推奨BGM リトルバスターズ

何も起こらなかった世界

 

午後22時36分・・・

 

とある山奥にある片田舎のアースダムの頂上にて二人の男が殺し合いを始めていた。

 

 

「ぐはっ!?」

 

わき腹に突き刺さらんばかりのアイツの鋭い突き・・・

 

「がっ!?」

 

そして、脳震盪を起こしかねない強烈な回し蹴り・・・

 

俺が攻撃を仕掛けても、巧みに回避して渾身のカウンターをお見舞いする

 

いつしか、俺は両足で立てない程までに痛みつけられていた・・・

 

しかし、この勝負だけは負ける訳にはいかなかった・・・

 

だから“どんな手段を用いてでもこいつを倒す”

 

そう決心した時、俺の中にある人としての躊躇が吹っ切れた・・・

 

そして、禁断の一撃をお見舞いした。

 

直撃を喰らったアイツが起き上がる事はなかった。

 

この一撃を喰らって無事で済んだ者は存在しない

 

EX 逢魔ヶ刻

 

〜逢魔ヶ刻〜

 

アバジェスとの決着をつけた俺は突如、真っ白な光に包まれた・・・

 

そして、目を開けると俺はここにいた・・・

 

辺り一面は田んぼ・・・

 

古びたお地蔵・・・

 

空は星一つない、夜空・・・

 

唯一ある星は紅き月・・・

 

何処だ?ここは・・・

 

「タクト・・・遂にここまで来たのね。」

 

「・・・っ!?」

 

声に驚いた俺が背後を振り返るとそこには20才前後の女性がいた・・・

 

凄く綺麗な女性だと思った・・・

 

でも、この声・・・どこかで・・・

 

「あ、そっか・・・この姿で会うのは始めてだから分かんないか〜・・・」

 

「・・・・・・まさか、エクレア?」

 

「あ、凄〜い♪分かるんだ?」

 

「エクレア!」

 

「きゃ!?」

 

俺はエクレアを羽交い絞めにして抱きしめた。

 

「ちょ、ちょっと・・・苦しいってば・・・」

 

「馬鹿!この大馬鹿!!」

 

「タクト・・・ごめん・・・」

 

それからしばらくして俺は彼女を解放した。

 

「何か、容姿が大分違うみたいなんだが・・・」

 

「ああ、でもこれが私の本当の姿だよ?黒髪の女は嫌い?」

 

「い、いや、そういう意味で聞いたんじゃないんだ・・・」

 

「ふ〜ん・・・あ、それと私の本名を教えるね・・・」

 

「本名?」

 

「そう本当の名前・・・私は阿部 璃子、阿部 零士の一つ下の妹」

 

「阿部 零士?」

 

「やだ、夢の中で私達の記憶をみてたでしょう?」

 

「え!?そんな覚えは・・・」

 

待てよ・・・

 

俺は確かに・・・見ていた・・・

 

三人の子供の記憶を・・・

 

「・・・・・・兄っていうのはレイ・桜葉の事か?」

 

「うん、そう・・・お兄ちゃんだね。」

 

「という事は残りの一人は・・・」

 

「・・・・・・うん、貴方をあそこで待ってる。」

 

エクレア・・・いや、璃子が指をさした方向を見るとそこには約1キロメートル離れたこの距離からでもアースダムが確認できる・・・

 

そして、そのアースダムにはおぞましく禍々しいオーラが漂っている・・・

 

「あそこにアイツがいるのか?」

 

「ええ、デザイアを拘束してね・・・」

 

「あの野郎・・・」

 

俺は歯を力強く噛み締めた。

 

「タクト・・・行くんでしょ?」

 

「ああ・・・」

 

「そう、気をつけてね・・・真実はきっと彼から告げられると思うわ・・・」

 

「・・・・・・ああ」

 

俺はアースダム目指して田舎道を歩き始める。

 

「例え、真実がどんなものであっても貴方はタクト・マイヤーズだって事を忘れないで!私が大好きだったタクト・マイヤーズだったって!」

 

「ああ!」

 

俺は右腕をあげガッツポーズをとる。

 

そうだ・・・

 

アイツはミルフィーを餌に俺を釣ってるのだ。

 

そのおまけとしてコロネやレスターは殺されたんだ!絶対に許さない・・・!!

 

タクト、俺を感じるか?

 

ああ、だからこそそっちに向かっている・・・

 

タクト、俺を感じるか?

 

お前はそうやって、そこからずっと俺を見ていたんだろ?お前のシナリオ通りに動く俺達、役者を諦観しながら笑っていたんだろう?

 

タクト、俺を感じるか?

 

田舎道はやがて、アースダムへ昇る為の昇りカーブへと差し掛かる・・・

 

そして、そこにアイツがいた。

 

「レイ・・・いや、阿部 零士か?」

 

「名前などどうでもいい・・・一応、最後のアドバイスだけしにきた。」

 

「・・・・・・何だよ?」

 

「ここは死者の世界“黄泉比良坂”・・・ここは魂が帰り、魂が生まれる場所・・・すなわち混沌の源と言えば分かり易いだろう・・・」

 

「それが、どうしたってんだ?」

 

「まぁ、聞け・・・この世界ではアイツもお前も肉体を失った存在だ・・・故に、ここでの死は完全なる消滅を意味する・・・それだけ覚えておけ・・・」

 

「・・・・・・ああ」

 

俺はそのまま零士を通り過ぎる・・・

 

そして、擦れ違う瞬間にアイツは俺にこう言った。

 

アイツを解放してやってくれ

 

それが果たしてミルフィーに向けてなのか、アイツに向けてなのかは分からないが、今は上を目指すだけだ。

 

タクト、俺を感じるか?

 

待ってろ・・・

 

段々、アイツの声が大きくなっている・・・

 

アイツに近づいている証拠だ。

 

タクト、俺を感じるか?

 

ここはアイツが創造した最初の世界・・・

 

アイツの中にある最も深い思い出の場所・・・

 

零士と共にここで厳しい鍛錬にはげくんできた・・・

 

タクト、俺を感じるか?

 

うるさい!もうすぐ着くから待っていろ!

 

やがて、昇りのS時カーブを昇り終えた俺は右手に見えるダムの入口を発見した。

 

そこにアイツとミルフィーがいる・・・

 

オオオオ・・・

 

オオオオウ・・・

 

ウウウ・・・・・・

 

おぞましい呻き声が聞こえてくるが、今の俺はそんなもので引きはしない・・・

 

刺し違えてでもアイツを殺し、ミルフィーをこの死者の世界から解放する。

 

タクト、俺を感じるか?

 

やがて、俺はアースダムの頂上への入口へと辿り着いた。

 

タクト、俺を感じるか?

 

アイツの姿が見えている・・・

 

やはり、俺の予想・・・

 

レスターの推測はあっていた・・・

 

皆、仇はとるからな!

 

そして、アイツ目掛けて足を進める・・・

 

『タクト、俺を感じるか?』

 

「ああ・・・お前の面がはっきりと見えるよ」

 

俺の目の前には皇国の軍服を着た

 

ルフト・ヴァイツェンがいた。

 

そう、目の前のコイツが真犯人だ。

 

『くっくっくっ・・・遂にここまで来てくれたんだな・・・待ちわびたぜ?あれだけヒントを出してやってたというのによ〜・・・』

 

「・・・黙れ、この屑野郎!」

 

『おいおい、ワシに対してその口の聞き方はなんじゃ?』

 

アイツが声を真似てまで演じ始めた。

 

「三流芝居は止めろ!」

 

『おいおい、名前で呼んでくれないと誰に言っておるのか分からないだろう?』

 

アイツがさも可笑しそうに笑う。

 

コイツはこの笑いを浮かべながら多くの人達を犠牲にしてきたのだ。

 

「お前と遊ぶ気はない!」

 

「酷い言い様だ・・・俺はお前、お前は俺じゃないか・・・」

 

「ふざけるな!」

 

「ふざけてなんていねぇよ、それよりも早く言わないとデザイアの命が危ないぜ?」

 

予想通りだったので俺は驚きはしない・・・

 

「この野郎・・・」

 

真犯人は俺の反応を見て、ルフト先生の声を真似て笑い続ける。

 

それは、まさにルフト先生への冒涜以外の何でもなかった・・・

 

話が進みそうにないので俺は真犯人の名前を呼ぶ事にした。

 

「・・・・・いつまでそんな芝居を続けるつもりだ?」

 

そして、俺がその名前を呼ぶと・・・

 

「・・・・・・くっくっくっ、何だよ・・・正解じゃねぇかよ。」

 

奴は服と顔の被り物を剥ぎ取った。

 

そこにいるのは黒いチョッキと動き易そうな黒いサバイバル用のズボンを履いた男がいる。

 

その男は紛れも無く“アイツ”そのものだった・・・

 

その顔はまさに殺人鬼の如く凶悪そうに歪んでいる・・・

 

長い間、俺達を騙し続けた男の名前は

 

リョウ・桜葉

 

本名 古牙 亮

 

「ロキ・・・」

 

目の前の男ロキこそが

 

この事件の真犯人であり

この物語の作者である 

 

「くっくっくっ・・・いつみてもお前の悔しがる顔を見るのは愉快痛快だぜ・・・くっくっくっ・・・あはは!あーはっはっはっはっ!!」

 

「貴様、よくも今まで騙してくれたな!」

 

「騙した?いや、ここまで騙されたお前達が間抜けなだけだろ?」

 

タクトとロキが黄泉比良坂の頂上で対峙する。

 

「ルフト先生になりすましたのはいつからだ!?」

 

「そう興奮すんなよ・・・」

 

「答えろ!」

 

「随分と夢中だな・・・いいぜ、俺は作者だから何でも答えてやるよ・・・ルフトになりすましたのはお前がエルシオールに就任する一年前さ・・・俺が物語を始める際にお前をエルシールに就任させる為には適役だと思ったんでな・・・首の根っこを千切って、面の皮を造型してやったぜ。くっくっくっ・・・今、思い出してもアレは傑作だったぜぇ・・・」

 

「き、貴様・・・」

 

まだだ、こいつから真相を聞かねば・・・

 

「そして、俺の計画通り、お前は俺の命令を受けてエルシオールに就任・・・とはいえ、ルフトの役を演じる必要もあったので、そこにカルマをコンビニの店員として忍び込ませておいた・・・必要に応じてルフトは動けて喋る人形に代役させ、俺はカルマをより代にして、お前達の行動を見てきた・・・」

 

「そうか・・・艦内で起こったまさかの出来事や、予期せぬ敵の来襲は全て貴様の仕業か!?」

 

「ご名答〜・・・最も、この世界は今でも俺の筋書き通りに動いてはいるがな。」

 

「テメェ・・・」

 

「くっくっくっ・・・もう分かってると思うがお前がここまで来れたのは偶然ではなく必然だ・・・お前が戦ってきたエオニア、ヴァル・ファスク、ヴェレル、ウィル、ネオ・ヴァル・ファスク、ゼイバー・ブラウド、シリウス、神皇、エクレア、メタトロン、レイ・桜葉、ガブリエル、カルマ・・・そして、先のアバジェス・・・これらはいずれも何かの奇跡的な事が起こり、お前は勝利していた・・・考えてもみろ?奇跡が何度でも起こるとでも?」

 

ロキは煙草を取り出し、ふかす。

 

「お前が疑問を抱かぬよう、俺は奇跡の体現者という肩書きをお前に与えた・・・その結果、お前は面白いぐらいに俺の用意した人形達と殺しあってくれた・・・そして、お前はそれが用意されたシナリオだとも知らずに勝ち、ここまで来た・・・俺は自分の手で相手を殺す事が何よりも楽しみなんでな・・・」

 

「道理でアバジェスにも勝てた訳だ・・・」

 

「だが、それもここまでだぜ・・・もう誰も俺とお前の間に入る者はいない・・・くっくっくっ、この機会を散々待っていたんだ。じわりじわりとなぶり殺してやるぜぇ!」

 

ロキからカルマの時以上の殺気のオーラが立ち込める・・・

 

その圧倒的な殺気はロキが本物の殺人鬼である事を連想させる!

 

「殺す前に教えてやる・・・貯水池を見てみな・・・」

 

「・・・・・・」

 

貯水池は紅い血で染まっている・・・

 

貯水池からはいくつもの手が生えていた・・・

 

そして、苦痛に顔を歪める亡者の顔がそこにはあった・・・

 

そして、亡者の顔らは無数の呻き声と生者を妬む呪詛が聞こえてくる・・・

 

「・・・・・・っ!?」

 

そして、俺はとんでもない光景を目にした。

 

「ミルフィーーーーーーッ!!!!」

 

ミルフィーはそんな貯水池の真ん中の髑髏の十字架に縛り付けられていた!

 

「くっくっくっ!デザイアには格別な恐怖を味合わせてやる・・・」

 

「貴様!ミルフィーに何をした!?」

 

「何をした?勿論、観客になってもらうのさ、お前が死ぬ瞬間を見せてやる・・・さぞ、驚愕するだろうなぁ〜・・・あはは、あはははは!!あーはっはっはっ!!」

 

「貴様!」

 

「まあ、落ち着け・・・この貯水池こそが混沌の起源そのもの・・・ここには死者の魂が訪れ・・・」

 

ロキは左手で何かを摘み上げ・・・

 

「ここで転生するに値するかどうかを俺に判定され、合格した者はまた何かの形で現世へと転生し・・・失格した者は・・・」

 

そして、ロキは掴み上げた光の塊を噛み砕いた!

 

次の瞬間、表現不可能な断末魔の叫び声があがった。

 

「失格した者は俺の餌となり糧となる・・・不味い奴はその貯水池に捨てる・・・そうすると奴等は例外なく全てを呪い始める・・・そして、その呪詛の力は混沌となる・・・そして、これが永遠と繰り返される・・・これが運命の輪ってやつだよ。」

 

「狂ってやがる・・・貴様は狂ってやがる・・・」

 

「何・・・」

 

今まで笑っていたロキの顔が急に険しくなる。

 

「なら、俺をここまで狂わせたのは誰だ!?」

 

「そんなの知った事か!お前は興味本意で多くの命を犠牲にした!俺の大事な人達を殺した!もうお前と語る事など何もない!」

 

「・・・・・・上等だ。だが、お前に俺が殺せるか?」

 

「何・・・」

 

「お前・・・自分がどういう存在なのか理解しているのか?」

 

「どういう事だ!?」

 

「本来なら俺はお前が生きてる限り、死なねぇんだよ・・・また、その逆もしかり・・・俺が生きてる限り、お前も死なない・・・何故だか分かるか?」

 

「分かるか!」

 

「俺とお前はなぁ、光と闇なんだよ・・・古牙 亮の魂は二つに分かれた・・・光はお前へ、闇は俺へと・・・」

 

「な、何だと・・・」

 

さっきまでの怒りが嘘のように覚めていく・・・

 

「元々、この世界はオリジナルの世界を真似て創造した・・・俺は、オリジナルの世界でタクト・マイヤーズを操るプレイヤーとして存在していた・・・そこで、毎日のように見せ付けられてきたよ・・・お前とデザイアの三文芝居をな・・・」

 

俺はミルフィーユを見て、懐かしい思い出に浸る。

 

「そして、“あの忌々しい出来事”が起き、俺の世界観は大きく変わり果てた・・・その時、全てが変ったよ・・・そして、俺はこの世界を創造した・・・オリジナルのギャラクシーエンジェルという世界を真似て・・・まずは混沌を生み出し、このシステムを確立・・・そして、いくつもの星と生命体を生み出し、実験・・・しかし、オリジナルに近づけるのにはやはり俺が導かねばならないので代役としてレイ・桜葉とアバジェス・・・そしてエクレアの三人を創造した・・・」

 

ロキの目には何故か悲しみの色が広がっている・・・

 

「く、くっくっくっ・・・プレイヤーってのはな、全員が全員主人公を好きになるって訳じゃねぇ・・・とある出来事一つでこの手で完膚無きまでに叩き潰してやりたいと思われる事もあるのさ・・・」

 

「俺が・・・俺が一体、何をしたって言うんだ!?どうして、俺やミルフィーを目の仇にする!もう隠す必要なんてないだろ!?」

 

そうだ・・・

 

俺が気になって仕方ないのはコイツの動機なんだ

 

ロクな内容ではないだろうが、聞いておかないと殺したくても殺せない!

 

「は!さっきも言っただろう?俺はお前、お前は俺・・・成り行き上、二つに分かれるしかなかったが、根本は一緒だ・・・生理的に苛つくんだよテメェは・・・自分が嫌いな者は他の誰よりも自分自身だ・・・お前だって同じだろうがぁ・・・」

 

「俺はお前を信じていた!エクレアから何度も遠回しに教えられていたのに敢て考えないようにしていた・・・でも、お前は・・・それを知っていながら・・・なのに!なのにお前は・・・!!」

 

「気持ち悪いんだよ、大体、俺は随分と我慢したんだぜ?お前を殺したくても、まだ物語が完成していない内に殺す事はできないと・・・その度に他の人形に八つ当たりをして気分を紛らわせてきたんだ・・・」

 

「き、貴様・・・」

 

「俺とお前は言わば意識を共有する事ができる・・・見ただろう?コロネの顔をバーナーで焼き焦がす瞬間を・・・くっくっくっ・・・」

 

「何故・・・何故だ・・・」

 

「あ?そんなの、楽しいからに決まってんじゃねぇかぁ・・・今まで色んな殺り方を試してきたが・・・今回の殺り方が一番・・・楽しかったぜぇ」

 

「・・・・・・」

 

もういい・・・

 

こいつはここで殺す。

 

「お?殺る気満々だな・・・確かにここなら俺とお前の因果関係も無視され、どちらか片方がくたばるだけ・・・ま、だからこそここを選んだんだが・・・しかし、万が一、お前が俺を倒した場合・・・俺の創造したお前の世界は消滅するんだぜ?それでも俺を倒す気か?」

 

それは薄々予想はしていた・・・

 

こいつを倒せば皆、消滅してしまうのだろう・・・

 

でも・・・

 

「・・・・・・倒すだと?」

 

「あ?」

 

「訂正しろ・・・俺はお前を殺しに来たんだ!」

 

こいつに良い様に弄られる世界なら、消えるとしてもこいつを倒した方がマシだと俺は思った!

 

「う!?うわっはっはっはっ!こいつはいい!いいぞ!お前・・・こいつぁ・・・楽しい殺し合いになりそうだ!」

 

殺し愛すはこの世界・・・

 

殺したくても愛したい・・・

 

殺し合いはこのタクトと・・・

 

ただひたすら殺したい・・・

 

「戦いの舞台を移すとするか・・・」

 

次の瞬間、辺り一面の風景が変化した・・・

 

「ここは・・・」

 

辺り一面は工場・・・

 

タクトが連れてこられたのは無人の製銅所・・・

 

刻は夜・・・夜空には星と紅き月・・・

 

「ロキ!何処にいる!?」

 

「ここだ!」

 

俺が真正面を見上げると上り坂に単車に乗ったアイツの姿を見つけた・・・

 

逢魔ヶ刻

 

(推奨BGM THEME FROM LUPIN III '97)

 

「タクト!デザイアは後、666分で亡者共に貪られる運命にある!助けたけりゃあ、制限時間内にこの俺を倒すこったなぁ!」

 

そう言うと、アイツはそのまま走り去った!

 

「逃がすか!この野郎!」

 

俺も近くにあった単車を動かし、奴の逃げた方へ追跡する!

 

絶対に逃がすか!

 

俺はパイプラインの上を走ってショートカットする!

 

やがて、パイプラインが上を向いた辺りで30メートル先の鉱石を移送するコンベアの上を走るあいつの姿を見つけた!

 

「来いよ!タクト!!」

 

「貴様!」

 

俺は奴の近くにあった蒸気パイプと思われしものをレーザーガンで狙撃する!

 

「ちっ!」

 

破裂したパイプから蒸気が噴出し、奴の視界を奪う・・・そして、視界が維持されてる俺は先回りし、バイクごとコンベアに飛び乗り、奴の真正面からバイクで突っ込む!

 

「くそ!やってくれんじゃねぇか!!」

 

そして、俺はバイクから飛び降り、奴目掛けてバイクをぶつける!

 

「・・・っ!?」

 

奴も俺の意図に気が着いたらしく、バイクから飛び降りる!

 

接触したバイクはそのまま転落し、爆発を起こす!

 

近くのガス配管に直撃し、辺り一面が爆発を起こし、静かだった製銅所は火の海と化した!

 

「この野郎!」

 

俺はロキに飛び乗り、顔面に一発右の拳をくれてやった!

 

「がっ!テメェ!!」

 

対して、ロキも寝返りをうち、マウントポジションを逆転させ、俺の顔面を右手で殴りつける!

 

脳震盪が起きそうな重い一撃だが、コイツを殺すまでは死にたくても死ねない!

 

「このぉ!!」

 

俺はそのまま膝でロキの鳩尾を蹴り上げた!

 

「ゲェハッ!!」

 

急所に入り、吐血したアイツの顔面に寝た状態からのソバットキックをかまし、それもクリーンヒットし、奴は距離をとった。

 

「テ、テメェ・・・殺してやるぞ!!」

 

殺人鬼としての本性を現したロキの表情はまさに鬼そのものである。

 

「ヒャアアアアアアア!!!」

 

奴はそのままジャンプし、俺に飛び蹴りをしてくるが、俺は紙一重でそれを回避し、奴の着地に合わせて右回し蹴りを放つ!

 

「このガキィ!!」

 

奴はそれを右手でガードすると、カウンターの右ストレートを放つ!

 

「ぐっ!?」

 

俺はガードするが、ガードの隙間から飛んできた奴の拳が胸腋に直撃し、吹っ飛ばされる!

 

「つっ・・・」

 

許容範囲外の痛みに蹲っている暇など許されない・・・俺は即座に距離をとる。

 

この状態で、コイツの攻撃を受けたらジ・エンドだ。

 

「はは!その顔面を捻り潰してやるぜ!」

 

無論、そんな事を黙って見てる程、奴とてお人よしではない。

 

やがて、何かの騒音が聞こえてくる・・・

 

「・・・っ!?」

 

何とコンベアは終着点である破砕機へ辿り着こうしとしていた。

 

奴は即座に隣の下りのコンベアへ飛び乗った。

 

「くっくっくっ!」

 

「・・・っ!?」

 

俺が飛び移ろうとすると奴はコンベアを大きく跳び跳ね、近くにある建屋の屋根に逃げ込んだ。

 

「逃が・・うわっ!?」

 

俺が追いかけようとした瞬間、コンベアのモーターが逆転し、上りと下りが逆転した。

 

「・・・なっ!?」

 

下りのベルコンには接着剤が仕掛けられていた!

 

「くっくっくっ!ベルトコンベアにある7箇所だけある紅い面を踏んでいればそんな事にならなかっただろうにな〜・・・せいぜい、デザイアが狂喜乱舞するミンチ肉になれよ!」

 

「ふざけるな!」

 

俺は靴を脱ぎ捨て、建屋の屋根で高見の見物をしていたアイツの元へ飛び込む!

 

「この野郎!」

 

「くっくっくっ!そう来なくっちゃ面白くねぇ!!」

 

奴は屋根を叩き割るとその中へダイブした!

 

「逃がすか!」

 

そして、俺も建屋の中へダイブし、近くの柱に着地するが・・・

 

「ウッ!?ゲホッ!!」

 

中には異様な環境が展開されていた。

 

「毒ガス・・・!?」

 

「厳密には亜硫酸ガスだがな・・・言っておくがこのガスは工場の生産過程での副産物だから、俺の小細工じゃないぜ?」

 

奴はさも面白そうに顔を歪める。

 

「き・・さま・・・ゴホッ!」

 

「それよりも後ろ見てるか?熱い熱い鍋のお出ましだぜぇ?」

 

後ろを見ると巨大な鍋が迫ってくる・・・

 

「アイツの中には鉱石を溶かした飴が入っている・・・よっと」

 

奴はその鍋に飛び乗る!

 

「俺にはこの程度の芸当など訳ねぇが、果たしてお前はどうだろうな?」

 

「この・・・!」

 

横行クレーンに運ばれる鍋と共に逃げようとするアイツのにやけ顔を見て、俺も鍋へとダイブした。

 

「おほほ!そう来なくっちゃなあ!」

 

「アツ・・・!!」

 

鍋の淵にいる俺とアイツ・・・

 

ここにいるだけで燃えそうだ!

 

「グウウウウ!!!」

 

その上、俺は素足・・・

 

「貴様・・・さっきのはわざと・・・」

 

「まあな、でも感謝しろよ?本当ならここにいるだけで丸焦げになるというのに・・・俺は敢て温度を下げてやってるんだからよぉ・・・」

 

「ふざけるな!!」

 

俺は鍋の淵を駆け、奴を目指す!

 

「くっくっくっ!いいねぇ!いいねぇ!これこそ本当の溶岩デスマッチって奴だよな!」

 

やがて、奴が目前に迫った辺りでアイツから仕掛けてきた!

 

「ヘヤア!!」

 

大振りかつ無防備な右からの一撃!

 

「オラア!!」

 

ガラ空きの奴の右横腹に渾身のフックを放つ!

 

「ああ!?」

 

しかし、奴は分かっていたのか右肘を下げ、ガードし・・・

 

「オラア!!!」

 

必殺の破壊力を持つ左ストレートを放ってきた!

 

「う!?」

 

俺は紙一重で一撃必殺の豪腕を回避するが、頬がザックリと裂けた!

 

凄まじい拳圧はまさに鬼の如しである。

 

「なめんじゃねぇぞ!オラア!!」

 

奴はそのまま、ラッシュを仕掛けてくる!

 

俺は後方に下がり、奴との距離をとる。

 

冷静に考えればこの状況は拳と拳での戦い・・・フットワークが取りにくい状況下での戦いは不利だ・・・

 

「・・・っ!?」

 

鍋が終着点に近づいている!

 

「南無三!」

 

俺は鍋から脱出し、建屋の出口の通路のエキスパンへ着地する!

 

「あ〜?俺が怖いのか?」

 

「・・・・・・」

 

挑発に乗っては駄目だ・・・

 

何としてもアイツはここで殺さなければ!

 

「っ!」

 

俺は外へ逃げ出す!

 

「テメェ!!」

 

怒りに満ちた奴の声が聞こえる・・・

 

そうだ、アイツが逃げる訳がない。

 

お互い、思ってる事は同じ筈だ。

 

追跡する必要なんて無いんだ。

 

奴のトラップに引っかかってやる必要なんてないんだ!

 

「逃がすかああああああああ!!!」

 

地の底から響き渡るアイツの声が聞こえてくる!

 

次の瞬間、直感的に俺はその場から大きく飛び跳ねて約70メートル上のパイプラインへと逃げるとさっきの建屋が爆発を起こし破片が飛び散ってくる!

 

そして、その中で・・・

 

「タクトオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

その破片に混じっていたアイツは信じられないものを手にしていた!

 

「さっきの鍋!?」

 

人間を容易に100人は茹で上げられるその鍋を奴は易々と豪快に投げつけてきた!

 

「くそ!マジかよ!?」

 

俺は複雑に交差しているパイプライン駆け渡り、鍋から溢れ出す液体状の灼熱の飴から逃げる!

 

「くっひっひっひいいいいいいああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

言葉になってない奇声を張り上げ、アイツが追跡してくる!

 

その殺人鬼たる光景は普通の人間なら気絶してしまう程におぞましいだろう・・・

 

だが、俺だって普通の人間じゃない!

 

「このぉ!!」

 

迫ってきたアイツへ向き直り、アイツを迎え撃つ!

 

「ヒャアアアアアアアアアアア!!!」

 

アイツは飛び蹴りをかましてくる!

 

「ちっ!」

 

そして、俺は最小の動作で回りながら回避し・・・カウンターの左回し蹴りをお見舞いした!

 

「オラア!!」

 

ドゴォ!!

 

「ゲフォオ!?」

 

鈍い音を立てながらアイツは吹き飛んだ!

 

「ぐぎゃあああああああああああ!!!」

 

理性を失ってるのではないかと思う奇声をあげながら、奴は近くの配管を引きちぎる勢いで引き抜いて襲いかかってくる!

 

「ち!」

 

素手では不利だ!後退して勝機を探らないと・・・

 

「オラオラア!俺はレイやアバジェスのようにクリーンファイトなんてしねぇぞ!結果が全てなんだよ!どんな手を使ってもテメェを殺し!デザイアの前に差し出してやる!!」

 

「うるさい!こっちこそ、必ずお前をここで殺してやる!」

 

「上等だ!コラアアアアアアアアア!!!」

 

やがて、奴が追いついてくる!

 

「ここは金属の錆付きが激しい・・・?」

 

俺は近くにあった、鉄の棒を見つけ、応戦する!

 

「このぉ!!」

 

ガキイイイン!!!

 

不快な金属音が何度も木霊する!

 

「始めてだぜ!テメェ程気にくわねぇ主人公はよ!」

 

「こっちこそ!貴様程腐った下劣な殺人鬼は見た事がない!!」

 

「お前からそう言ってもらえればこの物語を始めた甲斐があるってもんだ!」

 

「貴様・・・ただ単に俺への見せしめの為だけにEDENとNEUEを荒し回り・・・シリウスやエクレア・・・先生、アルモにコロネ・・・そしてレスターを・・・!!」

 

「くっくっくっ!!全くいつ見てもお前の悔しがる顔を見るのは愉快痛快だ!ざまあみやがれ!」

 

「貴様あっ!!」

 

俺は奴の股間目掛けて蹴り上げた!

 

「おいおい!金的かよ!こいつは傑作だぜ!!」

 

奴は口から何か霧のようなものを吐き出し、俺に吹きかけ、距離を取る・・・

 

「ちっ!どこまでも姑息な・・・」

 

「安心しろ!コイツで終わりにしてやるぜ!」

 

奴は突然、煙草をふかすとそれを俺目掛けて投げつけた。

 

ボウッ!!!

 

「ぐあああああ!!!?」

 

突如、俺の身体は火に包まれる。

 

「ああああ・・・あああああああああ!!!!!」

 

俺は地面に身体を擦りつけて消火する。

 

「あっはっはっはっ!これは撮影ものだな!オイ!苦肉の策とはまさにこの事だぜ!」

 

「貴様ああああああ!!!!」

 

消火を終えた俺は奴に体当たりをかまして、押し倒した!

 

「グヘェッ!?」

 

奴の呻き声を無視して、俺は奴を殴りつけた!

 

「グベッ!?」

 

「これはアルモの痛み!」

 

「ごのぉ!!」

 

俺を跳ね除け、立ち上がったアイツは一撃必殺の左ストレートを放ってくるが、頭に血が昇ったアイツの狙いは皆無に等しい・・・

 

俺は潜り込んで渾身のアッパーカットをお見舞いする!

 

「ギヘッ!?」

 

「これは、コロネの痛み!!」

 

そのまま、俺は奴の鳩尾に渾身のストレートを放つ!

 

「グゥホォッ!?」

 

奴は身体を絵に描いたようなくの字に曲げる!

 

「これは先生の痛み!」

 

そして、俺はそのまま追い打ちの肘落としをアイツの後頭部に炸裂させる!

 

「これはレスターの痛み!!!」

 

「ゲェッ!!」

 

奴が口から大量の血を吐き出した!

 

俺は目頭が熱くなるのを感じる・・・

 

こんな奴に・・・こんな奴に・・・

 

皆は・・・

 

「うおおおおおおお!!これがシリウスの痛みと・・」

 

俺は怒りに身を任せ、アイツの左顔面に左ストレートを炸裂させ・・・

 

「エクレアの痛みだあああああああああ!!!!」

 

返すその反動で渾身の右ストレートをアイツの右顔面にお見舞いした。

 

「ぐ・・・は・・・」

 

ふらつく奴に俺はトドメをお見舞いする事にした。

 

「そして、コレが俺と・・・皆の痛みだあああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

ゴアギャ!!!

 

俺はさっき、捨てた鉄棒を拾い上げ、アイツの脳天を叩き割る勢いで叩きつけた。

 

嫌な音を立てて、奴は倒れる・・・

 

まだだ!!

 

こいつだけはまだ許せない!

 

俺の中でドス黒い感情が膨れ上がる・・・

 

それこそ、まるで目の前のもう一人の俺に成りきるかのように・・・

 

俺は気絶・・・いや、絶命しているアイツの死骸を掴み上げ、近くの水槽へ連れて行く・・・

 

その水槽には硫酸と書かれている。

 

どうやら、ここは先ほどの亜硫酸ガスの副産物の硫酸を精製、貯蓄する場所だったらしい・・・

 

だから、金属も腐っていたのだ・・・

 

そして、俺はアイツの死骸を硫酸の槽へ投げ込んだ。

 

「二度と俺の前に姿を現すな・・・」

 

奴の身体がジュワと音を立てて溶け始める・・・

 

俺はその異臭に溜まらずその場所から離れようとした・・・

 

「え・・・?」

 

すると、辺り一面が最初のアースダムへと切り替わった。

 

「よう、お帰り・・・」

 

「何!?」

 

「俺の幻想空間はお気に召してくれたか?」

 

「くっ・・・!」

 

急に痛みが襲ってくる・・・

 

「くっくっくっ!俺がここで高見の見物してる中でお前は戦い続けた・・・自分の悪夢とな・・・」

 

「き、貴様・・・どこまで・・・」

 

「俺はなぁ?100%勝てると確信しない限り仕掛けねぇのさ・・・」

 

「こ、この野郎・・・」

 

「まあ、最も・・・今は100%勝てると思うがなぁ?くっくっくっ!!アーハッハッハッ!!」

 

ロキが奇妙な構えを見せる・・・

 

「・・・?」

 

「さあ、あれだけ殴れば気が済んだろ?だからもう死ねよ、お前。」

 

「・・・っ!?」

 

ロキから発せられている殺気が凄まじいものへと変わる。

 

「な、何だ・・・この重圧感・・・」

 

直感が俺の死を告げている・・・

 

「くっくっくっ・・・見せてやるよ・・・」

 

それは避けられぬ俺の死・・・

 

“本物の狼牙一閃”をな・・・」

 

奴の身体に何かが取り付いたかのようなオーラが立ち込める・・・

 

「本物だと・・・」

 

「ああ、お前に教えたのは真っ赤な偽物・・・あんなもん実戦で使える訳ねぇだろ?だから、冥土の土産に本物を見せてやるって言ってんだよ。」

 

「冥土に行くのは貴様だ!」

 

「相変わらず、負けん気だけは認めてやるが・・・」

 

奴の顔が下がり、奴の目が俺を見上げるように覗く・・・

 

「・・・くっ!?」

 

その目は獲物を狩る狩猟者の如く、鋭い眼光を放っている・・・

 

「この狼牙一閃にかかり、無事で済んだ奴はいねぇ・・・狼牙一閃は見えない一撃・・・見切れるもんなら見切ってみな。」

 

ロキが仕掛けてくる!

 

「・・・ちっ!」

 

奴の一撃一撃に意識を集中させる!

 

どこから必殺の一撃が飛んでくるか分からないのだ・・・

 

しかし、それこそが奴の狙いだという事も気付かずに・・・

 

狼牙一閃は上級者程、その罠に引っかかる・・・

 

かつての阿部零士がそうであったように・・・

 

そして、その荒々しい一撃は本人の意思により、禁じ手とされた・・・

 

「くっくっくっ・・・いくぜぇ?いくぜぇ?」

 

「くそっ・・・」

 

奴は狼牙一閃を警戒する俺を嘲笑う・・・

 

仕掛けるのはアイツで

仕掛けられるのは俺なんだ。

 

「・・・っ!」

 

奴の口が食いしばったかと思った矢先に奴は隙だらけな“右ストレート”を放ってきた。

 

「・・・っ!?」

 

俺はそれを最小の動作で回避し、反撃に・・

 

「ゲェホォ!!」

 

な、何だ!?

 

左喉が・・・

 

「ガァハア!!」

 

俺は常軌を逸した痛みに倒れふした・・・

 

「くっくっくっ・・・見えなかっただろう?お前の喉を狙った俺の左の一撃が・・・種明かしはしねぇがな。」

 

おもいきっし、喉を狙うなど普通の神経を持った人間にはできない・・・どんな殺人鬼も無意識に手加減をしてしまう・・・それは無意識に相手の痛みを意識してしまう為・・・ただ、それが凶器故に死に至る・・・しかし、この殺人鬼はそれを素手でやってのけた!

 

これが、ロキとレイの違いである・・・

 

レイは文字通り、欠点無しの強者だが、ロキ程に残酷にはなれない・・・

 

それに対し、ロキは未熟だらけの腕ながらもその剛力を活かし残酷な仕打ちを平然とやってのける鬼の魂を持つ・・・

 

レイを戦術に長けた修羅とするのであれば

 

ロキはまさに悪鬼羅刹そのものである・・・

 

「ぐは!ガハァツ!!」

 

俺の口から意図せぬものが次々と吐き出される。

 

「あはは!こいつは愉快だ!さて、いい加減に起きろよデザイア・・・面白いもんが見れるぞ。」

 

ロキが指をパチンろ鳴らすとミルフィーユはハッと目を覚ます・・・

 

「・・・っ!!!」

 

ミルフィーユは倒れふしているタクトを見て目を見開いた。

 

「ぎゃあぎゃあうるせぇだろうから、声は殺してあるが、別に支障はねぇだろ?」

 

ロキはゆっくりとタクトに近づいていく・・・

 

仕留めた獲物を拾いにいく狩猟者の如く・・・

 

「あはは!俺がこの時をどれだけ待っていたか、お前達は知る由もねぇだろうな・・・ああ!?」

 

ロキは喉を破壊され言葉も出せないタクトの横腹を力一杯に蹴り飛ばす!

 

タクトは大きな人形のようにダムの管理室の外壁に衝突し、倒れた・・・

 

めり込んだ外壁がその蹴りの破壊力を示してる。

 

普通ならこの時点で死んでいるだろぅ・・・

 

「おいおい・・・まだ、壊れんなよ・・・俺の気はまだはれてねぇんだよ・・・」

 

ロキは外壁からタクトを引き剥がすと地面に放り投げて、腹を踏みつけた。

 

「くたばる前に聞いとけよ・・・この野郎。」

 

ロキの声がどす黒くなる・・・

 

「お前は最初、何で俺がお前を憎むのかを聞いたよな?教えてやるよ・・・っ!!」

 

ロキはタクトの顔面を踏みつける。

 

「・・・っ!!」

 

言葉を発せぬタクトはもはや何もできずにいる。

 

「俺はなぁ・・・お前、タクト・マイヤーズとしてギャラクシーエンジェルの世界に入った・・・」

 

ロキは今度はタクトの胸を踏みつける。

 

タクトの口からまた血の混じった何かが吐き出された!

 

「そして、俺は現実の世界とは余りにかけ離れたこの世界を見せ付けられ、吐き気を覚えた・・・現実を知らないお前達の自由気ままな冒険とやらに・・・そして、そんな世界でお前とそこのデザイアは代表的な平和馬鹿だった・・・」

 

ロキは唾を吐きかける!

 

何と傲慢な動機だろうか・・・

 

「特にテメェの言う事、成す事全てが俺の神経を逆撫でした!テメェみたいな奴がいる事が俺は我慢が出来なかった!だから、この世界を創り・・・お前をこの世界で俺の敷いたレールの上を走らせ、ここまで導いた・・・この野郎!これでようやくおさらばできるってもんだ!!」

 

ふざけるな・・・

 

ロキはトドメを刺す如く、タクトの身体を持ち上げて滅多打ちにし始めた。

 

「・・・!!−−−ッ!!!」

 

ミルフィーユは必死に叫ぶが、それは無音ゆえに意味を成さない・・・

 

ミルフィー・・・ごめん・・・もう意識が・・・

 

「オラオラア!!俺を殺すんじゃねぇのか!!どうした!?オラアアアアアーーーーーッ!!!」

 

やがて、幾ほど続いただろうか・・・

 

タクトは既に息すらせぬ人形と化していた・・・

 

「・・・さっきまで、動いていたのに壊れちまいやがった・・・オイ?どこに命入ってんだよ?オイ?」

 

ロキはにやけ顔でタクトの身体を叩き続ける。

 

「チッ・・・死にやがった・・・まあいい・・・」

 

ロキはミルフィーユの方へ既に死んでいるタクトの頭を左手一本で持ち上げて見せ付けるが、ミルフィーユは目を閉じて泣き続けた。

 

「くっくっくっ!最後ぐらい見届けてやれよ。」

 

ロキはミルフィーユに目を開けろと命令し、彼女の意思とは反対に目を強引にこじ開けさせる!

 

「よ〜く見ておけ・・・」

 

ロキは左手に力を込める・・・

 

ミキミキと音を立てるタクトの頭・・・

 

「―――っ!!」

 

信じられない光景を目の前にしてミルフィーユの目は正気を失いかける。

 

「ぐおおおおおおおおお!!!!!」

 

そして、殺人鬼が咆哮をあげると同時にタクトの頭は粉々に砕け散った・・・

 

ミルフィーユは既に気を失っている・・・

 

「ちっ・・・生暖かくて生臭くて汚ねぇな・・・まあいいさ・・・」

 

ロキはおもちゃに飽きた子供のような素振りでタクトの死骸を真っ赤な貯水池に放り投げた。

 

「あは!あはは・・・」

 

ロキは返り血に染まった左手で顔面を押さえ、笑い始める・・・

 

「くっはっはっはっ!殺った!遂に・・・遂に殺ってやったぞ!!殺った!殺った!殺った!殺った!殺った!殺った!殺った!殺った!殺った!殺った!殺った!殺った!やあったあああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

 

真っ赤な月の光に照らされた黄泉比良坂の頂上で殺人鬼は歓喜の咆哮を高らかと上げた。

 

「くっくっくっ・・・気絶してる場合か?・・・今度はお前の番だ・・・亡者に食い殺される前に俺が食い殺してやるぜ・・・くっくっくっ!あっはっはっはっ!!あ――はっはっはっはっはっはっはっ!!!!」

 

 

 

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