と同じ技術・・・いや、それ以上のものが組み込まれているのか・・・」

 

「でもね、ガブリエルの“切り札”はそんな可愛いものじゃないわよ・・・」

 

「どういうことだ?」

 

「私が未来へ旅立った本当の理由はそこにあるわ・・・その切り札を貴方達のEDENに持ってこられればEDENはおろかNEUEすらも跡形もなく消滅するからよ・・・だからこそ、切り札は奴等の本拠地で止めなければ皇国の明日は無いわ・・・」

 

「な、何よ・・・それ・・・」

 

「ランファ・・・悪いけど、私達の今回の敵はそんな化け物ってことよ・・・そして、直に戦いは始まるわよ・・・」

 

「でも、私達は今までどんな事態でも戦い抜いてきました・・・」

 

「リコ・・・?」

 

「・・・・・・」

 

「そして、私達はどんな状況でもあきらめずに解決してきたじゃないですか!だから、今回も大丈夫ですよ!」

 

皆が重い空気にいる中、彼女が元気な声で皆を励ました。

 

そして、全員から緊張感が抜けていく。

 

そうだ・・・長い間、忘れていたけど、エンジェル隊はいつもこんな風だった・・・

 

決戦前夜の時も何故か、皆ハイテンションになってて結局は何とかしてしまうんだ。

 

以前、あいつはエンジェル隊のそんな部分を毛嫌いして、力でそれをねじ伏せた。

 

それが、本当の軍人だと言って・・・

 

でも、今はどうだろう・・・

 

俺は今でも、こんなハイテンションなエンジェル隊の方が強くて美しいと思うんだ・・・

 

例え、HALLOという補助輪を外されたと言えど、紋章機達もこんな操者を望んでいるんじゃないだろうか・・・

 

妙に活気を取り戻した天使達は俺は何よりも美しいと思った・・・

 

しかし、今度の戦いは・・・

 

今までとは文字通り桁が違う戦争だった・・・

 

おそらくは後記にもこれ以上の規模の戦争が記すられることはないだろう。

 

世の中には必ず分かり合えない者がいるということを俺達は知ることになったんだ・・・

 

〜毒々しい一人相撲〜

 

「タクト・・・みんなに出撃命令を出しなさい。」

 

戦いの始まりはエクレアの冷静な声だった。

 

この放送をルクシオールの館内に流した際に誰もが言葉を失っただろう・・・

 

当たり前だ・・・俺達はまだ、クロノ・ドライブ中なのだから・・・

 

しかし、いつになく焦燥感を漂わせるエクレアの雰囲気に俺はただちにエンジェル隊を紋章機の中で待機させる事にした。

 

無論、ロキのフェンリルやエクレアのオリジンも待機させてある・・・

 

言わば、これからでも最終決戦を始めることも可能だということだ・・・

 

でも、何だろう・・・

 

とてつもなく、嫌な予感がするんだが・・・

 

もし、エクレアの予感が当たるのなら、“敵はクロノ・スペースの中で仕掛けてこれるということになる・・・”

 

 

「ふっふっふっ・・・そろそろね・・・」

 

過去の楽園から遡ってくる天使達を楽しそうに見つめる堕天使がいる・・・

 

“サマエル”・・・くれぐれも油断するなよ・・・」

 

「は・・・“ミカエル”が殺された途端、偉くなったもんだな・・・」

 

サマエルと呼ばれた光る物体は後方のオメガにそう呼びかけた。

 

「・・・・・・何が言いたい?」

 

「いや・・・四大天使って奴等はそんなにも偉い存在なのかと思ってな・・・」

 

初代天使長ともあろう者が何を今更・・・」

 

「その口の利き方はとても、敬っているとは思えぬなぁ・・・」

 

「・・・・・・ああ。」

 

「お前もミカエルも同じだな・・・自分こそが、頂点の位置にいるのだと思い込む・・・だから、ミカエルは死神に殺されたんだよ。」

 

「・・・言いたい事はそれだけか?」

 

「ああ、確かに・・・言いたい事はそれだけだなぁ・・・」

 

「ならば、早急に出撃するといい・・・連中はクロノ・スペースでの戦闘に慣れていない。仕掛けるのなら今だぞ?」

 

「ふふ・・・私はミカエルほど間抜けではない・・・」

 

サマエルはその姿を一瞬で消してしまった・・・

 

過去の天使達の元へ向かったのだ。

 

「・・・間抜けだからこそ、お前はその地位から堕ちたのだ・・・さて・・・」

 

ガブリエルはその端正な顔を楽しそうに歪める。

 

「死神よ・・・エサは放ったぞ・・・」

 

俺達は現在、ルクシオールを囲むようにクロノ・スペースを進んでいる・・・

 

最初はクロノ・スペースの中でも普通に行動できるかどうかが不安ではあったが、いざ、外に出てみれば普通の宙域と何ら変わりは無かった。

 

「・・・うぅ〜何かこのぐにゃぐにゃした空間を見ていると気分が悪くなりそうです〜・・・」

 

後部座席からミルフィーの早くもギブアップ宣言が飛び出してきた。

 

「はは・・・実は俺も・・・少し、気持ち悪い・・・」

 

・・・タクト達は未だに気付いていない・・・

 

既に毒がばら撒かれている事に・・・

 

既に敵(サマエル)の攻撃は始まっている事に!

 

「・・・・・・」

 

エクレアは既にサマエルが潜んでいる事に気が付いていたが、敢て、それを皆に教えずにいた・・・

 

何故なら、エクレアはサマエルの戦い方とその残虐な性格を知り尽くしていたからだ。

 

サマエル・・・かつて、HEAVENを創世した開発者達の一人で、そのサディスティックな性格はエクレアの時代に知らぬ者はいない程に知れ渡っている・・・

 

そして、その残虐な性格を知っていながらも天使長に選ばれる程の実力を兼ね揃えた強敵だという事もエクレアはよく知っている・・・

 

タチの悪い事にその実力とはサマエルの攻撃能力の高さを指している・・・

 

だからこそ、エクレアは必死に考えている。

 

どうやって、この“死の天使”からタクト達を守れるかを・・・

 

それまで、サマエルを本気にさせてはならない・・・

 

敢て、気付かないフリをしてなければならない。

 

HEAVEN最強の天使と敬われていたミカエルも所詮はサマエルの代わりとしてその位置に置かれていたに過ぎない・・・

 

そういう桁違いに危ない敵なのだ・・・

 

「シリウス・・・いざとなれば、分かっているわね?」

 

「ああ・・・しかし、何でサマエルがガブリエルの小間使いをしているんだ?あいつは命令される事を何よりも嫌っていた筈だろう・・・」

 

「さぁ・・・それよりも、気になるわね・・・」

 

「何がだ?」

 

「どうして、*あの時、カルマはサマエルを生かしておいたのからしら・・・サマエルは言わばカルマを産み出したメンバーの首魁よ・・・」

 

*カルマと共謀したレイが外宇宙に報復攻撃を仕掛けた時のこと

 

「確かに・・・あのキチガイが生かしておく訳がない筈なんだがな・・・」

 

(・・・これも、あなたの仕業なのかしら?)

 

「一向に敵は現れませんね・・・」

 

何か、気のせいかもしれないが、息が段々とし辛くなってるのは気のせいか?

 

「・・・変です・・・酸素濃度の規定値が著しく下がってま・・・こほっ・・・」

 

ヴァニラは最後まで言い切れずに咳き込んだ。

 

「タクトさん!明らかにおかしいです!これは敵の仕業かも知れませんよ!?」

 

(まいったわ・・・さすがに気付くわね・・・)

 

タクト達が敵の存在に気付く事は同時にサマエルが仕掛けてくる事を意味する。

 

「ねぇ・・・本物の毒を味わったことがある?本物の毒はねぇ〜・・・とぉ〜っても、甘い味がするのよ・・・だけどねぇ・・・とっても、とぉ〜っても苦しいのよ?くっくっくっ・・・あっはっはっはっはっは!!」

 

突如、薄気味の悪い男の声が聞こえてきた。

 

「な!?誰だ!」

 

俺は辺りを見渡すがシャイニング・スターのモニターにもスクリーンにも敵の姿は捉えられない・・・

 

「くっくっくっ・・・無駄だ・・・私は既に“形持つ者”の概念より、離脱したのだからなぁ・・・」

 

敵の姿は確認できない・・・

 

しかし、そのおぞましい程の殺意が感じられる・・・

 

「何だ・・・こいつは・・・」

 

おぞましいだけの殺意を発しながらもそこに憎悪は微塵ほども感じられない・・・

 

つまり、この敵は純粋に俺達を殺したいだけということになる・・・

 

「お前は・・・誰だ?」

 

「うふふふ・・・う〜ふっふっふっふっ!それは、私に聞くより、そこにいる因果律の偽者にでも聞いたらどうかしら?」

 

「い、因果律の偽者・・・?」

 

因果律に深く該当する者は一人しかいない・・・

 

「それは、エクレアのことを言ってるのか?」

 

「そうよぉ・・・前大戦を仕組んだ張本人・・・言わば、あなた方にとっても、その小娘は立派な敵よ?なのに、どうして、仲良くしてるのかしらぁ・・・?」

 

薄気味悪い猫なで声は楽しそうにはずんでいる。

 

「・・・・・・」

 

エクレアは何も答えないが、おそらくは堪えている筈だ・・・彼女にとって、それはもっとも、触れられたくない事だっただろうから・・・

 

「こたえろやぁ!小娘ェッ!!」

 

「黙れ!ここにいるのはカズヤとリコの娘の因果律だ!人間違いも大概にしろっ!!!」

 

「えっ・・・?」

 

ひとまちがいとも読めるし、人間ちがいとも読めるなんて、只の偶然か・・・・・・ふ、しゃれている場合じゃねぇよな・・・こいつが、俺の事に気が付いた時は再び死神のメシアに戻らなければならねぇじゃねぇかよ・・・

 

「ちょ、ちょっと、あんた・・・それ本気で言ってるのぉ・・・?」

 

そいつは、心底小馬鹿にした口調で聞いてきた。

 

「本気だと言ったら・・・どうする?」

 

「馬鹿だねぇ・・・」

 

「うるさい!例え、彼女が本当に前大戦の黒幕だとしても、彼女はこうして、俺達を全力で守ろうとしてくれている!それ以外のことなんて知ったことかよ!!」

 

「会話が支離滅裂してるわよ、バァーカ・・・それにそういう連中を自己中心って言うのをご存知?」

 

「いつまでも、小さい事にこだわってる程、器量が小さい訳じゃないんだよ・・・」

 

「ふっふっふっ・・・その言葉を“あの方”が聞いたらどうなるかしらねぇ・・・」

 

「お前の言うあの方とは誰のことだ・・・」

 

「ひっひっひっ!そいつは言えないねぇ・・・喋ってしまったら存在をかき消されてしまうよ・・・それにそのあの方については私より、そこの小娘の方がよく知ってるとおもうけどねぇ?」

 

敵が指しているのはおそらく、エクレアの事だろう・・・

 

「・・・・・・タクト・・・」

 

「ん・・・?」

 

そんな俺の視線に気付いていたのか、エクレアが神妙な顔で俺を見てきた。

 

「今は話せないけど、いつか必ず話す・・・だから、私を信じて・・・お願い・・・」

 

エクレアは珍しく心配そうな顔で俺を覗きこんでいる・・・

 

「そんなに心配しなくても、大丈夫だよ。エクレア・・・それに、約束したろ?君が安心して暮らせる世界を気付いていくって・・・」

 

「ありがとう・・・タクト・・・」

 

「ははは!いつもの事ながら、お優しいことで・・・」

 

あいつの目障りな声が聞こえてくる・・・ん?待てよ・・・

 

「お前・・・俺の事を知っているのか?」

 

「ええ・・・情報は全て私の耳にも入ってたからねぇ・・・」

 

「その情報をお前に流したのは誰だ?」

 

「あっはっはっ!悪いけど、それは言うなと釘を刺されているの・・・だから、その質問に答えることは出来ないわよ。」

 

「なら、力づくで聞き出すまでだ・・・」

 

「おやおやぁ〜随分と乱暴なのねぇ〜♪自己紹介もまだすんでないというのに・・・」

 

「お前の自己紹介なんかいらないよ。」

 

「いえ、待ちなさい・・・相手は先代の天使長よ。甘く見て掛ると返り討ちにあうわよ。」

 

「え?先代の天使長!?・・・じゃあ、ミカエルは?」

 

「ミカエルはこいつの代わりに選ばれたに過ぎないのよ・・・こいつがあまりにも傍若無人過ぎた為に配下の天使達に愛想を尽かされて封印されていたのよ・・・」

 

「タチの悪い奴だな・・・」

 

「あらあら、酷い言われようね・・・私は天使長であり続けただけなのにねぇ〜?」

 

「無差別な殺戮の数々が天使長の職務だとでも言うのかよ?」

 

「ひっひっひっ!そんな、善良な言葉をお前が言う事自体が馬鹿げてるわよ。復讐鬼さん?」

 

「ふん・・・俺は善良な人間に成り下がった覚えはねぇ。」

 

「あっはっはっはっ!でも、私から見ればあんたも人間(寄生虫)と何ら変わらないわよ。」

 

「寄生虫?俺に言わせればそれはお前の方だぜ。御託はいいからさっさっと“仕掛けてこい”。」

 

「シリウス!」

 

エクレアがしまったと思った時は既に遅かった。

 

「上等ねぇ・・・・・・」

 

サマエルの声が一段低くなる。

 

「ふざけたこと抜かしやがると真っ先に手前から木っ端微塵にするぞ、このクソガキャァアア!!」

 

「・・・・・・っ!?」

 

突然の豹変ぶりに天使達はたじろぐ。

 

「は!殺す前に自己紹介だけしておく、俺はサマエル・・・HEAVENの創始者の一人だ!ってのは、創始者ってのは既にそこの小娘がお前達にはなしただろうがなぁ!」

 

「・・・っ?どうして、あなたがそれを知ってるの?」

 

「さぁねぇ・・・ただ、お前達がこれから俺に何も出来ずに木っ端微塵にされる事実だけはかわらねぇよ!」

 

「サマエルとか言ったな・・・」

 

「ああ!?」

 

「俺からもお前に言いたい事が出来た・・・」

 

「言ってみろ・・・」

 

「どうして、HEAVENを創ったんだ?」

 

そのせいで・・・多くの人達が傷つき、命をおとしていったんだ・・・

 

「はぁ!?」

 

サマエルはお前、本気でそんな事を言ってるのかと言わんばかりに素っ頓狂な声を出した。

 

「そんなの、金儲けの為に決まってるだろうが!それが、どうしたって言うんだよ!オラァ!」

 

ふざけるな・・・

 

「そんな!お前達の開発したクローン技術のせいでどれだけの人が傷ついたと思ってるんだ!?」

 

「そんなことまで俺の知った事か!それにクローン技術が無ければ人の生存はありえなかった!人間共が新たなる文化の発展を望んだからこそ、クローン技術は生まれた!エネルギーコスト削減の為に生まれたのがクローン技術だ!言わば、この技術を生み出した責任はお前達にもある!」

 

「詭弁はやめなさい!クローン技術がなくても人は生存できた!貴方達“オリジン”はブラウド財閥の残党・・・」

 

「ブ、ブラウド財閥の残党・・・だって?」

 

「そして、財閥崩壊後に皇国の崩壊を望んでいた者達をかき集め、反乱軍を設立し・・・かつてのブラウド財閥の権威を取り戻し、皇国を打倒する為に、クローン技術の軍事利用を試みたのよ!」

 

「エクレア・・・」

 

おかしい・・・カルマを生み出したのがこいつ等ならば、こいつ等が所属していたブラウド財閥は誰が創設したと言うんだ・・・?

 

「大した名奉行ぶりだな・・・偽りの因果律よ・・・だがなぁ!クローン技術を己が欲望の為に利用したのは人間共だ!こちらはそれを提供したに過ぎない!」

 

「確かに・・・その技術の誘惑に負けたのは私達、人間よ・・・でもね・・・」

 

「は!負けた時点でお前達のたかは知れている!蜜だけ吸って己の責任感はゼロなんだろ!?いいご身分だなぁ!?人間様って奴はよおおおぉぉぉーーーーーーーー!!!!」

 

次の瞬間、クロノ・スペースの中が歪み始めた。

 

「な、何だ・・・何かがくると言うのか!?シャイニング・スター!?」

 

モニターには警告画面が表示されていた。

 

「まずい!サマエルが仕掛けてくる!タクト!フィールドを形成しなさい!」

 

「ああ!やっている!!」

 

「よがり狂えやあああぁぁぁーーーっ!!」

 

サム・タッチ

 

次の瞬間、俺達の体に異変が起こった!

 

「あぐ・・・!」

 

最初に“苦しみ始めた”のはランファだった・・・

 

彼女は胸元を必死に押さえている。

 

「む、胸の中が・・・あばれる・・・!」

 

「くっくっくっ!だろう?毒の陰側はお前達の中に最初から流れている血だ・・・そして、そこにこの陽側の“毒”をその心臓に軽く触れさせるだけでその様さ・・・しかし・・・やはり、桜葉の血には意味を成さないか・・・」

 

「くそ!奴は何処にいるんだ!?」

 

カズヤは猛毒に苦しむ天使達の姿に焦燥感を抱きながらサマエルの姿を捜すが、何処にもサマエルの姿は無い。

 

否、元より、上級天使に実体や姿などは存在しない・・・

 

相手は“姿を持たない死の天使”なのだ。

 

「ぐあぁ・・・ゴフッ!」

 

フォルテの口からは遂に血が零れ始める。

 

「あ〜♪気持ち良さそうだな〜・・・」

 

一方、死の天使はその様子をさも、楽しそうに眺めている・・・

 

(レイ・・・まだなの?)

 

エクレアは救世主を待っていた。

 

ここには、彼の妹がいるのだ。

 

大事な妹の危機をあの死神のメシアが見逃す筈がない・・・

 

あの死神は妹の救世主になろうとして、目の前の外宇宙達に冷酷無比な制裁を加えたのだ。

 

その時のトラウマに悩まされているガブリエルが今回の騒動を画策したのだ。

 

まるで、これらの争いは一人の作者によって紡がれているワルツに見えてしまう・・・

 

否、事実そうなのだろう・・・

 

そして、その作者の代行者たる死神は姿を見せない・・・

 

妹の危機・・・

 

それが、死神を呼び寄せる絶対無二の条件であるにも関わらず、死神はその姿を現さない・・・

 

「これが、あなたの言っていた仕返しなの?」

 

エクレアは作者を憎々しげに睨んだ。

 

 

一方、その頃・・・

 

天使達の故郷であるトランスバールでは未曾有の危機に陥っていた・・・

 

「な、何て・・・数だ・・・」

 

司令室から“敵”の規模の大きさにシヴァは戦意を喪失しかけていた。

 

トランスバール宙域の四方八方は外宇宙の戦艦で埋め尽くされている・・・

 

戦艦は全て重戦闘をそうているかのような重々しい戦艦ばかり・・・

 

おそらくはその中に、白兵戦をしかけてくる天使達が潜んでいるのだろう・・・

 

何という事だろう・・・

 

エクレアの策はおそらく遅すぎたのだろう・・・

 

タクト達がガブリエルをはじめとしたHEAVENに攻めようとしてるのと同じく・・・

 

ガブリエルも同じ様にシヴァをはじめとした皇国軍の本拠地を墜としにきたのだ。

 

双方の違いはリーダーがどちらにいるかだ・・・

 

ガブリエルは己の戦闘では必ず、前線へと姿を現す。

 

それは、その方が犠牲を少なく抑えることができるからである・・・

 

かの死神もその戦法を多用していた。

 

自ら進んで前線に出て行くのは一重に勝利を確信してあるからだ。

 

自分は絶対に撃墜されないと自負しているからである・・・

 

「ふふ・・・死神・・・かつて貴様がしてきた事をお前の娘にたっぷりと味合わせてやる・・・」

 

 

 

 

 

 

 

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