それは俺が中学2年生の秋の11月の頃に遡る・・・

 

「・・・って事を聞いたんだけどよ。随分とアンタから聞いた内容と食い違ってんだが?」

 

「そうか・・・食い違っているか・・・フフ・・・」

 

「き、気味悪い笑い方やめろ・・・」

 

俺は珍しくクソジジイの家を一人で訪れていた。

 

茶一つも出さないのがジジイらしい・・・

 

「亮・・・覚えておけ、俺達のような死が間近な者が嘘をつくと思うか?」

 

「いや、思わねぇよ・・・」

 

「なら、逆に過去を知らぬ者達が資料だけで判断をしないという可能性はあるか?」

 

「・・・・・・ねぇよ。」

 

あれから、このジジイの元で俺が学んだ事は老人は偉いという事だ。

 

どうしようもなく馬鹿で乱暴な事で有名だった俺だが俺は老人だけには敬意を払っている。

 

何故かって思うか?

 

あの戦乱の世を生き抜き、今の俺たちの生活の基盤を築きあげてきた連中だ。

 

目の前のクソジジイもそうだが、戦争という殺すか殺されるかの世界を生き抜いてきた者達を俺達が評価する事などおこがましい・・・

 

誰が何と言おうと老人は偉いのだ。

 

そして、その偉いはそれなりの功績を俺達に残してくれたからこそ与えられたものなのだ・・・

 

俺は今でも思う・・・

 

果たして、俺が過去に遡った時に連中と同じ事ができるかと・・・

 

だから、俺にとって真とは老人の言う事である。

 

だから、学校の社会において聞いた事に俺は疑いを真っ先に持ち、こうしてジジイに聞いてきた。

 

だからなんだろう、社会だけの成績が良かったのは・・・

 

「亮・・・お前は、どうして修行をする気になった?」

 

「あ?いきなりなんだよ?」

 

「答えろ・・・」

 

「そんなもん、強くなりたいからに決まってんだろ。」

 

「何故、強くなりたい?」

 

「やな事聞くなよ・・・」

 

己が弱いという事を認められないプライドがあるかだなんて言えるかよ。

 

「あいつをはり倒す為だよ。」

 

「そうか・・・」

 

それ以上、クソジジイがこの事に触れる事はなかった。

 

その一ヶ月後の冬の入り目・・・

 

クソジジイは享年72歳でこの世を去った・・・

 

俺は今でもジジイが何か俺に教えたかったのかが分からずにいる・・・

 

ただひとつ・・・

 

真実は老人の頭にあるという事を学んだ・・・

 

 

EX 逢魔ヶ刻

 

・最強の敵〜

 

長年に渡り、EDENとNEUEを脅かしてきたカルマは多くの犠牲を払い消滅した。

 

カルマが運用していたブラウド財閥も今では見る跡もなく、この世から消えた・・・

 

しかし、まだ裁かれねばならない者達がいる・・・

 

ブラウド財閥のスパイ・・・ザレム派である。

 

しかし、ザレム派の者達は物的証拠がないという理由で執拗に無実を主張する。

 

皇国に住まう者達の中にもザレム派の恩恵を受けて生活している者・・・つまり、本心でなくてもザレム派を指示しなければならない者達も多くいる。

 

そういう状況なのでシヴァ女皇の権限を用いてザレム派を裁く事は不可能に近い・・・

 

しかし、それでもルフト先生は諦めずにザレム派の者達を集めては証人喚問を繰り返していた。

 

しかし、今の俺達はそんな事を気にはしていられなかった・・・

 

ロキ、アバジェス、シリウスにエクレア・・・

 

戦いの犠牲者は四人・・・

 

全部、俺達が非力だったからだ・・・

 

でも、それだけじゃあない・・・

 

真犯人は最初からあの筋書きを用意してたんだろうと俺は思っている・・・

 

絶対に許せない・・・

 

そして、絶対に殺してやる・・・

 

生まれて初めてだ・・・

 

ここまで何かを殺したいと思ったのは・・・

 

あの事件の後、ミルフィーとリコは桜葉家へと帰宅した・・・

 

二人の希望だった。

 

ロキの戦死を報告しに・・・

 

俺はそこにいてはいけないと思い辞退し、そしてミルフィーもそれを了承した。

 

そして、俺は真犯人の調査に乗り出していた。

 

無論、これは独断での行動だ・・・

 

もはや、真犯人を知ってるのは本人とレイだけになってしまった・・・

 

そして、肝心なアイツはあの戦いの後、アルフェシオンと共に姿を消した。

 

あの野郎・・・

 

おそらく、あいつは今すぐに教えないのにはそれなりの理由があるんだろうが、分かっていても腹が立つ・・・

 

そんなある日・・・

 

ルフト先生はザレム派の議員全員に出廷を求め、最後の詰めに入ろうとした・・・

 

事件はその時に起こった。

 

「何だって!」

 

連絡はルフト先生が証人喚問を行っている皇城の別館からだった。

 

知らせたのは別館の受付担当の女性だ。

 

別館が何者かに襲われたとの事だった・・・

 

しかし、その途中で音声は途切れた・・・

 

この別館は皇城より離れた位置にあり、火災でも起きない限り、皇城が別館の異変に気付かない。

 

何でそんな場所を選んだのかが分からないが今はそんな事を気にしてる訳にもいかない。

 

俺は滞在していた白き月より、シャイニング・スターに搭乗し、皇城へと急行し、別館へと赴くとそこには既に皇国の兵士達が集まっていた。

 

「状況はどうなっている!」

 

「マ、マイヤーズ殿・・・」

 

兵士達は何故か状況報告をしようとしない・・・

 

「どうした!?教えてくれ!」

 

「・・・・・・そ、それは・・」

 

俺の中の嫌な予感が膨れあがる・・・

 

考えられるのは最悪の状況・・・

 

「・・・っ!」

 

俺は制止する兵士達を無視して別館に乗り込んだ。

 

(イメージBGM ブレス・オブ・ファイア検〔(めつ))

 

「うっ!?」

 

入るなり、その異臭に俺は息を呑んだ・・・

 

別館の中、一面に血の匂いが充満していた・・・

 

それはそうだろう・・・

 

壁は真っ赤にただひたすら真っ赤に返り血により染め上がり・・・

 

床には人の形をかたどっていたであろう肉塊が散乱していた。

 

「うげぇっ!」

 

俺は思わずその人間の世界ではない死の世界に戻してしまった・・・

 

受付には受話器を握った手だけが見えていた・・・

 

本体を失った手が・・・

 

もはや、性別の区別すらつかない肉塊が受付カウンターの中に散乱している・・・

 

「な、なんだよ・・・コレ・・・」

 

これと似たような光景を俺は見た記憶がある・・・

 

フィノリアの惨劇・・・

 

カルマに操られたアバジェスが引き起こしたという惨劇・・・

 

平和の象徴ともいえた最大の魔法都市が一瞬にして地獄へと化した・・・

 

俺は、返り血に染まりながらも役目を果たしている館内案内を頼りにルフト先生がいたであろう4階の会議室を目指した。

 

殺人鬼により非常電源まで切断されたのかエレベータは使用できず俺は階段を登り続けるのだが・・・

 

その鉄製の手摺は柵だけのものにされていて・・・

 

そこには百舌のはやにえのように人が串刺しにされていた・・・

 

まるでコレクションを披露するかのように・・・

 

「うわああああああああああああああああ!!!」

 

俺は叫び声をあげて4F目指して全力疾走する。

 

「うわ!?」

 

3Fと4Fの階段の踊り場で何かに躓き転倒する・・・

 

「うわああああああああああああああああ!!」

 

それは内蔵を抉り出された遺体だった。

 

「わあああああああああああああああああ!!!」

 

4Fの会議室への通路は一本のみ・・・

 

そして、そこには壁に横たわった死体の群れだった・・・

 

生存確認の必要はない・・・

 

何故なら・・・

 

通路を通り抜ける者を無差別に呪い殺さないばかりに目を見開いているからだ・・・

 

もし、生きていたとしても俺にはそれを人間と判断する勇気はない・・・

 

そして、俺が通り抜けた後で、横たわった死体達の首がクラッカーのように弾けた。

 

「・・・っ!?」

 

俺は会議室の中に転がり込んだ。

 

そして・・・会議室の中はこの惨劇のフィナーレを飾る有様だった。

 

「・・・・・・・・・」

 

俺は呆然と立ち尽くしす・・・

 

ルフト先生が生存してる可能性はまずない・・・

 

何故なら、会議室の中は肉塊の山と化していたのだ・・・

 

確認するまでもない・・・

 

ここまで、狂っている殺人鬼だ・・・

 

生かしておく訳がない・・・

 

だが、そう分かっていても俺は諦めきれず、先生の捜索にあたる・・・

 

しかし、そんな俺の懇願はいとも簡単に破られた・・・

 

目の前には・・・ルフト先生の服と思われしものの断片と、血に染まった毛髪とルフト先生がしていたサークレットが転がっていた・・・

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

その後、俺はひとしきり叫んだ頃、皇城への呼び出しを受けた・・・

 

呼び出しを受けたタクトはシヴァ女皇の自室へと赴いた・・・

 

地獄絵図を返り見ながら・・・

 

「まさか、こんな事になるなんて・・・」

 

シヴァ女皇は髪を下ろしながら気の進まない言い方をした・・・

 

「・・・・・・」

 

俺は何も言えなかった・・・

 

状況説明を求められても答える気になんてなれない・・・

 

それにおそらく被害状況は既に伝えられているだろう・・・

 

「タクト・・・戦争は・・・」

 

手を震わせながらシヴァは続けた・・・

 

「戦争は・・・カルマとの戦いは終わったのではないのか?」

 

「・・・既にご存知だとは思いますが、報告書で申し上げたとおり、カルマは消滅する寸前に自分自身も真犯人の操り人形でしかないと言ってました・・・」

 

「では・・・これも真犯人の仕業だという事か!」

 

シヴァは鏡台を力一杯叩いた。

 

「・・・・・・シヴァ様、自分に真犯人捜索の任を頂けませんか?」

 

「・・・・・・タクト、お前はもう十分に戦った・・・」

 

シヴァ女皇が俺の事を心配してるのがよく分かる・・・

 

「・・・・・・」

 

「真犯人はあのようなキチガイそのものの行動を起こすような危険な輩だ・・・阿部殿やロキ殿・・・あの二人に続いてルフトも逝ってしまった・・・その上、万が一にもお前の身に何かあったら・・・私は・・・耐え切れない・・・」

 

「シヴァ様・・・」

 

その後、俺はシヴァ女皇に促され、白き月へと帰還した・・・

 

白き月では先の最終決戦で傷付いた紋章機とルクシオールの修理が行われている・・・

 

不幸な出来事は度重なり訪れる・・・

 

知らせは姉と共に自宅に帰省中のリコからだった。

 

“ミルフィーが眠ったまま起きない”との事だった・・・

 

まるで、ネオ・ヴァル・ファスクの時と同じように・・・

 

俺は自室で一人深い眠りについた。

 

“今は誰とも顔を会わせたくない・・・”

 

悔しさで張り裂けそうになる気持ちを抑えてる顔を誰にも見られたくない・・・

 

 

 

「やめてぇや・・・嘘や・・・こんなの・・・」

 

俺の視界には金縛りにあったかのように動けずにいるコロネの姿だった・・・

 

コロネの懇願の目は俺の目へと向けられてるようだ・・・

 

何だ・・・これは・・・

 

俺自身にコロネと会った前後の記憶がない為、これは夢だと判断した。

 

馬鹿馬鹿しい・・・

 

夢なんか見なくていい・・・

 

静かに眠らせてくれ・・・

 

「嫌や・・・嘘や・・・こんな事したら・・・」

 

タクト、俺を感じるか?

 

うるさい・・・眠らせてくれ・・・

 

「ほ、本当に死んでまう!!」

 

・・・・・・え?

 

コロネの切羽詰った声がリアルに感じられた俺は思わず、目を開け・・

 

「なっ!?」

 

俺は信じられない光景を目にした。

 

俺が目にしたのは自らの手に掴んだ整備用のガスバーナーをコロネに向けてる光景だった。

 

何て馬鹿な真似をしてるんだ!この手は!?

 

「止めろ!」

 

俺は声に出して凶事を働いている手に制止命令をを出すが、手は・・・いや、身体は一向に俺の言う事を聞いてはくれない・・・

 

「や、やめて!誰か!誰か!助けてええええ!!」

 

現実味を帯びた己の死にコロネは発狂し始めた。

 

「よせ・・・止めろ・・・」

 

「嫌や!まだ死にとうないんや!堪忍や!!」

 

「止めろ!おい!どうして言う事を聞かないんだ!?止めろ!止めろ・・・」

 

やがてガスバーナーは鉄を焼き切る温度の火を放射し始め、ゆっくりとゆっくりとコロネに向けられていく・・・

 

「止めて・・・ヤメテエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

俺は耳を塞いで叫び声を上げる・・・

 

表現のしようがない程のコロネを断末魔を聞かないように・・・

 

そして、史上最悪の悪夢が覚めようとする直前に・・・

 

ざまあみろ

 

と誰かが俺に言い放った。

 

その声は俺がよく知っている人物の声だった・・・

 

目を覚ました俺はいても立ってもいられずさっきの悪夢が繰り広げられていた格納庫へと急いだ。

 

「もう誰かが犠牲になるなんてゴメンだ!!」

 

そして、格納庫に駆け込んだ俺が見たのは・・・

 

顔面を真っ黒焦げにされたコロネの無惨な姿だった・・・

 

最後まで叫び続けたのだろう・・・

 

天をあおぐかのように口は大きく開けられていた。

 

既に周りにはクロワを初めとした整備班達が呆然と立ち尽くしていた・・・

 

「タクトの旦那・・・」

 

クロワはコロネを抱き上げ、その真っ黒焦げの顔に顔を埋めながら身体を震わせる・・・

 

「クロワ・・・」

 

「誰が、こんな惨い事をしたんですかい・・・こいつにはまだ未来があったんです・・・殺すなら俺を殺せばいいじゃないですかい!!」

 

その後、号泣するクロワに対して、馬鹿な事言うな!とはとても言えなかった・・・

 

その後、コロネの遺体は遺族の元へ運ばれたが、その場にいたクロワからの話では親はただひたすら泣き叫んでいたとの事だった・・・

 

もう我慢の限界だ・・・

 

シヴァ女皇の命令に背いてでも俺は真犯人を見つけ出し、殺す!!

 

そう思った矢先に事件の波は最大の山を迎えた。

 

自室にルクシオールのオペレータからの悲鳴のような声が上がり、俺はルクシオールのブリッジへと急行した。

 

嘘だろ・・・そんな・・・

 

俺はオペレーターから受けた報告に我を疑った・・・

 

まさか、お前が真犯人だったていうのか・・・

 

タクト、俺を感じるか?

 

やがて、俺がブリッジに着いた時、そこには6人の人間がいた・・・

 

生者2名、死者4名である・・・

 

生者の一人であるアルモは夢の中のコロネと同じような金縛りにあい、身動きをとれずにいる。

 

そして、もう一人の生者であるレスターはそんな光景を心底愉快そうに見つめている・・・

 

そうレスターは加害者である・・・

 

「レ、レスター・・・これはどういう事だ・・・」

 

俺は震える声を必死に絞り出して問いかけた。

 

「どういう事?見た通りだが?」

 

レスターは“いつも通り”につまらなさそうに返事をしてきた。

 

「ふざけるな・・・返答次第によっては・・・殺す!」

 

「くっくっくっ・・・お優しいタクト様の言葉とは思えないお言葉じゃねぇか・・・何だ、もう気付いていたのか?」

 

その癪に障る笑い方・・・

 

間違いない、“アイツ”だ。

 

「お前が真犯人か・・・」

 

「だと言ったら?」

 

「殺す!」

 

「おっと、馬鹿な真似は止めておけ、この女は俺が死をイメージしたらその通りに死ぬ事になるぞ?おい女、お前はそれでいいか・・・って、肝心のこの女はうるさかったから声紋を殺していたんだったな・・・」

 

「黙れ・・・」

 

俺は右手にスレイヤー・オブ・デステニーを召還する。

 

「考えてみろ、お前が俺を斬り伏せるのが先か、この女が木っ端微塵になるのが先か・・・」

 

「どこまでも腐った奴め!」

 

俺はスレイヤー・オブ・デステニーを仕舞う・・・

 

無論、このキチガイが素直に約束を守るなんて思ってはいない・・・

 

それでも俺は剣を捨てざるを得なかった・・・

 

だというのに・・・このキチガイは・・・

 

「ご苦労、という訳で・・・喋れるようにしてやるから鳥肌ものの叫びを聞かせてくれ・・・くっくっくっ!」

 

「・・・っ!?やめろ!!」

 

キチガイことレスターがアルモの方を振り返ると、アルモの身体のあちらこちらが膨張し始めた。

 

死の痛みに耐え切れないアルモは声にならない断末魔の叫び声が木霊する。

 

「やめろーーーーッ!!!!!」

 

「止めろと言われて俺が止めるとでも思っているのか?」

 

レスターは心底楽しそうに木っ端微塵に破裂していくアルモの姿を眺めながら心底楽しそうにつぶやいた。

 

「うおおおおおおおおおお!!!!!」

 

何かが爆発した俺は駆け出す・・・

 

「くたばれええええええええええ!!!」

 

そして、俺はスレイヤー・オブ・デステニーでレスターの心臓を串刺しにした。

 

「ガハッ・・・!」

 

レスターの口から夥しい量の出血が零れだす・・・

 

「タ、タクト・・・俺の部屋を調べろ・・・」

 

「レスター・・・?」

 

「し、真犯人を絶対に捕まえてくれ・・・」

 

「お、お前・・・操られてただけ・・」

 

「だからこそ、お前にた・・・くす・・・うおおおおお!」

 

レスターは自ら取り出した小刀で自分の腹を三度に渡り引き裂いた。

 

それはおそらく真犯人の命令だったのだろう・・・

 

「殺してやる!殺してやるぞおおおおおお!!!」

 

ざまあみろ

 

真っ赤に染まったルクシールのブリッジで俺は溜まりに溜まった殺気を発散させた。

 

この後、皇国の処理班が訪れ、DNA識別を取りながら肉塊をかき集め、種別していく・・・

 

遺体を遺族に引き渡す為に・・・

 

そして、俺も泣いてなどはいられない・・・

 

レスターは自分の部屋を調べろと言っていた・・・

 

皇国軍に真犯人がいるとした場合の事を考えて俺は独断で調査をしていた・・・

 

なら、今回も独断で進めるべきだろう・・・

 

レスターの部屋の扉はスレイヤー・オブ・デステニーで切り開く・・・

 

そして、自室の机の中にはレスターの調査報告書が残されていた・・・

 

依頼主はルフト先生・・・

 

そして、もう一つは俺宛へのものだ・・・

 

俺宛へのものは誰にも見せていないようで、まだ検印はない・・・

 

その内容に俺は驚愕した・・・

 

「あいつが・・・真犯人!?」

 

レスターは真犯人の目星をつけていた・・・

 

しかし、“レスターは俺以外の誰にもこの事を言う訳にはいかなかった・・・”

 

そうか・・・だからか・・・

 

だから、殺したっていうのか!?

 

ちげぇよ・・・見せしめだ。

 

お前に俺の正体を教えてやる為に殺したんだよ。

 

許さない・・・俺を裏切った事等どうでもいい・・・

 

許せないのは無関係の者を巻き込んだ事だ!

 

そして、終末の日が唐突に訪れた・・・

 

レスターの事件の四日後・・・

 

トランスバール宙域に一機の戦闘機が姿を現した・・・

 

データ照合の結果で分かった事は・・・

 

その戦闘機がネオ・ヴァル・ファスクとの交戦中に俺達を幾度となく襲ったあの黒き紋章機だったということだ・・・

 

「あいつ・・・!」

 

ミルフィーの不在のシャイニング・スターに俺は飛び乗る。

 

「タクトさん・・・あの人なんですよね・・・」

 

カズヤとリコも予想外の来襲者に戸惑いを隠せないでいる・・・

 

「お兄ちゃん・・・どうして?」

 

「・・・・・・リコ、分かってるかもしれないが、この状況下でこんな真似をする事自体、正気の沙汰ではない・・・万が一の場合の覚悟をしてくれ。」

 

あんな悪夢のような事件が会ったばかりなんだ・・・

 

事と次第によっては・・・撃墜する。

 

「・・・・・・はい」

 

そして、俺達は白き月から出撃し、宙域で俺達を待ち構えていた“漆黒の紋章機”と対面した。

 

相手からの通信はない・・・

 

呼びかけにも応じない・・・

 

いや、通信のチャンネルが合っていない・・・

 

変だ・・・レイのチャンネルに設定してる筈なのに・・・

 

「・・・な、何だ?このプレッシャー・・・」

 

「カズヤ?」

 

「リコ・・・君も感じてるだろう・・・あれはアルフェシオンじゃない・・・」

 

「はい、あの子とは違って、意思が感じられません・・・」

 

「二人共どうしたんだ?」

 

「タクトさんは感じませんか?あの敵から発せられているプレッシャーを・・・」

 

「いや・・・」

 

「変なんです・・・何か溢れ出しそうな何かを抑えてるようで闘気が消えたり、現れたりしてるんです。」

 

「・・・つまり、アイツはとんでもなく強いって事か?」

 

「おそらく・・・レイさんの場合は闘気の出現は1と0みたいな感じでどちらかしかないんです・・・でも、アレは明らかにそれを無理矢理封じてます・・・」

 

「・・・・・・やはり、化け物か」

 

「それにしても、仕掛けてこないですね・・・」

 

「・・・・・・」

 

目の前の漆黒の紋章機は一向に動く気配を見せない・・・

 

それがかえって不気味だった・・・

 

何だ・・・この嫌な予感は・・・

 

「おい、聞こえないのか!?お前は何をしにきたんだ!?」

 

「・・・・・・殺しにきた。」

 

(死神のメシア テーマ曲 遠い呼び声)

 

「・・・っ!?」

 

「タクトさん!」

 

「分かってる!何て闘気だ!」

 

目の前の敵は突如、凄まじい闘気を発した・・・

 

今までこれ程までに圧倒された事はない・・・

 

こいつは・・・

 

半端じゃなく強い!

 

デジャブなのか・・・

 

このプレッシャー・・・以前にもどこかで・・・

 

「そう・・・俺とお前達はネオ・ヴァル・ファスク交戦時に幾度か戦っている。」

 

「心を読んでいる!?なら、お前は死神のメシアだというのか!?」

 

「お前達から見れば俺はそう呼ばれるだろうな。」

 

俺達のモニターには仮面を被ったアイツの姿が移しだされた・・・しかし、こいつはレイじゃない・・・

 

「どういう事だ!?死神のメシアはカルマのクローンではなかったのか!?」

 

「確かに・・・本物は奴だ・・・俺はあくまで死神のメシアの影武者という立場になる・・・」

 

「本物より強い影武者なんてあってたまるか!」

 

「愚かな・・・お前達もカルマから聞いているだろう・・・カルマ自身もクローンでしかない・・・お前達の言う“真犯人”は器から器へと魂を移す・・・先のレスターの事件もそうだ。」

 

「・・・っ!?お前・・・どうしてそれを知っている・・・」

 

レスターの事件に立ち会った生存者は俺しかいないのに・・・何故、お前がそこまで知っている!?

 

「それは、俺が“共犯者”だからだ。」

 

「きょ、共犯者?」

 

「お前達から見ればそうなるだろう・・・所詮、俺もアイツの操り人形でしかない・・・」

 

「自分の意思も持たず、“アイツ”の道楽に付き合ったっていうのか!?」

 

「仕方あるまい・・・それが、アイツが俺に与えた存在理由だからな・・・」

 

「ふざけるな!」

 

俺はスレイヤー・オブ・デステニーを召還して斬りかかる!

 

「・・・・・・やれやれ、“あの時”あれ程感情だけでは勝てないとレイも教えていただろうに・・・」

 

「黙れ!」

 

俺の初撃を奴はいとも簡単に回避し、距離をとる。

 

「雑な上に遅過ぎる・・・」

 

「こいつ・・・!?」

 

再び、戦って分かった事だが、この機体、恐ろしい程までに機動力と運動性能が高い・・・

 

「やれやれ、こんな相手にレイは敗れたというのか・・・」

 

「ええ・・・残念な事に・・・」

 

次の瞬間、シャイニング・スターと漆黒の紋章機の間に割って入るようにアイツのアルフェシオンが姿を現した。

 

こうして、見ると細部が若干違っているのが良く分かる・・・

 

「来たか・・・レイ・桜葉」

 

「ええ・・・“例の準備”が完了したのでこうして参りました・・・」

 

「レイ!説明しろ!今まで何をしていたんだ!?」

 

「真犯人の所への道作りだ・・・」

 

「何・・・」

 

「そして、その道への鍵は目の前にいる最強の敵を倒せば開かれる・・・」

 

「最強の敵だと・・・ふざけるな!ゲームじゃないんだぞ!?」

 

「いいや、ゲームだ・・・この世界はゲームの延長線にある・・・」

 

「何だと・・・」

 

「ゲームの延長線にあるといったのだ・・・この俺もそのレイもエクレアもシリウスもロキもカルマもガブリエルもミカエルもその延長線により生み出された偽りの存在だ・・・」

 

「お前・・・何を言ってるんだ・・・」

 

・・・・・・待て、今その名前の中にいそうな奴の名前が無かった・・・

 

「・・・・・・アイツも許可してます。いつまでもそんな仮面を被っておく必要はないでしょう・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・レイ?」

 

「もういいでしょう・・・変装を解いて下さい・・・」

 

次の瞬間、レイは信じられない単語を口にした。

 

「マスター・・・」

 

『・・・っ!?』

 

(イメージ曲 ブレス・オブ・ファイア掘‥兄箸販気)

 

「ふ・・・」

 

レイがマスターと呼ぶ者は一人しかいない・・・

 

そうだ・・・

 

こいつが敬まっている者はただ一人しかいなかった・・・

 

しかし、そいつは確かに先の戦いで戦死している・・・

 

しかし、俺のまさかという期待は次の瞬間、木っ端微塵に打ち砕かれた!

 

「あ、安部殿・・・?」

 

司令室のシヴァは呆然と変装をといた死神のメシアの素顔を見てそう呟いた。

 

「お、叔父さん・・・嘘ですよね・・・」

 

アプリコットは己の叔父を懇願するかのように見つめる。

 

「嘘でも冗談でもない、これが現実だという事はお前が一番理解してる筈だ・・・フェイト」

 

「・・・っ!?」

 

「そんな、貴方はあの時、僕達を庇って・・」

 

「忘れたのか?俺は神皇に仕える神王だ・・・あんな爆発ぐらいで死ぬとでも思っているのか?言わば俺には実体をいうものが元より存在しないのだ・・・“余分なものはいらん”」

 

己の身体を余分なものと言い捨てるのは紛れもない超越者(オーバーロード)の物言いである。

 

「アバジェス・・・どうしてだ・・・どうしてだ!?」

 

共犯者 アバジェスを俺は殺す勢いで睨みつけた。

 

「先にも述べた通り、それが俺の存在理由だ・・・もっと具体的に言えば、俺は俺の意思で動ける訳ではない・・・予め組まれたプログラムの中でしか動けない人形なのだ。」

 

「人形・・・」

 

「俺はそこのレイと違い、感情がない・・・分かりにくく言えば火をカルマとした場合、水はレイとした場合、俺は真ん中の位置にいる存在だ・・・言わば、俺には何もないのだ。」

 

「マスター・・・」

 

「故に、タクト、レイ・・・そして天使達よ俺は組まれたプログラムを実行に移す・・・」

 

アバジェスの機体の名称がモニターに現れる・・・

 

マスター

 

単純かつ相応の名前だ・・・

 

「折角ここまで辿り着いたのだ・・・殺す前にある程度、この世界の秘密の解答をするとしよう・・・」

 

やがて、アバジェスは語り始めた・・・

 

この世界の解答を・・・

 

「タクト・・・そして、天使達よ・・・お前達の頭の中にナツメ・イザヨイという単語は存在するか?なければ沈黙で返答しよ。」

 

誰も答えられない・・・

 

つまりは本当に知らないのだ・・・

 

「では、ロゼル・マティウス・・・UPW・・・ウィル・・・PHOSやSKILAは?」

 

またしても結果は同じ・・・

 

「だろうな・・・この世界はとある一人の物好きが本物世界に似せて創った偽りの世界なのだからな。」

 

「い、偽りの世界・・・」

 

「そうだ・・・この世界の創造の理由は真犯人が言うから命令通りに割愛するが・・・」

 

アバジェスは苦笑し、続ける。

 

「この世界・・・いや“IF・・・もしもの世界”が始まったのはヴェレルの乱終戦の時から始まった・・・」

 

「ヴェレルの乱だと・・・」

 

「故にオリジナルの者はヴェレルの乱の時に存在した者だけ・・・この世界は真犯人・・・いや、作者の手により幾度と無くアップデートされてきたがナツメ・イザヨイ、ロゼル・マティウス・・・UPW・・・PHOSやそして何よりも5人にも渡るゲートキーパーがいる等という設定は作者にとっては予測不能だった・・・だからだ・・・」

 

何だ、嫌な予感が膨らんでいく・・・

 

「同じ境遇にあったかつての神界が作者の思い通りに行かず・・・消滅させられたように・・・」

 

次の瞬間、空間が揺れ始める・・・

 

「この世界も同じ末路を辿る事になった・・・」

 

まさか・・・そんな・・・

 

「作者もこの世界をこれ以上、維持するのは不要と判断した・・・故に・・・終末の日が来た。」

 

「タクト!大変だ!ジュノーからの通信が途絶えた!」

 

「既にジュノーまでは“無に飲まれた”・・・」

 

「これは・・・あの時の・・・」

 

「そうだ・・・作者が権限行使としてラグナロクを発動させたのだ。」

 

「くそ!!」

 

神界はあの無に飲み込まれ、消失していった・・・

 

四方八方から侵食してくる闇に対抗する手段を俺は知らない・・・

 

「それと、この際だから告白しておこう・・・ランファ・・・お前に格闘技を教え、士官学校に入学させたのはこの俺だ。」

 

「な、何ですって!」

 

「それだけではない、ミント・・・お前の母を毒殺したのもこの俺だ。」

 

「・・・心は読めませんが、反省してるように思えないのはその表情を見れば分かります。」

 

「好きにとるがいい・・・フォルテ、マリアを殺害したのは他の誰でもないこの俺だ。」

 

「誰だって構いやしないよ・・・あんたも始末し、真犯人て奴も始末するだけさ!」

 

「ヴァニラ・・・シスター・ヴァレルは俺と真犯人の関係に気付いていた・・・だから始末した。」

 

「・・・それだけの理由でシスターは・・・」

 

「ちとせ・・・雅人を襲撃するように命令をだしたのはこの俺だ・・・そして、先程、雅人は他界したよ・・・オリジナルの世界と同様に・・・」

 

「・・・なっ!?」

 

「アニス・・・お前の両親は事故で死んだのではない、この俺が意図的に事故に見せかけて殺害した。」

 

「テメェ・・・よくもいけしゃあしゃあと・・・」

 

「リリィ・・・セルダールが中心的に襲撃されたのも俺が外宇宙にそう命じたからだ。」

 

「もはや、剣を持つにも値せぬ下衆・・・そして、キサマのような下衆はここで排除する!」

 

「ナノナノ・・・お前だけが人体治癒能力を持っていたのは、いずれカズヤとリコに危機が訪れた際の保険だ・・・強いて言えばお前の存在意義はそれだけでしかない。」

 

「黙れ・・・黙るのだ!」

 

「カルーア・・・と総称すればいいだろう・・・お前をマジークに誘うように奨めたキャラウェイはこの俺だ・・・こっちの世界のキャラウェイは変装したこの俺だ。」

 

「悪趣味な奴ね・・反吐が出るわ・・・」

 

「カズヤ・シラナミ・・・こちらの世界でのお前はミルフィーのクローン・・・リコのテンションを最大限にまで引き伸ばす異性のクローンが必要だった・・・そして、突発の事態にも対処できる有能なクローンがな・・・そして、お前はこの俺の手により、採取していたミルフィーの血液を使用してサルベージした。それがお前の正体だ・・・」

 

「もう僕は貴方を敬ったりしない、お前は史上最低の下衆野郎だ!」

 

「リコ・・・ミルフィーが眠りから覚めないのはこの俺の暗示によるもの・・・前回も今回もこの俺の術によるもの・・・前回は作者の命令により、目覚めさせたが、今回は永眠させて構わないと言っているから、目覚める事はないだろう・・・」

 

「そんな事許しません!貴方を倒して、必ずお姉ちゃんを目覚めさせます!」

 

紋章機がパイロットの意思を受け取り、その力を最大限に発揮させる。

 

「そして、タクト・マイヤーズ・・・真犯人に会いたいのであればこの俺を倒してからにしてもらおう。」

 

マスターの右手に一握りの剣が召還される。

 

剣というよりは刀といった方がいいのだろうか・・・

 

「あれは、神威(カムイ)・・・気をつけろ、あの剣は俺ですら一度しか見た事がない・・・その威力は未知数だが、四聖獣の力を結晶させ作成したと聞いた事がある・・・それにあの戦闘機唯一の武器だ・・・さぞ、高性能な筈だ・・・」

 

剣ひとつ・・・一転集中、一撃必殺・・・

 

「誰が相手であろうが・・・俺は行かなくちゃならないんだ・・・アイツだけはこの手で殺さなければ俺の気が済まない!」

 

シャイニング・スターの右手にスレイヤー・オブ・デステニーが召還される。

 

「ラグナロクがこのEDENを喰い尽くすのは後30分後・・・果たして、それまでにこの俺を倒せるか?」

 

アバジェスの紋章機は奇妙な構えを見せた。

 

はっきり言って、隙だらけだ・・・

 

しかし、直感が告げている・・・

 

仕掛ければ殺られると・・・

 

神話上に神と人としてその名を残す

 

伝説の黄金の騎士 アバジェス

 

そして、その武勇伝にあるは一発逆転のカウンター・・・

 

「どうした?さあ、来るがいい・・・」

 

しかし、仕掛けなければ勝機は訪れない・・・

 

世界が呑み尽くされる前にこの最強の敵を撃墜しなければならないのだ。

 

「いくぞ!」

 

『了解!』

 

エンジェル隊はマスターを目掛けてカルマをも悩ませた集中砲火を浴びせた。

 

しかし

 

「ふ・・・」

 

マスターに直撃するかと思われた次の瞬間、何かの魔方陣がアバジェスを守るように展開され、攻撃を弾いたのだ。

 

その魔方陣は以前に見た覚えがある・・・

 

シャイニング・スターやアルフェシオンが所持しているINフィールドの原型・・・

 

インフィニティ・シールド

 

「あれは、あの時の盾・・・」

 

「この盾はセカンド・ガードナー同等の性能を発揮する・・・無駄骨を折る前に教えておこう・・・」

 

「・・・・・・」

 

「どうした?レイ・・・仕掛けてこないのか?」

 

「私の戦い方は貴方を真似たもの・・・すなわち、自分も“後手の剣”が本意ですので・・・どうしたものかと・・・」

 

「成る程・・・それなら仕方あるまい、ならば、その後手の剣・・・見せてもらおう。」

 

「・・・っ!?」

 

次の瞬間、レイは面を受けるように剣を置くと、凄まじい衝突音が発生した。

 

「何て一撃だ・・・喰らっていれば終わっていた・・・」

 

「今のはデモストレーションだ・・・次は当てるつもりで放つ・・・俺がカウンターだけだと思うなら死ぬ事になる・・・この俺をカルマ如きと一緒に考えているのならば、もはやお前達に勝機は無いと知れ。」

 

『・・・っ!?』

 

アバジェスから発せられるプレッシャーが凄まじく増大する・・・

 

紛れも無い最強の敵である・・・

 

究極の剣と盾を持つ最強の剣士・・・

 

「・・・な、なめんじゃないわよ!」

 

最強の敵相手に勇敢にも最初に仕掛けたのはランファ・・・ドラゴンクローがアバジェス目掛けて飛んでいく・・・

 

「馬鹿め」

 

アバジェスがドラゴンクローを少しの動作で回避したその刹那!

 

「キャーッ!」

 

ランファの紋章機の下部がかまいたちに切り裂かれたかのように綺麗に切断された。

 

「な!?あの距離で、斬り付けた!」

 

「ひとつ勘違いしてるようだから説明だけしてやろう・・・俺のカウンターには因果を持たせてある・・・攻撃しようものなら、俺の一撃は必中の因果を持つ・・・すなわち、いかほど距離があろうとも、いかに巧みに回避しようと、俺のカウンターから逃れる事は不可能だと言う事だ・・・」

 

「つまり・・・スレイヤー・オブ・デステニーを持っている俺とタクト以外で攻撃しようものなら反撃を回避する事は不可能だと言う事・・・」

 

「エンジェル達よ・・・お前達の最後の敵はカルマだ・・・俺はお前達の敵ではない、お前達は俺の相手ではない、その資格がないのだ。死にたくなければ動かぬ事だ。俺は勇敢も蛮勇も同様に真っ二つに切り裂いてきた・・・お前達も例外ではない。」

 

アバジェスの圧倒的な威圧感がそれが本気である事を天使達に知らしめている・・・

 

紋章機達も己の主たるマスターの命令に服従するかのように大人しくなる。

 

「それでいい・・・天使は神の使いだ・・・さて?」

 

アバジェスは意識をタクトとレイに切り替える。

 

シャイニング・スターとアルフェシオン・・・

 

この二機は神に反旗を翻した黄金の紋章機 ラグナロクより別れた紋章機・・・

 

神に逆らうのは必然である・・・

 

「待たせたな・・・これで心置きなく戦える・・・」

 

「アバジェス・・・最後に教えろ、お前は自分を人形だと言った・・・だから、真犯人の言いなりだと?」

 

「そうだろうな」

 

「なら、もう遠慮はしない!」

 

「遠慮?ふ、随分と大きく出たな・・・御託はもういいだろう・・・!」

 

「あなたはっ!」

 

カズヤがさきがけでフライヤーを仕掛けるが・・・

 

「よせっ!」

 

「進歩がないな・・・」

 

何と、カズヤのフライヤーがアバジェスを狙うどころか逆にシャイニング・スターに向かって襲いかかってきた!

 

「チッ!」

 

タクトが全35機にも上る反逆を起こしたカズヤのフライヤーを切り払い事態は収まったが・・・

 

「ミントのフライヤーを逆利用したのをお前は見ていた筈だが・・・」

 

「フ、フライヤーが・・・通じないどころか・・・逆に利用されるんなんて・・・」

 

この最強の敵に小細工は命取りになる。

 

「では、こちらの番といこう」

 

次の瞬間、マスターが姿を消した。

 

BLACK OUT

 

「消えた!?」

 

「ブラック・アウト・・・仕掛けてく・・っ!?」

 

レイは横からの強烈な斬撃を受け止める!

 

「見えない・・・あの時(白き月でのレイとの戦い)は見えたのに・・・」

 

「馬鹿が、あっちがが本家だ・・・・・・」

 

「タクトさん!右から来ます!」

 

カズヤが叫んだ瞬間にタクトが身構えると右に凄まじい斬撃が襲い掛かり、からくも受け止める!

 

「ぐぅっ!!!な、何て重い一撃なんだ!?喰らえば一溜まりもないぞ!」

 

アバジェスの紋章機 マスターは真犯人の隠密行動をとり易いようにカスタマイズされた機体である。

 

蝶の様に舞い、蜂の様に刺すという言葉があるが、これには該当しない・・・

 

アバジェスのマスターは何者にもその気配をたどられる事はない・・・

 

そして、一撃を放つ際は必殺の破壊力で相手を殲滅する・・・

 

言わば、アサシンなのだ。

 

「・・・まるで、暗殺者のようだ。」

 

「感心する暇があるなら、合わせろ・・・この馬鹿」

 

「お、お前なぁ・・・」

 

「これだけは覚えておけ、タクト・マイヤーズを討つのはこのレイ・桜葉だけだと・・・」

 

「・・・お前」

 

「だから、お前は死なない、死なせない・・・この俺が殺すまではな・・・だから、相手がマスターであろうと真犯人であろうと・・・負けるなよ」

 

「・・・ったりめぇだろ、気持ち悪い奴だな・・・」

 

「ふん」

 

「お兄ちゃん・・・」

 

「テンションがあがってきました・・・ここら辺で一気に形勢逆転といきましょう!」

 

「カズヤの言う通りだ・・・一機で無理なら二機で挑め・・・これが、俺がお前達から学んだ事だ。」

 

「・・・・・・そうかよ」

 

レイよ・・・お前に足りなかったもの・・・

 

それをお前は手に入れた・・・

 

これで、俺も心置きなく戦えるというものだ。

 

「・・・っ!?」

 

アルフェシオンは反射的に強烈な不意打ちを防御し、大きく弾き飛ばされる。

 

「どこだ・・・アバジェス・・・」

 

俺は奴の気配を辿る・・・

 

相手はレイやロキに戦い方を教えた超越者・・・

 

そう易々と打開策を見せてくれる訳がないだろう・・・

 

「タクト!マスターといえど万能ではない!俺達の目に見えない速度で動いているだけだ!」

 

そうだ・・・明鏡止水を思い出せ・・・

 

目を閉じ、心の目を開け・・・

 

雑念を捨て、アバジェスだけに意識を集中させれば・・・

 

その幾度の戦いを制してきた必殺の一撃・・・

 

そのライン・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

「ぐっ!?」

 

アバジェスとて容赦なく斬りかかってくる。

 

集中しろ・・・

 

まだ、こいつの後に真犯人が控えてるんだ・・・

 

なら、こいつだって倒せる敵の筈なんだ!

 

「ぐあっ!?」

 

肩口が持っていかれた!

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

反撃しようとすれば十八番のカウンターが襲い掛かってくる・・・

 

待て・・・

 

アバジェスが攻撃してくるタイミングが掴めないのなら・・・

 

確実にタイミングが分かる攻撃を誘発させる方法がある・・・

 

一歩間違えればジ・エンドだが、打開策はそれしかない・・・

 

狼牙一閃・・・

 

かつて、アバジェスを沈めたロキの秘奥義・・・

 

やるか!アレを!!

 

「うおおおおおお!アバジェスーーーッ!!」

 

俺は不用意に真正面に向けて面を放つ!

 

間違いなく、カウンターが来る!

 

もはや、運に頼るしかない!

 

面に対してのカウンターなら!

 

「そこだああああああああ!!!」

 

俺は必中のカウンターを右のスレイヤー・オブ・デステニーで受け止め、ほぼ同時進行で“思った場所へ”突きを放つ!

 

「ぬっ!?」

 

予想は大当たりし、マスターの横腹を突き刺す!

 

「そこぉっ!」

 

そして、その機を伺っていたレイも即座にマスターを斬りつけ、その凶悪な機動性を確保していたパーツを斬り裂いた。

 

「当てた?やるな・・・」

 

高性能なステルス機能通称“ブラックアウト”が使用できなくなったマスターはその姿を現した。

 

カルマのジ・エンドとは違い、再生機能を保有していない為、一度失われた機能を取り戻す事はできない・・・

 

そもそもアサシンに2撃目等、あってはならない。

 

“究極の盾も本人が使うという気になられば意味を成さない”

 

「タクト!」

 

「ああ!」

 

二人はアバジェスに再び連携攻撃を仕掛ける!

 

「面白い。」

 

アバジェスは絶妙なタイミングの連携攻撃を巧みに捌いていく・・・

 

そして、タイミングを見計らい強烈なカウンターを仕掛ける!

 

音も気配もなく仕掛けられるカウンター

 

「ぐうーーーっ!!」

 

カウンターを凌いだ所に容赦のない追い打ちがやってくる!

 

「うわぁっ!?」

 

シャイニング・スターの肩口がまたしても音も無く切断される。

 

「このぉ!!」

 

タクトは再び反撃にでる!

 

「勢いだけで俺は倒せないといい加減に気付け。」

 

そして、次の瞬間、アバジェスは信じられない行動に出た。

 

「なっ!?」

 

何とマスターの頭、胴体、手、足が分離したのだ。

 

「・・・・・・これが回避できるか?」

 

5つに別れたパーツ各々に爪などの凶器が装着されタクトとレイに襲いかかる!

 

「こんなのアリかよ!」

 

「集中しろ!来るぞ!」

 

二機は互いの背後を庇うように重なり合い、迫ってくるマスターのパーツ達を切り払う!

 

例の如く・・・カウンターも炸裂する!

 

「反則ばっか・・・汚い奴め!」

 

「2対1も反則だと思うが?」

 

「黙れ!」

 

(違う・・・マスターはお前に教えようとしてるのだ。)

 

「タクト!直感を磨け!敵の動きを先読みしろ!」

 

レイは効率よく必中のカウンターを受け止めながら

パーツを切り払う!

 

「チ!」

 

アルフェシオンの右足がごっそりと切断され、アルフェシオンがバランスを崩す。

 

「終わりだ。」

 

そうなれば弱った相手を仕留めるのはアバジェスでなくても鉄則である。

 

「・・・っ!?」

 

今だ!カウンターは来ない!

 

追撃に入ったアバジェスがほんの一瞬だけ隙を見せると確信した俺は、予め左手に用意していたラグナロクで・・・

 

「それはお前だあああああ!!!!」

 

「・・・っ!?」

 

マスターの本体と思われしき、胴体をに切断した。

 

瞬時の緊急回避により直撃は免れたもののラグナロクによるダメージは計り知れず・・・

 

アバジェスのマスターのパーツ達はその機能を停止したかのように静まり返った・・・

 

カルマとは違い、アバジェスは剣でそれを受け止めようとはしなかった・・・

 

無駄なあがきだと分かっていたからなのかは分からない・・・

 

だが、潔い負け方だと俺は思った・・・

 

「アバジェス・・・俺達の勝ちでいいんだな?」

 

「・・・さもありなん、見事だった。」

 

アバジェスは苦笑しながら降参の意思である両手を天秤のように掲げる。

 

「本当はトドメを刺さなくちゃならないんだろうが、今は、真犯人を殺す事が優先だ・・・案内してくれるんだろうな?」

 

「案内する必要など無い・・・迎えは直に来るだろう・・・そら、来たぞ。」

 

来いよ、タクト・・・

 

「・・・っ!?」

 

俺の脳裏に声が・・・

 

次の瞬間、シャイニング・スターが白い光に包まれ姿を消した。

 

「マスター・・・貴方の計画通り、タクトは真犯人のところへ行きましたよ。」

 

「・・・ふ、何の事だ?」

 

「貴方は本気など出していなかった・・・そもそも貴方が本気なら俺達が貴方に気付く前に仕留められている筈・・・折角の盾も魔法も敢て使わず、その究極の剣も力をセーブをかけている・・・本気で詰み将棋に持ち込まれていれば勝ち目はゼロでした。これで気付かない程、俺も馬鹿ではありません・・・」

 

「・・・・・・」

 

「何故、自ら汚名を被ったのです?確かにエンジェル隊を集める為に工作した実行犯は貴方ですが、それは全てアイツの意思によるものでしょう・・・」

 

「さぁな、もう忘れたよ・・・」

 

「それは貴方が命令を拒否していれば、アイツはもっと卑劣な手段をとってエンジェル隊をかき集めると考えたからでしょう・・・」

 

「ふ、お見通しか・・・」

 

「はい・・・」

 

苦笑し合う二人は着実に周囲を飲み込んでくる真犯人のラグナロクを見つめた。

 

「そして、貴方の計画通りタクトはアイツと決着を着けに行きました・・・」

 

レイは目を閉じて続けた。

 

「決戦の地 黄泉比良坂(よもつひらさか)へ・・・」

 

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