・逆襲の堕天使

 

〜傷痕〜

 

最強の敵 レイ・桜葉・・・

 

俺達は先日、そのレイと交戦に入り、辛くも命は取り留めた・・・

 

レイ・桜葉の戦闘能力を考えれば、死人が一人も出なかったのは本当に幸運と言える事かもしれない・・・

 

いや・・・死人が出なくても、不幸な事は必ず存在する・・・

 

「特にフォルテは重症だ・・・紋章機も含めてな・・・」

 

レイとの戦闘でエンジェル隊は紋章機と同様に重症の傷を受け、アバジェスの治療により、一命をとりとめた・・・

 

しかし、フォルテだけは他のメンバーと同じ様にとはいかなかった・・・

 

ヘル・バイスにより圧縮されたフォルテは紋章機と一緒に間違いなく死亡していた・・・

 

肉体が存在していたのが、幸いしたようでアバジェスの蘇生魔法により、フォルテは一命をとり止めたのだが、未だに意識を失ったままだ・・・

 

いや・・・アバジェスの言う事によると、現在フォルテの魂はあの世に行ったままなのだと言う・・・

 

魂が行き着く所・・・

 

その名は黄泉比良坂・・・

 

タクト・・・俺はそこで待ってるぜ・・・

 

そして、お前を必ず殺してやる・・・

 

だから、簡単にくたばるなよ・・・

 

 

舞台はルクシオール内のミの個室へと移る・・・

 

部屋の中にはミルフィーユが一人だけ・・・

 

彼女はベッドの上で膝を抱え、ただ俯いたまま時の流れに身を任せていた・・・

 

“自害しろ”

 

「・・・っ!」

 

脳裏に蘇る兄の言葉に彼女はビクと背筋を震わせた。

 

彼女はその桜色の髪から花のカチューシャを取り外してそれをじっと見る・・・

 

分からない・・・

 

このカチューシャはかつて私の誕生日にお兄ちゃんがプレゼントしてくれたものだ。

 

後で、お母さんに聞いて分かったことなんだけど、お兄ちゃんは私を泣かせてしまったのを悔やんだ結果、これを造ってくれたんだそうだ・・・

 

子供の時の事はよく覚えてないんだけど、このカチューシャの事だけはよく覚えている。

 

お兄ちゃんは冷たい人じゃない、私を泣かせてしまった事をちゃんと気にかけてくれていた・・・

 

それ以来、私はお兄ちゃんからどんな仕打ちを受けてもお兄ちゃんを憎むことは無かった。

 

だって、お兄ちゃんの本当の気持ちが分かっていたつもりでいたのだから・・・

 

でも、今のお兄ちゃんの本当の気持ちが分からない・・・

 

“気味が悪いんだよ・・・お前を見てると自分をみているようでな・・・”

 

どうして?私は、お兄ちゃんに似ているのが嬉しかったのに・・・

 

“元より俺のターゲットは馬鹿女、お前だった・・・”

 

なら、どうして今まで助けてくれたの?叔父さんが命令してくれたから?

 

お前がこの世から消えてなくなれば・・・俺は・・・

 

私は生まれてきちゃいけなかったの?

 

私が・・・私がこの世から消えればお兄ちゃんは元のお兄ちゃんに戻ってくれるの?

 

「分からない・・・分からないよ・・・お兄ちゃん・・・ひっく・・・」

 

彼女は膝を抱えたままうずくまり、ただひたすらさめざめと泣き続けた・・・

 

舞台は格納庫へと移る・・・

 

「・・・・・・」

 

「ひでぇ有様だな・・・」

 

アニス・アジートは格納庫のデッキの上から大破した紋章機達を見やってそう呟いた・・・

 

紋章機達は見るも無残な被弾の傷痕と残している・・・

 

「ファースト・エイダー・・・ゴメンなのだ・・・」

 

ナノナノ・プディングの目に映るのは慌しく動いている整備班達の姿と、所々のパーツを交換されている自分の紋章機だった・・・

 

「手も足も出なかった・・・」

 

テキーラ・マジョラムは悔しげに唇を噛む・・・

 

「ご主人様はよく頑張ったですに・・・あいつが強すぎたんですに・・・」

 

ミモレットが本心から励ましてくれようとしているのはよく分かる・・・

 

しかし、そのミモレットの言葉は今の天使達には苦痛でしかなかった。

 

「フォルテさん・・・っ!」

 

蘭花・フランンボワーズの繰り出した右ストレートは虚しく空を切った・・・それは、そこにはいないレイに向けて放ったものだった。

 

「蘭花さん落ち着いて下さい。フォルテさんは一命をとりとめたのですから・・・」

 

そう言いつつもミント・ブラマンシュもレイに負けた事に対する悔しさを隠し切れないでいた。

 

「私の射た矢は全て見切られていました・・・」

 

「見切られていた・・・」

 

烏丸ちとせの呟いた一言にリリィ・シャーベットがまるで、自分の事を重ねるように呟く・・・

 

「しかし、それは私達全員も同じ事です・・・あの男は最初から最後まで自分のペースを保っていましたからね・・・」

 

戦士の技量は相手をどれだけ自分のペースに引き込めるかどうかで決まる・・・

 

「悔しいけど・・・勝ち目が見えないわね・・・」

 

「それは、お前達次第だ・・・」

 

蘭花が憎々しげに吐き捨てたその時、エンジェル達の前にアバジェスが姿を現した。

 

「アバジェス・・・」

 

全員がその名前を呼んだ・・・

 

アバジェス・・・神界の時代では黄金の騎士と呼ばれ多くの伝説を生み出した神王・・・

 

レイ・桜葉の師であり、その技量は本人に勝るとも劣らないという程である・・・

 

「確かにレイは強い・・・しかし、お前達とそんなに実力に差があるのかどうかは誰にも分からん・・・それは、お前達の行動次第なのだからな・・・」

 

努力次第とは言わず行動次第と言うところが神界の英雄と呼ばれた男らしい言葉である・・・

 

「私達の行動次第・・・」

 

「お前達はレイに勝ちたいか?」

 

「あ、当たり前じゃない!」

 

「なら、一つだけ教えておこう・・・集団で単体の相手に挑むのであれば連携そして、フォーメーションを組むのは基本中の基本だ・・・」

 

「連携とフォーメーション・・・・・・っ!?」

 

メンバー達は忘れていたものを思い出した。

 

「そう、連携とフォーメーション・・・レイを倒すと言うのであればそれは避けては通れぬ課題だ。」

 

アバジェスはエンジェル達に視線を向けて続ける。

 

「連携とは協力し合い一つの行動を必ず成し遂げようよすること・・・そして、フォーメーションはその勝率を上げようとする為の策・・・」

 

そして、アバジェスは修理されている紋章機へ目線を移す・・・

 

「訓練はフォルテの意識が回復してからだな・・・」

 

アバジェスはそう言って、エンジェル達の前から立ち去っていった・・・

 

そして、舞台はフォルテへと移る・・・

 

迷い込んだ子羊

 

一体、ここはどこなんだい・・・

 

あたしは気が付いたらここにいた。

 

辺りは草原しかない田舎・・・

 

そして、時刻は夜・・・

 

しかし、それは星空の無い夜・・・

 

“立ち去れ・・・ここはお前の来る所ではない・・・”

 

あたしゃあ、自分が何者で今まで何をしていたのかも思い出せない・・・

 

“ここは、死者の国である”

 

だから、ただひたすら遠くに見える山を目指す・・・

 

“魂は此処に還り、魂はここより巣立つ・・・”

 

山へはアスファルトで整備された一本の道がただひたすら続いている・・・

 

“それは黄泉路・・・自分が死んでると自覚できない哀れな者が気付かずに歩き続ける道・・・”

 

あの山の丘に行けば何かがある・・・

 

“そこは黄泉比良坂・・・死者が自分の死に気付き、迷う事無く身を投げ入れる無へ繋がる穴だ。”

 

そして、そこには誰かがいると思ったから・・・

 

“そこにいるのは神でもあり、悪魔でもある鬼がいる・・・だから、決して近づいてはならない・・・

 

鬼は今は眠りにつき、現世へと旅立っている・・・

 

だから、お前の存在に気付いていない・・・

 

鬼はお前が死んだとは認識していない・・・

 

しかし、黄泉比良坂に辿り着いた時・・・

 

眠る鬼と対峙した時、鬼は目覚める・・・

 

その鬼は決して目覚めさせてはならない・・・

 

目覚めたと同時に鬼は目の前のお前を木っ端微塵に解体し、その“黄泉と呼ばれる無の穴へとお前を投げ入れるだろう・・・”

 

・・・どうやら、フォルテには俺の声が届かないらしい・・・となれば答えは一つしかない・・・

 

くっくっくっ・・・もう遅い。

 

・・・ち、起きてたのか・・・

 

ああ、あいつがそろそろここに来るだろうと思い、律儀にもあいつをここに呼び寄せているのさ・・・

 

・・・・・・フォルテをどうするつもりだ?

 

どうするかだと?

 

そんな事は決まっているあれでも久方ぶりの雌だぁ・・・本能の赴くままに蹂躪した後でバラバラに解体してやるぜ・・・

 

・・・・・・

 

さぁ、はやく来い・・・

 

やがて、あたしは丘が近くまで見えるところまで来た。

 

丘というより、そこはアースダムだった。

 

「・・・男?」

 

まだ、はっきりとは見えないが、そのダムからあたしを見下ろしている男がいる事に気付いた。

 

くっくっくっ!あははは!

 

あたしは反射的に腰元に隠してあった銃を取り出して、その男へ向けた。

 

「・・・・・・」

 

あたしは直感的に男は人間ではなく化け物だと認識した。あいつから放たれている殺気はとても人間とは思えない程にドス黒いものだった・・・

 

「そんな所から見下ろしてないで、降りてきたらどうだい!」

 

あたしは、視界に化け物を抑えたまま拳銃を構えた。

 

降りてこい?お前が上がってこいよ。

 

俺は、フォルテの故人を呼び出した。

 

「・・・っ!マ、マリア・・・」

 

どうして、マリアが此処に・・・って、あたし・・・何であの少女の事を知ってるんだい?

 

「そんなの、ここが死界だからに決まってんだろうが。」

 

「な、なんだって・・・」

 

あたしが驚いたのは男が喋ったからでなく、ここが死界だと聞かされたからだ。

 

「ここが死界だって証拠はまさにこの女だろ?」

 

思い出した・・・そうだ、あたしはあの死神に撃墜されて・・・

 

「その様子だと、自分がどういう立場にいるかを理解してくれたみたいだな・・・」

 

「・・・ああ。」

 

「黄泉比良坂に来た者は道中で己の立場を認識する事は出来ずに此処まで辿り着き・・・」

 

目の前の男は不気味な笑みを浮かべて続ける・・・

 

「ここに辿り着いた時に己が死者だと気付く・・・しかし・・・気付いた時には既に遅し・・・」

 

「あ、あんたは一体、何者だい・・・」

 

死者の世界に存在し、死者であるマリアをいとも簡単に呼び出した・・・

 

少なくとも人間ではない・・・

 

ならば、神か?

 

それとも、悪魔か?

 

俺は、死者が哀れに思えてきて思わず笑ってしまう・・・

 

「その答えが知りたいのなら此処まで来いよ。」

 

行ってやるよ・・・

 

あたしはそこを目指して登って行く・・・

 

そこに行くにはヒルクライムの二連コーナーを登る必要がある・・・

 

“よせ、行くな・・・”

 

(無駄だぜ“相棒”・・・死者と会話できるのはこの俺だけだ・・・)

 

“もう、やめろ・・・”

 

(無様だねぇ・・・人間ってやつぁ・・・目の前に自分が捜し求めたものがあれば、死の危険を冒してまでそれを目指す・・・まるで、トリュフを探す豚のようになぁ・・・く、くく・・・くっくっくっ!あはははっ!)

 

やがて、あたしはそこへ辿り着いた。

 

そこはアースダムの丘・・・

 

左一面には貯水用の湖が広がっている・・・

 

それは、夜のせいか、色は黒一色だ・・・

 

そして、目の前にはさっきの男がいた。

 

男は改めて見ると何とも醜悪な容姿だった・・・

 

何よりも、目つきが悪い・・・

 

「よう・・・」

 

「挨拶する為に来た訳じゃないよ・・・さぁ、答えてもらうよ・・・あんたは誰だい?」

 

「あはは・・・俺か?」

 

男はその醜悪な人相に似合った不気味な笑い声をあげる・・・

 

「俺は神ではない・・・かと言って悪魔でもない・・・ただの人間だぜ?」

 

男は手で天秤を作って大袈裟に言う・・・

 

「人間だなんて言われて信じられるかい・・・普通の人間がそこまで毒々しい殺気を込められるものかい・・・」

 

「ひゅ〜♪ひっどい言い草だなぁ・・・俺はお前達と何度も顔を合わせてるってのにねぇ〜・・・」

 

「あたしはそんなに物覚えは悪くない方でね・・・あんたみたいな奴、会うのは今回が初めてだよ。」

 

「やれやれ・・・殺気は感じれても、必中の眼を持っていても、俺のオーラを感じる事は無理か・・・」

 

そいつはまたしても大袈裟にため息をつく・・・

 

「ふざけるのも此処までだよ・・・マリアを返してもらうよ・・・」

 

あたしは腰元の銃を抜き取り、瞬時にあいつをロックオンした。

 

「はぁ?お前もしかしなくても馬鹿じゃねぇの?ここは“死んだ奴が行き着く世界”なんだぜ?まさか、生き返れるとでも思ってんの?」

 

あたしは迷わずトリガーを引き絞った。

 

あたしはあいつの右肩を狙ったつもりだった・・・

 

しかし、当たったのはあいつの右胸だった・・・

 

「てて・・・痛ってぇじゃねぇか・・・鉛玉だからって甘く見すぎてたか・・・」

 

「やはり、化け物かい・・・」

 

男の傷は見る見る内にふさがっていく・・・

 

「悪いが、こんなもんじゃ俺は死なないぜ・・・何分、ゴキブリ以上にしぶといので有名でな・・・」

 

男の顔がますます毒々しく歪む・・・

 

「さて、今後のお前の運命についてなんだが・・・」

 

あたしは何度も撃ち続けるが、今度は命中する事もなく弾丸は男をすり抜けていく・・・

 

「男なら汚ねぇから一撃で始末するんだが、お前さんも仮にも女だ・・・だから・・・」

 

「黙りな!」

 

やがて、弾丸が底をついた・・・

 

「アナログにこだわるのは結構だが、殺し合いは趣味じゃないんだぜ?」

 

「舐めるんじゃないよ!」

 

あたしはもう一つの銃を取り出す。

 

「まぁ、俺にとっちゃぁ・・・殺し合いは趣味そのものなんだがな・・・」

 

男は右手をパーの形で大きく開く・・・

 

「ま、まさか・・・」

 

ヘル・バイス!?

 

「まぁ、もがいてくれやぁっ!」

 

サム・タッチ

 

「がっ!?」

 

な、何だい!?胸が爆発しそうだ・・・

 

「くっくっくっ・・・クリーンファイトが好きなあいつはこれを嫌悪してたっけな・・・」

 

「ぐがが・・・」

 

口から血が零れ出す・・・

 

「あはは、随分と良いものばかり食ってきたんだなぁ?実に揉み応えのある内蔵だぜ?」

 

サム・タッチ

 

かの堕天使 サマエルが使用した呪術と同じものではあるが、この呪術には二つの顔がある・・・

 

サマエルの使用したサム・タッチはそのサムの名が示す通り、毒により相手を間接的に死に追いやる暗殺の呪術・・・

 

「人間って奴は面白いよなぁ・・・人間の姿形なんて、どんなに綺麗な奴でも皮を剥いじまえば筋肉と骨だけの塊なのになぁ・・・」

 

「ぐ・・・ガハッ!」

 

遂にはフォルテの口からは血が吐き出された!

 

しかし、この化け物のサム・タッチはタッチの名が示すとおり、相手の内部を直に触り、破壊する事で相手を直接的に死に追いやる殺人の呪術である・・・

 

「ぐあぁぁーーーー!!」

 

フォルテは目を見開き、その恐るべき殺人技の激痛に悲鳴をあげる・・・

 

「飽きてきたな・・・そろそろ心臓を握りつぶしてやるぜ!」

 

“いい加減にしろ・・・”

 

バキィ!

 

「デッ!?」

 

その時、化け物は突如乱入してきた男に蹴りはがされた。

 

集中力を奪われたせいなのか、サム・タッチの効力は消滅し、フォルテは力なく倒れこんだ。

 

「あぁん?何のつもりだ・・・テメェ!」

 

男は突如の乱入者に神や悪魔ですら凍りつかす程の殺意を丸出しにして睨みつける。

 

「お前のサド気さは見ていて吐き気がする・・・」

 

「お前に見せる為に、このエサを呼び込んだ訳じゃねぇんだよ。」

 

「呼び込んだと・・・嘘をつくな。いつものように死者をつまみ食いをしようとしただけだろう・・・」

 

「は!その死者をここに叩き込んだのは何処の誰なんだよ。」

 

「これ以上、お前を討論する気はない。」

 

そう言って、乱入した男は漆黒の紋章機を呼び出し、早々に立ち去った。

 

「な!?ざ、ざけんなよ!テメェ!!」

 

化け物は漆黒の紋章機が巻き起こした残風によろめかされながらもそれが立ち去った方角を見続けている。

 

「逃がすと思ってんのか!?」

 

次の瞬間、化け物は湖より自分の紋章機を呼び出した。

 

呼び出された化け物の紋章機は先程の漆黒の紋章機を瓜二つのなりをしている・・・

 

しかし、二機は似て非なる存在・・・

 

後者の紋章機は最高位の神性を誇りながらも人の復讐を糧に生きる邪機である。

 

まさに神でも悪魔でもない男とは正反対の神でもあり、悪魔でもある紋章機である・・・

 

「逃がすかっ!」

 

男の紋章機も前者の紋章機に引けをとらぬ速さで追跡に入った。

 

星の出ていない夜空を漆黒の紋章機が駆け抜ける。

 

その速度を人の目で見る事は叶わない・・・

 

「そろそろか・・・」

 

先程、フォルテを救出した男は後方に己の紋章機に匹敵する程の高出力のエネルギーの発生に気付いた。

 

「まったく・・・」

 

男はため息をつきながら紋章機を戦闘形態に変形させた。

 

男は知っているのだ。自分を追跡する“化け物”より逃れられないと・・・

 

「待てやぁっ!!」

 

後方より高出力のビームキャノンが発射された。

 

男はその攻撃を予測していたかのように軽々と回避した。

 

そして、発射した男も回避されるのを分かりきっていて発射したのだ。

 

「相変わらず、無駄弾が多い奴だ・・・」

 

「うるせぇ!テメェ・・・どういうつもりだ?」

 

「どういうつもりも何もない・・・こいつを現世へ連れ戻すだけだ。」

 

「はぁ!?テメェが殺したんだろうが!」

 

「ふん、こんな虫けらを殺す程落ちぶれたつもりはない・・・此処に惹き込んだのはお前だ。」

 

「・・・チッ!」

 

男はバツが悪そうに舌打ちをした。

 

「テメェはいつもそうだ・・・結局、そうやって“誰も殺せない”。」

 

「・・・勘違いするな、俺だって殺す時は殺す。」

 

「だったら、そいつをさっさと殺しちまえよ!」

 

「断る・・・言った筈だ。こんな虫ケラを殺す程、落ちぶれたつもりは無いと・・・」

 

「だったら、こっちによこせ!バラバラに解体してやっからよぉ!」

 

「断る・・・」

 

「な、何だとっ!?テメェは一体、何がしてぇんだよ!?」

 

「殺す気はないと言ったところでお前に引き渡す必要はない・・・こいつはあのガキ共の司令塔・・・こいつがいなくてはあのガキ共はおしまいだ。」

 

「は、はぁ!?それが“俺達の目的”だろうが!」

 

「勘違いするな、俺はあいつ等を完膚なきまでに叩き潰す事が目的だ・・・奴等が生きようが死のうが俺には全く興味がない・・・」

 

そう、それ以外に“こいつの世界に興味はない”

 

「興味があるないじゃねぇんだよ・・・物事はもう少し考えて喋った方が良いぜ?まだ、消えたくねぇだろう?」

 

化け物から発せられる殺気が強くなる。

 

「いかにお前と言えども俺の存在を消す事はできない・・・俺は“お前の世界”の住民ではない。」

 

「なめんな、そんな小細工なんかしなくても力づくで木っ端微塵にしてやるって言ってるんだよ・・・」

 

化け物の紋章機が不吉なオーラを発している・・・

 

その禍々しい赤紫のオーラはかのラスト・リヴェンジャーのものに酷似している。

 

「ふ、あのガキ共相手に本気を出すとガラスのように壊れて面白くなかったが・・・」

 

男は不敵に笑う・・・

 

この男には珍しいリアクションである・・・

 

そして、漆黒の紋章機の背中に翼が現れ、荒々しい漆黒のオーラが漂う。

 

「お前ならあいつ等よりかは壊れにくいだろう?」

 

「それは、こっちのセリフだ・・・俺に歯向かった事をテメェの死をもって後悔させてやるぜ!」

 

「ふ、俺達に生きるも死ぬもないだろう・・・あるのはどちらが消滅するかだ・・・」

 

「消えるのはテメェだ!」

 

「お前の馬鹿ぶりにも付き合いきれんと思ってた頃だ・・・来い、今度こそ消してやる・・・」

 

「ほざけやあああぁぁぁーーーっ!!」

 

そして、化け物の先制攻撃により、絶対者同士の戦いが始まった。

 

〜銀河の天使〜

 

ポーン・・・

 

俺はインターホンを鳴らすが、ミルフィーからの返事はない・・・

 

参ったな・・・ミルフィーの部屋に通信できる回線はこの有線式のインターホンしかないのだが・・・

 

残ったのはクロノクリスタルだけなんだけど、俺のはレイに拉致された時に無くなっていて、新しいのは当分いらないとふんでいて、注文し忘れていたんだ・・・

 

かといって、状況が状況なので他の誰かのを借りる訳にもいかない・・・借りれば皆に知られてしまう・・・

 

何でだろう・・・今は彼女(ミルフィー)以外に会いたくは無いんだ・・・

 

あまり気は進まないんだけど・・・

 

俺は彼女の部屋を訪れた・・・ここに来るのはレイとの戦いの後、初めてのことだ。

 

どうして今まで訪れなかったのかと言うと・・・今回、彼女はアイツの暴言に傷ついた・・・

 

ミルフィーにとって、アイツはかけがえのない兄だったんだ。それから自害しろなんて言われたんだ・・・おそらく、今の彼女は誰にも会いたくないだろう・・・

 

・・・と、さっきまで思っていたんだけど、やはり放っておけなくなってしまったんだ。

 

ていうか、やっぱり俺って馬鹿だ。

 

そんな時にこそ、励ましてやる事こそが、俺の役目じゃないか・・・例え、その考え方が自惚れだと批難されようが、このまま見て見ぬフリなんてできない・・・

 

今は遠慮してる場合じゃないんだ。

 

「ミルフィー・・・いるかい?」

 

返答はない・・・

 

そして、扉はロックされている・・・

 

なら、今の俺がする事はひとつだ・・・

 

「ミルフィー・・・入るよ。」

 

彼女から拒絶の声は無い・・・

 

俺は司令官権限を用いて彼女の扉のロックを外した。

 

ゴメンよ・・・

 

これらは全部、俺が自分のしたいように行動しているだけだ・・・

 

でも・・・それでも・・・

 

君を・・・君を放っておく事なんてできないんだ。

 

「暗いね・・・明かりつけても良いかな?」

 

「・・・・・・」

 

彼女の吐息だけが聞こえる・・・

 

「やっぱり、いいや・・・」

 

窓から射す白き月の光がかろうじてベットに座り込んでいる彼女を映してくれてるしな・・・

 

そして、俺は彼女の正面に屈み込んだ。

 

「ごめんなさい・・・」

 

俺は一瞬びっくりした。これが彼女の声だとは思えなかったからだ。

 

「はは、謝る必要なんてないさ。それに謝られると正直、困っちゃうしね。」

 

「ごめんなさい。」

 

「だから、謝らないでって。」

 

「・・・・・・そうですね。」

 

ミルフィーが若干ではあるが、笑った。

 

「ごめん、ミルフィー・・・こんな時だけど、ひとつ聞いてもいいかい?」

 

「・・・はい。」

 

俺を意を決した。

 

「ミルフィー・・・レイは君にとって何なんだい?」

 

「・・・・・・」

 

無論、兄ですなんて事を聞きたい訳じゃない・・・

 

俺が今まで敢て避けていた質問だ。

 

ロキが言うには子供時代のミルフィーはレイにそれはぞっこんで常に一緒だったそうだ。

 

「お兄ちゃんはお兄ちゃんとしか言い様がないです・・・」

 

その言葉でミルフィーがどれだけレイの事を思っているのかを思い知らされた。

 

「そ、そう・・・」

 

正直、悔しくないと言えば嘘になる。

 

でも、ミルフィーにレイの事は忘れろ等と言える訳がないし、言うつもりも無い・・・

 

「好きなんだ?あいつが・・・」

 

「はい・・・でも、お兄ちゃんはどうしてあんなに私を毛嫌いするんでしょうか?」

 

「・・・本当にあいつは君の事を嫌ってるのかな?」

 

こんな事を言うなんて俺はどうかしている・・・

 

「え・・・?」

 

ようやく彼女がこちらを向いてくれた。

 

「神界の時・・・」

 

その言葉にはかなり重たい意味がある・・・

 

(*第二章 神界編を参照)

 

「・・・・・・はい。」

 

「あいつは君の事をずっと見守っていた・・・そして、あいつはEDENを創造し、君を現世に転生させた。」

 

神界時代・・・過去の俺はそこで、ミルフィーの前世であるルシファーと出会い、恋におちた。

 

そのルシファーとレイことルシラフェルは兄妹で、あいつは常にルシファーの事を見守っていた。

 

「・・・あいつの事はお前に任せたぞ・・・」

 

あの時、あいつが言った言葉はとても偽りには聞こえなかった・・・

 

「それに、今までの戦いを振り返るとあいつとの戦いの経験があったからこそ、生き残れたと言えない事もない・・・」

 

何で俺はあいつを褒めてるんだろうな・・・

 

「だからさ・・・」

 

「・・・?」

 

「今回のあいつの行動にも何か意味があるような気がしてならないんだ。」

 

「タクトさん・・・」

 

「だから、確かめよう。あいつの真意を・・・その為に俺はこの命のある限り、アイツと戦う・・・そして、アイツを徹底的に叩き潰して聞き出す!」

 

今回、アイツがした事だけは許せないしな・・・

 

「・・・っ!?」

 

「・・・だから、今度の戦いは今までのどんな戦いよりも激しくなる・・・だから・・・」

 

俺は彼女の肩に手を掛け、彼女の目を見据える。

 

「俺と一緒に来てくれ・・・俺には君が必要だ。」

 

そう・・・

 

「だって、君は俺の幸運の女神なんだからさ・・・」

 

言い終わる少し前に彼女が抱きついてきた。

 

「ミルフィー・・・?」

 

右肩に濡れる感触を感じながら俺は彼女を抱きしめ返した。

 

「タクトさん・・・」

 

「ん?」

 

「このまま聞いてください・・・」

 

「ああ・・・」

 

「私、初めてタクトさんと会った時からタクトさんの事が気になって仕方なかったんです。」

 

「それは光栄だね。」

 

「あの時の私はお兄ちゃんの記憶を失くしていましたけど、きっとどこかで分かってたんです・・・タクトさんはお兄ちゃんと似てるって・・・」

 

「は、はは・・・俺とあいつが似てる?」

 

これには苦笑するしかない・・・おそらくあいつがそれを聞いていればミルフィーを殴ってるだろうな・・・

 

「はい、似てますよ・・・」

 

この時のミルフィーの柔らかい笑顔は反則だった。

 

「タクトさんもお兄ちゃんも相手のことをよく考えてくれてます・・・相手が悲しんでる時は励ましてくれましたし・・・まぁ、お兄ちゃんは口が悪いですけど。」

 

あれは口が悪いのではなく、性根が腐っているだけだと思うんだが・・・

 

「このカチューシャ・・・お兄ちゃんがくれたんです・・・私を泣かせたお詫びだって言って・・・」

 

「そうだったんだ・・・」

 

そう言えばそんな事があったってアバジェスが言ってたな・・・

 

「この時、私確信したんです。お兄ちゃんは優しい人なんだって・・・」

 

「・・・・・・」

 

だからか・・・そう思い込んでいたからこそ、辛かったんだな。

 

「それから、私はますますお兄ちゃんの事が好きになりました。お兄ちゃんは迷惑そうでしたけど、私は一向に構いませんでした。」

 

「ミルフィー・・・悲しかったら泣いてもいいんだよ?」

 

「ありがとうございます・・・でも、私はもう泣きません・・・だってタクトさんがあたしの傍にいるんですから・・・泣いたら他の人達に怒られちゃいます・・・」

 

ミルフィーがくすくすと笑う。

 

「俺ってそんなに人気者なのかな?」

 

「はい、今は私が独り占めしちゃってます♪」

 

「はは・・・それを言うなら俺のほうさ・・・君を・・・銀河の天使を独り占めしてる・・・それが、どんな不幸な事があっても幸せな気持ちにしてくれる・・・」

 

「もう、タクトさんってよくそんな恥ずかしい台詞を平気で喋れますね。」

 

ミルフィーがちょっと困ったような照れたような表情をする・・・そしてそれが、俺の理性を少しずつ奪っていく・・・

 

「だって、本当の事だしね・・・正直、俺で君と釣り合いがとれるのかなって思った事が何度かあるんだ・・・」

 

「そんな・・・」

 

「でも、俺はミルフィーを誰よりも愛してるから・・・だから、君が俺の事を嫌いになっても何度でもアタックしてみせるさ。」

 

「ふふ、それは私も同じですよ。浮気なんかしたら許さないんですから・・・」

 

「は、はは・・・」

 

「最近、エクレアちゃんと仲が良いみたいなんで少し心配なんですけどねぇ〜・・・」

 

「お、おいおい・・・エクレアはカズヤとリコの子供なんだよ?そんな心配しなくても・・・」

 

「分かってます・・・ちょっと、意地悪しちゃいました。えへへ・・・」

 

「な、何だ・・・驚かさないでくれよ・・・ええっと、さっきの事なんだけど・・・」

 

「はい?」

 

「泣きたい時は泣いても良いさ・・・というか、その方が嬉しい・・・だって、俺はミルフィーの泣き顔好きだし・・・」

 

「も、もう・・・タクトさんの意地悪・・・」

 

「あはは・・・」

 

「なら、私を放さないでくださいね・・・ん・・・」

 

「・・・っ!?」

 

ミルフィーの桜唇が俺の唇に優しく押し付けられた。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

柔らかく、くすぐったい感触を味わったまま俺達は抱き合った・・・

 

いったい、どれほどその行為を続けただろうか?

 

果たして、どちらが先に離れたのかなんて考えてられなかった・・・

 

「タクトさん・・・他の誰よりも愛してます・・・」

 

「ミルフィー・・・愛してるよ・・・君だけを・・・」

 

もはや、お互いの思考は限りなく本能の域へ達している・・・

 

細かい理屈が考えられない域まで・・・

 

もはや、隠す事などないただ愛しているという本音のみがお互いの間にある・・・

 

「タクトさん・・・・・・私を抱いてれますか?」

 

こういう状況で出てくる“抱く”という言葉の意味を知らない俺ではない・・・

 

「いいの?」

 

「はい・・・だって、私はタクトさんの妻なんですから、私の事を好きにして良いんですよ?」

 

う・・・だから、それは反則だって・・・

 

し、心臓がやばいくらいに動いてるからさ・・・

 

「そう言えば、神界の時以来ですよね・・・こういう事をするのって・・・」

 

ミルフィーの顔は真っ赤で俺の顔も同じなんだろうな・・・ていうか、まずい・・・冷静に状況分析が出来なくなってきている・・・

 

そして、人の愛が行き着く終着点はお互いの身体を求めることである・・・

 

 

やがて、布の擦れる音がし・・・

 

「あ・・・」

 

そこには銀河の天使がいた・・・

 

窓から射す白き月の光がその白い肌を幻想的に映し出す・・・

 

「や、やっぱり、恥ずかしいです・・・」

 

蚊の音ように小さい声が聞こえてくる・・・

 

「恥ずかしがる必要なんてないさ・・・正直、俺の理性がぶっ飛びかけてる・・・」

 

「え!?タ、タクトさん・・・?や、優しくしてください・・・ね?」

 

少し、怯えた顔のミルフィーは今の俺にとっては効果抜群のアドレナリンでしかない・・・

 

「ロキじゃあるまいし・・・そんな事しないさ・・・」

 

ロキ・・・悪い・・・

 

でも、ミルフィーは反則的に可愛いすぎる!

 

そして、俺達は幾度の年を越えて再び一つになった・・・

 

そして、彼女と繋がってる時、俺の脳裏には何故か銀河が見えていた・・・

 

そして、俺は頭の中で条件反射的に自然と呟いていた・・・

 

GALAXY IMPACT

 

と・・・

 

〜偽者対本者〜

 

「・・・っ!」

 

「チィッ!?」

 

星の無い夜空を舞台に二人の絶対者がぶつかり合う・・・

 

男はフライヤーを上手く扱い化け物を牽制する。

 

しかし、化け物の紋章機はその持ち前の防御力で強引に間合いを詰め、必殺の破壊力を持つ創造の剣で斬りかかり・・・

 

男はスレイヤー・オブ・デステニーでその剣を受け止める。

 

この絶対者同士の戦いでは先に隙を作った方が負ける・・・

 

そんな戦いだ。

 

両者共にこの世で限りなく最強に近い者である。

 

「チッ!お前はいつもそうだ!」

 

化け物は斬り合いながら男を批難する。

 

「それだけの実力を持ちながらも誰一人とて殺せはしない!

 

「・・・言いたい事はそれだけか?」

 

「なめやがってぇぇぇーーーっ!!」

 

怒り狂った化け物は遂に己が必殺技を発動させた。

 

男とその紋章機は化け物の固有結界に閉じ込められた・・・

 

この化け物が創り出した固有結界とは文字通り、一つの新しい宇宙そのものである・・・

 

そして、その宇宙へ対象を飛ばし、そこで常軌を逸した攻撃を仕掛けるのだ。

 

「・・・ふん。」

 

「バニッシュ・ボディもこいつには何の役にも立ちはしねぇぞ!」

 

化け物は勝ち誇ったような笑みを浮かべて己が最強の必殺技を放った。

 

「木っ端微塵にしてやるあぁぁぁーーーっ!!」

 

男の周辺より無数の恒星が出現し、それら全てが男を目指して襲いかかる!

 

恒星がまるで流星のように男へ襲い掛かる!

 

「ちっ・・・」

 

この攻撃にはさすがの男も本気に成らざるを得なかった・・・

 

男は最大出力でINフィールドを展開し、恒星群の隙間を抜いくぐり、中心点・・・言わば爆心地から最大全速へ逃げる!

 

「はっはっはっ!防げるものなら防いでみな!」

 

核融合した恒星同士はやがて衝突し、重力崩壊を起こしながら、常軌を逸した核爆発を引き起こした!

 

ハイパー・ノヴァ

 

それこそ、全宇宙を木っ端微塵にしても飽き足らないと言わんばかりの大爆発である。

 

「・・・っ!」

 

男の紋章機はそんな大爆発に必死に耐える!

 

やがて、桁外れな爆発によって重力が爆発的に増加して、スターバースト現象を引き起こし、新たなる星々を創り出し・・・

 

「異次元にいけやあぁぁぁーーーっ!!」

 

それは、やがて大質量のブラックホールと化して恒星の塵屑と共に男の紋章機を・・・全ての形あるものを飲み込んだ!

 

これぞ、この俺が誇る最強の攻撃

 

オメガ・ノヴァ

 

「ち・・・あのメスは取り逃がしたが・・・しゃあねぇな・・・」

 

俺はムナクソが悪い気分をタクト達で晴らす事にした。

 

正直、あいつがタクト達を皆殺しにするのを待っていたが、その結果がこの様だ・・・

 

俺の紋章機の修復状況も大方、完治に近づいてる事だし、タクト達を皆殺しにするには良い頃合だとも言える。

 

「くっくっくっ・・・馬鹿が・・・大人しく引き渡していれば・・・」

 

「断る・・・そして、お前はここで消える。」

 

「・・・なにっ!?」

 

化け物が反応した時は既に俺は最強の攻撃を発動させていた。

 

インフィニティゼロ

 

「ぐ!グアアアアアアーーー?!!」

 

突如襲い掛かる極光に焼かれ断末魔の叫びを上げる化け物。

 

全ては無限から・・・

 

「キ、キサマアアアアアァァァァァーーーー!!」

 

オメガ・ノヴァが破壊を目的としたものなら、このインフィニティ・ゼロは制裁を目的としたものである・・・

 

「さらばだ・・・」

 

無へと帰す・・・

 

そして、男が“ゼロ”と呟いた瞬間、問答無用で化け物とその紋章機が処理落ちを起こしたかのように消滅していく・・・

 

「ぎゃあああAAAAAAAAAAAAAAAAAAA・・」

 

最強の制裁が下され化け物は完全に消滅した。

 

化け物の消滅により、俺は黄泉比良坂へ戻った。

 

「・・・・・・やはりか。」

 

アルフェシオンが化け物の気配を感知したのだ。

 

元より、俺はこの化け物が復活する事は分かりきっていた上でインフィニティ・ゼロを放ったのだが・・・

 

「相変わらず、しぶとさだけは本当にゴキブリ並だ

な・・・」

 

化け物は確かに消滅した・・・

 

しかし、この黄泉比良坂の管理者である化け物は転生する筈の魂を喰らい再び、存在を取り戻す・・・

 

どうやら、インフィニティ・ゼロで受けたダメージが桁外れだった為か、化け物とその紋章機は修復で手一杯みたいだな・・・

 

そして、化け物が次ぎにどんな行動に移るかは目に見えている・・・

 

「引き際だな・・・」

 

“目的”を果たした俺はフォルテを現世に連れ戻す・・・

 

元より、俺の目的はただ一つなのだから・・・

 

 

許さん・・・・このままでは済まさん・・・

 

確かに俺は動けない・・・

 

しかし、お前はこれから俺では無い敵と戦おうとしている・・・

 

ならば、俺が戦わなくてもお前を殺せる手段は残っている・・・

 

お前と戦う相手を強化すればいいんだからなぁ・・・

 

絶対にこのままではすまさねぇぞ・・・・・・イジ

 

 

ミルフィーとの一夜が明けた次の日、俺の提案したシャイニング・スターの強化プランが完成した。

 

舞台は格納庫・・・

 

「タクト、待たせたな・・・一応だが終わったぜ・・・」

 

ロキは煙草をふかしながら背後の完成品を後ろ指で指した。

 

「ああ、設計通りだ。感謝するよロキ・・・」

 

俺は目の前にあるシャイニング・スターを見つめる・・・

 

「とは言え、シャイニング・スターとブレイブ・ハートとの細かい調整がまだ残っているから実際に動かせるのはもう少し後だ。」

 

一見すれば装甲を強化したようにしか見えないが、この装甲は防御力を向上させる為だけに取り付けたものではない・・・

 

「完成しましたね、タクトさん・・・」

 

「す、凄い事になっちゃいましたね・・・」

 

僕とリコは改造された自分達の紋章機を見つめる・・・

 

タクトとカズヤ・・・二人の視線の方向は同じだ・・・

 

なぜなら、シャイニング・スターのブースター部分にクロス・キャリバーとブレイブ・ハートがいるのだから・・・

 

「・・・それと、カズヤとリコに注意しておくが・・・」

 

真面目なロキの声に二人は耳を傾ける。

 

「無論、分離も自由自在に可だが、変形中のタイムロスだけはどうにもならん・・・相手があいつならそのロスが命取りになる事だけは覚えておけよ・・・」

 

『はい!』

 

「ブレイブハートは推進力・・・クロス・キャリバーは火力の強化が目的か・・・随分と贅沢な紋章機になったな・・・」

 

そう言ったのは今や皇国軍の実質的指揮を担っている阿部竜二大元帥ことアバジェスである。

 

「アバジェス・・・来ていたのか?」

 

「ふむ・・・むしろ、私は他の紋章機の改造に携わっているんだがな・・・」

 

「他の紋章機の改造?」

 

「ああ、俺の案でな・・・他の紋章機もGAシリーズとRAシリーズでドッキングできないかと思ってな・・・」

 

「本気かよ・・・」

 

「おいおい、理論上では可能な案なんだぜ?元々RAシリーズは変形機構があるからGAシリーズをメインにおけばいける筈だぜ?」

 

「しかし、それだけの時間が果たしてあるのか・・・」

 

「なぁに・・・改造自体は大した事は無いぜ?RAシリーズをいじるのがメインになると思うし・・・それにいざって時にはこいつ(シャイニング・スター)があるだろう?」

 

「・・・そうだよな。」

 

弱気になってどうするんだ?

 

俺がやらなくて誰があいつをくい止めるんだ?

 

「それと、お前達には大きな課題がある・・・」

 

突如、アバジェスが意味深に喋った。

 

『大きな課題?』

 

「そうだ。前にも言ったと思うが、今のお前達に足りないのは連携プレイだ・・・」

 

「連携・・・」

 

「既に改造した紋章機の仮想シュミレーションの準備は整っている・・・後はお前達の心構えの問題だ・・・ん?」

 

アバジェスは話の途中で通信機から何かの情報を受け取ったらしい。

 

「・・・タクト、エンジェル隊に伝えておけ、フォルテの意識が回復したとな・・・」

 

 

「きょ、フォルテ教官が!?」

 

この知らせが俺達の反撃の狼煙となった。

 

舞台はフォルテが入院している医務室へと移る・・・

 

フォルテの意識が回復したという情報は瞬く間に広がり、俺達が医務室についていた時は他の天使達が先に辿り着いていた。

 

「変な夢?」

 

フォルテは喜んでいる俺達に向かって眠ってる間に変な夢を見たと言った・・・

 

その夢の内容はかなり欠如していて鮮明にはわからないそうだが、その夢にはマリアの古い友人が映っていたそうだ・・・

 

「あはは・・・・・・それで、タクト・・・これから、どうするんだい?」

 

フォルテは会話を切り上げて本題に入ってきた。

 

俺の答えは最初から決まっている・・・

 

「決まってるさ・・・レイ・桜葉を倒す・・・その為には作戦と皆の努力と協力が必要だ。」

 

この後フォルテは回復し、俺達はアバジェスが調整を完了させた新・紋章機のシュミレーションへと参加した。

 

いつレイが襲いかかってくるか分からない状況下でタクト達はただひたすら連携を思案錯誤し、訓練を続けた・・・

 

そんな、タクト達を見守っていたアバジェスはひとつ今回の件について疑問を抱いている・・・

 

「阿部殿、タクト達は順調のようですね。」

 

シヴァは楽しそうにミーティングをしてるタクト達を優しく見守っている。

 

「はい・・・逆にいつもの調子を取り戻したと言った方が正しいのかもしれませんね。」

 

「いつもの調子・・・そうだな。」

 

「敵の・・・レイの本領は心理戦にあります。今回のアルフェシオンの件についても予め、タクト達にアルフェシオンに量産型紋章機が何をしても勝てないと思い込ませタクトやカズヤのエース機だけで戦わせるような形にもっていかせました。その結果、例え他のメンバーが動こうとしても遂々自分達は足手まといなのではないかと思い、連携を集中攻撃と勘違いし、その後は敵の思うがままに・・・」

 

「・・・しかし、それも今回までだ。今度の勝負・・・勝つのはタクト達だ。」

 

「はい・・・」

 

しかし、気になる・・・

 

今回のシャイニング・スターの強化案は“台本通りといえば台本通り”なのだが・・・量産型紋章機の“フュージョン”計画は台本にすらなかった筈なのだが・・・

 

思えば、いつものレイからの定時連絡も既に無い・・・

 

それに、レイが負ける事を作者は望む筈がない・・・

 

それを否定する事はこの世界そのものを否定するのと同意義だ・・・

 

しかし、このフュージョン計画はどう考えてもレイに不利だ・・・

 

まさかとは思うのだが・・・

 

しかし、“あいつ”の事だ・・・

 

大方、気まぐれによるものなのだろう・・・

 

アバジェスは深く溜息をつき、タクト達のメンタルデーターの採取にあたる・・・

 

そして、いよいよ・・・

 

タクトとレイの最後の戦いの時が近づいていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

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