思えば、これも運命だったのだろう・・・

 

この戦いは宿命だったのだろう・・・

 

タクト・マイヤーズとレイ・桜葉は天敵同士・・・

タクトは不安定ながらも無限大の可能性を秘めた奇跡の体現者・・・

 

対して、レイは可能性は初めから決まってはいるが、奇跡という単語を抹消してしまう程の確固たる実力を持ち合わせた完全の体現者である・・・

 

タクトとミルフィーユの紋章機 

 

シャイニング・スター

 

前大戦時、シリウスとの戦いで大破した七番機をミルフィーユの願いを聞きうけたラッキースター融合し新しく生まれた紋章機・・・イレギュラーな存在が為に型式はいまだに存在しない。

 

属性は光で守りと接近戦に特化した機体で数々の強敵から仲間を守り、ラスト・リヴェンジャー等の強敵を打ち破った、言わば人類の希望でもある。

リミッターを解除した時にはその白銀のボディが輝き、まさに極光の紋章機と化す。

 

レイ・桜葉の紋章機

 

アルフェシオン

 

全紋章機の性能を合わせ持ち、全てのパラメーターを見ても弱点が存在しない問答無用の最強の紋章機である・・・

元は黄金の紋章機よりシャイニング・スターと共に分裂した片割れでもある。

 

ただでさえ、高性能なのだがなかでも攻撃面において右に出る者はいないだろう・・・

 

リミッター解除時には紫色のオーラがただよい、その漆黒のボディはまるで悪魔のように光を吸収する。

 

この二機もパイロット同様に天敵同士である。

 

そして、そんな対象的な者同士の戦いに遂に終止符がうたれる時が訪れる・・・

 

逆襲の堕天使最終

 

天使VS堕天使

 

俺達の新・紋章機に向けての特訓が二ヶ月目にさしかかろうかとしていた時に紋章機が完成した。

 

新しい紋章機の実テストはトランスバール宙域で行われた。

 

「マジョラムさん、いい!?」

 

「ええ、OKよ!」

 

二人は追加されたプログラムを入力する。

 

やがて、スペルキャスターが見る見る内に変形を遂げていき、カンフーファイターと融合をするかのように合体を成功させた。

 

Fusion Mode

 

互いの弱点を支えあう事を前提にロキが開発した量産型紋章機の改良プランである。

 

「ナノナノ・・・」

 

「了解、合体なのだ〜!」

 

「アニスさん、準備はよろしくて?」

 

「お、おう!やってやるぜ!」

 

他の天使達も同様に新しい紋章機をフュージョンさせる。

 

「みんな、やるねぇ・・・あたし達もいくよ!」

 

「はい!」

 

「了解した!」

 

まず、ハッピートリガーの周りをイーグルゲイザーが覆うように融合し、ちとせのイグザクト・スナイパーが完全な砲台の形状を取り、センター部分に融合を果たした。

 

「す、すごいな・・・」

 

俺は生まれ変わった紋章機達の姿を見て驚いていた。

 

「タクトさん、僕達も!」

 

「あ、ああ!」

 

いよいよだ・・・

 

調整は完全に終わっているから問題なく行く筈だ。

 

「リンク、スタート!」

 

「いっけぇー!」

 

二人の掛け声と同時にブレイブハートとクロスキャリバーが見る見る内に変形していく。

 

シャイニング・スターの肩口にはクロスキャリバーのツイン・ビームキャノンが、そしてブースター部分にはブレイブーハートとクロスキャリバーのメインの部分が装着され、所々にはフライヤーの射出口が設けられている・・・

 

「完成したな・・・遂に・・・」

 

元より、このプランは最初から考案されていた事項だった・・・

 

しかし、実行に移せなかったのにはとっても稚拙な理由だった・・・

 

おっと・・・余計なお喋りはご法度だぜ?

 

それに・・・奴が来るとするのなら今だ。

 

「・・・っ!?」

 

こ、この感じ・・・

 

この威圧感・・・間違いない!

 

「全機!そのまま戦闘態勢を維持だ!」

 

タクトの大きな声に全員が驚いた。

 

「タクトさん、まさか・・・」

 

カズヤも感づいている・・・

 

「出て来い!レイ!」

 

隠れてないで出て来い・・・

 

決着をつけに来たんだろう・・・

 

だったら、勿体ぶらずに出て来い!

 

漆黒の紋章機が姿を現したのは本当に音も無い一瞬の事だった。

 

「レイ・・・」

 

お兄ちゃん・・・来たんだね。

 

ミルフィーユは目の前にいる最強の敵を少し悲しそうに見ている。

 

「・・・レイさん。」

 

今日こそ僕はあなたを越えます・・・

 

「・・・・・・紋章機を改造しただけで勝てると思われていたとは俺も過小評価されたものだな・・・しかも、艦隊のひとつも配置しないとは・・・」

 

(ふ、艦隊を用意しようものならそれこそ、愚策だろう・・・レイ?)

 

レイは苦笑しながら、生まれ変わった紋章機達を眺めた。

 

「ああ、俺達は今までお前を過大評価しすぎていた・・・しかし、今回は違う・・・今回勝つのは俺達だ!」

 

「言い切るとは随分と強気な事だな・・・」

 

アルフェシオンが黒いオーラを発し戦闘態勢をとる。

 

「御託はいい・・・お前達が生き残れるかどうかはこれからの“偶然次第”なのだからな・・・」

 

全員に緊張がはしる・・・

 

いくら訓練を積んだとはいえ、相手は紛れもなくこの世で最強の存在なのだから・・・

 

だから、天使達は決めていた。

 

100%で勝てないのなら、それ以上の力を発揮すればいいと・・・

 

100%という数字は自分一人での数値だが・・・

 

「さて・・・懺悔の時間は与えなくてもいいか?」

 

仲間で力を合わせれば間違いなくそれ以上の数値が出せると天使達は訓練の中で学んだのだ。

 

「全機に告ぐ、各機最後の最後まで連携を忘れずに・・・そして、何としてもアルフェシオンを撃墜するぞ!」

 

そして、タクト達が動きだす!

 

「・・・・・・」

 

そして、レイはいつものようにそこに待機する。

 

しかし、実はこの間にもレイは動いている・・・

 

「レイ!」

 

まず、先陣をきったのはタクト!

 

一気に距離を詰めようとする。

 

「ふ、相変わらずというか・・・」

 

それに対してレイは後方へ距離をとりながらダインスレイブを展開する。

 

攻守一体もレイにとっては何等困難な事ではない。

 

しかし、今回は事情が違った。

 

「そこぉ!」

 

カズヤはたった2機のフライヤーでレイに攻撃を仕掛けた。

 

しかし、レイはそれを嘲笑ったりはしなかった。

 

「・・・少しはまともになったか?」

 

本家本元のレイも2機のフライヤーを操りカズヤのフライヤーを撃墜しろと命令を下した。

 

「くる!」

 

カズヤとレイのフライヤーはクロスコンバットの如く撃っては避けを繰り返す。

 

「・・・ほぅ?」

 

ここにきてレイは驚いた。今までなら、カズヤのフライヤーは一つ裏をかけば総崩れだったのに対し、今のカズヤのフライヤーはレイの予想外の動きをするようになったからだ。

 

「まぁ、いい・・・その内、ボロを出す。」

 

レイはカズヤのフライヤーを撃墜する事を延長し、フォルテ達の弾幕へと意識を向ける。

 

「これをかわせるもんなら避わしてみな!」

 

「・・・・・・」

 

イーグルレイザーとイグザクトスナイパーとのフュージョンを果たしたハッピートリガーの弾幕はまさにブラウド財閥の旗艦ラスト・ジャッジメントをも上回る程の火力だ!

 

しかし、そこはさすがはレイと言うべきかそんな回避困難な攻撃を難なく回避し、フォルテとの距離を詰めに掛る!

 

「ごてごてしすぎだ。少し、軽量化してやろう・・・」

 

「私を忘れないで下さい!」

 

近距離からの光速の矢(アルテミス)・・・

 

これを回避できる者は神の領域に達した者だけだろう・・・

 

そして、レイは神の領域に踏み入れた者である。

 

「・・・・・・ち」

 

レイは面倒くさそうに“一射目”を切り払った!

 

「・・・っ!?」

 

しかし・・・アルテミスがもう一射放たれたのだ。

 

流石のレイもこれを切り払うのには骨を折った。

 

「・・・三本?」

 

そして、絶妙な間隔で放たれた三射目の矢を回避する。

 

「・・・ランファ?」

 

レイはその神の域に達した直感でランファの攻撃に気が付いた。

 

「いっけぇーーー!」

 

ランファ渾身のアンカークローがレイに襲い掛かる!

 

しかし、無論このレイがこの単調な攻撃に対応できない訳がない。

 

レイはいつものように切り払おうとし・・・

 

「・・・っ」

 

次の瞬間、アンカークローは突如魔方陣を描き、アルフェシオンを挟み込むように陣取った。

 

「死神!あたし達の意地ってやつを受け取りなさい!」

 

テキーラはこの日の為に研究していた新しい魔法を発動させた!

 

CAOS SEA

 

「テキーラが・・・人間如きが神魔法を・・・まさかな・・・」

 

レイはいつものように・・・

 

DELETE

 

すべての因果をキャンセルする反則技を発動させたのだが・・・

 

「・・・っ!」

 

突如、現れた闇の霧はかき消される事無くアルフェシオンを飲み込んだ。

 

「やった!」

 

「駄目!」

 

「え、なにが・・」

 

ランファはテキーラの言葉を最後まで聞く事無く、その場から最大全速で突っきた。

 

その一瞬の後で、その空間が圧縮されたのだ。

 

「ヘル・バイスが回避されただと?」

 

ヘル・バイス・・・それは、イメージした対象を問答無用で圧縮してしまう回避不能の必殺技だったのだが・・・

 

「あの黒い霧か・・・」

 

それは偶然だった・・・テキーラの発動させた闇の霧は因果を遮断させるというとんでもない副作用を持っていたのだ・・・

 

(だが・・・)

 

レイは潜ませていたフライヤー4機をランファとテキーラを挟み込むように配置した。

 

「フライヤー!?」

 

「死ね。」

 

「そのような下品なフライヤーを撃たせはしませんわ。」

 

「・・・ミント・ブラマンシュ」

 

レイは標的をミントに変えた。

 

「お前のフライヤーなど稚技に等しい・・・」

 

二機のフライヤーはサンダーウェーブのような軌道を描きながら、ミントへ襲いかかる!

 

そして、残り2機のフライヤーは瞬く間にミントのフライヤーを撃破した。

 

「終わりだ・・・」

 

「おおっと!そうはいくかよ!」

 

トリックマスターはレイのフライヤーを上手いように回避していく。

 

そう・・・ミントのトリックマスターは随一の機動力を誇るレリックレイダーとフュージョンしているのだ。

 

「面白い・・・なら、これも回避できるか?」

 

「フライヤーの数が!?」

 

そう、レイのフライヤーの数は見る見る内に増殖していき、瞬く間に天使達を包囲した。

 

「わかっちゃぁいたけどねぇ・・・いざ、“本番”になるとプレッシャーの度合いが違うねぇ・・・」

 

そう、天使達は来る日の為に対フライヤーの訓練を積んでいたのだ。

 

(フライヤーの数が増せば増す程、リスクは大きいが、やむを得まい・・・)

 

レイはそれぞれのフライヤー達に命令を伝達する。

 

(だが、それは人間の理屈だ・・・俺には何ら大した事ではない・・・)

 

レイは決して、一人と戦っている訳ではない。

 

レイのフライヤーはそれこそ、荒ぶる蜂の如く飛び交いながらそれぞれの標的へと走る!

 

「何!?」

 

カズヤはレイのフライヤーの行動パターンが一変した事に気が付いた。

 

「俺を忘れるなーーー!」

 

タクトはレイとの距離を詰めようと回り込む。

 

「忘れる?お前と一緒にするな・・・」

 

以前なら、レイが距離を離して全てがふりだしに戻るところなのだろうが・・・

 

「カズヤ!リコ!」

 

最強のブースターがシャイニング・スターを必死にサポートし、シャイニング・スターをアルフェシオンの手前まで誘った!

 

「レイ!」

 

「ちっ・・・」

 

バヂヂ!ヂヂッ!

 

エクスカリバーとダインスレイブが激突する!

 

「そんな付け焼き刃のような改造をするとは、気でも狂ったか?」

 

「その改造に手を焼いてるのは誰だ!」

 

「手を焼く?調子に乗るな・・・」

 

レイがダインスレイブ・フェイカーで斬りかかるのとタクトがクラウ・ソラスで斬りかかったのはほぼ同時だった。

 

「くっ!やはり全部を回避するのには限度があるねぇっ!うぁ!」

 

天使達も本気で襲い掛かってきたフライヤーとの対応に必死だった。

 

フュージョンによるフィールドの出力向上が幸いしたのか直撃する事はないが、それでも高威力を誇るレイのフライヤーの脅威は無視できるものではない。

 

「・・・あぅ!ちょ、ちょっとアニスさん!何をやってますの!?シミュレーションであれ程回避できてたじゃないですか!」

 

「うるせぇ!本物と一緒にするんじゃねぇ!それに相手はあの死神なんだぜ!」

 

そう、いかに負けん気で挑んだとしても相手の強さは変わらない・・・

 

そして、レイの強さは今更言うまでも無いだろう・・・

 

「ち、ゴキブリ共が・・・・・・」

 

そして、遂に最強の存在が本気で弱者達を潰しにかかる!

 

「これが回避できるなら回避してみろ・・・」

 

その瞬間、全ての時が止まった・・・

 

「まさか、俺が“危機”を感じたとは・・・」

 

そう、レイは危機を感じ、咄嗟にこの禁断の神魔法を詠唱したのだ。

 

その名は・・・神々の黄昏

 

アルフェシオンの周囲に紫電が走り、黒い霧状のダークマターが続々とアルフェシオンに集まる。

 

「だが、所詮は人間・・・時をも操る神との間には越えられない壁が確固として存在するものだ・・・」

 

時が再開する時・・・それは、タクト達が完全に無へと帰す時でもある・・・

 

時が再開するのはダークマターが有を無へと分解する為に因果律を必要とする為だ。

 

因果律は時が動かない限り発生する事は無いのだから・・・

 

「さらばだ・・・ギャラクシーエンジェル」

 

何故か、レイはその名前を名残惜しむかのように呟いた。

 

それは、レイの中にギャラクシーエンジェルという存在が特別であった事を証明するに他ならない・・・

 

しかし、レイはひとつだけ油断した事があった・・・

 

天使の中には時を司る三女神がいた事を・・・

 

「お兄ちゃん・・・ど、どうして・・・そんなにまで・・・」

 

「・・・っ!」

 

レイはハッとしてシャイニング・スターを見た。

 

先程、自分を呼んだのはアプリコット・桜葉・・・

 

まごうこと無き二人目の妹であり・・・

 

運命を司る女神の三女 フェイト

 

「アルフェシオン・・・あなたはそんな子じゃない・・・本当はとっても優しい子・・・」

 

アルフェシオンも当惑を隠せずにいる・・・

 

言うまでもなくラグナロクは霧散した。

 

しかし、時は止まったままだ・・・

 

その時が止まった中で兄妹の会話が続く・・・

 

「アルフェシオン!耳を貸すな!」

 

珍しく焦ったレイの声もアルフェシオンにとっては上の空だ。

 

「お兄ちゃん、どうしてそんなにみんなを困らせるの?もう私達が戦う必要なんてないのに・・・」

 

「なに?」

 

その言葉にレイの感情が剥き出しにされていく・・・

 

「戦う必要ならあるだろう・・・俺を倒さなければ“真犯人”が誰かは分からないんだぞ?」

 

「子供みたいな事を言わないで!」

 

「俺が子供だと・・・」

 

しかし、レイの内心は焦っていた・・・アプリコットは見抜いているのだ・・・

 

自分がただ単にタクトが気に入らないだけなのだと・・・

 

だから、今回の戦いで最後にしようと思ったのだと・・・

 

アプリコットはそれを指摘しているのだ。

 

「相変わらず、鈍感かと思えば変な所だけには鋭い・・・それもバランスデティクションとやらの力か?」

 

俺の知らない世界で発見された力・・・故に未知数・・・

 

バランスデティクション・・・物の均衡を見抜く力・・・

 

それはレイが持つ神眼に限りなく似ている・・・

 

「違うよ。だってお兄ちゃんって嘘が下手なんだもん・・・」

 

「・・・・・・」

 

それでも、俺はタクトを倒さなければならない・・・

 

そうでなければ、俺が“この世界に来た意味がない”・・・

 

そうとも、相棒・・・

 

引っ込んでろ・・・

 

ち・・・

 

「言いたい事はそれだけか?」

 

「お、お兄ちゃん?」

 

「お前もあいつと同様に目障りだ・・・」

 

そうだ。お前達がいなければこんな世界など一瞬で消滅させられたのだ。

 

「これで、終わりだ。」

 

レイが再びラグナロクを詠唱し始める・・・

 

「お兄ちゃん!」

 

「・・・また、お前か。」

 

再びレイを呼び止めたのはミルフィーユ・桜葉・・・

 

まごうこと無き一人目の妹であり・・・

 

運命の三女神の次女 デザイア・・・

 

そして、己の分身・・・ルシファー

 

「あたし・・・逃げない。」

 

「相変わらずの馬鹿っぷりだな・・・お前達は逃げる必要もなければ逃げる事もできはしない・・・」

 

レイは突き放すように言い放つとラグナロクの詠唱を続けた。

 

黒い霧が再び集束していく・・・

 

「言った筈だよ・・・逃げないって!」

 

ミルフィーユは兄を厳しい目で見つめ、己の潜在意識の中に眠っていた“時の力”を発動させた!

 

「・・・な、何!?」

 

レイは驚愕した・・・

 

ラグナロクによって止められた筈の時が再び動きだしたからだ。

 

「こ、この・・・」

 

「く!一瞬であんなところに!」

 

タクト達はレイが時を止めていた事に気付きはしない・・・

 

確かにレイの命中率・回避率は神の領域に達したものではあるが、“何もカラクリがない訳でもない”・・・

 

お気づきだろうか・・・もし、レイが常に時を止めて移動していたとすればその奇跡的な機動力にも頷けるだろう・・・

 

「それは違うわ・・・レイは時を止めていたに過ぎないわ。」

 

「エクレア?」

 

タクト達の後方・・・つまりはトランスバール本星を壁にするようにオリジンが立ちはだかっていた。

 

「ちっ・・・」

 

レイはバツが悪そうにエクレアへと照準を絞った。

 

「ごめん、遅刻ね・・・」

 

「まったく、相変わらずルーズな奴だ。」

 

悪態をつくシリウス・・・

 

エクレア・桜葉・・・

 

未来より訪れたカズヤとアプリコットの娘・・・

 

そして、前大戦時は偽りの因果律を担わされた

 

運命の三女神の長女 ウィルド・・・

 

シリウス・桜葉・・・

 

エクレアと共に未来より訪れたタクトとミルフィーユの息子・・・

 

前大戦時、タクト達と激闘を繰り広げたシリウス・リウスの転生体でもある。

 

「でしゃばるな。ガキ共が・・・」

 

「おあいにくそうはいかないわ・・・レイ、アキトを返してもらうわよ。」

 

エクレアから発せられる魔力がオリジンの周囲を黄金のオーラと化して包み込む。

 

そして、エクレアの領域(テリトリー)が形成された。

 

「ガキが・・・面倒な真似を・・・」

 

「レイ!戦いはこれからだ!」

 

「・・・・・・もういい。」

 

な、何だ・・・レイから発せられていた気が全く感じられなくなった・・・?

 

「もういい・・・お前達のツラを見るのもうんざりしてきた・・・」

 

レイから一切の雑念と感情が消失した。

 

ALFESHION MODE CHANGE・・・

 

“RAGE”

 

〜0〜

 

「レイ・桜葉にも弱点はあります。」

 

「あ、阿部殿!そのような大事な事を何故、今頃になって言うのですか!」

 

「いえ、それは教えてどうにかなる弱点ではありませんし・・・それに・・・」

 

アバジェスはモニターに映るアルフェシオンを見てはっきりと告げた。

 

「その唯一の弱点はたった今消失しました。」

 

「え?」

 

レイ・桜葉の弱点・・・

 

それは感情を持っていること・・・

 

最強の存在でありながら、その魂は人間がもつそれと同じ脆き繊細なものだ。

 

故に肉親や知人に対して情けをかけてしまい、その実力を発揮する事ができないでいた。

 

しかし、裏を返せばそれだけである・・・

 

弱点が無い者・・・

 

果たして、その者を何と呼称するのだろうか?

 

 

 

「タ、タクトさん、アルフェシオンが・・・」

 

「な、何だ・・・この静けさは・・・」

 

俺はその不気味なプレッシャーを警戒し直感的にシャイニング・スターのRAGE MODEを起動させる。

 

「・・・・・・」

 

もはや、レイは何も喋らない・・・

 

何も感じない・・・

 

今のレイはキラーマシンそのもの・・・

 

「タクト・・・来るわよ・・・」

 

「あ、ああ・・・」

 

俺は気を発しないレイの静けさに恐怖を抱いている・・・

 

しかし

 

「タクトさん・・・決着をつけましょう。」

 

ミルフィーのその一言が俺の恐怖を打ち消した。

 

「全機、連携を忘れずに引き続き攻撃だ!」

 

「了解!」

 

とてつもなく大きな衝撃が来る前には何故か沈黙が漂うという・・・

 

それは大津波の前兆である引き潮と同じだ。

 

アルフェシオンが遂にその真の力を天使達に晒す事になった。

 

天使達は再度アルフェシオンに連携攻撃を仕掛けた。

 

それは理論的に回避不能な連携攻撃だった。

 

しかし・・・

 

「な、何?」

 

アルフェシオンは残像を残さずに消失し、天使達の攻撃を回避する。

 

そして、天敵を迎え撃つ蜂のようなフライヤーが天使達に容赦なく襲いかかる。

 

「な、何て数なんだ!?」

 

僕は驚愕した。

 

レイさん・・・いや、敵のフライヤーの数は僕が認識しきれない程の数に増殖していたからだ。

 

「こ、これが・・・“あの人の本気”なのか・・・」

 

確かに数の多い弾幕はリスクも大きい・・・

 

しかし、もしその多大な数のフライヤーを操る事が可能ならば話は別だ・・・

 

そう・・・コンピューターのように人知を超えた操作を出来る者がそれを操った時・・・

 

それは悪夢の如き展開を見せる!

 

「れ、連携も何も・・・ぐぁ!」

 

アニス達の紋章機にフライヤーが容赦なく直撃し続ける。

 

そして、直撃した箇所は全て駆動部を狙ったもの・・・

 

その誤差は0,001ミリも満たさない・・・

 

それを可能にするのはその赤き神眼・・・

 

その誤差は

 

 

「レイ!」

 

天敵のアルフェシオン目掛けてシャイニング・スターが斬りかかる!

 

「・・・・・・」

 

それに冷静に斬り返すレイ。

 

その洗練された動きの何処に隙などあろうものか・・・

 

その隙は・・・

 

 

「全く、今日は厄日だぜ!」

 

悪態をつきながらもシリウスはレイに斬りかかる。

 

そんなオリジンに対して、アルフェシオンは詠唱時間無しのヘル・バイスで牽制にかかる。

 

「二度も同じ手を喰らうほど間抜けじゃないわ!」

 

エクレアはヘル・バイスの因果の解体にかかり、消去させる。

 

と次の瞬間、アルフェシオンはメインターゲットをヴァニラとナノナノへと変更したのだ。

 

そう、この二人は天使達の修復を担当する貴重な存在である。

 

故に、この二人を最初に潰しておくのは戦略的に見れば当然の事だ。

 

アルフェシオンの胸部の反射ミラーが展開され漆黒の粒子が集束し始めた。

 

デス・ブラスター・キャノン

 

インフィニより精製された混沌の高出力エネルギー砲・・・その威力は星々を飲み込んで宇宙を駆け抜ける・・・

 

「あいつ!」

 

俺は即刻、レイにクラウ・ソラスでムーンサルトを描きながら奇襲攻撃を仕掛けた。

 

しかし、奴は予めその事に気付いていたのか、デス・ブラスター・キャノンの矛先を俺に切り替えた。

 

その距離僅か2メートル

 

まずい!間に合わない!

 

「させるか!」

 

「・・・・・・」

 

レイはデス・ブラスター・キャノンを中断し、タクトから距離を取った。

 

次の瞬間、レイが先程いた場所を幾筋ものビームが走りぬけた。

 

「もうあなたには負けられないんだ!」

 

「・・・・・・」

 

レイは無表情にカズヤ・・・シャイニング・スターに向けてフライヤーを射出した。

 

「・・・見えない!?」

 

カズヤに襲いかかったフライヤー今までに無い動きだった。

 

表現するとすれば鋭くもなければ鈍くもない・・・

 

ただ、表現できるのはその動きは一寸の隙もなく一寸の狂いもない精巧なものだった。

 

「ぐぁ!」

 

アルフェシオンに喰らいつこうとするシャイニング・スターにフライヤーが直撃する。

 

タクトだけではない、他の天使達にも着実にフライヤーは命中している。

 

無論、一寸の狂いもなく。

 

それは、流れ作業のように予め決まった工程のように・・・

 

レイのフライヤーは天使達をじわじわと痛めつけていく・・・

 

「マジョラムさん!指定の位置に着いたわよ!」

 

「OK!」

 

テキーラはCAOS SEAを詠唱した。

 

その詠唱が始まる前にレイの詠唱が完成した。

 

「いけない!」

 

その事に気付いたエクレアが因果の分解にかかるが・・・

 

「な、何これ・・・私の知らない魔法?」

 

エクレアの因果の分解・・いやDELETEはその魔法の構成パターンを熟知していなければ意味を成さない・・・

 

「タクト、ゴメン!」

 

故に今レイが発動させようとしている未知の呪文に対する対処法が見つけられないのだ。

 

「任せろ!シャイニング・スター!」

 

シャイニング・スターの広域INフィールドが天使達を力強く包み込んだ。

 

やがて、レイはタクト達を牽制しながらその未知の魔法を発動させた。

 

OMEGA EXCUTION

 

始まりは絶対零度のこの亜空間を凍りつかす程のダイヤモンドダストが襲いかかる!

 

「な!?フィ、フィールドを貫通した!?」

 

「さ、寒いです〜!」

 

 

 

司令室のモニターはもはやその役目を放棄していた。

 

「因果が遮断され始めた・・・状況は不利になりましたね・・・」

 

「い、一体、何が起ころうとしているんですか?」

 

「レイが本気でタクト達を叩き潰そうとしているんです・・・あれは・・・」

 

私が鬼を討伐する為に編み出した魔法だ。

 

あれは本当の処刑用の魔法なのだ。

 

あいつがそれを放つ気になったという事は間違いなく本気になったという事だ。

 

この魔法は合図にしかすぎない。

 

どうする?タクト・・・

 

今回ばかりは本当に奇跡は起こらんぞ?

 

 

さっきまで氷点下だった周囲が突如、灼熱地獄と化し、その温度差が天使と紋章機に襲い掛かる!

 

「うわぁぁーーー!」

 

それは罪人を裁く為の魔法・・・

 

天使が裁かれるとは何とも皮肉な事だが・・・

 

そして、次は周囲の温度差によって誘電現象が生じ、高圧放電が巻き起きる・・・

 

「く、どうして、フィールドが・・・」

 

そして、放電現象が起きてる最中に辺り一面が水中に化した。

 

万物はどれもが電気に対する耐性・・・抵抗を持っている・・・しかし、水はその抵抗を限りなく下げる性質をもっている。

 

「う、うわあああーーー!」

 

表現しがたい悲鳴があがる。

 

そして、お前達の生存を認めないと言わんばかりの大爆発が巻き起こり、タクト達にトドメを刺す!

 

「・・・・・・うぅ。」

 

僕が目を開けるとそこにはあの人がいた。

 

「・・・レイさん。」

 

「・・・どうしたカズヤ?この俺を超えるのではなかったのか?」

 

そ、そうだ・・・

 

「ならば、くすぶってないで這い上がれ・・・」

 

守らなきゃ・・・

 

僕が意識を取り戻すと辺り一面にフライヤーが展開されていた。

 

トドメを刺さんと言わんばかりに・・・

 

「おっと、待ちな・・・」

 

え?

 

そこにはGA−008 フェンリルがいた。

 

「ロ、ロキさん!」

 

ど、どうやってここに・・・

 

ここは、エクレアの結界の中なのに・・・

 

どうやって・・・?

 

「随分と大人気ねぇな?レイさんよ?」

 

ロキさんは僕達を庇うようにあの人と対峙している。

 

「・・・・・・」

 

「へ、黙っていてもお前が性悪だってのは丸分かりだぜ。」

 

「失せろ」

 

「おっと、そうはいかねぇな?お前が苛立つ有様は“いつ見たって愉快痛快だぜ。”」

 

なんだろう・・・

 

この二人のオーラはとても対照的だ。

 

レイさんは冷たくて空虚のようなオーラをもっている・・・

 

それに対してロキさんのオーラは炎・・・相手を挑発し、何もかもを沸騰させる熱さを持っている。

 

「失せろ」

 

レイさんが言うと同時にフライヤーがロキさんに襲い掛った!

 

「へ、相変わらず人の話を聞かない野郎だ!」

 

ロキさんが、ビームマシンガンでレイさんを牽制し始めた。

 

僕はこの隙にドッキングを解除する。

 

そしてその解除の最中で、僕は驚いた。

 

「えぇ!?」

 

ロキさんは飛行形態の紋章機には回避困難であるフライヤーを回避しているのだ。

 

しかし、僕が本当に驚いたのはここからだった。

 

「チッ!」

 

ロキさんが舌打ちすると同時にロキさんもフライヤーを展開したのだ。

 

その数は50機余り、普通の人間にコントロールできる数でないのは僕がよく知っている。

 

でも、どうしてロキさんがフライヤーを使えるんだ?桜葉家の人だから?いや、紋章機の開発者だから?

 

レイさんのお父さんだから?いや、この二人は血の繋がってない関係だ・・・

 

何と言うか親子ではなく・・・

 

「いくぜ・・・性悪!」

 

「・・・・・・」

 

二人のフライヤー戦が始まった。

 

「こ、これ・・・これは・・・」

 

ロキさんが操るフライヤーの軌道を僕は何処かで見た記憶がある。

 

どこでだ・・・どうして思い出せないんだ?

 

誰のフライヤーに似てる事に・・・

 

「ちっ・・・」

 

しかし、やはりフライヤーの使い方にはレイさんの方が上手なのか、ロキさんのフライヤーの数は徐々に数を失っていく・・・

 

このままだとロキさんがやられるのは目に見えていた。

 

そうなればリコが悲しむだろう・・・

 

そう思った瞬間、僕もフライヤーを展開していた。

 

「・・・っ?」

 

レイさんの意識がこっちにながれると同時に僕の方に42機前後のフライヤーがこっちに襲い掛かるのが見えた。

 

「くっ・・・」

 

僕は20機あまりのフライヤーに撃退しろと命じる。

 

フライヤー同士が入りくるい、小規模な戦争をしているような光景が広がる。

 

「・・・クソッ!」

 

フェンリルに数箇所あまりが被弾した。

 

「ロキさんは後退して下さい!このままではやられるだけです!」

 

「馬鹿野郎!いきがってんじゃねぇ!」

 

「違います!勝てるから下がってほしいんです。」

 

「な、何ぃ〜!」

 

「・・・・・・」

 

心なしかレイさんのフライヤーの勢いが増した気もするが・・・

 

「だから、ロキさんがいるとやり辛いんです!御願いですからここは僕に任せて下さい!」

 

「わ、わぁったよ・・・」

 

ロキさんはそう言うと言う通りに後退していった。

 

勝てるなんて出まかせだった。

 

しかし、皆は僕が守ってみせる・・・

 

リコ、君が僕を支えてくれると言った言葉・・・

 

その礼をここでするよ!

 

僕は全神経をフライヤーに集中させた。

 

身体の芯から芯までが宇宙に溶け込んでいる感じがする。

 

「・・・馬鹿が・・・身の程を知れ。」

 

冷徹な声がカズヤに浴びせかけられる。

 

「やってみてから言って下さい!」

 

僕は新たに70機のフライヤーを展開する。

 

「・・・・・・」

 

敵のフライヤーの数は現在、100機あまり・・・

 

現状下においては理想な数を揃えている。

 

「いいだろう・・・来い、小僧・・・」

 

小僧・・・それが今のレイさんが認識している僕の形なんだ・・・なら、その小僧という認識を改めてもらいますよ!

 

「いっけぇ!」

 

再び、フライヤー同士の宇宙戦争が始まる!

 

両者共に激戦区より生き延びたフライヤーを本体への攻撃命令を下す。

 

その度に両者共新たなるフライヤーを召喚して迎撃に入る。

 

次々と射出されていくフライヤー・・・

 

しかし、状況はカズヤが不利だ。

 

現在のレイのフライヤーの総数 574機

 

現在のカズヤのフライヤーの総数 512機

 

両機共にインフィニ搭載機ではあるが、たった一機で全宇宙と戦ってきたアルフェシオンとは違い、ブレイブ・ハートはあくまでサポート用の紋章機なのだ。

 

現在のレイのフライヤーの総数 736機

 

現在のカズヤのフライヤーの総数 685機

 

つまり戦いが長引けば長引く程にカズヤのフライヤーの数よりもレイのフライヤーの数が多くなっていくのだ。

 

「あ、頭が爆発しそうだ!」

 

今はまだあの人のフライヤーの軌跡が見えるけど、もしあの人がこれ以上数を増やせば・・・

 

現在のレイのフライヤーの総数 947機

 

現在のカズヤのフライヤーの総数 739機

 

その数はもはや人間レベルではない・・・

 

無論、パイロットへの負荷も尋常ではない。

 

まだか!まだなのか!あの人の底はまだ続いているのか!?

 

やがて、レイのフライヤーが1000機を越えたと同時にレイは物量戦にうって出た。

 

「失せろ、小僧。」

 

カズヤのフライヤーは根負けしたかのように次々と撃墜されていく。

 

「く・・・くそ。」

 

ここでやられたら皆が・・・

 

リコを守るって誓ったのに・・・

 

このままじゃやられる!

 

次々とカズヤのフライヤーが撃墜されていく。

 

その時・・・僕の脳裏に一つの言葉が蘇った。

 

カズヤさん、愛してます。

 

他の誰よりもカズヤさんを愛しています。

 

        ・・リコ、君は・・・

 

俺が守る!

 

次の瞬間、カズヤのフライヤーの動きが一変し、今度は逆にレイのフライヤーを撃墜し始める。

 

「な、何・・・!?」

 

レイは再度パターンを入れ替えて攻撃命令を出すが、カズヤのフライヤーはそれすらも見切っているかのようにレイのフライヤ−を撃墜し続ける。

 

「お、俺の読みが全て読まれているのか?」

 

「見える・・・見えるよ。」

 

お忘れかもしれないが、カズヤは前大戦時においてアプリコットと交わり、そのDNAを書き換えられている。

 

そして、アプリコットが所持していたバランスデティクションの眼を持ち、そこにカズヤの研ぎ澄まされた直感と・・・

 

ミルフィーユのクローン体であったカズヤはその強運の一部を受け継いでいた。

 

その眠っていた潜在能力が開花されたのだ。

 

「なめるな。」

 

しかし、レイとて負けてはいない。

 

その神眼はアプリコットのバランスコンデティクションの原型・・・

 

「く・・・」

 

押され気味だったレイのフライヤーが元の鋭さを取り戻し、徐々にカズヤのフライヤーを押し始める。

 

現在、カズヤのフライヤーの数は54機

 

現在、レイのフライヤーの数は46機

 

「大した奴だよ・・・お前は・・・」

 

初めてだ・・・本気で倒そうと思って倒せなかった相手は・・・

 

その雑念が原因だったのだろうか・・・

 

奇跡は本当に一瞬であっさりと起きた。

 

バヂィン!バヂィ!

 

「な、何!?」

 

何と、カズヤのフライヤーがレイに数発被弾したのだ。

 

「あ、当たった!?」

 

「な、何だと・・・」

 

その事態に二人の動きは止まった。

 

この瞬間が・・・

 

カズヤがレイを超えた瞬間だった・・・

 

「今だ!」

 

カズヤは気を取り直し、再びレイに攻撃を仕掛けた。

 

しかし、それに対しレイは今起きた事が認識できないまま呆然としてるだけだ。

 

実際、カズヤの攻撃はそのINフィールドで弾かれている為にダメージは無いのだが・・・

 

俺がカズヤに負けた・・・

 

そうか・・・

 

遂にここまできたのか・・・

 

しかし・・・まだここでお前にやられる訳にはいかない。何故なら俺の標的は・・・

 

俺がこの世界に来た目的は・・・

 

「くそ・・・このままじゃ埒があかない!」

 

「・・・カズヤ。」

 

その穏やかな声にカズヤの攻撃が一瞬止む。

 

「遂にお前は俺を超えた・・・」

 

「え?」

 

「・・・・・・・・・しかし」

 

レイは一瞬でカズヤとの距離を詰めた。

 

「・・・っ!?」

 

そして、アルフェシオンの右手にはスレイヤー・オブ・デステニーがいつの間にか握られていた。

 

「しかし、所詮はフライヤー使い!接近戦には対応しきれまい!」

 

ブレイブ・ハートを真っ二つにしようとスレイヤー・オブ・デステニーが薙ぎ払われた。

 

「や、やられる!?」

 

本来なら人間には目視できない速さなのだが、今のカズヤにはそれがスローモーションがかかったかのような錯覚を覚えた。

 

バヂヂヂィーーー!!

 

しかし、その剣はもう一つの“同じ剣”によって受け止められた。

 

「・・・タクトさん」

 

「・・・・・・」

 

「相手を間違えるな、お前の目的は俺だろう・・・」

 

「ほざくな・・・」

 

タクトの言葉を待たずにレイのフライヤーがシャイニング・スターへ襲い掛かる!

 

「させるかっ!」

 

カズヤのフライヤーがそれを阻止した。

 

「相変わらず余計な真似をしてくれるな・・・」

 

「余計な真似をするのはカズヤだけじゃないよ。」

 

「・・・ちっ」

 

レイは舌打ちして自分の後方を見た。そこには倒した筈の天使達がいた。

 

「まったくもってお前達はゴキブリのような生命力だな・・・ある意味敬意に値する・・・」

 

「レイ、勝負はここからだ。」

 

「隊長・・・決着をつけさせてもらいますよ。」

 

「・・・・・・」

 

ふ、全くこいつらはどこまでも俺の感情を揺さぶる。

 

「ならば、来い!ギャラクシーエンジェル!」

 

(イメージ曲 Wing of destiny)

 

タクトとカズヤは再び合体する。

 

この間、レイが攻撃をしてこなかった事がレイの言葉に偽りが無い事を知らせている。

 

「いくぞ・・・レイ!」

 

「来い・・・タクト!」

 

先陣をきったのはタクトとレイ。

 

二つのスレイヤー・オブ・デステニーがぶつかる!

 

しかし、ぶつかったのはもう一機・・・

 

「隊長!」

 

「・・・っ!」

 

レイはもう一つのダインスレイブでシリウスのデス・ブリンガーを受け止めた。

 

「エクレア!“アレ”を使う!」

 

「了解・・・いいのね?」

 

「ああ!」

 

オリジンにはかつてのシリウスの攻撃性をも呼び戻すシークレットモードが隠されている・・・

 

その名は・・・

 

MODE THE MAD DOG

 

「き、来たぜぇ〜・・・やはり、俺はこうでなくっちゃぁなあああぁぁぁーーーっ!!」

 

「ふん・・・邪鬼め。」

 

レイはタクトとの斬り合いを中断し、シリウスとの距離を一気に遠ざけながらもシリウス達に向けてフライヤーを10機放った。

 

「チィ!うぜぇんだよ!」

 

何発か被弾しながらもシリウスは的確にフライヤーの数を減らしていく。

 

「カズヤ!」

 

「はい!リコ!」

 

「はい!」

 

遠ざかるアルフェシオンを唯一追従するシャイニング・スター・・・

 

「レイ!」

 

「・・・・・・っ!」

 

再び、スレイヤー・オブ・デステニーで斬り合う二人・・・

 

「こいつ!」

 

「お前なんかに!」

 

斬り合う最中、仲間達が追い付く。

 

「タクト!援護するわよ!」

 

最初に仕掛けたのはランファ!

 

しかし、アンカークローは忍ばせておいたフライヤーにより撃墜される!

 

「そんな事は百も承知よ!マジョラムさん!」

 

「行くわよ死神!アジート!」

 

「抜かるじゃねぇぞ!」

 

アニスはレイ目掛けてダガーを発射した!

 

「アニス・・・?」

 

レイはアニスのダガーを感知してフライヤーに攻撃命令を下した。

 

当然の如くレイはそのダガーに命中させた。

 

そして、命中させた瞬間・・・

 

「・・・っ?!」

 

当たり一瞬は真っ白な空間に覆われた。

 

(目くらまし?随分と舐められたものだな。)

 

レイはアニス達とランファ達への攻撃命令を下そうとした次の瞬間・・・

 

「ちとせか!?」

 

バヂィン!ヒュン!バヂィッ!バヂィィ〜ン!

 

視界ゼロの中でアルフェシオンの中心部を狙ってきたアルテミスの矢をレイは全て切り払う!

 

この後の動きは大方予想がつく・・・

 

フォルテ達の集中砲火が来なければ・・・

 

「背後に回りこんだ貴様が斬りかかってくる段取りになってるんだろう!?」

 

レイは180°旋回して背後のタクトと向き合った。

 

「馬鹿め!」

 

レイはデス・ブラスター・キャノンでタクトを迎え撃つ!

 

「ここは私達に任せて下さい!リコ!」

 

「うん!」

 

シャイニング・スターの胸部には桜色の粒子が・・・

 

肩口のツイン・キャノンにはオレンジ色の粒子が集束されていく・・・

 

「・・・っ!?俺と真っ向から挑むつもりか!」

 

「いっけぇーーーっ!」

 

両機の距離は30000・・・

 

その間でこの強力なエネルギー砲がぶつかり合うにはあまりにも衝撃が強すぎた!

 

表現しがたい轟音と周囲の機体を弾き飛ばす程の衝撃波が巻き起こる!

 

「く・・・」

 

「ぅ〜!」

 

1VS2の勝負にも関わら両者共に互角!

 

「チィ!衝撃波が邪魔で近寄れねぇ!」

 

「落ち着いて、いつまでも続く筈がないわ。」

 

(チビだったこいつらがここまで・・・)

 

レイの口元が緩んでいた事には本人すらも気付いていなかった。

 

やがて両者共にオーバーヒートを起こし、機能を一時中止した。

 

「ち・・・」

 

「オラァ!」

 

ここぞとばかりにシリウスはその狂犬ぶりを再び発揮し始めたのだが・・・

 

(やむを得ん・・・)

 

まさか、それがレイの決断を促す事になろうとは誰もが思いもしなかっただろう・・・

 

「・・・これで、終わりだ。」

 

カッ!

 

と一瞬の間で辺り一面を巨大な爆発が襲いかかった。

 

シャイニング・スターはオーバーヒートした身でINフィールドを展開したが、それでもその威力を完全に防ぎきる事はできなかった。

 

「うわぁぁぁーーっ!」

 

真っ白な空間の中で天使達は周囲がどうなっているかなんて分かる筈が無かった。

 

「こ、これは!あ、あいつの・・・」

 

そうレイが放ったのは己が最強の神魔法・・・

 

INFINITY ZERO

 

やがて、爆発が頂点に達した頃・・・

 

(さらばだ・・・ギャラクシーエンジェル)

 

「ゼロ」

 

やがて無がタクト達を飲み込もうと遠方より来訪してくる・・・

 

その時の俺は無我夢中だった・・・

 

このままじゃやられると・・・

 

皆が・・・俺の仲間達がやられると・・・

 

誰に?

 

よりにもよってアイツにだ。

 

そんな事・・・そんな事だけは絶対に認める訳にはいかない・・・認めたくない。

 

認めたくないじゃない!させてたまるか!

 

その時何故か俺の脳裏にはあの言葉が蘇っていた。

 

そして、彼女と繋がっている時に見えたあの銀河が・・・

 

あの銀河をもう一度見たい・・・

 

笑っている俺の幸運の女神と・・・

 

だから、お前は邪魔だ・・・

 

俺の中に確かなる怒りと意思が建立され、それは魂をも消耗し、エネルギーへと変化していく・・・

 

まさに、無がタクト達を呑みつくそうとした瞬間だった!

 

「今度はこっちの番だ・・・この野郎!」

 

「・・・?」

 

GALAXY IMPACT

 

俺が心の中でそう呟くとシャインング・スターが今までになく輝き・・・

 

「な、何っ!?ぐあああぁぁぁーーーっ!?」

 

飲み込もうとした無と高みの見物でいたアイツを光り輝く衝撃波が破壊に掛る!

 

「な、何だとぉぉぉーーー!?」

 

「ここからいなくなれぇぇぇーーー!!」

 

真っ白な空間の中、アルフェシオンは今までに類をみない衝撃波に破壊されつくされている!

 

そう、これこそが、ルシファーことミルフィーユがレイの天敵と言われる理由・・・

 

無そのものであるレイが唯一その対処法を持たない魔法である。

 

やがて、GALAXY IMPACTとはその役目を終えた・・・

 

その衝撃は本来ならば不可能な筈のエクレアの領域すらも破壊してしまったのだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・どうだ・・・お、思い知ったか・・・」

 

攻撃は間違いなく成功した。さすがのアイツもさっきのは防ぐ事はできなかっただろう・・・

 

とはいえ、こちらもシャイニング・スターを残し、他は壊滅状態だ。

 

もはや、これ以上の戦闘は・・・

 

しかし、そこには・・・

 

アイツがまだ存在していた。

 

「ち・・・し、しぶとい奴・・・」

 

「はぁ・・・はぁ・・・き、キサマ・・・」

 

モニターに映るレイの顔は今までに見た事が無い程に疲労していた。

 

「さすがのお前も堪えたみたいだな・・・」

 

俺は何かおかしくて思わずにやけてしまう。

 

それが、よほどアイツには気に食わなかったらしい・・・

 

「やはり、キサマは俺の天敵だ・・・そのツラを見てるだけで怒りがこみ上げてくる・・・!」

 

「それはお互い様だ・・・」

 

両者共に消耗は激しい・・・

 

しかし・・・

 

これから始まるタクトとレイの戦いが・・・

 

未来永劫、EDENとNEUEの歴史に名を残す程の名勝負となるなど誰が思おうか?

 

~白き彗星Vs黒き彗星~

 

負ける訳にはいかない・・・

 

アイツだけには負ける訳にはいかんのだ。

 

そうでなければ俺がこの世界に来た意味が無くなる・・・

 

タクトを殺す者・・・それがこの俺なのだから・・・

 

「レイ・・・」

 

そんな俺の心境も知らぬアイツの声が聞こえてくる。

 

「お前の目的は俺なんだろ?なら・・・」

 

「自意識過剰も程々にしろ・・・!」

 

「嘘をつくな!」

 

「何?」

 

「俺と同じでお前を俺の事が気に食わないんだろ!だったら、ごちゃごちゃ言ってないで俺に向かって来いと言ったんだこの馬鹿!」

 

「ば、馬鹿だと・・・」

 

普段なら、相手にしないのに・・・

 

何故だ・・・コイツに言われるとここまで苛立つのは・・・

 

「レイ・・・サシで勝負を受ける気はあるか?」

 

「サシだと・・・馬鹿か貴様は?弱ている相手から仕留めるのは戦場の常識だ。」

 

「それも嘘だ・・・お前はできない。」

 

「なめるな。」

 

まだフライヤーを呼び出す余力はあったのか、フライヤーが他の天使達を包囲する。

 

「確証がある・・・お前は今まで俺達を殺そうと思えばいくらでも出来た筈だ。」

 

そうだ・・・あれ程、何度も言ったのに・・・

 

「しかし、お前は殺せなかった・・・それはお前が弱虫以外の何者でも無い証拠だ。」

 

その言葉に何故かレイは多少驚いた表情でタクトを見つめた。

 

そして、この隙に俺はシャイニング・スターのドッキングを解除する。

 

ロキにミルフィーの操縦席をリコと同じ所に配置してくれと頼んだのは間違いではなかった。

 

これから始まる死闘の衝撃にミルフィー達は耐え切れない・・・

 

俺は最初からこんな状況になるだろうとある程度は予測していた・・・

 

「・・・昔、貴様と同じ事を言った奴がいる・・・」

 

・・・ああ、お前は弱虫だよ。

 

「そして、俺はその時・・・」

 

アルフェシオンの重心が僅かに動いたのを俺は見逃さなかった!

 

「・・・・・・その馬鹿を徹底的に叩き潰した!」

 

遂に、奴が動いた!

 

俺は、迫るアイツを背に後方の本星宙域に後退する。

 

やはり、アイツは俺の事が余程気に食わないらしくミルフィー達の事は後回しにするようだ。

 

しかし、こちらとて問題はある・・・

 

インフィニの出力調整を担うミルフィーが不在な事だ。

 

今のレイはGALAXY IMPACTの衝撃で弱まってはいるが、それでもインフィニの出力をいじれない訳ではない。

 

だから、この戦いはあいつが回復する前にあいつを倒すしかない!

 

「ちぃ!逃がすか!」

 

「誰が逃げるか!」

 

そして、遂に両者の剣が衝突する。

 

それが二人の決闘開始の合図だった。

 

「タクト機と敵機が交戦に入りました!」

 

司令室にもその二機がぶつかる様が映し出された。

 

「タクト・・・父上・・・」

 

「・・・この勝負、果たして生き残るのはどちらかな・・・」

 

トランスバール本星・・・

 

その本星を見守るように優しく照らすは白き月・・・

 

その宙域は何とも美しいスターライトに照らされている・・・

 

その中を常軌を逸する速度で動き回るのは

 

白き彗星と黒き彗星

 

その紋章機を操るのは

 

奇跡の体現者と完全の体現者

 

二人は似て対となる者同士・・・

 

「うぉらぁ!」

 

タクトの大振りな一撃をレイは当然の如く回避し、カウンターの薙ぎ払いを放つ!

 

「とっ!?」

 

そして、タクトもそのカウンターを見切っていたかのようにその“薙ぎ払いと水平”にシャイニング・スターを操作してやり過ごし、そのままクラウ・ソラスでアルフェシオンの首を刈り取ろうとする!

 

「チッ!」

 

レイはそのクラウ・ソラスごと叩き斬ろうとスレイヤー・オブ・デステニーを振り下ろす!

 

「くそっ!」

 

強引に体勢を立て直し、それを同じ剣で受け止めるタクト・・・

 

そして、それをデス・ブラスター・キャノンで仕留めようとするレイ!

 

「ま、まずい!」

 

タクトはアルフェシオンと直角に逃げる。

 

「出力60%・・・構わん!牽制になれば良い!」

 

出力は60%とはいえど、その威力は通常兵器とは比べものにならない程だ。

 

不利な体制のまま回避したタクトを更にフライヤーの軍団が追い討ちをかけてくる!

 

タクトは懸命にも切り払うが・・・

 

「くそ!あいつ・・ぐぁ!?」

 

全部を切り払う事は叶わず何発かは命中してしまう!

 

「とどめだ!」

 

そして、レイはトドメと言わんばかりにヘル・バイスを放つ!

 

「ヘル・バイス!?」

 

しかし、タクトもいつまでもやられてばかりでは無い・・・

 

「見えた!」

 

タクトは空間を圧縮するという因果を断ち切った!

 

「何!?」

 

これにはレイも驚く。

 

(サンキュー・・・アバジェス)

 

「ば、馬鹿な!」

 

レイは信じられないといった表情で再度ヘル・バイスを放つ。

 

「無駄だ!」

 

そして、タクトも再度ヘル・バイスの因果を断った。

 

スレイヤー・オブ・デステニーが可能にさせた奇跡であるが、間違いなくレイが不利になったのは変わりない。

 

「こ、こいつ・・・」

 

レイは初めて恐怖した。

 

(因果を断ち斬るなど・・・)

 

レイがエクレア達の魔法を無効化したのはあくまで因果を解析し、分解していった・・・

 

それはまさに柔の所業と言えるだろう・・・

 

しかし、タクトがやってのけたのは分析どころか、ただ強引に叩き斬っただけなのである。

 

それを豪の所業と言わずして何と言うのだ?

 

「大した奴だよ・・・」

 

今度はアルフェシオンから斬りかかる!

 

そして、スレイヤー・オブ・デステニーを握った右手でけさ斬りを放つ!

 

「でやぁ!」

 

無論、最初の一撃などこの二人には挨拶程度に過ぎず、ここより本当の斬り合いが始まる。

 

「このぉ!」

 

タクトは脳天唐竹割りをレッグ部のクラウ・ソラスで再現し・・・

 

「馬鹿め!」

 

レイはその逆をつき、一度後方に退きタクトの隙をスレイヤー・オブ・デステニーで突きにかかる!

 

「おおっと!」

 

タクトはシャイニング・スターのアーム部分から発光弾を射出した!

 

「何!?」

 

辺り一面が真っ白になるが、そんなもので標的を見失うレイではない。

 

「子供騙しがぁっ!」

 

レイは両手のアーム部分から粒子状のワイヤーを射出する。

 

「フィールドを貫通し、タクトを捕獲しろ!」

 

10匹のサタンテイルが主の言いつけ通りに真っ白な視界の中、最短距離で接近する!

 

「きた!」

 

前回もこの場所でこのワイヤーに何もできずにいた・・・

 

でも、今回は違う!

 

「・・・?」

 

変だ、俺のワイヤーはサーモチェッカー(熱感知)タイプだ。例え、相手が光を加工して分身を作ったとしても本物を見抜いて捕らえる筈なのだが・・・

 

・・・・・・そうか、そういう事か!

 

「気付かれた、ならここまでだ!」

 

「アイツ(ロキ)!余計なものを!」

 

レイは、神眼でタクトの本体を捕らえ、同等の熱量を発しているものに対し、シャドウ・サーヴァント(強化型フライヤー)を放った!

 

「本体はそいつだ!」

 

サタンテイル達はその座標へ集中す!

 

「遅いんだよ!」

 

無論、タクトもこうなる事を分かっていた。

 

「シャイニング・・・サァァァーーーン!!」

 

シャイニング・スターがその名に恥じぬ発光現象を巻き起こす。

 

その発光の前に粒子状の筈のサタンテイル達は砂のようにボロボロと崩れていく・・・

 

「な、何?詠唱せずに発動させただと!?」

 

詠唱なしで最上位の神魔法を発動させれるのは神の力を持ったレイやエクレアぐらいのものである。

 

「そうか!あの馬鹿女か!?」

 

ミルフィーユは自分の分身・・・

 

その細胞の一部を受け継いだアイツはこの俺と同等の神格を持ったに等しい・・・

 

しかし、それでもここまで成長するとは・・・

 

一体、何を・・・

 

そうか・・・そういう事か・・・

 

その理由に気付いたレイは多少寂しげに笑みを浮かべた。

 

「そのまま、いっけぇぇぇーーーー!」

 

タクトは球体状にしたシャイニング・サンをレイ目掛けて放った!

 

球体状にしたのは周囲を巻き込まない為だ・・・

 

しかし、その大きさはレイの回避を困難にするには十分にこと足りたものだ。

 

「図に乗るな!」

 

(お前相手に逃げてたまるか!)

 

レイは瞬時に球体状のオメガ・ブレイクを迫り来るシャイニング・サンへ放ち、ぶつけた。

 

凄まじい衝突音と衝撃波を撒き散らし、辺り一面の視界はまたしてもゼロになる!

 

そして、タクトはこの時を待っていたのだ!

 

「今だ!」

 

タクトは一気にレイとの距離を詰める!

 

「馬鹿が・・・神眼を持つ俺がお前の思考を読めぬとでも思ったか!」

 

レイは、スレイヤー・オブ・デステニーを右手に召喚した!

 

「気付かれた!?」

 

タクトも2秒後に召喚する予定だったスレイヤー・オブ・デステニーを右手に召喚する!

 

やがて、同じ剣は衝突する!

 

「タクト!キサマがいなければ!」

 

(俺が・・・俺がこの世界に来る必要はなかったのに・・・)

 

「それはこっちのセリフだ!お前さえいなければ!」

 

「この世界から消えろ・・・!俺の前から・・・消え失せろぉぉぉーーー!!」

 

「お前こそ、ここからいなくなれぇぇぇーーー!!」

 

その常軌を逸したやり取りは他の天使達に聞こえていた。

 

「タ、タクトさん・・・お兄ちゃん・・・」

 

(どうして、神様はあの二人をこのような形でめぐり合わせたんだろう・・・二人共本当は仲良くなれる筈なのに・・・だって、二人は似てるんだから・・・)

 

ば〜か、似てるからこそ、お互いを嫌悪するんじゃねぇかよ・・・

 

「お前の存在そのものが矛盾している!お前がここにいること事態が世界を汚している!だから、さっさと、失せろぉぉぉーーー!!」

 

「そんな事、勝手に決め付けるなって言うんだ!コノォォォーーーーー!!」

 

「な、何なんだ・・・あの二人は・・・」

 

シヴァは目の前で繰り広げられる幼稚なやり取りを交えた死闘に呆然としている・・・

 

「レイが、今まで蓄積していたタクトへの嫌悪感を爆発させた事により、タクトの中にあったレイへの嫌悪感を誘爆させたところでしょう・・・」

 

「こ、これではまるで子供だ・・・」

 

「そうです・・・本当の大人などこの世に存在しないのです・・・」

 

(私も・・・そして、この戦いを見ているお前もな・・・)

 

あ〜子供で結構さ・・・

 

そして、二人の戦いにも変期が訪れた。

 

「・・・ふ」

 

「・・・?」

 

突如、不敵に笑ったレイが気になり、周囲に意識を集中させる・・・

 

「フライヤー!?」

 

「この距離ではかわせまい!」

 

「なめるな!」

 

「・・・っ!」

 

タクトはシャドウ・サーヴァントの高出力のビームが迫る直前にムーンサルトを描きながらレイを乗り越えた。

 

「ふ・・・馬鹿め!」

 

そして、何と直撃する筈のフライヤーはレイをすり抜けていったのだ・・・まるで幻を貫くように・・・

 

「・・・・・・」

 

タクトは目を閉じ、意識を更に集中させる。

 

「これが、無の境地だ。タクト・・・」

 

「・・・ああ、そうだな!」

 

何と、タクトは何も無い筈の己の右側の虚空に向けてスレイヤー・オブ・デステニーを突き刺した!

 

「何だとっ!?」

 

そして、それはそこにいる筈のなかったアルフェシオンの装甲をかすらせていた。

 

「これが、明鏡止水ってやつだ。レイ・・・」

 

「ま、まさか・・・貴様、見切っていたのか・・・」

 

「ああ、存在も無にするなんていくらなんでも無茶苦茶だって思い、他の可能性を考えてみた・・・」

 

「ち・・・雑魚(エンジェル隊)との戦いで多用したのが裏目に出たのか・・・」

 

「その可能性は残像を残し、本体は目にも止まらぬ速さで他の場所にいる・・・違うか?」

 

「・・・・・・正解だ。もはや、お前相手に小細工は無用の代物だな・・・」

 

バニッシュボディはもう使えんな・・・

 

俺はアルフェシオンの原動力をスレイヤー・オブ・デステニーへ回す。

 

「初めてだ・・・この俺をここまで追い詰めたのは・・・だからこそ、全てを犠牲にしてでもお前を倒す・・・!」

 

やがて、俺は信じられない光景を目にした!

 

「スレイヤー・オブ・デステニーが二つも・・・いや、三つ?!」

 

アルフェシオンの周囲にスレイヤー・オブ・デステニーが次々と召喚されていくのだ。

 

「・・・クリーンファイトをプライドとしていたレイがプライドを捨ててまで勝負にでるとは・・・」

 

レイの師であるアバジェスはその光景を感慨深く見ていた。

 

(さぁ、どうするタクト・・・レイは本気でお前を殺すつもりだぞ?)

 

「これらを偽物だと思うのなら、受けてみるといい・・・さすればこれらが全て本物だと身をもって知るだろう・・・さぁ、タクト・・・覚悟はいいか?」

 

レイはスレイヤー・オブ・デステニーと周囲を取り巻く四つのスレイヤー・オブ・デステニーを徘徊させながらタクトを威圧する。

 

「卑怯な奴め・・・」

 

「一人相手に集団で挑んできたお前が言えた事か?・・・まぁいい、どうせもうすぐ死ぬのだからな!」

 

そして、レイが先制攻撃を仕掛けてきた!

 

「ち!まともに戦ってどうにかなるものじゃない!」

 

タクトは反撃の機会を窺いながらも後退する事にした。

 

しかし、そんなタクト目掛けて必殺の威力を秘めた剣が飛び掛ってくる。

 

切り払っても、剣は諦めずに再びタクト目掛けて飛び掛ってくる!

 

「終わりだ!」

 

「チィッ!!」

 

そして、レイは逃げ惑うタクトとの距離を詰め仕留めようと斬りかかってきた!

 

左からのけさ斬りを辛くも同じ剣で受け止め、ニ撃の薙ぎ払いをムーンサルトを描いて奇跡的な回避運動を見せた。

 

「確かに奇跡的だ・・・しかし、奇跡は何度も起こるものではないぞ!」

 

何と、レイはサマーソルトを描きながら、右レッグに発生させたスレイヤー・オブ・デステニーで斬りかかった!

 

「くそぉ!」

 

ジャオゥ!

 

宙域にも関わらず凄まじい風切音を発するレイの魔剣。

 

タクトは間一髪で回避に成功するも・・・

 

「間抜けがぁ!」

 

ここぞとばかりにレイはシャイニング・スターの首を跳ね飛ばそうと剣を薙ぎ払う!

 

「うおぉぉーーー!」

 

俺はいちかばちかでサマーソルトを描きながら、右かかとのクラウ・ソラスでレイのスレイヤー・オブ・デステニーを受け止めた!

 

「何?」

 

無論、受け止めきれるなんて思っちゃあいない。

 

直にクラウ・ソラスは消失するだろう・・・

 

ほんの一瞬だけの時間さえ稼げればそれでいい!

 

俺はそのまま体勢を立て直し、レイの懐に潜り込む!レイはまだ体勢を立て直せていない!

 

今だ!

 

俺は、ここぞとばかりにスレイヤー・オブ・デステニーで突きにかかる!

 

「本当に馬鹿な奴だ・・・」

 

「何・・・っ!?」

 

俺が周囲を見渡すとそこには四つのスレイヤー・オブ・デステニーが四方から俺を串刺しにするように配置されていた。

 

「わ、わざと、隙を・・・」

 

「チェックメイトだ。タクト・・・」

 

レイが指を鳴らす動作を見せる。

 

「やられる!?」

 

その時だった。

 

ドォォーーーン!

 

「な、何だと!?」

 

突如、オレンジ色のビーム砲がアルフェシオンに直撃したのだ。幸い、フィールドが展開され直撃には至らなかったが・・・それでも、レイが油断したという事実は変わらない・・・

 

タクトに固執しすぎた為、普段なら回避できる一撃をまともに受けてしまったのだ。

 

「ちぃ!キサマァッ!」

 

レイは攻撃してきた者が誰であるか知っている。

 

「い、言った筈だよ・・・私は逃げないって・・・」

 

苦しそうに、そう呟いたのは気を失っているアプリコットを大事そうに抱きかかえているミルフィーユであった。

 

「だ、駄目だ!ミルフィー!逃げろーーー!!」

 

「タクトさん・・・私だってタクトさんを守りたいんです!」

 

「き、貴様は・・・どこまでも俺の障害に・・・!」

 

アルフェシオンから発せられるオーラがレイの怒りにより勢いを増していく・・・

 

スレイヤー・オブ・デステニーが全機、ミルフィーユのクロスキャリバーへ向けられる。

 

ま、まずい!レイは本気でミルフィーを攻撃するつもりだ!

 

「や、やめろ!相手はお前の妹なんだぞ!」

 

「黙れ!キサマには分かるまい!俺があの馬鹿女にどれほど、苦しまされたか!」

 

「そんな子供みたいな理由で!」

 

俺はレイに斬りかかる!

 

「お前よりも先にあの馬鹿を始末してやる!」

 

レイはタクトの剣を易々と受け止めるとミルフィーユに向けて四機のスレイヤー・オブ・デステニーを飛ばした!

 

「これでも俺は弱虫か!?」

 

「ヤメロオオオオオオオオオ!!」

 

そして、タクトがありったけの声で叫んだ時、奇跡は起きた。

 

「な、何!?」

 

ミルフィーユを串刺しにしようと向かっていた筈の四機のスレイヤー・オブ・デステニーが消失したのだ。

 

「馬鹿な!俺のスレイヤー・オブ・デステニーの解析コードは俺しか知らない筈だ!」

 

分が悪いと判断したレイは一度タクトから距離をとった。

 

そして、呆然としているタクトにそれを追いかけようする気力は無い。

 

何故なら辺り一面は桜色の天使の翼が舞っていたからだ・・・

 

タクト

V

レイ

 

(イメージ曲 Eternal Love 2007)

 

「な、何だこれは・・・」

 

「ありがとうございます・・・タクトさん。」

 

「え、俺は何も・・・」

 

何もできずにいただけだ。

 

「そんな事ありません・・・タクトさんの想いがその子(シャイニング・スター)に届いたんです。」

 

「え・・・」

 

やがて、モニターには・・・

 

LUSHIFER FILED

 

と表示されたのだ。

 

「ル、ルシファー・・・フィールド・・・?」

 

「まだ俺の知らない能力を隠し持ってるというのか・・・シャイニング・スターは・・・」

 

お忘れだろうか、シャイニング・スターとアルフェシオンは対の存在なれど元はラグナロクより別れし、分身であると・・・

 

レイことルシラフェルとミルフィーユことルシファーがそうであるように・・・

 

二機の成長は大きく別れていった・・・

 

アルフェシオンが攻撃性に特化していったように・・・

 

シャイニング・スターも防御性に特化していったのだ。

 

「な、何・・・スレイヤー・オブ・デステニーが一つだけしか召喚できない・・・!?」

 

ルシファーフィールド・・・

 

争いを好まないルシファーの領域・・・

 

先程誕生した為にその効果は未知数であるが、少なくともこれがタクトとレイの戦況を大きく揺さぶる事になった事だけは事実だ。

 

「ありがとう、ミルフィー・・・でも、ここからは俺に任せてくれ・・・必ず・・・今度こそあいつを倒して見せるからさ。」

 

「はい・・・」

 

ミルフィーの目は信頼に満ちている・・・

 

そうだ、今度こそ決着をつけなきゃいけないんだ。

 

「こ、この・・・!どこまで俺の邪魔をすれば!」

 

ルシラフェルはこの上なく苦渋の目でルシファーを睨みつけた。

 

「レイ!これで条件は同じだ。」

 

レイが振り返るとシャイニング・スターの右手にも同じ剣が召喚されていた。

 

「・・・奇跡が立て続けに起こるなど思うなよ・・・!」

 

「お前こそ、世の中の全てが自分の思い通りに動くなんて思うな!」

 

二機は同時に動き出す!

 

辺りを舞う翼を跳ね除けて互いの天敵を目掛けて・・・斬りかかる!

 

ギィン!ギャン!

 

最強の剣がぶつかり合い、激しい衝撃音を辺りに撒き散らす!

 

「今度こそ決着をつけてやる!」

 

「それはこちらの台詞だ!キサマとの腐れ縁もこれまでだ!」

 

しばらく膠着状態に入っていた二機は距離を離す!

 

(とはいえ、まともにやって勝てる相手じゃない!)

 

タクトは白き月の背後にあるデブリ(暗礁区域)へと逃げ込む!

 

「ち!スレイヤー・オブ・デステニーの伸縮も出来ないのか!なら・・・!」

 

レイはかろうじて残っていたフライヤーをデブリへ逃げ込んだタクト目掛けて射出する!

 

「やはりそう来たか!」

 

フライヤーがデブリの残骸を抜けてくる事は分かりきってる。

 

それなら!

 

「ち・・・タクトの気配が感知できない・・・これもこの鬱陶しい翼のせいか!?」

 

レイは鬱陶しいそうに辺りの翼を跳ね除ける。

 

「フライヤーは40機飛ばした・・・オートコントロールろはいえ、奴を炙り出すのには十分だ。」

 

やがて、フライヤー達が主の元へと戻ってくる。

 

その内の“三機は一直線に戻ってくる”

 

「・・・ちっ!」

 

その時点でレイは戻ってきたフライヤー13機を切り払う。

 

バヂィン!

 

先の3機はエクスカリバーによって串刺しにされ飛ばされてきたものだった。

 

「ちっ!」

 

レイは白き月を周回し、背後に回り込もうとしたタクトに気付き、自身も白き月へと接近する。

 

「タクトォォォーーー!」

 

「レイィィィーーーー!」

 

白き月の目の前で披露するかのように衝突し合う二機!

 

ダインスレイブ・フェイカーとクラウ・ソラスが幾度も衝突し、両者共に次の手次の手と先手を狙う!

 

「チィ!いい加減にしぶといんだよ!」

 

「それはこっちの台詞だ!この野郎!」

 

やがて、凄まじい死闘の最中、両者の機体にもダメージが蓄積する。

 

シャイニング・スターの肩口をダインスレイブ・フェイカーが切り裂いた!

 

「ぐっ!このぉ!」

 

タクトは斬られながらも反撃を忘れない!

 

攻撃に転じた者には必ず隙ができる。

 

タクトはその隙を突きに出たのだ。

 

クラウ・ソラスがアルフェシオンの太ももに突き刺さる!

 

「ちっ!?野郎!」

 

タクトはそのクラウ・ソラスを切り離し、第二手に映る!

 

そして、レイも反撃に転じる!

 

互いに退く事はない、退く必要もない。

 

何故なら両者共、この戦いで決着をつける覚悟でいるからだ。

 

決着はどちらかが死ぬ事でつく!

 

「す、凄い・・・これが二人の戦いなのか・・・」

 

シヴァを始めたオペレーター達も本来の役目を忘れてその凄まじい死闘に釘付けだった。

 

「さて・・・俺は自分の役目を果たす事にしよう・・・」

 

アバジェスは誰にも言わずにその場より立ち去った。

 

「お前は最初から気に食わなかったんだよ!」

 

「それはこっちも同じだ!この野郎!」

 

桜色の翼が漂う幻想的な世界の中で激しい戦闘を繰り広げるのはたったの二機・・・

 

対照的に見えて似た者同士の決闘・・・

 

「いい加減に堕ちろ!」

 

「俺が堕ちるのはお前を倒してからだ!」

 

両パイロット共その驚異的な体質でコクピット内に響く衝撃波を乗り越えている・・・

 

両機のモニターには損傷率が60%を超えた警告表示が出されるが、両者共にそれを無視して戦い続ける!

 

そして、その意思は二機の紋章機も同じことだった。

 

もはや、人間レベルでは無い読み合いの戦いが今ここ白き月の前で行われているのだ。

 

「あなた・・・」

 

白き月の管理者であり、レイの妻であるシャトヤーンは願った・・・

 

どうか、二人が無事であるようにと・・・

 

「タクトさん・・・・・・」

 

レイの妹でタクトの妻であるミルフィーユは祈った。

 

どうか、タクトが勝利する事を・・・

 

やがて損傷率は80%を突破し、命の危険を知らせる警告音が激しく鳴り響く!

 

両機とも修復機能は既に機能を停止している。

 

「まだまだぁぁぁーーー!!」

 

「おおおぉぉぉーーーー!!」

 

それでも、互いの存在を認めないと言わんばかりの殺し合いを続ける!

 

「俺は・・・お前にだけは・・・お前にだけは負ける訳にはいかんのだ!分かるかっ!?」

 

「ああ!分かった上で言ってやる!今度はお前が負ける番だってなぁ!」

 

「ほざくなぁぁぁーーー!」

 

「なめるなぁぁぁーーー!」

 

やがて、シャイニング・スターは左足を失い、アルフェシオンの右足を斬り飛ばした!

 

損傷率は90%へ近づく・・・

 

「まだだ!シャイング・スター!お前のド根性を見せろ!そしてアイツを叩きのめすんだ!」

 

「負けるな!アルフェシオン!お前の誇りをあいつに見せ付けろ!そして、捻り潰せ!」

 

両者が片足を失った事で、戦いは終焉へ向けて一気に加速していく!

 

「お前さえいなければ!お前さえ・・・お前さえいなければぁぁぁーーー!!」

 

レイはスレイヤー・オブ・デステニーで斬りかかる!

 

そして、タクトもスレイヤー・オブ・デステニーでそれを受け止める!

 

「逆恨みも程々にしろってんだ!このぉぉぉーーー!」

 

タクトは空いた左手でアルフェシオンの首の動力系チューブを引きちぎった!

 

「ぐ!?ヤロォォォーーー!!」

 

対して、レイは左手でシャイニング・スターの左手をダインスレイブで切断し・・・

 

「うぁ!このぉっ!」

 

そのまま斬りかかろうとし・・

 

シャイニング・スターの右レッグのクラウ・ソラスがその左手を切断した!

 

そして、終焉に近づくと思われた次の瞬間先に離脱したのはレイの方だった。

 

「ちっ・・・もはや、これで残るはこの剣だけか・・・」

 

「次で決まる・・・あいつとの決着が・・・」

 

一撃必殺の剣・・・スレイヤー・オブ・デステニー

 

タクトとレイが睨み合ってる中、またしても奇跡が起きた。

 

「タクトさん!負けちゃ駄目だ!」

 

「カズヤ!?気が付いたのか!?」

 

「タクトさん!負けないで!」

 

「リコも!」

 

「カズヤ、リコ・・・」

 

「タクト!負けたりしたら承知しないからね!」

 

「隊長の見せ所だよ!」

 

「ランファ!フォルテ!」

 

「タクトさん・・・信じてます。」

 

「ナノナノも信じてるのだ!」

 

「ヴァニラ、ナノナノも・・・」

 

「タクト!この戦いに勝ったら、うめぇもん食わせてやっからな。なぁ!?ミント。」

 

「その言い方には引っ掛かるところがありますが、タクトさん、負けないで下さいまし・・・」

 

「タクト、あんたここで負けたら男失格よ?」

 

「そうですに〜」

 

「アニス、ミント、テキーラ・・・ミモレットも・・・」

 

「タクト殿、明鏡止水の心を忘れるな!」

 

「ああ!ありがとうリリィ!」

 

「タクトさん覚えてますか?弓道とは自分との戦いだと・・・」

 

「ああ、覚えてるよ。ちとせ・・・」

 

そうだ、アイツを倒すには俺が俺自身の壁を越えるしかない!

 

「“クソ親父”!テメェは俺を負かしたんだから、ここで負けたら承知しねぇぞ!コラァッ!!」

 

シリウスはタクトを指差して言い放った。

 

「言われなくても分かってるよ!クソガキ!」

 

それに対し、ガッツポーズで返すタクト。

 

「タクト、今こそあなたはレイを超えるの!あの時、あなたが私に見せた強さをもう一度見せて!」

 

「ああ!キスの用意をして待っててくれ!」

 

「殺すぞ!テメェ!!」

 

「約束するわ!」

 

「ってオイ!?」

 

暖かい声援がシャイニング・スターのインフィニと共鳴し、シャイニング・スターが虹色に輝く!

 

「別れの挨拶は済んだか?タクトッ!」

 

「別れじゃない!再開の挨拶だ!」

 

「相変わらずクサい台詞だ!反吐が出る!」

 

アルフェシオンも漆黒のオーラの勢いを最大限まで高める。

 

「哀れな奴だ。お前は確かに強い・・・欠点も無い・・・しかし、お前は・・・お前は・・・」

 

タクトは右手に“スレイヤー・オブ・デステニーらしきもの”を召喚する・・・

 

それに対してレイは右手にスレイヤー・オブ・デステニーを召喚する・・・

 

「お前は“情”を知らない!だから人の痛みが分からない!」

 

「それがどうした!?」

 

「こ、このバカヤロォォォーーー!!」

 

「それはこっちの台詞だ!」

 

そして、両者共に斬りかかる!

 

レイはタクトにわざと左足が無防備であることを見せ付ける・・・

 

そして、レイの計算通り、タクトはアルフェシオンの左足を切断し・・・

 

「もらった!」

 

レイは予定通り、シャイニング・スターの右腕を切断し・・・

 

「見えた!そこだぁぁっ!」

 

「・・・っ!?」

 

シャイニング・スターは右足をアルフェシオンの首目掛けて蹴り伸ばし・・・

 

レイはチェックメイトにかかる!

 

「タクト!」

 

「レイ!」

 

次の瞬間・・・・・・

 

「な、何ッ・・・!?」

 

驚いたのはレイの方だった・・・

 

何故なら、それはタクトの計画通りだったからだ。

 

確かにレイはタクトの最後の砦であるシャイニング・スターの右腕のスレイヤー・オブ・デステニーで右足を切断した!

 

しかし、それよりもいち早くシャイニング・スターの右かかとより出現したスレイヤー・オブ・デステニ−が確実にアルフェシオンの首を突き刺していた。

 

やがて、アルフェシオンがその機能を停止した。

 

タクトは肉を斬らせて骨を断ったのだ。

 

やがて、桜色の翼もその役目を終えたといわんばかりに霧散していく・・・

 

「・・・・・・負けた?」

 

俺がタクトに負けた・・・負けたのか・・・

 

しかし、何故だ?悔しさよりも達成感がみなぎっているのは・・・

 

そうか、思い出した。

 

俺はこうなる事をどこかで望んでいたんだ。

 

こいつが“あいつ”に相応しい男なのかを見極める為に俺はこの世界へ来たんだ。

 

どうして、そんな事を忘れていたんだろうな・・・

 

俺も馬鹿だな。

 

これから、“あいつ”の事を馬鹿というのは自粛しておくか・・・

 

まぁ、この先があるとは思っていないがな・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・俺の勝ちで文句はないな?」

 

「・・・ああ、認めてやる・・・この勝負お前の勝ちだ。」

 

「よ、よし・・・」

 

勝った・・・あいつに勝ったんだ!

 

「見事だったぞ!タクト!」

 

シヴァを初めとして周囲から拍手喝采が鳴り響く・・・

 

馬鹿な!レイが負ける等と・・・

 

本気になったアイツを倒したとなれば・・・

 

・・・・・・いいだろう。

 

そんなに、俺に会いたいならこちらから会いに行ってやるぜ!

 

「レイ、約束だ。アキトを返し、“真犯人”が誰なのか応えてもらうぞ。」

 

「・・・・・・いいだろ・・・っ!?」

 

「・・・?どうし・・・・・っ!?」

 

な、何だ・・・この気は・・・

 

レイのものとは質が違うが、その大きさはほとんど変わらない・・・

 

(イメージ曲 BRETH OF FIRE 后 ̄鵑じ討喟)

 

やがて、タクト達の周囲に不気味なスモークが漂いはじめる。

 

というか、この俺が巻き起こしたデモストレーションなんだがな・・・

 

「な、何だ・・・このドス黒い思念は・・・今までに見た事もない殺気だ!」

 

「い、いや・・・来ないで・・・」

 

「リコ・・・リコ!?」

 

リコの顔色はもの凄く悪い・・・それはこの世で最も恐れている者の来訪を見ているかの如く・・・

 

「リコ?・・・どうしたの!?」

 

「カ、カズヤさん・・・あの人が来ます・・・」

 

「え・・・あの人?」

 

「お姉ちゃんも分かる筈・・だよ・・・」

 

「え・・・」

 

アプリコットは背筋に走る悪寒に身震いする・・・・・・ったく、失礼な奴だな・・・

 

「シリウス・・・来るわ。」

 

「ち・・・このタイミングでかよ。」

 

その不気味な光景はシヴァ達にも伝わっていた。

 

「な、何が起ころうとしているんだ・・・」

 

「この気・・・私がよく知ってる人?」

 

ミルフィー・・・いやデザイアは何故か唐突にそんな事を口走った。

 

「隠れてないで出て来い!」

 

「よ、よせ・・・」

 

「どうしてだよ!こいつが真犯人なんだろ!」

 

「だからよせと言ってるんだ。今の戦力では奇跡が起ころうとも奴には勝てん・・・ここから、逃げろ!」

 

「逃げたくても、ここはトランスバールなんだぞ!?」

 

「奴はこの地域には迂闊には手を出さん!“今までの襲撃も予めEDENへの被害を最小限に抑える事を前提にしていたんだ!”」

 

「・・・ちょ、ちょっと待て!という事は今までの戦いも・・・」

 

「そうだ・・・俺やエクレアもあいつの呪縛に縛られ従属させられ、あいつの命令通りに実行してきた。その絶対的な命令は“お前達を殺すな”だった。」

 

そうとも、お前達を殺すのはこの俺の役目だからな・・・

 

「な、何だ・・・?」

 

タクト、俺を感じるか?

 

「・・・っ!?」

 

俺が気付いた時には白き月を背景に忘れたくても忘れられないあいつの紋章機があった。

 

「ラ、ラスト・リヴェンジャー・・・?」

 

「ち・・・」

 

「そうよ、タクト・・・ラスト・リヴェンジャーは元々、彼の紋章機なのよ。」

 

「馬鹿な!ラスト・リヴェンジャーは完全に消滅させた筈なのに!」

 

「馬鹿じゃねぇのか?仮にも俺の紋章機がそんな簡単にくたばる訳がねぇだろうが。」

 

「この声!」

 

変声器を用いたようなこの声、忘れもしない!

 

「お、お前はカ、カルマ・・・?」

 

「ご名答・・・言ったろう?俺は死なないと・・・何故なら、この物語の主人公であり・・・」

 

このゲームのラスボスなんだからなぁ・・・

 

モニターに映ったカルマの姿は仮面を被った

レイそのものだった・・・

 

「そ、その姿は・・・」

 

否、それは死神のメシアと呼んだ方がいいのか・・・

 

「相棒から聞いたと思うが、お前を誘拐し、七番機を改造したのはこの俺だ。」

 

「ま、まさか・・・ブラウドをけしかけたのも・・・」

 

「あ〜それもこの俺の仕組んだ事さ・・・」

 

「ヘパイストスで戦ったのも・・・」

 

「あ〜もう、面倒くさいからはっきり言ってやるよ・・・今までの企みは全てこの俺の仕組んだ事さ。ちなみにお前達とはサマエルとかいう名前で会った事もあったけなぁ〜?」

 

「外宇宙とのパイプ役もお前だったんだな・・・」

 

「パイプ役?“作者”の間違いだろう?」

 

「・・・お前が真犯人だったのか!」

 

「はは!普通に考えたら分かるだろうが、この世でこんなにもイカした“殺し愛ゲーム”をプロデュースできる奴なんてこの俺しかしねぇだろう?」

 

「き、貴様・・・」

 

「くっくっくっ!“いつ見たってお前の悔しがる顔を見るのは愉快痛快だなぁ”?それでこそ、この物語を創ったかいがあるってもんだぜぇ・・・」

 

「こ、この・・・」

 

「おおっと、そんな瀕死の状態でこの俺と戦えるとでも思ってんのか?まぁ、お前がどんな状態であれ俺のすべき行動に変更は無いがな。」

 

ラスト・リヴェンジャーから桁外れの魔力の集束を感じる・・・

 

「く、くそ・・・!」

 

「さて、俺が今から何をしようとしてるか分からない訳でもねぇだろ?俺の必殺技でお前達を木っ端微塵にしてやるよ。」

 

俺の必殺技 オメガ・ノヴァ・・・

 

「待ちなさい。」

 

「何だよ、偽者2号」

 

ちなみに1号はレイの事だ。

 

「タクト達はレイとの戦いで負傷してるわ、そんな状況で一網打尽だなんてあなたらしくないわよ。」

 

「は、ははは!はーはっはっはっ!こいつは傑作だぁ・・・それで、お前は俺にこんな絶好のチャンスを目の前にして間抜けに引き下がれとでも言う気か?」

 

「ええ、あなたに戦士としてのプライドがまだあるのならね・・・」

 

「・・・・・・エクレア。」

 

「お願い・・・これ以上、私を失望させないで・・・」

 

「・・・・・・」

 

何だ、この二人の会話は・・・

 

本来、このキチガイにまともな話は通用しない・・・

 

しかし、この二人の会話には何故か親密さがある・・・

 

「今回だけだぜ・・・」

 

「少しだけ見直してあげるわ・・・」

 

「・・・ふん。」

 

ラスト・リヴェンジャーが背を向けた次の瞬間、とても巨大なエネルギー砲が発射された!

 

ジェノサイド・ブロウ

 

機能を停止したシャイニング・スターにもはや回避する余力は残っていない。

 

「何て帰ると思うか!ば〜か!」

 

「あなたは!」

 

しかし、思わぬ事が起きた。

 

俺の視界を黒いものが遮った。

 

「アルフェシオン!?レイ!」

 

「ぐ、ぐぐ・・・!」

 

「相棒!?」

 

俺は慌ててジェノサイド・ブロウの照射を中断した。

 

「く・・・」

 

「な、何故だ!何故、邪魔をする!?」

 

「カ、カルマ・・・いずれタクトは“あの場所”まで連れて行く・・・だからここは退け!これ以上、俺に恥をかかせるな!」

 

「・・・・・・ち、わぁったよ。おいタクト・・・」

 

「何だ!?」

 

「お前は俺が必ず殺してやる・・・」

 

夢で宣言したようになぁ・・・

 

「ふざけるな・・・返り討ちにしてやる!」

 

「できるもんならなぁ・・・?」

 

そう言い残すと、奴の紋章機は処理落ちをしたかのように消失した。

 

「カルマ・・・お前は俺が倒す!」

 

「ち・・・馬鹿なことをした・・・」

 

「レイ!?」

 

この後、救出作業が始まり、重症を負ったレイに関してはアバジェスが特別治療室へと運んでいった。

 

俺も怪我の度合が酷いとの事で強制入院を強いられた・・・

 

そして、アバジェスからアキトを無事救出したとの情報が見舞いに来たミルフィーから届いた。

 

 

いよいよか・・・

 

これで、残る敵は一人・・・

 

というか、ようやく俺の出番かよ・・・

 

待ちくたびれたぜぇ・・・クソが・・・

 

まぁいいさ・・・

 

相棒と違い俺は優しく無いという事を教えた後で、木っ端微塵に解体してやるか・・・

 

くっくっくっ!あーはっはっはっはっ!

 

逆襲の堕天使 完

 

次回、終幕 ラグナロク

 

 

 

 

 

 

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