・終幕

 

ラグナロク

 

〜ウィルド覚醒〜

 

ここは静かな閉鎖空間・・・

 

術者によって生み出されし束の間の空間・・・

 

しかし、今そこでは常識の範疇を逸脱した魔術戦が繰り広げられている。

 

「へぇ、意外と頑丈なのね・・・」

 

この空間を創り出したエクレアは感心そうに呟いた。

 

「ブラウド財閥の技術は常に進歩している・・・やがて、この世に我等HEAVENの時代が始まるのもそう遠い事ではないようだ。」

 

「ふぅん・・・そういう事?“あなた達”の目的は全てを破壊し尽した後での全ての創造ということかしら・・・」

 

「大雑把に言うとそういう事だ。お前達なら気付いているだろう?この戦争は“同じ事を繰り返している”と・・・」

 

「そうかしら?確かにあなた“達”の復活は前と同じよ・・・でも、今回は違うわ。私は敗れ、あのレイも敗れ“あの男”の呪縛から解放された。」

 

「・・・・・・知っている」

 

「タクトとレイは本気の一騎打ちを挑み僅差でレイが敗れた・・・それは本人も認めているわ。」

 

「・・・・・・ふ、所詮は過去の遺物だ。」

 

「そうかもしれないわね・・・でも、あなたの中でタクトに対する認識が変わった筈よ?」

 

「何を言うかと思えば・・・」

 

「まぁいいわ・・・どちらにしろタクト達は奇跡を起こし“絶対と完全”を打ち破った事に変わりは無いわ・・・この意味分かるわね?」

 

「減らず口もこれまでだ。」

 

オメガは杖を高く掲げる・・・

 

そして、次の瞬間・・・

 

「エクレア!こちらに“とんでもないの”が接近してくるぞ!」

 

「とんでもないもの?」

 

エクレアがほんの一瞬目を離した瞬間、そこには既にオメガの姿は無かった。

 

「確かに・・・とんでもないわね・・・」

 

そう言いながらエクレアは魔力障壁の詠唱を始める。

 

「エクレア、なるべく“爆心地”より離れるぞ!」

 

「ええ、“レプリカ”とは言え、元が元だからね。」

 

やがて、オリジンが全速力でその場から離れる!

 

迫り来る“恒星”を回避しながら。

 

「シリウス!もうすぐハイパーノヴァが起こるわよ!」

 

「分かってる!」

 

やがて、衝突する為だけに生み出された恒星達はその役目をまっとうする!

 

表現不可能な轟音と共に全てを塵に変える程の大爆発が起こり、その爆発は無差別に標的を飲み込む!

 

「くっ・・・」

 

「チィ!あいつ!」

 

永遠に続くかと思われた大爆発が終わりを告げる。

 

「ふ、見たかエクレア・・・」

 

「その杖はどんな術でもラーニングし、それを発動する事を可能とするのね・・・しかし、威力はオリジナルに比べるまでもなく下ね。」

 

「何!?ノーダメージだというのか!?」

 

「あいにくだがこいつ(オリジン)のスペックは少々度が行き過ぎてるところがあってな。」

 

「ガブリエル・・・“おちこぼれ”だった貴方に見せてあげるわ・・・“私の本気”をね。」

 

「おちこぼれだと・・・」

 

それはガブリエルにとって禁句だという事はエクレアは百も承知していた。

 

「ええ、“同じ師”を持ちながら貴方は所詮、その程度・・・それを落ちこぼれと言わずして何というのかしら?それともガブリエルではなく“人間の頃”の名前で読んだ方が良いのかしら?」

 

「減らず口もそれまでだ。」

 

ガブリエルは再び杖を掲げる。

 

「今度はラグナロクでも真似るつもり?残念だけどそれを見る必要も時間も無いわ。シリウス・・・」

 

「インフィニフルドライブ・・・いけるぞ!」

 

「了解・・・」

 

「な、何だ・・・この威圧感は・・・こ、これはエクレアのものなのか?」

 

ガブリエルはエクレアを侮っていた。

 

この世には“3種類の絶対者”が存在する。

 

技の極限 レイ・桜葉

 

破壊の極限   ?  

 

そして、魔力の極限 エクレア・桜葉

 

こと魔力においてエクレアの前に出る者など存在しない・・・その魔力はあのレイをも上回る。

 

「これに耐え切れるかしら?」

 

オリジンが一瞬だけ極光の如く輝いた次の瞬間その恐るべき魔術が発動した!

 

辺り一帯に“白い桜”が散布されていく・・・

 

「な、何だ?」

 

やがて、それはオメガが展開しているセカンドガードナーを侵食していく・・・

 

「く!」

 

ガブリエルは“白い桜”から逃れようとするが辺り一面が雪に覆い尽くされている為にどこに逃げようとセカンドガードナーが打ち破られるのは時間の問題だった。

 

「貴様!」

 

ガブリエルは背水の陣に撃ってでる!

 

ラグナロク

 

マリアの杖は本来使用できない幻の呪文の発動を成功させた。

 

オメガの周囲に黒い霧状のダークマターが集まりそれは爆発的な勢いで拡散していく。

 

それは、本来抗いようのない絶対的な制裁・・・

 

しかし、エクレアが放った術はそれすらも打ち破った。

 

「な、何だ!?」

 

ラグナロクは白い桜に吸収されるように消失してしまったのだ。

 

「無駄よ・・・この空間で私を超える事は不可能よ・・・」

 

そう・・・エクレアが放った術は相手のいかなる術でも吸収しそのエネルギーを逆利用し、倍返しのダメージを与える反撃技である

 

「ぐはっ!?」

 

オメガは目に見えない衝撃波でも喰らったかのように吹き飛んだ!

 

そして、それは桜葉のように音もなく落ちていく・・・

 

あくまで静かに・・・

 

何事もなかったかのように・・・

 

そして、その反撃の一撃は“絶対に”回避できない

 

ガブリエルのオメガは爆発こそ起こさなかったものの大破してるのは一目瞭然だった。

 

桜雲一閃

 

それは時を司る三女神が所有する術の一つである

 

次女のデザイアことミルフィーユが先のレイとの戦いで発動させた強制調和空間を創造する。

 

LUSHIFER FILED

 

三女のフェイトことアプリコットは未だに発動できず・・・

 

そして、長女のウィルドことエクレアが放った一撃必殺の破壊力と完全防御を両立させた・・・

 

この“桜雲一閃”である・・・

 

「あなたには聞かないといけない事があるから、手加減はしておいたわ。」

 

〜フェイト覚醒〜

 

「くっ!」

 

カズヤは蘇ったミカエルのサン・レイに苦戦を強いられていた。

 

サン・レイ・・・

 

光のつららと表現をすれば分かり易いだろう。

 

サン・レイの厄介な所は砕いても砕いても際限なく敵へその威力を落とすことなく命中する事だ。

 

「ふ・・・かつては仇敵であったその機体もパイロットが変わればこの程度か?」

 

ミカエルは失望をしたかのように溜息をつく。

 

ならばこの攻撃に対する対処を見出し、きっとこの俺を出し抜くのだろうな・・・」

 

ミカエルが目を瞑ると今までとは比べ物にならない程に巨大な光のつららが姿を現した。

 

「させるか!」

 

カズヤは己の代名詞とも言えるフライヤーで総攻撃をかけるが、今度は砕く事すら叶わない。

 

「無駄だ。氷柱に見えてそれは神剣そのもの・・・いかにそのフライヤーを用いようとも砕く事は叶わぬ・・・」

 

ミカエルはつららをアルフェシオン目掛けて投擲した。

 

そのシーンは十数年前にも一度だけアプリコットは見ている。

 

(だ、駄目・・・これじゃ、カズヤさんが・・・)

 

「かつて奴(レイ)もこのつららに貫かれた・・・そして、今度は人間であるお前の番だ・・・果たして生身のお前が存命する事ができるのかが見物だ。」

 

そして、その一言がアプリコットにとって引き金となる!

 

「駄目―――っ!」

 

次の瞬間、氷柱は桜葉と化して消失した。

 

「何!?」

 

「えっ?」

 

驚いたのはミカエル・・・そしてカズヤとアプリコット・・・

 

「い、一体何をしたというのだ!フェイト!」

 

「えっ!私は何も・・」

 

本人は自覚をしてないが、今の現象こそ三女神の中でも最高位と崇められるフェイトの力・・・

 

何も考えなくてもいい・・・

 

ただ、アプリコットことフェイトはイメージすればいい・・・

 

それだけで、敵の運命はイメージ通りとなる・・・

 

カルマ・・・外宇宙のミカエル達が欲してやまなかったフェイトの力・・・その名をつけるとすれば・・・

 

Fate Of Cherry Leaf

 

とでも名付けるべきか・・・

 

「こ、これが・・・フェイトの力・・・」

 

ミカエルが目の前に起きた超常現象の前に呆然とする中でアルフェシオンにも変化が訪れる。

 

「な、何だ?出力が上がってる?」

 

RAGE

 

アルフェシオンのリミッターが解除され、背中には漆黒の翼が現れる。

 

「ア、アルフェシオンが本気になったのか・・・」

 

パイロットと作者以外は誰も知らないだろうが・・・

 

アルフェシオンは元々アプリコットを守る為の紋章機である。

 

手負いとは言え、最強の紋章機と謳われるアルフェシオン・・・

 

もはや、四大天使の長たるミカエルと言えども勝機は万が一にも無いだろう・・・

 

やれやれ、だから、最初から眉間を貫けってんだよ・・・ったく、だりぃなぁ・・・

 

硬直状態が続く中、ミカエルに思いがけない者からのコンタクトがあった。

 

「ミカエル・・・ご苦労様です。」

 

「ガンチ様?」

 

「後は“私”が処理しますからあなたは引き上げなさい・・・その状態のアルフェシオンの強さを知らない訳でもないでしょう?」

 

「しかし!それではガンチ様が!?」

 

「いいから、退きなさい。これは命令ですよ。」

 

「御意・・・」

 

「そんなに心配する必要はありません・・・何故なら“あの紋章機よりも強い戦闘機”がここに存在するのですから・・・」

 

そして、ミカエルは処理落ちを起こしたかのように消失していった。

 

「逃げられた!?」

 

そう、あくまでもアルフェシオンは最強の紋章機・・・

 

強さという意味でならこの“戦闘機”の方が強い・・・

 

ラスト・ジャッジメントのど真ん中に位置するカタパルトデッキが開かれる・・・

 

「増援!?」

 

僕はフライヤーに警戒させる。

 

そして、アルフェシオンの緊張が高まっているのが何となく分かる。

 

増援へ出てくるヤツがとんでもなく強いという事だ。

 

「ガンチ・デイチル・・・ラスト・エンジェル出ますよ?」

 

そして、その質素な人型兵器がスターライトに照らされカズヤの目の前に姿を現した。

 

「も、紋章機!?」

 

「いえいえ、これは紋章機ではありません。我がブラウド財閥の“試作型”戦闘兵器です。」

 

試作型は大きく分けて二種類に分けられる・・・

 

失敗作か成功策のどちらかだ。

 

「試作機・・・」

 

何だろう・・・あの機体から得体の知れない恐怖を感じる・・・

 

グルル・・・

 

「アルフェシオン?!」

 

コックピットに響き渡るアルフェシオンの唸り声にアプリコットは驚きを隠せずにいた。

 

「ど、どうしたの?」

 

「この子があの戦闘機を威嚇しているみたいなんです!」

 

「い、威嚇?」

 

「ふ、ふふ・・・はは・・・」

 

ガンチ・デイチルが薄気味の悪い笑い声を出す。

 

その声に二人は気味の悪さを覚えた。

 

「何が可笑しいんだ?」

 

「何が可笑しいと言われましても貴方達全てがおかしいのですよ・・・そして、その小生意気な鳥もね・・・」

 

グルル!

 

アルフェシオンの威嚇が更に強まる。

 

「はは・・・私も随分と嫌われたものですねぇ・・・しかし、はっきり言っておきましょうか・・・」

 

閉じられていたガンチの目が再び開かれる。

 

そして、その目は殺意に満ち溢れた真紅の魔眼だった・・・

 

「あ、あれ・・・」

 

何だ・・・この目・・・どこかで見た覚えがある・・・

 

〜所詮は人間〜

 

「はっきり、言っておきましょうか・・・」

 

ガンチから発せられる殺気が高まっていく・・・

 

「アマリ、オレヲホンキニサセルトシヌコトニナルゾ?」

 

「・・・っ!?」

 

二人は豹変したガンチに恐怖を覚える。

 

「ソコノメザワリナトリトトモニコッパミジンニシテヤル・・・」

 

次の瞬間、あたり一面の背景が暗黒へと変化した。

 

「セッカクダカラアソンデヤル・・・」

 

ラスト・エンジェルの左手に赤黒い歪な剣が握られる。

 

「な、何だ・・・あの剣は何処かで見た覚えが・・・」

 

「おや?この剣に見覚えがおありで?」

 

豹変したかと思いきやまたいつもの人を小馬鹿にしたような口ぶりを見せるガンチ・・・

 

「な、何・・・この人、喋り方が一定しない・・・」

 

そう、それはまるで混沌のように・・・

 

「まぁ、いいです。貴方達にはこのフルンティングの餌食になっていただきますよ?」

 

フルンティングはやがて紅いレーザーブレードと化し、アルフェシオン目掛けて薙ぎ払われる。

 

「くっ!」

 

しかし、こと回避性能においては最強を誇るアルフェシオンを捕らえるにはあまりにも雑な攻撃だったのだが・・・

 

「な!?何て威力なんだ・・・回避したのに・・・」

 

そう、回避したのにも関わらずアルフェシオンは激しく揺さぶられたのだ。

 

「そうだ!思い出した・・・この感じ・・・あいつ(ラスト・リヴェンジャー)と同じだ!」

 

「お喋りしている余裕がおありとは・・・ふふ、ならコレでいかがでしょう?」

 

何とラスト・リヴェンジャーの右手に新しい剣が呼び出された。

 

その光景にカズヤは絶句した。

 

「虹色の剣・・・まさか・・・そんな!?」

 

「おあいにくですがこれはまごうことなき本物のスレイヤー・オブ・デステニーです・・・まぁ、名前が長ったらしいので私はこれを乖離の剣と呼んでます・・・」

 

「か、乖離って・・・」

 

それは、カズヤ達にとっては余り聞き入れたくない単語であった。

 

(真・最終章を参照)

 

「ど、どうして・・・どうして貴方が?」

 

「どうしての次は何て言おうとしたのですか?」

 

「どうして貴方がその剣を持ってるんですか!?」

 

「どうして・・・どうしてでしょうねぇ・・・ふ、ははは・・・ははは!ふははは!」

 

突如、ガンチは狂ったように笑い出した。

 

情緒不安定・・・

 

不安定・・・混沌の性質・・・

 

「こ、怖い・・・カズヤさん、あの人怖いです・・・」

 

アプリコットはどこかで感じた寒気を背筋に覚えたらしく身震いをする。

 

「こ、こいつ・・・」

 

僕は本能的にフライヤーを射出した!

 

全身が警告を発している。

 

あの男は危険だと教えている。

 

「ほう?」

 

それに対してガンチもフライヤーを展開して応戦する。

 

「いけぇーーーっ!」

 

カズヤの号令と同時にフライヤー達は己の使命を果たさんと敵のフライヤーへと向かっていく。

 

「・・・・・・?」

 

皆はお忘れだろうか?

 

カズヤ・シラナミのフライヤー捌きはあのレイ・桜葉をも上回った事があると・・・

 

そうなればこのリトル・ウォーズの結果は分かりきっていたことだ。

 

ガンチのフライヤーは次々と撃墜され・・・

 

「・・・・・・ほぅ」

 

「堕ちろーーー!」

 

そして、何発かがラスト・エンジェルに直撃した。

 

「・・・・・・」

 

そう確かに直撃した。

 

直撃した筈だった・・・

 

フィールドなどはなく・・・

 

確かに直撃したのだ。

 

アルフェシオンのフライヤーの攻撃力は全紋章機の中でも桁違いのトップを誇っている・・・

 

にも関わらず、ラスト・エンジェルにさほどのダメージは見当たらなかった。

 

「アルフェシオンのフライヤーがまるで・・・」

 

通用しない!

 

「これが現実ですよ・・・カズヤ・シラナミ君?」

 

「ば、化け物か・・・」

 

「あはは・・・よく言われますよ。」

 

ガンチは穏やかにそうつぶやくと禁断の詠唱へと移った。

 

「な、何だ・・・辺りが・・・」

 

アルフェシオンの周囲はスターダスト一面と化した。

 

「さぁ、異次元へご案内しましょう・・・」

 

ディメンジョン・ゼロ

 

「うわぁぁーーー!」

 

「きゃぁぁーーー!」

 

処理落ちのような現象を起こしながらアルフェシオンは出口の無い異次元へ飛ばされた。

 

「ふ、所詮は人間・・・くくく・・・」

 

ガンチの目が狂気をおびる・・・

 

それは“真紅の魔眼”

 

「あはは・・・あーはっはっはっ!」

 

そして、ガンチは狂ったかのように笑いだす。

 

〜超越者〜

 

「お目覚め?ガブリエル・・・」

 

「これほど悪い目覚めは久しぶりだ。」

 

「減らず口が叩けるようで安心したわ・・・」

 

「・・・・・・何故、手加減をした?」

 

「あなたに聞きたい事があるから・・・」

 

「私が答えるとでも?」

 

「さぁ?」

 

「ただ、今更俺達に隠す必要も無い筈だぜ?」

 

「黙れ、駄犬。」

 

「ああっ!?」

 

ガブリエルの悪態にシリウスが噛み付く。

 

「シリウス」

 

「チッ・・・」

 

「ガブリエル・・・あなたも真犯人を知ってる筈よ・・・そして真犯人が何をしてきたかも・・・それでも、そんな姿になってまで忠誠を使うのは何故?」

 

「・・・・・・」

 

「ゼイバーは先に退場したわ・・・彼には未来が・・・生きる世界がある・・・そして、それは貴方にも・・・」

 

「だから・・・だからに決まっているじゃない・・・」

 

「え・・・」

 

「・・・あたしだって、“あんな奴”の為に忠誠を尽くしてる訳じゃない・・・貴方やレイに会えるのは“この世界でしかない”・・・・・・だから、この世界にい続けるには・・・」

 

「彼が貴方にそう言ったのね・・・」

 

エクレアの表情が曇る。

 

「どんな形でもいい・・・こうして貴方達に会えるのなら・・・」

 

「ガブリ・・いえ___・・・既に私達は現世の者ではないわ・・・それを認識でない彼がこの世界を創造した・・・この世への毒を吐き出し続ける為に・・・」

 

「でも、それは私もそれは同じよ・・・私だって未だに信じられないわよ・・・」

 

「信じなければ駄目・・・そして、最近では私にすら牙を向けてくるぐらいなんだから・・・もう台本もあったものじゃない状況になってるし、混沌の体現者にふさわしい行いと言えない事もないけど・・・」

 

上等だ・・・貴様ァ・・・

 

「お喋りはそこまでだ・・・」

 

「このプレッシャー・・・っ!?」

 

その圧倒的なプレッシャーにエクレアは背後をいやおうなしに見てしまった。

 

「アルフェシオン?」

 

「何だと?」

 

背後にはりついていたのは黒い紋章機・・・

 

しかし、あのレイの紋章機とは違いそのボディには黄金の龍をもじった紋章が神々しく輝いていた。

 

「参ったわね・・・“とんだジョーカー”にぶつかるなんてね。」

 

「ちっ・・・これだけのプレッシャーを発してながら全然本気じゃねぇってのかよ・・・」

 

「エクレア・・・ここは退け。」

 

「お言葉だけどそうはいかないわ。」

 

エクレアは冷や汗を覚えながら言い返した。

 

この世には三人の絶対者を上回る超越者がいる。

 

「・・・もう一度だけ言う・・・退け。」

 

超越者からのプレッシャーが物理的要因と化してエクレア達を襲う。

 

「ぐっ!」

 

そのプレッシャーにはオリジンですらたじろぐ程のものだった。

 

この世界で最も強いと言われるレイ・桜葉・・・

 

もし・・・

 

もしもだ・・・

 

そのレイ・桜葉よりも強い者がいたとすれば?

 

そして、その超越者はエクレアもよく知る人物である。

 

例え、エクレアが魔法で勝負にかかろうとも返り討ちにあうのはエクレア本人がよく知っている・・・

 

何故なら、エクレアに魔法を教えたのは他ならぬこの超越者なのだ。

 

「あなたはまだ彼の呪縛から解放された訳じゃないのね・・・」

 

おうとも・・・

 

とても優秀でいけ好かない相棒さんだよ・・・

 

「・・・・・・無駄口を叩いてる場合ではないと思うが?」

 

「・・・・・・どういう意味?」

 

超越者の意味ありな言葉にエクレアは訝しげにその美しい眉をひそめる。

 

「カズヤとリコが異次元に閉じ込められた・・・」

 

「・・・やってくれるじゃない。」

 

「どうする?ここで俺と戦うか?それとも・・・」

 

「・・・行け」

 

「___?」

 

「行け・・・貴様の情けなどいらぬ・・・」

 

「・・・・・・シリウス、行くわよ」

 

「あ、ああ・・・」

 

やがて、エクレア達はカズヤ達の元へと姿を消した。

 

「・・・・・・これもシナリオのうちなのか?」

 

超越者は姿を見せぬ“主”へ問いかけた。

 

その通りだよ・・・“クソジジィ”・・・

 

 

 

 

「くそ・・・レーダーがまるで反応してくれない。」

 

あれから約一時間が経過しているが、未だに周囲の風景は何一つ変化を見せない。

 

「もうここから出る事は出来ないんでしょうか・・・」

 

不安なリコの声に僕は自分の使命を果たす。

 

「弱気なことを言わないで、何とかなるよ。」

 

カズヤ・シラナミは運命の女神を守る騎士である。

 

くっくっくっ・・・

 

あ〜ぞくぞくするねぇ・・・

 

今から自分達がどういう目に会うのかも分からない馬鹿共の猿芝居を見せ付けられると・・・

 

“ついついヤッってしまいたくなるではないか”・・・

 

「自分達の心配は大事な事だぜ?」

 

「カズヤさんっ!?」

 

「この声!」

 

変声機を用いたようなこの声は・・・

 

カズヤ達の目の前に現れたのはアルフェシオン・・・

 

それは死神のメシアの紋章機だった。

 

「よぉ・・・バカップルさん」

 

「メシア!」

 

いや、こいつは・・・

 

「カルマ・・・カルマか!」

 

「その通り・・・早速で悪いが時間が無いからここで木っ端微塵になってもらうぜ。」

 

「何っ!?」

 

僕の言葉を待たずにカルマが仕掛けてきた。

 

カルマの紋章機が姿を消し・・・

 

「こ、これは・・・」

 

僕達の周囲には無数の恒星が集いつつあった。

 

「こっちに来ます!」

 

この攻撃はあの恐るべき・・・

 

そう・・・この俺のオリジナルの必殺技さ!

 

最終新星・・・

OMEGA NOVA

 

アルフェシオンは二人を守ろうと全エネルギーをINフィールドへまわす。

 

そうしてる内にも恒星達は衝突を開始した。

 

「く、くそっ!リコ!」

 

「カズヤさん!」

 

二人はお互いの名前を呼び目を閉じて耳をふさぐ。

 

恒星の衝突音とそれに伴いあちらこちらで巻き起こる重力崩壊とそれによる膨大なエネルギー爆発はまさに天災の如く、人の手におえるものではないとアピールをしているかのようであった。

 

やがて、エネルギー爆発は頂点に達しハイパーノヴァを引き起こしアルフェシオンを焼き尽くす!

 

「うわぁぁーーーー!」

 

「きゃあぁぁーーー!」

 

その衝撃波に揺さぶられる無力な人間達・・・

 

まさに、創造主が創造物に下した鉄槌である!

 

やがて、誕生した最終新星(ブラックホール)はアルフェシオンを呑み込みトドメの破壊にかかる!

 

やがて、最凶の鉄槌はおさまる・・・

 

くっくっくっ・・・くっ、あはは・・・あはははは!

 

あーっはっはっはっはっ!

 

は、ははははははっ!

 

小生意気なクソガキに鉄槌を下してやったぜ!

 

そして、計算通りアルフェシオンは存命していた。

 

“この復讐鬼は__を絶対に殺せない”

 

「う、うぅ・・・リ、リコ・・・大丈夫?」

 

「は、はい・・・何とか・・・」

 

「ほぅ?木っ端微塵になると思ってたんだがな?」

 

「く・・・」

 

木っ端微塵にならずともアルフェシオンの損傷は直感的に分かっていた。

 

アルフェシオンは損傷状況を僕達に教えようとはしない・・・

 

何が何でも守り通す気でいるからだろう・・・

 

なら、僕は何が何でも目の前の敵を撃退しなければならない。

 

「くっくっくっ・・・お前の考えてる事、しようとしてる事は全て手に通るように分かるぞぉ・・・」

 

キチガイが口を楽しそうに歪めているのが容易に想像できた。

 

「分かったからどうだって言うんだ!」

 

「ふ、ふはは!強がりもそこまでいけば芸術の域だな!おい、鳥公!病み上がりの体でもう一度この俺の必殺技に耐え切れるか!?」

 

「く、まずい!」

 

もう一度、あんな攻撃を受ければ・・・

 

だから通用しなくてもやらなきゃ・・・!

 

「さぁ・・・もういっぺん地獄を見てこいや!」

 

次の瞬間、その空間に乱入してきた者がいた。

 

「そこまでよ!」

 

「あぁ?誰かと思えば偽者かよ・・・」

 

カルマは愉快そうに眉をひそめた。

 

「エクレア!シリウスも!」

 

「どうして、ここに!?」

 

くっくっくっ・・・そんなの俺が呼んだからに決まってんじゃねぇか・・・

 

テメェ等・・・まとめて木っ端微塵にしてやる・・・

 

「カルマ・・・貴方もとことんまで落ちぶれたわね・・・手負いの相手にオメガ・ノヴァなんて・・・」

 

「言いたい事はそれだけか?このアマァ・・・」

 

「そうね・・・これからお互いに無駄口は必要ないわね・・・」

 

「な、何だ・・・この威圧感・・・」

 

カズヤは両者から発せられる気の膨大さに驚愕している。

 

「カルマ、最後に聞いておくわ・・・」

 

「ああ?」

 

「果たして貴方が“本物”なの?」

 

「・・・・・・」

 

その言葉に先ほどまでどこか楽しげだったカルマは言葉を発しなかった。

 

「それともブラウドで指揮をとってるのが本物?」

 

「黙れ・・・」

 

カルマはオメガ・ノヴァの詠唱を始めた。

 

「馬鹿!不用意に挑発すんな!あの野郎デカイのをお見舞いする気だ!」

 

「いいの・・・それとも・・・“皇国軍に潜り込んでいるアレ”が本物かしら?」

 

「ダマレエエエェェェーーーーーーッ!!!!」

 

激怒したカルマは手加減抜きでオメガ・ノヴァを発動させようとする。

 

「げっ!」

 

「大丈夫・・・来た!」

 

エクレアがそう言うと・・・

 

「レーダーに敵影!?・・・いや、これは・・・」

 

「あ!」

 

カズヤ達が見たのは白銀に輝く紋章機・・・

 

「ちぃっ!」

 

誰だ!こんなものをよこしたのは!

 

そうか・・・・・・貴様か!

 

俺はあのアマを睨みつけた。

 

突如現れたシャイニング・スターはアルフェシオンを庇う様にカルマの前に立ちふさがった。

 

「タクトさん!」

 

最初はタクトさんが駆けつけてくれたんだと思っていた・・・

 

しかし、それが違うと直ぐに分かった。

 

流石にアルフェシオンはシャイニング・スターを威嚇し始める。

 

「あ、あれ?変です・・・生体反応がありません・・・」

 

「・・・・・・ま、まさか」

 

シャイニング・スターが自らの意思でアルフェシオンの救出に来たというのだろうか・・・

 

シャイニング・スターとアルフェシオンはつい先日にこの上ない死闘を繰り広げた天敵同士・・・

 

「そうだよ、アルフェシオン・・・いい子だから大人しくして。」

 

アプリコットに促されながらアルフェシオンはシャイニング・スターへの警戒心を解く・・・

 

「これは、貴様の仕業か・・・」

 

「どうするの?ここで最後の戦いをしてあげてもいいわよ?その代わり、貴方の物語もここで終わる事になるけどね・・・」

 

き、貴様・・・

 

「ちっ・・・エクレア・・・このままで済むと思うなよ・・・」

 

やがて、カルマは霧散するかのように姿を消した。

 

「それはこちらの台詞よ。」

 

この後、カズヤ達は異次元より無事に脱出し帰還した・・・

 

しかし、カズヤ達が帰路つく中で・・・

 

ブラウド財閥は次の駆除作戦を実行に移そうとしていた・・・

 

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