逆襲の堕天使

 

逆襲の堕天使 (前編)

 

「もうすぐよ・・・」

 

紋章機の中で俺達は待機している・・・

 

既にここは外宇宙の本拠地ともいえるHEAVENの領域である・・・更に、エクレアの話ではこの宙域はHEAVENでは最終防衛ラインとなっており、ここを守護する天使達もよりすぐりの精鋭部隊だとの話だ。

 

それは、常に戦闘状態である事を意味する・・・

 

もちろん、俺達は敵が俺達が辿り着いた事に気が付いていないなどと楽観はしていない。

 

連中は俺達の存在に気が付いている・・・

 

ならば、いい加減そろそろ敵の主防衛艦隊をレーダーが感知する筈なのだが・・・

 

「変だな・・・敵の主防衛艦隊がまったく皆無だというのは・・・」

 

俺は辺りを見渡すがそこは一面デブリに覆われていた。

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「どうしたの?リコ。」

 

「ここってこんなに寒いのかな・・・」

 

「え・・・」

 

「私、寒い・・・背筋が凍るみたいに・・・」

 

アプリコットは腕を組んでガタガタを震え出す。

 

「リ、リコ!大丈夫!?」

 

「パ・・・大丈夫よ、父さん、母さん・・・寒気を感じてるのはあなただけじゃないわ・・・私やシリウスも同じよ・・・」

 

「ああ・・・どこの誰かは知らないがもの凄い殺気を漂わせていやがる・・・それもまともな生き物とは思えないほどのな・・・」

 

狂犬と呼ばれたシリウスの頬に汗が流れ落ちた。

 

 

おっと・・・少し干渉しすぎたな・・・だが、この程度で怖気づいているようでは・・・俺の獲物に相応しくない・・・

 

 

「でも、今更怖気づいてなんていられないわ・・・それに、もうすぐ正面にHEAVENの本星が見えてくる筈よ。連中は星そのものにステルスをかけてる・・・算出したところ、もうここから星が見渡せる筈・・・」

 

「星そのものにステルス機能を・・・凄いな・・・未来のテクノロジーは・・・」

 

「・・・確かにそうかもね・・・でも、このステルス機能の開発者はレイよ・・・」

 

「お、お兄ちゃんが・・・?」

 

「ええ、彼はアルフェシオンに備わっていた技術の一つをEDENとNEUEの防衛の為にと公開したの・・・」

 

「ところが、当然、それを悪用しようとした連中がいたのさ・・・」

 

「それが、ブラウド財閥の残党達か・・・」

 

(そうよ・・・約二百年前・・・その残党軍を率いて反旗を翻したのが、サマエル・・・ブラウドの血縁者・・・そして・・・)

 

「よくぞ、ここまで参った・・・」

 

「・・・っ!?」

 

いつの間にそこにいたのだろうか・・・

 

そこには、ガブリエルのオメガが単機で待ち構えていた。

 

「ようこそ・・・HEAVENへ・・・我が先祖達・・・そして、我等に反旗を翻すレジスタンスの二人・・・いや、人間の生き残りと言ったところか?」

 

「ええ・・・アキトを返しにもらいに来たわ・・・」

 

「お、おい・・・レジスタンスって何だ!?それに!アキトって言えば・・・」

 

アキト・桜葉・・・カルマの本名であり、エクレア・桜葉のクローンであった忘れたくても忘れられないあのキチガイだ。

 

「タクト・・・アキトは私の弟よ・・・あの子はとても優しい子よ・・・あなた達には信じられないかもしれないけど、あの子も私と同じように操られていただけよ・・・目の前の連中が幽閉してね・・・」

 

「な、なんでそんな大事な事を黙っていたんだ!?」

 

「正直に打ち明けたら貴方達はここまで来てくれたかしら?アキト・・・カルマはあなた達にとって忘れたくても忘れられない怨敵・・・それでも、あなた達は力を貸してくれた?」

 

「そ、それは・・・」

 

「先に言っておくわ・・・私は目的の為になら手段は選ばない・・・それが、私がこの世に生まれて学んだ事よ。」

 

「それは・・・何か違うと思う・・・」

 

カズヤはほぼ、条件反射で答えた。

 

「それじゃあ、君はあの人と同じだ・・・その末路は決していいものなんかじゃなかった・・・」

 

カズヤの脳裏に浮かぶのは黒き死神の姿

 

「確かに私が傲慢で欺瞞に満ちた人間であることは認めるわ・・・でも、コレだけは信じて・・・私達は・・」

 

「こんな風にずる賢くなければ生きていけなかったんだよ・・・」

 

エクレアに代わり代弁したのはもう一人の未来からの使者・・・シリウス・・・

 

「みんな・・・今回だけでいい、私に・・・私に力を貸して・・・お願い・・・」

 

「エクレアちゃん・・・」

 

アプリコットは未来の娘の目がとても不安そうなものに映った・・・

 

「父さん・・・母さん・・・おねがい・・・アキトを助けて!」

 

「・・・ッ!」

 

突然のエクレアの大きな声に全員が驚いた。

 

「でも・・・あいつは・・・」

 

カズヤの脳裏には今でもセルダールでの大惨事がこびりついていてそれが大きなトラウマになっていたのだ。

 

いかに、未来の娘が必死に懇願してきたとしてもカルマを許す事など出来る筈がなかったのだ。

 

「・・・とうさん・・・おねがい・・・アキトを・・・アキトを助けて・・・」

 

「・・・・・・」

 

「どうして・・・あの子は・・・あの子だって・・・私達の家族なんだよ・・・」

 

俺はエクレアという娘を誤解していた。

 

彼女は普段、大人っぽく振舞っているが、その中身は限りなくミルフィーやリコに似ている・・・

 

やはり、桜葉家の娘達は・・・天使なのだろうか?

 

お前は、本当にそう思ってるのか?

 

「・・・っ!?」

 

え・・・今、何か聞こえたような・・・

 

「カズヤさん・・・私・・・アキトを救いだします。」

 

「リコ・・・」

 

「母さん・・・」

 

「・・・・・・」

 

「私・・・私はこの娘を信じます・・・例え、この娘がまだ何かを隠していたとしても、この娘は・・・エクレアは私とカズヤさんの子供なんですから・・・」

 

リコは優しい視線をエクレアに向けている。

 

その目は何の疑いもなく、とても暖かった・・・

 

だからだろうか・・・僕も・・・

 

「そうだよな・・・未来から僕達を助けにきてくれた娘の言う事を信じられないようじゃ父親失格だよな・・・」

 

「カズヤさん。」

 

リコの目がそれは了承という意味ですかと聞いてくる。

 

「ああ・・・助けなくっちゃあダメだよな・・・自分の子供は・・・」

 

やや、複雑な心境だけど・・・助けないまま疑心暗鬼に陥り、後悔するよりかは遥かにマシだろう。

 

「タクトさん・・・みんな・・・この非常事態に言えた事じゃないかもしれないですけど、僕達をアキトの救出にいかせてもらえませんか?」

 

「カズヤ・・・俺がここでダメだと言っても聞くつもりはないんだろう?」

 

タクトはやや意地悪な質問をした。

 

「・・・・・・はい。」

 

「はは、そう言うと思ったよ。俺もアキトを救うことに賛成するよ。」

 

「ありがとう、タクト・・・」

 

「いや・・・自分の子供を助けないなんて言ったら叱咤するところだったさ・・・みんな・・・そういう事で良いかな?」

 

タクトは天使達に了承を問いた。

 

「あたしは構わないよ。子供の言う事を素直に信じないなんていうのはあまりにも恰好悪いしねぇ・・・」

 

「・・・確かにカルマのした事は絶対に許されぬ事だが・・・」

 

リリィの中の心の葛藤はまだ、完全に晴れた訳ではない・・・

 

「何の罪も無い子供が誘拐されたとなれば私のする事は決まっている・・・」

 

「ケッ・・・!」

 

シリウスはバツが悪そうにそっぽを向いた。

 

「ふ・・・助けるのは構わんがアキトが今、どこにいるのか分かっているのか?」

 

「・・・アキトは大事な“カルマの器”の筈・・・カルマを絶対神と崇める貴方達がそう易々と返してくれるなんて思っていないわ・・・」

 

「カルマの器・・・?」

 

「ええ、カルマがこの世に降臨する際には必ず“形ある者=器”を介さなければならない・・・しかし、その器は何でも良い訳ではないわ・・・そこには適性というものが存在するの・・・」

 

「適性・・・」

 

ランファはその整った顎に手を当てて呟いた。

 

「適性値が高ければ高い程、カルマはその力を発揮する事ができる・・・そして、低い者が器になった場合は器の自我が漏れ出し、カルマも力を十分に発揮する事はできないの・・・」

 

「言われて見れば・・・」

 

シリウスにカルマがとり憑いた時は、シリウスの自我も同時に現れていたが、カズヤにとり憑いた時はカズヤの自我は全く現れなかったな・・・

 

「元々、カルマへの適性値が高かったアキトは連中(HEAVEN)にとって最重要人物だった訳・・・」

 

「その通り・・・アキト・桜葉なくして、HEAVENの繁栄はありえなかった・・・降臨した我等が神カルマは過去の世界へ赴き愚かな先祖に“神罰”を下していく・・・それは、HEAVENの民の心を信仰心という絆で結びつけ、一致団結してHEAVENを守っていくという流れを象っていった・・・」

 

「神罰だと・・・もう一度、言ってみろ・・・」

 

何だろう・・・言い様の無い怒りがこみ上げてくる。

 

「何度でも言おう・・・カルマがしてきた行いは全てはお前達への神罰だ・・・本能に流され、果てる事の無い戦いを続けてきた貴様達への神罰だと言ったのだ!」

 

「詭弁はやめなさい!戦いは既に終わっていた!静まった争いを故意に起こしたのはあなた達、ブラウド財閥の残党よ!」

 

「いつになく感傷的だな、エクレア・桜葉・・・仲間が出来た途端に強気になったな・・・ブラウド財閥の残党と言うが、それは我が先祖の話・・・それに先祖達は新世界を“開拓”したのだ・・・完成された世界をな・・・」

 

「ふざけんな!手当たり次第に殺し尽くした事のどこが、開拓したという気だ!?」

 

「開拓とは“古い世界を破壊して新しい世界を創る事”だ・・・そもそも“天使とは主と相容れぬ者を問答無用で始末するモノ”では無いのか?」

 

モノ・・・者・・・物・・・神の物・・・

 

「成る程・・・そんなお前達が神罰という大儀をかざして、カルマをけしかけてきたという訳か・・・」

 

「さすが、タクト“殿”だな・・・理解が早くて助かる・・・」

 

「ああ・・・お前の言ってる事がHEAVENの総意を受け取って良いんだな?」

 

「そうだ。」

 

「安心したよ・・・なら、俺もお前をここで倒す事に何のためらいも感じないよ・・・」

 

シャイニング・スターの右手にエクスカリバーが召喚される。

 

「ふ、ふふ・・・総意も何も・・・HEAVENの民はもはやごく僅かだというのにな・・・」

 

「・・・っ!?どういう意味・・・」

 

「そのままの意味だよ。エクレア・・・既に生贄の数は揃っている・・・この勝負にお前達が敗北しようが勝利しようが未来は変わらぬ・・・」

 

変わらぬ未来・・・この状況でその言葉は“全ての終わり”を意味する。

 

「・・・やはり、こうなっちゃったか・・・」

 

「ちっ・・・むなくそ悪い奴だぜ・・・!」

 

「ど、どういう意味なんだ?」

 

「タクト・・・状況は最悪のものになったわ・・・」

 

メタトロンが起動したわ

 

「な、なんだって!?」

 

最強の天使・・・メタトロン

 

HEAVENが対死神用に用意しておいた最終兵器・・・

 

文字通りの最終兵器で、メタトロンは敵味方の区別をせずにただ、形ある者を消滅させるのみ・・・

 

故の最終兵器・・・

 

「この戦い・・・敗北しても勝利しても先に待つ運命は変わらない・・・さぁ・・・どうする?」

 

「なめるな!お前を倒して、そのメタトロンとかいう化け物を退治しするまでだ!みんな!ガブリエルを撃破してアキトを救出・・・そして、メタトロンを撃破して平和を取り戻すぞ!」

 

『了解!』

 

「平和か・・・」

 

ガブリエルのオメガの左腕に粒子状のサーベルが握られる・・・

 

その剣の名前はデス・ブリンガー・・・

 

ガブリエルには二つの顔がある・・・

 

一つは生命を尊重する顔・・・

 

「お前達の言う平和とは何だ・・・?」

 

「お前のような輩がいない世界のことだ!」

 

タクトのシャイニング・スターが先陣をきってガブリエルに斬りかかった!

 

「言ってくれる・・・!」

 

シャイニング・スターの初撃を受け止め、ガブリエルはオメガの右レッグに発生させたデス・ブリンガーで反撃にでる!

 

「神罰だ!タクト!!」

 

そして、もう一つの顔は節制を遵守させる統制者・・・

 

「チッ!」

 

タクトはそれを同じ右レッグに発生させてクラウ・ソラスで受け止めた!

 

「みんな!タクトを援護するよ!」

 

フォルテの号令のもと、他の天使達もオメガに照準を絞り、攻撃を開始した。

 

「シャイニング・スターにあたるなよ・・・」

 

カズヤは30機のフライヤーにイメージをトレースさせる・・・

 

カズヤの思い描いたパターンはシャイニング・スターの背後からの連射攻撃・・・

 

「・・・・・・なめるな。」

 

それを感知したガブリエルは何と一度に60機あまりのフライヤーに司令を出した。

 

カズヤのフライヤーに46機・・・他の天使達に残りの14機のフライヤーが襲い掛かる!

 

「・・・こいつ!?」

 

カズヤは急いでフライヤーへの伝令を変える!

 

ガブリエルのフライヤーを標的にし、その熱源を感知し、回避に専念しろと・・・

 

「ちっ!」

 

アニスは襲い掛かってきた三機のフライヤーをひきつけながら逆方向へ速度全開で突っ走った!

 

やがて、追尾してきたフライヤーが一直線上に並んだ。

 

「そこだ!エクストリームランサー!!」

 

レリックレイダーの後方を追尾していたイーグルゲイザーはそのフライヤー目掛けて渾身の必殺技を放った!

 

爆散の音も立てぬまま、三機のフライヤーは消滅した。

 

「でやぁっ!!」

 

タクトは大きくムーンサルトを描きながら両足のクラウ・ソラスで逆噴射斬りを放つ!

 

「ふっ・・・!」

 

それに対し、ガブリエルは目にも止まぬスウェーで豪快に回避してシャイニング・スターと距離をとり・・・

 

「もらった!」

 

オメガの両アームから10本の粒子状のワイヤーが飛び出す!

 

その名前はデス・スパイダー・・・

 

「・・・なっ!?」

 

こ、これは・・・

 

“あいつ”のものより、若干、速度はなくワイヤーも太い・・・だが、間違いない・・・これは!

 

「こ、こいつは・・・」

 

俺は絶妙なタイミングで襲いかかってくる死の糸を切り払いながら回避していく・・・

 

「さすがに上手いな・・・しかし、隙だらけだ!」

 

ガブリエルは回避に専念するシャイニング・スターへ斬りかかった!

 

「もう一度言うぜ・・・誰か忘れちゃいねぇかぁ!!」

 

そこで、ガブリエルに斬りか掛ったのはシリウスとエクレアのオリジン!

 

「シリウス!?」

 

オメガは左から忍び寄ってきたオリジンの剣を受け流して距離をとる!

 

「ちっ!相変わらず素早っこいヤツだぜ!」

 

シリウスは舌打ちをすると同時にオリジンの左腕に粒子状の爪を発生させた。

 

「デスクロー!?」

 

ガブリエルは2対1での接近戦は危険と察知し、どんどん距離をとっていく・・・

 

「逃がすか!」

 

アルフェシオンと限りなく似た機体である為、遠距離戦になればこちらが不利と俺は直感的に思った。

 

シャイニング・スターとオメガの速度はほぼ互角・・・

 

「〜〜〜〜〜」

 

その間にガブリエルは“神魔法”の詠唱に入った。

 

神魔法・・・神でもあり、魔でもある超常現象を引き起こす禁断の呪術・・・かのシャイニング・サンやオメガ・ブレイクなどもこの神魔法に分類される。

 

「まずい・・・!」

 

それに対し、エクレアも同じく神魔法の詠唱に入る・・・

 

「天に歯向かう逆賊に神罰を下さん!」

 

オメガがまばゆく・・・そして、神々しく輝き出す!

 

「な、何だ!?魔法なのか!?」

 

俺は、シャイニング・スターにINフィールドを張れと命じた。

 

「全員、手で目を覆いなさい!でないいと失明するわよ!!」

 

エクレアの焦った声に全員が言う通りにした。

 

その直後・・・!

 

オメガ・ヘブン

 

ガブリエルの神魔法が発動した!

 

「・・・っ!?」

 

それは、一面の視界を真っ白にへと変えた・・・

 

見た者を昇天へ誘う神の炎・・・

 

「ガブリエル!」

 

対して、エクレアも己が神魔法を発動させる!

 

ダーク・ムーン

 

今度は真っ黒な星が誕生し、その黒き星はあたり一面に発生した大閃光を見る見る吸収していく・・・

 

「エクレア・・・!?」

 

「な、何が起こってるんだ!?」

 

「うわわわ!」

 

シャイニング・スターだけでなく、他の機体も揺すぶられる!

 

やがて、両者の魔法が相殺しあい消滅した後でエクレアが口を開いた。

 

「驚いたわ・・・落ちこぼれだった貴方が神魔法を扱うなんてね・・・」

 

「落ちこぼれ・・・だと・・・」

 

落ちこぼれ・・・その言葉にガブリエルは反応した。

 

「ええ、落ちこぼれと言ったのよ。」

 

「・・・・・・」

 

「気に障った?思えば昔からあなたはそうだったわね。」

 

「・・・ダマレ・・・」

 

ガブリエルの目が殺気を帯びる。

 

「弱い癖にプライドが高くて・・・それでいて、いつもミカエルを越えようとして・・」

 

「ダマレエエエェェェーーーー!!!」

 

次の瞬間、オメガは三体へと分身した!

 

「ふふふ・・・私は天使長だ・・・お前如きレジスタンスなどに負ける筈がない・・・!」

 

三体にガブリエルは興奮したまま、高威力の神魔法の詠唱にかかった。

 

「マズイわね・・・タクト!シリウス!ガブリエルに魔法を撃たせないで!」

 

「ああ!」

 

「分かってる!」

 

シャイニング・スターとオメガはお互いに別々のオメガに斬りかかる!

 

「僕達は残りの一体を!」

 

「はい!」

 

「おう!」

 

「了解よ!シラナミ!」

 

「了解なのだ!」

 

「OKだ!」

 

 

カズヤは、他の天使を率いて、最後の一体にへと攻撃を開始した!

 

「くだけちれぇぇぇ!!」

 

シャイニング・スター目掛けてガブリエルは神魔法ヘル・バイスを放った!

 

「ちっ!?この感じは!!」

 

俺は、シャイニング・スターのフィールドを最大にして対抗する!

 

「まったく・・・どうして、不用意に挑発するんだよ!お前は!」

 

「えへへ・・・ゴメン・・・お兄ちゃん・・・」

 

「コ、コラ・・・ここでは名前で呼べ!」

 

「うん、分かったわ・・・シリウス、ガブリエルを倒すわよ!」

 

「・・・ったく!」

 

シリウスはデスクローを構えてガブリエルに仕掛けた!

 

「いけっ!」

 

僕はフライヤーに総攻撃を命じる。

 

「ちぃ・・・カズヤめ・・・このフライヤー・・・あの死神と良い勝負だ!」

 

あの人のフライヤーが僕にはトラウマになっていた・・・でも、だからこそ・・・フライヤーに対しては敏感になっている・・・!

 

「見えた!」

 

コイツは・・・あの人ほど怖く無い!!

 

「くっ!うっ!?」

 

ガブリエルとのフライヤーの二回目の打ち合いの結果はオメガに十二発の被弾で幕を閉じた・・・

 

「でえぇい!」

 

タクトはヘル・バイスを絶え凌ぐと同時にガブリエルに斬りかかった!

 

「くっ!?」

 

それに対してガブリエルはデス・スパイターでシャイニング・スターを捕らえようとするが・・・

 

「遅い!」

 

タクトは粒子状のワイヤーを切り払い、一気にガブリエルとの距離を詰めた!

 

「ガブリエルッ!」

 

「チッ!?」

 

ガブリエルは距離をとるのを諦めてタクトとの斬り合いに応じた!

 

「うおおおぉぉぉーーーっ!!」

 

タクトはシャイニング・スターを狂戦士のように暴れさせて一気にガブリエルにたたみかけた!

 

「くっ!」

 

シャイニング・スターの接近戦能力はあの死神にも勝らずとも劣らない・・・

 

このシャイニング・スターのクロス・コンバットに対抗できるのはおそらくはあの死神のアルフェシオンぐらいだろう・・・

 

「そこっ!」

 

シャイニング・スターのクラウ・ソラスがオメガの右足を切断した。

 

「まだだ!」

 

しかし、オメガの右足は瞬時に再生を始める。

 

「やはり、ナノマシン装甲だったのか・・・!」

 

そして、タクトも諦めずにラッシュを止めない。

 

タクトは分かっているのだ・・・

 

このガブリエルの魔法は侮れないと・・・

 

強敵達との戦いで研ぎ澄まされた直感がタクトに警告を発しているのだ。

 

ガブリエルは一撃必殺の切り札を持っていると・・・

 

「おおぉぉぉーーー!!」

 

「・・・なめるなよ!」

 

「・・・っ!?」

 

ガブリエルから発せられてくる威圧感・・・しかし、それすらもあの死神と見比べると色褪せて見える・・・

 

確信した・・・こいつはあの死神よりも強くないと・・・

 

ならば・・・このまま攻めるだけだ!

 

「いっけぇぇぇーーーっ!」

 

シャイニング・スターの背中に翼が現れて、白銀色のオーラを纏い、その神風のような機動性を増々増加させ、オメガは防戦一方を余儀なくさせる・・・

 

こうなったシャイニング・スターを止められる者などいる訳がない・・・

 

「く・・・こうなれば!」

 

ガブリエルは防戦の最中にあの死神を退けた隠し兵器を使用した!

 

オメガの背中に黄金の翼が現れ、そこから、新型のアンチ・ナノマシン・ウィルスを散布した!

 

「ん?」

 

そのウィルスは無色透明・・・故に・・・

 

「翼を出したぐらいで!」

 

「な、何だと!?」

 

驚愕したのは使用したガブリエルの方だった・・・

 

「何をそんなに驚いているんだ!」

 

「ど、どういう事だ・・・まさか!エクレアか!?」

 

「そうよ・・・オリジンの装甲に混入されているオリハルコンβを全紋章機に加えておいたのよ・・・」

 

「き、貴様・・・」

 

「この事はあなたの協力者・・・いえ、あなたの主も知らないでしょうね・・・このオリハルコンβは施工自体はコーキングのようなもので後は、浸透性が非常に高いから放置しておくだけでオリハルコン・・・いえ、それを模っているナノマシン自体を強化するの・・・そのウィルスが持っている“結合分解”パターンにも属さない結合ゆえに、ナノマシン達は生き続ける・・・」

 

「く・・・こんな・・・」

 

「・・・先の言葉の一部を訂正するわ・・・あなたの主はこの事に気付いてる筈・・・何故なら、あなたの主はこの物語の作者だからね・・・でも、知っていて教えなかったのは・・・」

 

「・・・知っている・・・神は私に死ねと言っている。“だからこそ、メタトロンの起動を促した”・・・だが、“目的は同じ・・・それ故に、アルフェシオンの基本設計図を我等に与え”、今日まで言われるがままに戦い続けてきたのだ・・・分かるか!?」

 

「ええ・・・やはり、そういう事だったのね。」

 

「・・・?・・・っ!?」

 

ガブリエルは自分がエクレアにまんまと乗せられていたことに気が付いた。

 

「ありがとう・・・貴重な証言ね・・・録音しておいたから、そのメタトロンを蹴散らした後でタクト達に聞かせておくわ・・・」

 

「き、貴様・・・キサマ・・・」

 

怒りのあまり、ガブリエルの目に狂気の炎がほとばしる・・・

 

「外宇宙をけしかけていたスパイ・・・いえ、パイプ役が誰であったかもはっきりしたわ。」

 

「お、おい!不用意に挑発すんな!」

 

「それは、お兄ちゃんだって同じじゃない。」

 

「もういい・・・」

 

「オマエラ・・・ゼンイン・・・ケシテヤル・・・」

 

突如、三体のオメガは禍々しい紫色のオーラを発して、周囲に突発的な衝撃波を巻き起こした。

 

「うわっ!?」

 

「ちっ!」

 

その衝撃波はガブリエルを囲んでいたタクト達を弾き飛ばした。

 

「貴様達などメタトロンの手を借りるまでもない・・・この場でこの私が直々に引導を渡してやる・・・」

 

三体のオメガの周りにどす黒い波動が集まり始める・・・

 

おいおい・・・勝手なことすんなよ・・・

 

その波動は接近者からガブリエルを守るように集束していき、フィールドを形成していく・・・

 

「・・・まさかっ!?」

 

それが何かである事にエクレアは気が付いた。

 

「ふふ・・・どうやら気が付いたようだな・・・」

 

ガブリエルは口元を楽しそうに歪める。

 

「エ、エクレア・・・ガブリエルは何をしようとしているんだ!?」

 

「まずいわ・・・ガブリエルはカルマが使っていた必殺技を放つつもりよ・・・その威力はあなたならよく知ってる筈よ・・・」

 

「・・・あ、あれを!?」

 

前大戦時、カルマが使用してきた必殺技は宇宙の起源と終焉を体現した反則的な破壊魔法だ・・・

 

「間違いないわ・・・ガブリエルの周囲の波動が著しく変調している・・・これは、混沌からエネルギーを組み上げている証拠よ・・・」

 

「く・・・俺のフィールドで!」

 

(紋章機達・・・天使達を守ってあげて・・・)

 

エクレアはシャイニング・スターを除く全紋章機達にマスターコードを使いアクセスし、フィールド形成を命じる・・・

 

「デザイア、フェイト・・・そして、ウィルド・・・運命の三女神などいらぬ・・・ここで・・・完全消滅するがいい・・・!」

 

おいおい・・・勝手な真似すんなよ・・・

 

ガブリエルが発動させようとしたのはオメガ・ノヴァ・・・

 

またの名をラグナロク・・・

 

「ガブリエル・・・!」

 

エクレアが悔しげにその名前を呼んだ・・・

 

誰もが、迫り来る圧倒的な攻撃に身を縮めたその時だった・・・

 

DELETE

 

俺は、台本からはみ出た“バグ”を消去した。

 

「な、なんだ・・・と・・・」

 

呆然とするガブリエル・・・

 

それはそうだろう・・・

 

ラグナロクを発動させようと思った筈のガブリエルだったが、それは何も引き起こさなかった・・・

 

DELETE・・・それは、最終手段・・・

 

「・・・今のは一体・・・」

 

俺は、一体に戻ったガブリエルを前に動けなかった・・・

 

「お、おのれ・・・ここまで追い詰めるとは・・・」

 

ガブリエルの眼は誰も映していない・・・誰にも向けていない・・・しかし、彼女ははっきりと見ている・・・

 

ラグナロクをかき消したこの俺をな・・・

 

もう良いだろう・・・

 

いつまでも、お前とじゃれている時間など設けてはいない・・・

 

さぁ・・・出番だぜ。

 

・・・・・・

 

ガブリエルの魔法が失敗してから数分の時が立った・・・しかし、天使達は動かなかった・・・

 

タクト・・・俺を感じるか?

 

この感じ!?

 

「この感じ・・・まさか!?」

 

そして、次の瞬間、幾筋ものレーザーがオメガに直撃した。

 

「うわぁぁーーー!」

 

突然のフライヤーの奇襲攻撃にガブリエルはフィールドを形成するだけで手一杯だった。

 

「あの容赦の無いフライヤーの使い方は・・・間違いない・・・」

 

あの人だ・・・

 

やがて、オメガの全箇所に被弾し終えたぐらいのところで悪夢のようなフライヤー攻撃は止んだ・・・

 

「帰ってきたのね・・・」

 

エクレアの目には漆黒の紋章機がはっきりと映っている。

 

GRA-000 通称 アルフェシオン

 

光を吸収する漆黒のボディに覆われた最強の紋章機・・・

 

「お、お兄ちゃん・・・」

 

レイ・桜葉・・・異名 死神のメシア

 

今や、その実力を知らぬ者はいないとまで言われている最強のパイロットである。

 

「レイ・・・」

 

そして、タクトとレイは過去の宿敵同士である。

 

「お兄ちゃん!?」

 

ミルフィーユはアルフェシオンとのリンクを試みた。

 

そこに映ったのはミルフィーユですら知らない兄の姿だった・・・

 

「・・・・・・」

 

その整った顔立ちは変わらないが、ただ一つ・・・違う箇所があった・・・

 

「お兄ちゃん・・・髪が・・・」

 

そう・・・レイの髪はバッサリと短くなっていた・・・

 

ミルフィーユとそっくりとまで言われていた髪の毛をレイは敢て、今になって切ったのだ。

 

昔から兄が散髪に行かないことを知っていたミルフィーユは言い様の無い不安に駆られていた・・・

 

(おかしい・・・てっきり、改造してくるのかと思えば、以前と何も変わらないわね・・・どういうつもりなの・・・レイ・・・)

 

「これが、本当の神罰だ・・・」

 

そして・・・これで、残った敵の数は三つとなった・・・

 

 

 

 

 

 

 

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