・終幕

 

ラグナロク

 

〜白き月防衛線〜

 

人類すべてを寄生虫と称し、その全てを排除すると断言したブラウド残党・・・

 

その指揮を担うのはガンチ・デイチル・・・

 

今は亡きゼイバー・ブラウドの側近だった者だ。

 

そんなガンチは現在、アスティオへと赴いている。

 

ガンチが此処に来た理由はただひとつ・・・

 

創造主が此処に隠したと噂される“強力な力”である・・・

 

「ふふふ・・・お前も楽しみでしょう?あれが手に入ればもはやお前は“四代目”になれるのですからねぇ・・・」

 

ガンチにそう言われた部下は彼に厳しい目を向けるだけだった・・・

 

そして、同時刻・・・

 

トランスバール宙域にはブラウド艦隊のうちのみっつ・・・

 

デメテル・ポセイドン・ヘスティアが出現してきた。

 

当然、皇国軍も無人艦隊を常に哨戒に当たらせていたので奇襲を受けるようなことにはならなかったのだが・・・

 

ブラウド艦隊の新型戦闘機達の高性能ぶりには目を見張るものがある・・・

 

飛行タイプの戦闘機でありながらゼックイを上回る耐久性能と火力の高さ・・・更に小規模のASフィールドを展開できるときたものなので皇国軍は圧倒的に押されつつあった・・・

 

無論、こんな時にこそエンジェル隊出撃である!

 

「皆さん!出撃しますよ!」

 

『了解!』

 

月の天使達は心強い返事を返す。

 

やがて、白き月よりそれを守護する天使達が宇宙へと旅立つ。

 

「皆!敵の数が・・うわっ!?」

 

「きゃー!」

 

カズヤのブレイブハート(=クロスキャリバー)が出撃した瞬間、近くの重戦艦が何者かの一撃を受けて爆散したのだ。

 

その衝撃波によってブレイブハートは大きく弾き飛ばされる。

 

「な、何だ・・・」

 

現在、トランスバール宙域はブラウドの新型戦闘機により窮地に立たされている。

 

次々と撃破されていく無人機達・・・

 

「カズヤ!ボケッとしてないで指示を出しな!ここじゃあんたが“指揮官”なんだよ!」

 

フォルテはそう言いながらもブラウドの新型機をレールガンで撃墜する。

 

「は、はい!」

 

そ、そうだ・・・タクトさんの代わりを僕が務めないと!

 

「全機!ブラウドの新型は機動性が高い!単独じゃなく連携を組んで撃墜して下さい!」

 

「了解!いっけぇ!ドラゴンクロォォォー!」

 

ドラゴンクローと名付けられた無線式アンカークローは新型を次々と撃墜していく!

 

「凄いです!カズヤさん!私達も!」

 

「ああ!回避は任せたよ!」

 

「はい!任せて下さい!」

 

僕は意識を切り替える・・・

 

詳しい事は解らないけど何かが変わる感覚を覚える・・・手先に宇宙の寒さを感じると言えばいいのだろうか・・・

 

少なくともこれだけは解る・・・

 

この状態になったらフライヤー達は僕のイメージ通りに動いてくれる!

 

「いけっ・・・って!?」

 

やがて射出されたフライヤーに僕は驚いた。

 

「こ、これは・・・レイさんの・・・」

 

僕がそう疑問に思っていると通信が割り込んできた。

 

「カズヤ聞こえるか?」

 

「レイさん!」

 

「長ったらしく説明はしないが、マスター(アバジェス)に頼んでブレイブハートを強化しておいてもらった・・・そいつにはアルフェシオンの機能の一部を継承させておいた。」

 

「え、ほ、本当ですか!?」

 

「ああ、新型と言えど所詮は雑魚・・・いい機会だからそいつらを練習台にするといいだろう。」

 

「具体的には何が追加されたんですか?」

 

「主に大きいのは相転移できるようにしておいた。お前に馴染み深い言い方をすれば“BLACK OUT”と言った所だろう・・・」

 

「そ、それって凄すぎですよ!」

 

「操作はフライヤーと同じでイメージするだけでいい・・・自分があそこに行きたいと思いブレイブハートに命令を出せばそこへ瞬間移動する。」

 

「はい!では早速・・・」

 

「まぁ、待て・・・BLACK OUTを利用するのはいいが、リコが操作している以上、リコに使用させるべきだと思い、コントロールリンクはリコ用に調整してある・・・」

 

「あ、あはは・・・そうですよね〜・・・」

 

少し残念・・・

 

「リコ、行けるか?」

 

「う、うん!使いこなして見せる!」

 

「その意気だ。但し、慣性等もそのまま引き継ぐから基本的には敵のいない空間へ相転移するのが無難だろう。」

 

「わかった!」

 

「それと、ブレイブハートにはアルフェシオンと同じ出力レベルのINフィールドを装備させておいたインフィニの出力に比例するからコンディションには注意しておけ・・・俺からは以上だが?」

 

「大丈夫です!これで使いこなせないなんて言えません!」

 

「これからはお前達の時代だ・・・いけっ!」

 

『了解!』

 

僕達の返事を聞くとレイさんは満足そうに敬礼をして通信をきった・・・

 

「さぁ・・・いくぞ!」

 

僕が号令を出すと最強のフライヤーへと進化した僕達(しもべ)は新型へと狙いを定めて目にも止まらない速度で襲い掛かっていく。

 

敵の新型戦闘機の数は約10000機・・・

 

それに対して、カズヤが射出したフライヤーの総数は200ばかり・・・

 

しかし、覚醒したカズヤは新型を次々と撃墜していく・・・

 

その様はまさにレイ・桜葉そのものである。

 

「カズヤさん、凄いです!撃墜数が3000機を越えました!」

 

「ああ!この調子で一気に!」

 

カズヤがフライヤーの数を増やそうとしたその時・・・

 

俺を感じるか?

 

「・・・っ!?」

 

僕は背筋に走った悪寒を頼りに“あのキチガイ”へ向けてフライヤーを射出した。

 

「無駄ぁっ!」

 

そして、突如現れた偽アルフェシオンは僕のフライヤーを切り払った。

 

「くっくっくっ・・・随分なご挨拶だな?」

 

やがてモニターにはレイさんに扮装している仮面の男が現れる・・・

 

そうこの男こそ僕達の真の敵である

 

死神のメシア・・・

 

そして、その正体は

 

全ての創造主 カルマ・・・

 

「こっちに来たのか・・・」

 

「くっくくく・・・嬉しいか?」

 

「ふざけるな!」

 

僕は再度フライヤーを展開する。

 

今度は一度に400機余りのフライヤーを全て目の前のキチガイに解き放つ。

 

「ワンパターンなんだよ・・・ば〜か♪」

 

次の瞬間、フライヤー達は全て消去された。

 

「くそっ!」

 

「持っている切り札を使うのは当然の事だと思うぜ?」

 

キチガイは馬鹿にした様子で皮肉ってきた。

 

「さて・・・」

 

そしてキチガイは偽アルフェシオンの左手にあるものを握らせた。

 

「ス、スレイヤー・オブ・デステニー・・・」

 

スレイヤー・オブ・デステニー・・・

 

この物語に存在する究極かつ最強の剣・・・

 

「くっくっくっ・・・前はいきなりアイツ(オメガ・ノヴァ)をぶっ放しちまったからな・・・今回はたっぷり遊んでやるぜぇ?」

 

言うが早いかキチガイが目にも止まらない速度で距離を詰めてくる。

 

「オラァァァァーッ!」

 

「お願い!」

 

リコの声が聞こえたかと思った次の瞬間・・・

 

僕達はキチガイの背後へと移動していた。

 

「あぁ!?」

 

キチガイの苛立った声が聞こえる。

 

「こ、これが・・・ブラックアウト?」

 

「ちっ!・・・出て来い!レイィィィーッ!」

 

キチガイが叫ぶと同時に僕達の前にあの人の紋章機が出現した。

 

「お兄ちゃん!?」

 

「レイさん!」

 

「・・・ったく、病み上がりだっていうのに・・・」

 

「うるせぇっ!テメェ!どういうつもりだ!?」

 

「何がだ?」

 

「ブレイブハートに何をした!?」

 

「見たままだが・・・」

 

「よくも好き勝手に台本をいじくってくれたな・・・」

 

「ふん、既に台本など無いに等しいだろうに・・・」

 

「何だと・・・」

 

「アスティオにある“力”も所詮、咄嗟に思いついたものだろう・・・大方予想はつく・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

分かる・・・

 

直感的に分かる・・・

 

あのキチガイからの底知れぬ殺気が一段と強まったのを・・・

 

「・・・上等だ。」

 

直感的に分かる・・・

 

キチガイがまた“アレ”(オメガ・ノヴァ)を放とうとしているのが・・・

 

「お前等、全員木っ端微塵にしてやらぁぁぁ!」

 

キチガイは奇声を上げながらオメガ・ノヴァの詠唱に入り・・・

 

「シネエエェェェーッ!!!」

 

キチガイはいつものようにオメガ・ノヴァを放とうとした・・・のだが?

 

「な、何・・・!?」

 

「悪いがオメガ・ノヴァは使えんように細工させてもらった・・・魔術が使えないのはお互い様だがな・・・」

 

「い、一体、何をしたんだ!」

 

「さぁな・・・ただ一つ言える事はこの世界はいつまでもお前一人のものではないという事だ。」

 

レイは両手にスレイヤー・オブ・デステニーを出現させて構える。

 

「ちっ・・・ここで決着をつける気か?」

 

キチガイは珍しく真面目な声で応対する・・・

 

キチガイといえどレイ・桜葉の強さはよく知っている・・・

 

というよりもこのキチガイはタクト以上にレイの強さを知っているだろう・・・

 

「これ以上、お前の茶番劇に付き合わされるのも鬱陶しい限りだ・・・お前はここで消えろ。」

 

レイが仕掛けようとしたまさにその時・・・

 

「悪いが、お前の相手は俺だ。」

 

「・・・っ!?」

 

レイはまるで意表をつかれたかのように気配のする方に意識を向ける。

 

そこにはもう一機の黒い紋章機がいたのだ。

 

金色の龍の紋章が描かれた黒い紋章機がレイの背後に出現していた。

 

〜三人目の救世主〜

 

トランスバール宙域で対峙する

 

アルフェシオンと謎の紋章機・・・

 

「病み上がりを狙うのはいささか気が引けるがこれも戦争だ・・・悪く思うなよ・・・」

 

謎の紋章機が右手に“虹色の剣”を構える。

 

(このプレッシャー・・・間違いない・・・)

 

逆にレイは左手の虹色の剣を消した。

 

「ほぅ?随分と謙虚になったものだ・・・」

 

これは愚策ではない・・・

 

二刀流とは自分より劣る下級者に使用するものであり、自分より上級者に使用するものではないからだ。

 

そうレイは相手が自分より上級者だと認めているのだ。

 

「今日は何か良くない事が起こるとは思ってはいたが・・・まさか、貴方が出てくるとは・・・」

 

「ふ、引っ張りだされたのだ・・・私とてもはや現役より退いたつもりでいたのだが・・・・・・ふむ、こうして出るのは“以前タクト達を襲撃した時以来”だな・・・」

 

「えっ・・・今、何て・・・」

 

「チッ!オイ!ごちゃごちゃ言ってねぇでさっさと始めろ!」

 

「やれやれ・・・・・・準備はいいか?」

 

「そちらこそ・・・現役に戻ってきた以上は覚悟はお決まりですか?」

 

「ああ、無論だ・・・それと敬語はいらん・・・俺とお前は今は敵同士なのだからな・・・」

 

「・・・・・・了解した。」

 

先に仕掛けたのはレイ!

 

レイはフライヤーを20機余り出現させ、謎の紋章機の周囲に着けた。

 

「悪くない・・・あそこで接近戦を仕掛けてくるものなら即座に終わらせていたところだ・・・」

 

決して、自意識過剰等ではない・・・

 

この謎の男にならレイ・桜葉と言えども簡単にあしらうことが可能であろう・・・

 

「・・・っ!」

 

レイ・桜葉はヘル・バイスを詠唱しながら、デス・ブラスター・キャノンを牽制代わりに発射する。

 

(当てようものならリフレクター板の餌食だ。)

 

「子供騙しにしては上出来だ。」

 

謎の敵はそれが牽制目的だと完全に見切っていたのであろう・・・

 

その場から一ミリとも動かずに仁王立ちしている。

 

「・・・・・・っ!」

 

無論、レイもそんな事は始めからお見通しだ。

 

「ヘル・バイス・・・猿真似とあざ笑うべきか?」

 

謎の男は周囲のわずかな圧縮現象を感知する前から対抗策をうっていた。

 

「甘い」

 

「チッ」

 

レイはヘル・バイスを仕掛ける前にその場から遠ざかる!

 

その僅か二秒後にレイが先ほどまでいた空間が処理落ちを起こしたかのような不可思議な現象を起こした。

 

謎の男は一足先にヘル・バイスを仕掛けていたのだ。

 

レイがヘル・バイスを使うと見切っていてだ。

 

「外された・・・?」

 

「いかにも・・・次はない。」

 

「元より、次があるなど思ってはいない。」

 

レイはデブリ地帯へ逃げ込む・・・

 

否、謎の男を誘っているのだ。

 

「ふふ・・・まだまだ甘い所があるな・・・」

 

謎の男はどこか親しみがこもったような声でレイの追跡をする。

 

この二人の戦いは“読みの世界”すら超越したところにある・・・

 

もはや、常人にこの二人の戦いを解説する事は神を超えるのと等しい所業であろう・・・

 

「何だ・・・アイツは・・・」

 

ガブリエルの時、あの人(レイ)はわざと負けた・・・

 

しかし、今回は違う・・・

 

僕にだって分かる・・・

 

レイさんは本気だった・・・

 

それなのに・・・

 

もし、あいつが立ち塞がるなら僕達に勝ち目などあるんだろうか・・・

 

「カズヤさん!」

 

リコの悲鳴じみた声で僕はカルマの存在を思い出した。

 

「くっくっくっ・・・お前の考えている事は大方予想がつく・・・どうだ?お前も俺の下にくだらんか?」

 

「ああ、下克上する事を大前提なら下ってやるさ!」

 

僕は再度フライヤーを仕掛ける!

 

例え、それが消されると分かっていても・・・

 

「は、ははは!お前、馬鹿だな!」

 

キチガイは再度、フライヤーをかき消そうとする・・・

 

「・・・っ!?」

 

フライヤーは消失する事なく創造主を直撃した。

 

「な、何・・・?」

 

代わりに創造主カルマより笑みが消失した。

 

「あたった・・・?」

 

「く、くっくっくっ・・・そうかそうか・・・これもお前の仕業か・・・相棒・・・・・・・・・上等だ。」

 

カルマの殺意が増大する・・・

 

「もうルールや台本なんかどうでもいい・・・テメェをその機体から引きずりだしてその目障りな顔を跡形もなくこねくりまわしてやるぁっ!!」

 

「・・・っ!?」

 

カルマの発する殺気が一度にカズヤを襲う!

 

カルマはカズヤ達を殺す事は出来ない。

 

それは、相棒との契約の証だった・・・

 

しかし、その相棒が裏切った以上・・・

 

そのルールなど守る必要はない・・・

 

「このクソガキィ!覚悟は出来てんだろうなぁっ!」

 

カルマから発せられる殺気が一気に増大する。

 

「黙れ!覚悟するのはお前の方だ!」

 

「ああっ!?」

 

「お前みたいな奴はここにいてはいけないんだ!ここから・・・ここからいなくなれぇぇぇーっ!」

 

フライヤーの数は一気に230機を越してカルマに向かって襲いかかった。

 

「ちっ!舐めるな!」

 

さすがに創造主といったところか、カルマは蜂の大群のようなフライヤーを次々と切り払っていく。

 

「今だ!」

 

「はい!いきます!」

 

出力最大までチャージされたハイパー・ギガ・ブラスターがカルマ目掛けて発射された!

 

「な、何!?」

 

フライヤーに気をとられていたカルマがこれを回避する事は不可能だった。

 

「ぐ、ぐおおおぉぉぉー!?」

 

極光のビームキャノンはカルマを難なく呑み込んだ。

 

〜超越者〜

 

デブリの中は大破した戦艦の残骸で埋め尽くされている・・・

 

そんな視界が悪い中で、至って自然に紋章機を操縦する者が二人・・・

 

「さぁ、ここまで来れば邪魔者はおらぬ・・・来るがいい・・・」

 

この二人にとって視界などハンデにすらならない・・・

 

「・・・っ」

 

言うが早いかレイは即座にフライヤーを展開して自分の周囲を陣取らせる。

 

攻撃的な戦い方をしてきたレイがここまで慎重になる事は普通はありえない・・・

 

レイにとっての普通とは全て自分の中で計算済みの事を意味さす・・・

 

しかし、もし相手が自分の計算外の事を平然と行える奇才の持ち主がいたとしたら?

 

「少し臆病になったな・・・そんなもので私がどうにかなると思っている訳でもあるまい・・・」

 

「・・・・・・」

 

男の皮肉にレイは一切動じない・・・

 

「・・・?・・・そうか、雑念を払ったか・・・」

 

常人ならここでレイの発する圧倒的な威圧感ですくみ上がってしまい、何もできずにいるだろう・・・

 

「キラーマシン相手となれば私も抵抗せねばなるまいな・・・」

 

男はどこかこの状況を楽しんでいるようにも思える・・・

 

男が“虹色の剣”を取り出すと同時にレイも同じ虹色の剣を取り出して構える・・・

 

「・・・・・・」

 

最強のキラーマシンと化したレイは無感情、無表情で謎の男に先手をうってでる。

 

しかし、男はそんな洗練された剣戟ですらまるで全て見切っているかのようにあしらってしまう。

 

「悪くない・・・・・・まるで隙が無い・・・」

 

余裕が無い筈である男の口元は何故か緩んでいる・・・

 

防戦一方である筈なのに男には余裕が満ち溢れている・・・

 

男は超越者・・・

 

この男を上回る者は存在しない・・・

 

否、作者の想像がこの男を超える人物を想像できないのだ。

 

「・・・少々、乱れてきているな・・・」

 

男はレイの一太刀を切り払い、カウンターでけさ斬りを狙う!

 

作者に永遠に勝てないと思わせた史上最強の男・・・

 

「・・・・・・っ?」

 

レイは間一髪で回避するがアルフェシオンの装甲を易々と削ってしまう。

 

そして、それはレイ・桜葉も同じである・・・

 

絶対に勝てない・・・

 

それは本来であればレイが対戦相手に与えていた最強のパイロットとしてのプレッシャー・・・

 

「・・・どうした?お前にしては技のキレがおちているではないか・・・」

 

にも関わらず、この男はそのプレッシャーを事もあろうかその最強のパイロットに対して放っている・・・

 

「・・・っ!」

 

レイはそのプレッシャーに怯む事なく、剣戟を再開する。

 

いや、最強のパイロットを圧倒しているのだ!

 

レイは直感的に感じている・・・

 

自分が攻めるのを止めた時にこの敵は斬りかかってくると・・・

 

「焦りが見え始めたな・・・・・・」

 

男はどこかため息をつく・・・

 

そして、もしこの男が本気で自分を潰しにきた場合自分には成す術がないと!

 

「レイよ・・・・・・」

 

「・・・?」

 

その何気ない一言がレイの動きをほんの一瞬止めてしまった。

 

「これも試練だ・・・乗り越えてみせよ・・・」

 

「・・・っ!?」

 

その時・・・

 

まさにその時、攻めと守りが入れ替わった!

 

男が今までに無い疾風怒濤の剣戟をレイに展開してきたのだ!

 

「・・・チッ!」

 

その荒々しくも洗練された剣戟はまさに極めた者の威厳が漂っている・・・

 

男は昔こう呼ばれたことがる・・・

 

全てを極めし者と・・・

 

レイはその神の域すらも凌駕した剣戟を前に守る事しか出来ない・・・

 

(これが実力の差だというのか・・・)

 

紛れも無くその男は超越者である・・・

 

〜気付かずに〜

 

「やったのか・・・」

 

クロス・キャリバーのハイパー・ギガ・ブラスターの照射が収まった頃にそこにカルマの姿は無かった・・・

 

「た、倒した・・・倒したのか?」

 

「レ、レーダーから反応は消失してますけど・・・」

 

いや、今までの事を考えるとそれは難しい・・・

 

「逃げられた・・・そう考えるべきなんだろうな・・・」

 

「おそらくは・・・」

 

戦況は未だにブラウドの新型との戦闘が続いている。

 

レイさんが気になるけど・・・

 

いや、あの人がそう容易くやられる訳がない・・・

 

何故ならあの人は僕の想像しうる中で最強のパイロットなんだから・・・

 

なら、今は・・・

 

「リコ、皆と合流してブラウド財閥の残党を討とう!」

 

「はい!」

 

僕達が激戦区へと舞い戻ろうとした時・・・

 

距離はかなり離れてはいるが三時の方向に相手の旗艦三隻が待機していた。

 

これは奇襲するべきだ・・・

 

この旗艦を潰せばあの新型達はコントロールを失う・・・

 

これは直感に過ぎないんだけど

 

この直感はあたると僕は踏んでいた。

 

「リコ・・・分かる?あそこに敵の旗艦が三隻ある・・・」

 

「あ!?すいません!私・・・全く気がつかなくて・・・」

 

「大丈夫だよ・・・向こうも何故か気がついてないみたいだから・・・」

 

「本当です・・・こちらをマークしている敵が一機もいないみたいです。」

 

「そうか・・・まだ、連中はカルマが撃退された事を知らないのか・・・」

 

果たして、相手が人か機械かは分からないんだけど・・・

 

ただ、もしこの状況下でハイパー・ブラスター・キャノンを使用すれば今度は明らかにエネルギー検知されるだろう・・・

 

それに、あのキチガイがいなくなった事にいつ気が付くかも分からない・・・

 

だとしたら手段は一つしかない・・・

 

フライヤーでの零距離射撃・・・

 

相手の旗艦にはおそらく何かしらのフィールドが展開されているだろう・・・

 

ならば、そのフィールドを貫通した後で狙撃すればいいだけの事・・・

 

あの人は確かフライヤーはただ単に命令すればいいと言っていた・・・

 

だったら、あのフィールドを貫通して攻撃しろと命令したらどうなるだろう・・・

 

何故だろう・・・

 

この改良されたブレイブハートにならそれが出来ると思えるのは・・・

 

ただ単にいけそうな気がする・・・

 

それだけだ・・・

 

でも・・・

 

迷っていられる状況じゃないのは確かだ!

 

「リコ!あの三隻に奇襲をかける!」

 

「えっ?」

 

「僕のフライヤーを忍ばせて敵の動力部に直撃させる!少なからず敵の反撃がある筈だからその時、ワープできるようにしておいてくれ!」

 

「は、はい!」

 

「いける筈・・・いける筈だ・・・」

 

僕は旗艦三隻の構造をイメージ解析にかかる・・・

 

「もう少し・・・・・・」

 

今、僕がしている事はあの人の領域の荒業だ。

 

以前の僕には出来なかったことだ・・・

 

しかし、リコからバランスデティクションを引き継いだ僕になら出来る筈だ・・・

 

「・・・・・・見えた!」

 

僕はフライヤーに撃墜しろと命令を下す!

 

驚異的な進化を遂げた僕の使い魔達は各々が確固とした意思を持って獲物に飛び掛る!

 

そして、フライヤーの粒子砲が旗艦の動力部を貫通し・・・

 

「やった!」

 

敵旗艦が誘導爆発を引き起こし爆散した。

 

「よし!後は残存戦力を一掃するだけだ!」

 

「待ってください!敵旗艦の熱源反応を確認しました!」

 

「何だって!?」

 

熱源反応・・・それは残存を意味する・・・

 

そして、僕が確認したのは三機の人型戦闘機だった。

 

敵機の姿はカスタムされたゼックイそのもの・・・

 

ただ、各々が象徴的な武器と防具を持つ・・・

 

ポセイドンは黄金のトライデント・・・

 

デメテルはダイヤモンドみたいな盾・・・

 

ヘスティアに至っては神秘的な瓶を持っている。

 

「これは・・・十二神?」

 

以前、レイさんが教えてくれた神皇に仕える下級神達・・・

 

「カズヤさん、来ます!」

 

三機は周囲を周回していた新型戦闘機を僚機に攻撃を仕掛けてくる!

 

「遅い!」

 

新型戦闘機達をフライヤーを撃墜するも、三機は既に零距離まで接近してきている。

 

しかし、次の瞬間僕達は敵の背後にワープしていた。

 

「うぅ・・・少し気持ち悪いです・・・」

 

ほんの一瞬で何の過程もなく景色が変わるんだ。無理もないだろう・・・

 

「ゴメン!すぐに撃墜するから、もう少しだけ我慢してくれ!」

 

「は、はい!」

 

先に仕掛けてきたのはポセイドン・・・

 

動きは単調でいかにも突き刺しを狙っている・・・

 

ただ、トライデントは帯電されているようだが・・・

 

「単調過ぎる!」

 

単調な動きのゼックイにフライヤーの粒子砲が幾筋をも貫通した。

 

ポセイドンを模したゼックイは跡形も無く爆散した。

 

「え・・・?」

 

何てあっけない・・・

 

拍子抜けになりながらも、残り二機への警戒は怠らない。

 

しかし、残り二機もあっけなくフライヤーに撃墜された。

 

「な、何だろう・・・嫌な予感がする・・・」

 

LEARNING COMPLETE

 

その後、僕はムーンエンジェル隊に合流し、残像部隊を一掃にかかった・・・

 

新型機を次々と撃墜していく中でも僕には

 

今までにない嫌な予感が襲っていた。

 

くくく・・・そうやって疑問を抱きながらそ倒し続ければいい・・・

 

倒せば倒す程、お前達に災厄が降りかかるのだからなぁ・・・

 

この行いがどういう災いをもたらすかに気が付いたお前達の間抜け面をするかをじっくり拝ませてもらうぜ・・・

 

残る数は後9つ・・・

 

せいぜい頑張りな・・・あいつの為になぁ・・・

 

くくく・・・ははは・・・ふははははっ!

 

一方、レイ・桜葉は・・・

 

「ち・・・」

 

無の境地にまで上り詰めた男が己を上回る男に圧倒されている・・・

 

「・・・・・・動きが鈍くなってきたな。」

 

アルフェシオンの被弾箇所は既に十数ヵ所を越えている・・・

 

ただ、その傷はまるで印であるかのように軽微なものばかりであるが・・・

 

「・・・・・・ふ、どうやら撤退命令が出されたようだ。」

 

男は虹色の剣を仕舞う・・・

 

それは致命的な隙だ・・・

 

しかし、レイはそれを追撃しようなどとは考えない・・・

 

純粋に剣の腕で負けた・・・

 

これ以上、恥の上塗りはレイにはできない。

 

「レイよ・・・次に合間見える時に、お前が今以上の力を発揮する事を期待している・・・」

 

そういって、謎の男は処理落ちを起こしたように消えていった・・・

 

「これで、二回目の敗北か・・・」

 

レイはどこか自嘲気味に笑った・・・

 

・・・・・・

 

そこは漆黒の空間・・・

 

あるいは混沌というべきか・・・

 

ガブリエル・・・起きているか?

 

はい・・・

 

お前はどうしたい?

 

どうしたい?

 

アイツ等をどうしたい?

 

私、私は・・・・・・アイツ等を・・

 

お前がその望みを叶えたいと願うのであればアスティオに向かえ・・・

 

その星の中心部にそれを眠らせてある・・・

 

お前がその思いを爆発させた時

 

それはお前のモノとなる・・・

 

了解・・・

 

 

inserted by FC2 system