真・終幕
最終
最後の防衛戦
〜後編〜
多くの犠牲を払いながらも死神のメシアとラスト・ジャッジメントを退けたタクト達の前に黒幕であるガンチ・デイチルが姿を現した・・・
「やはり生きていたのか・・・」
「はは、私が死ぬ訳がないでしょう?」
「なら、今日がお前の命日になるだけだ!」
「ふ、ふふ・・・果たしてそうでしょうか?このラスト・エンジェルはあなた方の紋章機やプロトタイプであったラスト・リヴェンジャー等のテストを繰り返して完成させた“最後の紋章機”(ラスト・エンジェルフレーム)ですよ?正直、貴方達の紋章機の性能とは比べ物になりませんよ?」
「お前・・・一体、何者なんだ?目的は世界の壊滅・・・そして、ラスト・リヴェンジャー等をプロトタイプと言い切れる・・・前々からお前は人間じゃないと思っていた・・・だが、何よりもこうしてお前が最後の敵として出てくることを作者が許可してる事が正直分からない・・・」
「くっくっくっ・・・あっはっはっは・・・」
ガンチ・デイチルが静かに笑い始めた・・・
「お前達は・・・まだ俺が誰だか分からないのか?」
「お前・・・その喋り方・・・」
「は!いつまでも心にもない喋り方も疲れてきていた所だから丁度いい頃合だぜ・・・にしても、あんなにヒントを与えてやったのにまだ気付かないなんて救い様がねぇな・・・そうだ。おい“相棒”から俺の正体を教えてやったらどうだ?」
「下らん、自分でやれ。」
「うわっはっはっ!これは手厳しい限りだな・・・仕方ない・・・・・・これで俺が誰だか分かるだろ?」
次の瞬間、辺り一面に今までにない重圧感が漂った!
「この感じ!?」
正体を知っているレイ、エクレア、シリウスの三人を除いて一番初めに気が付いたのはカズヤだった。
「お、お前・・・まさか!」
タクトの脳裏にあの言葉が蘇る
タクト、俺を感じるか?
「く、くっくっくっ!あはは!あーはっはっはっはっ!」
気がふれたかのように狂ったように笑い続けるガンチ・デイチル・・・
その様はまるで・・・
「言っただろ?“俺は死なないって”・・・」
その確信させる言葉と共にガンチの声がアイツのものへと変わった・・・
「カルマ・・・」
「そうだよ。俺が本物のカルマさ・・・」
「お前だったのか・・・道理でブラウドや四大天使を操つれた訳だ・・・」
「くっくっくっ!この俺が駒であるゼイバーなんかに仕える訳ねぇだろうが」
「お前が真犯人だったのか!」
「・・・・・・だと言ったら?」
「ここで決着をつける!」
「ふはは!いいねぇ!こいつは話が早い!」
ガンチ・・・いやカルマが指を鳴らすとラスト・エンジェルの白銀のボディにいくつもの神聖文字が浮かびあがる。
「それじゃあ、最終決戦らしく出し惜しみなく行くとするか・・・こんな事もあろうかと別同部隊を全てこちらに向けさせているのさ・・・」
タクト達の周囲に突如、信じられない光景が広がった・・・
「あ、あれはアルフェシオン!いやラスト・リヴェンジャーもある!?」
タクト達の周囲は今までの強敵の量産機で埋め尽くされている。
「一つ断っておくが、量産機ってのは本来がコスト削減と手間の削減と言われてるがこいつらは基本的にオリジナルに限りなく近づけて作製し、搭載してるAIもオリジナルのパイロットから抽出したもんだから舐めてるとやられるぜ・・・まぁ、どっちにしてもお前等はここで皆殺しなんだがな」
「何て事だ・・・」
シヴァは敵の圧倒的な戦力に膝をついた。
悪夢の様な敵機が無数に存在するのだ。
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pray 水樹奈々
「・・・・・・相変わらずの力任せの馬鹿だな。」
「あん?」
「量より質だと何度も言わせるな・・と言いたいところだが今回は人の事は言えないかもしれん」
レイが指を鳴らした瞬間、ブラウドの主力艦隊の背後・・・つまりは皇国軍とサンドイッチするような位置に大艦隊が出現した。
「な、何!?」
カルマは予期せぬ事態に声を上げた。
「こちら、ネオ・ヴァル・ファスクのエオニア・・・隊長の命によりこれより助太刀する。」
「エオニア!?」
タクトとシリウスは同時に声を上げた。
「同じく、シェリー・ブリンストルも参戦する。」
「シャリー!?」
「この傷を負わせた犯人をこの手で討つ・・・」
「ふん、全く癪にさわるが、エオニア様の命とあれば仕方あるまい。ワシも助太刀するぞ。」
「レゾムまで!?」
「その者達だけではない、余も力を貸す・・・」
一際目立つ、巨大なゼックイ・・・
「メベト!?お前までどうして・・・」
「死後の世界からお前達の戦いを見て、余の中でそこの偽りの神こそ滅びるべきだと判断した・・・与えられた第二の生・・・この戦いに全てをそぞぎ込む。」
「でも、お前達は・・・その・・・」
死んだ筈なのに・・・
「禁断の秘術を使った・・・そのおかげでかなり手間取った・・・」
「レ、レイ・・・貴様、どうやってそれを成し遂げた・・・」
「確かに本来は死者の再生はお前にしか出来ない秘術・・・しかし、この世界はいつまでもお前のものではない。」
「まさか、この世界の仕組みを・・・」
「ああ、お前に従属しながら探っていた・・・」
「き、貴様・・・殺してやるぞ!」
「出来るなら、やってみるがいい・・・世界は常に成長するものだ・・・本来の役目を忘れただの暴君と化したお前はもはやこの世界に必要とはされてはいない・・・俺の方にも若干ではあるが支持者が集まってるのだ。」
「く、クソが・・・!!」
「因果律よ・・・お前の時代は今日終わる・・・タクト!指示を出せ!」
「・・・・・・」
辺り一面に静けさが漂う・・・
「皆、これが最後の戦いだ・・・」
タクトはカルマの方を睨みつける
「俺達の最後の敵は因果律カルマ・・・この世界の創造主だ・・・しかし、その創造主が俺達を消そうとしている・・・なら・・・俺達は抗う!どこまでも!」
味方達の歓声が上がる・・・
皇国軍からも・・・
ネオ・ヴァル・ファスクの面々からも・・・
「最終攻撃目標!ラスト・エンジェル!全機攻撃開始だ!俺に続けぇーーーーーーっ!!」
『了解!』
全機が一斉に動き出す!
「チ!図に乗るなよ!創造物(クリチャー)如きが!」
それと同時にブラウドの主力艦隊も動き始めた。
挟み撃ちと状態なれど高性能な人型戦闘機で構成されたブラウド大艦隊の方が状況は有利である。
「カズヤ!ドッキング頼む!俺達はアイツを討つぞ!」
「はい!」
シャイニング・スターとクロス・ハートが再びドッキングし、脅威の機動性を見せ、中心部にいるカルマを目指す!
「来いやぁ!!」
それに対して、カルマも“左手”に乖離の剣を召還してタクト達へ向けて動き出す。
「あの剣!」
乖離
何らかの認識不全状態にある人の精神は、現実を現実として認識・識別する事が出来ない。故に現実から乖離した妄想や幻想は、その人の感覚・思考に顕著な影響を与え、所謂「目覚めて夢を見る人」の状態になる。しかし当人が認識できなくても、現実は常にそこに在るため、現実から乖離してしまった当人の精神が起こす行動が、時に現実の世界に混乱を招く・・・
そして乖離してしまったのは全ての起源 因果律・・・
「そうとも・・・こいつは俺にしか召還できねぇ代物さぁ・・・つまりこの俺が正真正銘のラスボスだ!」
「ああ!そして!ラスボスは主人公に必ず倒されるんだよ!」
「ほざくなぁあああああ!!!」
両者の距離はあっという間に詰まり
「カルマアアアアアアアアアア!!」
「タクトオオオオオオオオオオ!!」
虹色の剣と黄金の剣が激しい衝突音を立ててぶつかる!
両陣営の指揮官と指揮官の直接対決が始まった。
「こいつ、前よりも格段に強くなっている!?」
敵機の方のパワーがシャイニング・スターを上回っているのは明らかだ。
タクトは敵機の成長に驚愕した。
「成長はお前だけの専売特許じゃねぇんだよ!オラァ!!」
続いて、カルマはレッグの部分に虹色の剣を召還してタクトに斬りかかる!
「こいつ!?」
「やらせるか!」
カズヤのフライヤーがカルマに向けて火を吹いた!
「チ!」
カルマは距離をとり、自分のフライヤーを展開した。
「やはり誰かのフライヤーに似ている・・・でも、今はどうでいい!」
フライヤー合戦をしながらもカルマは再びタクトへ接近する!
その機動性も脅威に値するものがある。
「早い!だが!」
カルマが接近しフェイントのけさ斬りを放ち、二撃目に本命のレッグ部の虹色の剣で斬りかかる!
「お前だけの専売特許だなんて思うな!」
タクトもレッグ部に剣を召還して対抗する!
そして、それはクラウ・ソラスではなくスレイヤー・オブ・デステニーである。
「何!?」
そう、エクレアからウィルドの恩恵を受けたタクトの魔力はレイと同等のものとなり、この奇跡が実現したのだ。
「機体の性能にのせられてるだけの三流なんかに負けるかよ!」
「なめてんじゃねぇぞ!オラアアアア!!」
二機の人間の領域を凌駕したクロスコンバットが開始した。
「凄いですね、あの二機は・・・」
「ああ、ではこちらも行くとしよう・・・全機、準備はいいか?」
「ああ、余は構わぬ。」
「隊長!」
「はいはい・・・私もいいわよ」
「・・・・・・メシア隊、攻撃開始!」
レイ達も動きだす!
「・・・・・・貴方の相手は俺だ。」
レイは単体で超越者の方へ向かう。
超越者はその場から動かずにレイを待つ。
「来い・・・今日こそ私を越えてみせろ。」
「レイ、気をつけて・・・」
「ああ、お前こそ無理はするなよ。」
「うん、シリウス行くわよ!」
「ああ!」
エクレア達はレイから別れて無数の大艦隊へと立ち向かっていく。
「・・・全機、手順を間違えないようにね・・・」
相手はまともな戦い方でどうにかなるような連中じゃない・・・
ならば裏をつかない限り勝ち目はない・・・
「さて・・・始めるか?」
「・・・貴方はまだアイツの呪縛に・・」
「それとこれとは関係ない・・・今の私は一人の剣士・・・ならば強者と戦いという願望が芽生えるのもさほどおかしい事ではないと思うが?」
「・・・・・・確かに」
そう言いながらレイは右手に虹色の剣を取り出した。
「参る!」
「・・・っ!」
二機は開始と同時に衝突する!
両者共に使用している剣は一つ・・・
(これは戦争だ・・・)
相変わらず敢て後手に回る超越者は研ぎ澄まされたレイの斬撃を巧みに受け流していく。
「・・・遊ばれている」
レイはこの戦いに赴く前に一つの覚悟を決めていた・・・
自分の相手がこの超越者になる事は予め知っていた・・・
そして、この超越者はレイがこの世界で唯一、敬意を示している男である・・・
「仕掛けるタイミングを見つけねば・・・やられる」
レイはまともに戦って勝てる相手とは思っていない。
目の前の超越者は強い・・・
しかし、それと同時に目の前の超越者は正々堂々とした騎士の戦い方に準じている。
遠い昔に下らぬと捨てた筈の騎士道を敢て歩んでいるのだ・・・
“それこそ、誰かへの当てつけのように”
「幸い、周囲にはブラウドの戦艦達もある・・・」
そう、レイは超越者の相手をするだけでなく他の役割も持っているのだ。
「やはり、俺にはターゲットは掛からないか・・・」
そう、何を思ったのかは知らないがアイツは俺とマスターに一騎打ちをさせたがっているのか、俺に対しては攻撃するなと命令してある・・・
まぁ、こちらが攻撃をした際には総攻撃しろというプログラムでも組んでいるのだろうが・・・
「さすがに相手が相手だ・・・な!」
レイは不意打ちの一撃を受け流し、フライヤーで追撃しようとした超越者を牽制した。
「ほぅ・・・これは面白い。」
すると何と超越者もフライヤーを10機射出した。
「フライヤーを使うなど果たして幾年ぶりか・・・」
(チ、余計なものを目覚めさせちまったか・・・)
超越者はフライヤーを見たこともないような軌道で弄ぶ・・・それは明らかな隙だった・・・
しかし、レイはそこにつけ込まない・・・
今まで多くの猛者達がその隙につけ込み、返り討ちにあってきたのだ。
レイは知っている・・・
相手は後手の修羅である。
あれはレイを引っ掛けようと実に巧みに隙を作っているのだ・・・
あそこに踏み込む・・・もしくはフライヤーを使おうものならとんだ倍返しを喰らうのは明白だ。
周りにはブラウドの戦艦・・・・・・
味方機はいない・・・
アイツが妙な気を使ったせいで俺は今敵のど真ん中にいる・・・
そうか・・・まさかとは思うが・・・
レイは戦艦を楯に超越者のフライヤーを誘う。
そして、レイの予想通りに超越者はレイを狙撃しようと戦艦越しにフライヤーを仕掛けてきた!
「そうか・・・それが貴方の本意か!?」
そして、レイはひたすら逃げ続ける。
一方、カルマは苛立たしそうにタクト達の相手をしていた。
「チィ!このガキィッ!!」
「ガキで悪かったな!」
カズヤのフライヤー達が鬼の様にカルマを狙撃する。
しかし、流石はブラウドの最終兵器なのか、カズヤのフライヤーを受けても偽者とは違いフィールドが弾いてしまう!
「そこだ!」
「甘めぇんだよ!」
タクトの驚異的なクロスコンバットも難なく受け流す
「なんだ・・・こちらの動きが全部読まれてるのか?」
「お前の癖なんぞ全てお見通しなんだよ!」
カルマは手からいくつものエネルギー弾を生み出してそれを次々とタクト目掛けて投げつける!
タクトはそれを回避するが周囲の戦艦達にあたり、その驚異的な威力は小規模な核爆発を引き起こす!
そして、タクトもシャイニング・スターを安全地帯までワープさせ、戦艦の合間を潜り抜けて再びカルマへ斬りかかる!
「死ねやぁっ!」
真正面から斬りかかってくるタクトに対してカルマは高出力の小型版エクスキュージョンをぶっ放す!
「やらせない!」
「行くよ!リコ!」
それに桜葉姉妹は己のエネルギー砲で対向する!
「チィ!このアマァッ!!」
憤慨するカルマはガンチ・デイチルの頃の面影が皆無な程に荒れ狂っている。
一方、他の天使達の戦いも佳境を極めている。
それもそうだろう、相手が今までとはうって変わってしまったのだ。
「くそ!アルフェシオンは機動性が高すぎてラスト・リヴェンジャーには耐久性が高すぎる・・・」
フォルテは無限の弾幕を撒き散らすが高性能機の大群にはそれ程の効果はない・・・
「まさにシンプルイズベストですね・・・」
「リリィ!こじゃれてる暇はないよ!」
「はい!」
フォルテ達は味方機の間に入りながら砲台としての役目に準じる。
「二機がかりだなんて・・・卑怯な連中ね!」
ランファは二機のアルフェシオンに追尾されていた。
「何やってんだよ!」
そこに駆けつけたシリウスのデスクローが一機撃破し・・・
「お前も単体で突っ込むな!」
後方からの高出力のビームキャノンが残る一機を薙ぎ払った。
「シリウス!エオニア!ありがとう!」
「礼はいい!お前等、ポイント206まで敵を固められるか?」
「何であんた達がそこまで知ってるのよ・・・」
「隊長に聞いたのよ。それでやれそう?」
「やらなきゃ、こっちがやられるんでしょう!」
「いい返事ね。じゃ、行くわよ!」
一方、レイは苦戦を強いられていた。
「レイ、逃げてばかりでは面白くないぞ?」
「これは戦争だ!」
「ふむ・・・」
「貴方こそ、アイツの呪縛から逃げたいとは思わないのですか!?」
「くどいな・・・どうやら余計な雑念が取り払えぬと来たか・・・レイ、お前は私が知る中でも最も完成された剣士・・・しかし、お前は感情に流され易い・・・それはある意味いい事なのかもしれんが・・・」
それまでフライヤーを飛ばしていた超越者が突如、右手に虹色の剣を構える。
「戦場では命取りにしかならないと知らぬ訳でもあるまい!」
「仕掛けてきた!?」
今まで後手に回っていた超越者が仕掛けてきた事にレイは驚いた。
「・・・っ!」
超越者はそれまでの受身の姿勢を崩し、鬼のような斬撃を仕掛けてきた!
「チッ!」
そして今度はレイが受身の立場になる。
「前と同じパターンかよ・・・」
時間が無いというのに・・・
レイはミリ単位では役不足な読みの斬り合いの中でそんな事を思った。
「どうした!」
超越者はアルフェシオンに蹴りを入れて体勢を崩し、仕掛ける!
「私を越えてみせろ!」
「・・・・・・」
全く、無理を言ってくれる・・・
しかし、それには同感だ・・・
俺は貴方を越える為に戦士の道を歩んだのだ。
「・・・・・・いいだろう、お前を殺す。」
レイの目が本気の殺意を帯びる。
レイの神経がかつてタクト達を恐怖のどん底に叩き落した時と同じぐらいにまで繊細なものへと化す
「そうだ、その目だ・・・死神はそうでなくてはな!」
そして、レイはさっきまでとは違い、超越者の猛攻撃の中にカウンターを含ませていく!
「・・・やる。」
超越者は改めてレイの天性の才に驚愕する。
確かに実力は超越者の方が上である。
しかし、超越者の実力は長きに渡る戦いの経験がもたらしたものである。
それに対して、レイの実力は経験だけで育まれたものではない・・・
「・・・っ」
レイが超越者の肩口目掛け左足の虹色の剣でサマーソルトを描くように斬りつけた!
とは言っても、超越者もすんでで回避したのでダメージはかすり傷程度だが・・・
「かすった・・・?」
超越者も反撃にレイの左足を右手の虹色の剣で斬り付けるも、これも同じくすんでで回避されかすり傷をつけるにとどまった。
レイはこれを勝機と判断し、一気に畳み掛けた。
この状況でカウンターはこないと確信して・・・
「勝負をかけに来たか・・・」
そう・・・
超越者よりもレイが優れていること・・・
その差がこの奇跡を引き起こした・・・
経験による実力を覆す要素・・・
それは“直感”である。
読み合いの世界において直感は何よりも重要となる・・・
たとえ、超越者がレイの行動パターンを全て見切っていたとしても、レイはそれを天性の直感で先読みして行動に移す・・・
「面白くなってきた・・・」
超越者は口元をほころばせ、レイの疾風怒濤の斬撃に対応する。
「悪いが、そこまで時間は割けない!」
レイは超越者の袈裟斬りを平行に回避して脳天唐竹割りの一撃を放つも・・・
「・・・っ!?」
レイは脳天唐竹割りを中断して、機体の左の横腹を守るように剣を置いた。
次の瞬間、機体にもの凄い衝撃がはしり、レイは吹っ飛ばされた。
「ぐっ・・・油断した。」
「いい直感だな・・・」
「気付かなければやられていた・・・」
そう、今の静かな一撃こそ、必絶のカウンター・・・
多くの猛者を倒してきた超越者の得意技だ。
静かながらも無駄はなく・・・
その破壊力は絶大・・・
「しかし、次は直感で気付く前に断つ。」
超越者から発せられるプレッシャーが一気に増大した。
「・・・くっ」
超越者が本気になったのだ。
今までに感じた事もないプレッシャーがレイを圧迫する。
しかし、レイは超越者に勝つ事は難しいだろう・・・
直感という天性の才があったとしてもこの男を上回る事は難しい・・・
紛れもなく真の最強である。
奇跡の体現者、完全の体現者、混沌の体現者・・・
そして、第四の体現者・・・
それは絶対の体現者・・・
この超越者を越える者など存在しない。
「臆したのなら去れ、さもなければ・・・」
今までにない冷徹な声でレイを威圧する超越者・・・
「残念だが、俺は逃げる事が何よりも嫌いなんだ。」
「甘いな・・・逃げるときには逃げなければ自分が損をするだけだぞ?」
「その言葉は貴方に返す・・・」
レイは再度、虹色の剣を構える。
「・・・・・・死ぬぞ」
「・・・・・・っ!」
レイが先に仕掛けた!
最初の一撃をアバジェスは敢て回避し
「・・・っ」
二撃目を同じ剣で受け止める・・・
カウンターは不意打ちであるからこそ効果がある・・・
生身の人間が痛みを大きく感じる時も不意な痛みの時である。
まさか、こんな所を殴られるとは思わなかったというように防御の意識がないところに一撃をいれられると大抵の者は沈む・・・
それはこの戦いでも同じである。
アルフェシオンにもINフィールドが展開されてはいるが、それは局所、局所に振り分けているのだ。
そして、3撃目・・・
視えない必殺の一撃が来ることをレイは直感し
「そこぉっ!!」
そのまま、相打ち狙いで超越者の右肩を斬り裂いた!
「ぬ・・・」
それに対して超越者はレイの左肩をかすらせただけだった・・・
「ふ・・・勝負あったな」
「何故、手を抜かれたのだ。」
「手を抜いたとは心外だ・・・他かにかすめたのはわざとだ・・・しかし、あのカウンターにカウンターを当てられた時点で私の敗北は決まっていた。なら、これ以上、傷つけても無理だと思った。」
「貴方は卑怯だ。これでは俺自身が敗北したようにしか思えない。」
「そう言うな・・・お前にはまだ倒すべき敵がいる筈だ・・・」
超越者はタクト達と死闘を繰り広げている自分の主の方を見ながら告げた。
「ふぅ・・・・・・この戦いは無効です。この戦いが終わり、貴方が全力を出せる状況になった時、俺は再度貴方に戦いを挑みます・・・そして、貴方に勝ち、アイツ(タクト)も必ず倒す・・・」
「いいだろう・・・楽しみにしておこう・・・もうそんなに時間はない、お前達の作戦も順調のようだ。私は引き上げるとしよう・・・」
「・・・・・・」
レイは消失していく黒い紋章機を敬礼で見送った後で、現状の把握をする・・・
「確かに・・・頃合だな、敵が“いい具合に固まっている”」
レイはタクト達の方を向く・・・
「エクレア・・・」
そして、レイはエクレアに呼びかけた。
切り札を使用する時が来たのだ。
一方、タクトとカルマの戦いも激しさを増していた。
「こんのガキャアアアアアアアアア!!!」
「うるさい!」
衝突する大将同士は先手、先手と互いの隙を狙うレベルの戦いへとなっていた。
「貴方はどうしてそこまでしてこの世界を壊したいんですか!?」
ミルフィーユははち切れそうな思いをカルマへ投げつけた。
「・・・どうしてだぁ!?」
「よせ!ミルフィー!そんな奴と話す必要なんてない!」
「ああ、その通りだ!俺はお前達が気に喰わない・・・それが理由だ!」
「違う!貴方は私達だけじゃない!この世界そのものを憎んでいる!」
「・・・・・・だと言ったら、どうする?」
「え・・・」
「ああ!その通りだ!俺はこの世界そのものがでぇっ嫌いなんだよおおおおおおおおおお!!!!」
「どうしてなんですか!」
「ああ!?だからテメェみたいな偽善者はムカつくんだよ!デザイア!」
カルマは核エネルギーの球を召還しそれをタクト目掛けて投げつける!
「チッ!」
そして、タクトはそれをワープしてやり過ごす。
「答えて下さい!」
「見てわからんか?」
「何をですか!」
「この世界を見て、お前は美しいと思うか?」
「思っちゃいけないんですか!?」
「は!何が美しいものか・・・」
「え・・・」
「餌を殺し、欲望のままに喰らい、排泄しなければ生きていけないこの世界の何が美しい?」
「そ、そんな・・・」
「お前がよく使う卵とて命の源・・・それが安いからと言って娯楽気分の菓子に使われる鶏の気持ちを考えたことはあるか?卵は言わば命・・・それがパンひとつよりも安い価値しかないだと?それこそ、お前達が命について興味がないと言ってるようなものだろう・・・違うか?」
「・・・・・・」
「所詮、どんなアイドルだって、生き物や植物の死体を喰らい、それを排泄する・・・そして、それを仕方ないからと片付け、さも自分達は何も汚いところはないとアピールする・・・そんな生き様が本当にい美しいと言い切れるか?」
「・・・・・・私は」
「は!ただ楽しければいいってかぁ?救える動物を救ったからといって人間の業(カルマ)が消える訳ではない。お前の歩んできた人生なんてそんなものだろうが。」
「・・・・・・」
「お前を含めてお前達人間の成す事に善行などありはしない!強いてあるとすれば自ら死ぬ事だと知れやぁっ!」
カルマは左足に召還した乖離の剣でサマーソルトを描きながら斬りかかる!
「ミルフィー!耳を貸すんじゃない!そいつは君を混乱させようとしてるだけだ!」
それを寸でのタイミング回避してタクトは反撃に移る!
「ふん・・・シヴァ女皇、聞いていただろう?」
「何だ・・・」
「お前ならこの世界の闇を見てきた筈・・・ザレム派の者達など自分の事しか頭にない皇国の寄生虫だ。お前達達達助けてやると持ちかけたら、あっさりと売国しやがったぜ?まぁ、そのおかげで色々とやり易かったぜ?そのおかげでこちらも戦力を整える事ができたしな。」
「・・・・・・貴様、そうやって今まで画策してきたのか?」
「ああ、だが俺の交渉にハイハイしたお前の家来達が屑なだけだと思うが?」
「確かにザレム派は屑だ・・・厳正な処罰を与えねばなるまい・・・しかし、お前はもはや屑以下・・・語るにも値せん。」
「ハ!ガキが良くほざいたものだ・・・」
「ええ、貴方も頭の中が子供の癖によくそこまで言えたものね。」
「あん?」
いつの間にかタクトとカルマの間にエクレアとシリウスが立ちはだかる。
「何しに出てきた?死に損ないの偽者が・・・」
「哀れみに来たのよ、落ちぶれた貴方をね。」
「そうかよ」
「タクト・・・レイのところまで後退して、こいつは私が引き受けるわ・・・」
「ダメだ!お前、そんな力なんて残ってないだろう!」
「・・・・・・」
「そいつの言う通りだ。死に損ないは病室で静かに死んでいく方がお似合いだ。引っ込んでな。」
「いいから、行って・・・この戦いに勝ちたいのなら今は私の言う事を聞いて・・・お願い。」
「いいから、早く行けよ・・・ったく、俺がいる事を忘れてるんじゃねぇのか・・・」
「二人共・・・・・・」
「早く行け!」
二人はカルマへ斬りかかる!
「ああん!?」
カルマは苛立だしげに二人の初撃を受け止める。
「分かった・・・みんな、行くぞ。」
「シリウス君、無理しないでね。」
「ああ・・・」
「エクレア・・・」
「大丈夫だから、そんな顔しないで・・・ね?」
「無茶しないでね・・・」
「うん・・・」
「タクトさん、行きましょう。」
「ああ・・・」
やがて、タクトはレイのいるポイントまで向かっていった。
「テメェ等!待ちやがれ!」
追撃しようとするカルマを二人の子供が妨害する。
「チ!どきやがれ!」
「そうはいかねぇんだよ!」
シリウスは力押しで向かってくるカルマを同じく力で押し返す。
「お前にはいつぞやの借りもあるしな!」
「タクト一人仕留め切れなかった失敗作が、ほざくなあああああああ!!」
「貴様こそ!!」
衝突する二機
しかし、パワーはカルマの方が勝っているのかオリジンは押され気味だ。
「くっくっくっ!最初の紋章機と最後の紋章機・・・その性能の差は明らかだな。」
「機体の性能にだけ載せられている奴がよく言えたもんだぜ。」
「あぁ・・・?」
「お前に見せてやるよ。俺の本気をな!」
シリウスは左手のデスクローでラスト・エンジェルの肩口をかすめた。
「ああ!?いきがってんじゃねぇぞ!このクソガキィィィィーーーーッ!!!」
憤慨するカルマはまたしても核エネルギーの球を召還し、それをオリジンに向けて投げ放つ!
小規模な核爆発が巻き起こり、味方の艦隊を巻き込む。
「全く、無茶苦茶な人ね・・・そういうところは昔と変らないわね。」
「俺をこんな風にしたのは貴様だろうが!!」
「そうね・・・確かにね・・・」
一方、タクト達はレイ達の元へと集まっていた。
「全く、待たせやがって・・・」
「いいから!作戦ってなんだよ?」
「というか、どうして皆ここに集まっているんですか?」
「エクレアに呼ばれたのよ。」
「何でも必勝の策があるっていうからな。」
「敵がいい具合に固まっている・・・無人機には擬似で高出力の熱源反応をださせてあったからブラウドの無人機は今頃こちらの囮に夢中になっているんだろう。」
「だから、どうするんだよ!?」
「フン、薙ぎ払うんだよ。」
「薙ぎ払う?」
「そうだ・・・固まっている相手にする事と言えばそれしかないだろうが・・・」
「でも、敵機は量産型とはいえ、アルフェシオンやラスト・リヴェンジャーも混じっているんですよ?」
「無論、通常の攻撃で仕留めようなんて思っちゃあいない・・・特大の火器を用いるんだよ。」
「でも、そんな武器を何処から・・・」
「心配はいらん、火器ならここにある・・・」
「え・・・?」
「ハイパーキャノン、ハイパーブラスター、そして俺のデス・ブラスター・キャノンがな。」
「一斉攻撃ですか?」
「いや、流石に単体で発射しても敵機は仕留めれない・・・INフィールドは貫通させないという理念に基づいているしな・・・」
「じゃあ、一体・・・」
「既にその為の改造は施してある。」
「え?」
「インフィニを連結させて、そのエネルギーを利用してシャイニング・スターが放射する。」
「勝手に改造するなよ・・・」
「フン、一応そいつの了承を得た上での改造だ。」
そう言ってレイはシャイニング・スターを見た。
「ブラウド大艦隊をこいつで残らず殲滅する。」
「て、おい!ちょっと待て!そんなものぶっ放したら奴等の後方にある星はどうなるんだよ!」
「安心しろ、そちらの射線上にあるのはブラウドが破壊尽くした星しかない。それにこいつは射程距離を調整できる。締めの所に混沌への入口を設置してある。役目を終えたエネルギー砲は起源たる混沌へと再び帰り分解される。」
「・・・凄いですね。」
「流石に混沌の入口を開くのには苦労したがな・・・そこでエクレア達には敵をこのポイントに固めるように指示しておいてんだよ。」
「いや、万が一にもだな・・・」
「躊躇してる場合じゃねぇんだよ。あの月の群れがある限り、アルフェシオンやラスト・リヴェンジャーは量産される・・・しかし、逆にあの月を破壊すればアイツといえど機体の量産はできなくなる。」
「創造主なのにですか?」
「フ、創造主といえども限りはある・・・よく考えてみろ、全知全能な創造主がいるのならどうして俺達はここにいる?どうしてあの機体で最初から根絶やしにしてこなかった?」
「つまりはあいつは万能じゃないと?」
「ああ、アイツの中では機械は機械が生み出すという固定概念がある・・・故に月というなの工場を必要とした・・・まぁここで決着をつけるつもりで全ての月をここに運んできたんだろうがな・・・」
「・・・・・・決着」
一方、エクレアとカルマは・・・
「チッ・・・うぜぇなぁっ!!」
カルマは一気に距離を詰めにかかろうとするがエクレアが絶妙なタイミングでオリジンをテレポートさせる。
「いつまでもそんな猿真似が通用するなんて思うなよ!」
そして、カルマもエクレア達の動きを読みきったのか次第にテレポート先にへと近づいていく。
「馬鹿だけど、相変わらずの順応力ね・・・本当にそっくりだわ、タクトと・・・」
「そりゃそうだろうさ・・・だって、あいつは・・チッ!」
遂に接近しきったカルマがここぞとばかりに斬りかかってきた。
「オラァッ!!一気に叩き潰してやる!」
「マズイわね。」
エクレアは今まで敢て使用しなかった迎撃魔法を詠唱した。
「ぐっ!?」
その衝撃力は虹色の剣すら拒んだフィールドを持つラスト・エンジェルを吹き飛ばした。
「ハァ・・・ハァ・・・」
しかし、エクレアは苦しみだす・・・
「お、おい!?」
「だ、大丈夫・・・それよりも気をつけて・・・接近されたら正直キツイわ・・・」
「・・・すまねぇ、何とか時間稼ぎしてみせる!」
「ごちゃごちゃ抜かしてんじゃねぇぞ!このガキ共があああああああ!!!」
咆哮をあげながら襲いかかるカルマ
「貴方はこの世界が好きなのよ!だからこそ変ろうとする・・・進化していく・・・この世界とこの現状を受け入れられずに壊そうとしている!」
「な、何〜・・・?」
エクレアの突如の問いかけにカルマは動きを止めた。
「ざけんな!このアマァッ!!!」
「ならどうして、この世界はまだあるの!?」
「家畜共を飼育する為だ!」
「嘘つき!貴方が憎んでいるのは個人よ!だからその為の舞台が欲しいだけ!世界を憎むだなんていうのは詭弁よ!貴方はそう思い込む事で小さな自分を見ずにいるだけじゃない!」
「こ、この・・・この・・・」
カルマは歯軋りを立て拳を握り締める。
「貴方が許せないのは私やレイ、そして何よりも貴方自身でしょ!?だから、タクトを憎んでいる!!」
「テ、テメェ・・・知ったような事を・・・」
「デザイアを憎んでいるんじゃない!貴方自身が彼女に・・」
「うるせええええええええええええ!!!!!」
完全に憤慨したカルマはオメガ・ノヴァの詠唱に入ろうとしたが・・・
「何だ?・・・あれは」
(流石に気付かれたみたいね・・・でも、もう遅いわ)
「・・・・・・この戦争、あなたの負けよ。」
「何だと!?」
(推奨BGM サテライトキャノン)
「とりあえず、時間はもうない・・・連結自体はそんなに難しい事じゃない・・・いくぞ。」
「あ、ああ・・・分かった。」
アルフェシオンがシャニング・スターの背後に張り付き、アルフェシオンの胸部からパイプらしきものが現れ、何層にも渡るオリハルコンのパイプがシャイニング・スターの背中、つまりはクロス・ハートのインフィニ部へ挿入される。
そして、クロス・ハートとシャイニング・スターの内部でも同じやり取りが行われる。
次の瞬間、シャイニング・スター、クロス・ハート、アルフェシオンのモニターに次の文字が現れる。
LOCK KEY INPUT・・・・・・READY?
FIRST NAME WILD・・・・・・COMPLETE
SECOND NAME DESIRE・・・・・・COMPLETE
THIRD NAME FATE・・・・・・COMPLETE
・・・・・・OK
YOU A GROUP OF THREE GODDESS
INFINY DEVICE FINAL LIMIT
CANCELLATION
PERMISSION
「何・・・インフィニの出力ゲージが・・・凄い!」
「文字通りの全開放だ。」
運命の三女神を宿した紋章機達は虹色のオーラに包まれる。
「き、機体が揺れて!」
「エネルギーの圧縮中だ。直に終わる。」
「こ、こいつは・・・」
「馬鹿女、トリガーはお前に預けるが、照準は俺が合わせる・・・いいな?」
「う、うん!」
「もうすぐだ・・・ふ、奴も気付いたか・・・しかし、いかにお前と言えどコイツはかき消せまい・・・その為の三女神なのだからな。」
創造主がこの世に決めた決まり事に一つだけ例外がある・・・
それが三女神による創造主への弾劾行為である。
三女神の意思が合わさった時、それは創造主ですら拒めない膨大な力と化す。
ENERGY FULL CHARGE・・・・・・OK
ARE YOU READY?
「もちろんさ」
OK・・・・・・
GO FIRE “EXTREAM”
「エクストリーム?」
表示された使用火器の名前に、ミルフィーユは首を傾げた。
「かつて、お前の武器さ・・・」
かつて黄金の紋章機ラグナロクよりアルフェシオンと分離し、シャイニング・スターの原型たるエクストリームに実装されていた一撃必殺の超弩級の火器が今、再びこの世に復活した。
「そして、神界戦争の時にもこれを使ったんだ・・・」
レイは遥か昔の記憶に自嘲気味に笑った。
そして、それはカルマも同じ事を思い出していた。
「あ、あの・・・光・・・まさか!?」
シャイニング・スターの胸部に虹色の粒子達が集束されていく・・・
「き、来ます・・・」
「タクト、お前が命じろ・・・この台詞はお前のものなのだろう?」
レイは口元を楽しそうに歪めながら言った。
「ああ!ミルフィー・・・」
「はい!」
「バーンとやっちゃってくれ!エクストリーム発射だ!」
「はい!バーンと撃っちゃいます!!」
そして・・・凝縮された無限大のエネルギーは一気に発射された。
「うわ!眩し!?」
他の者達はその発光現象に目を閉じた。
「シリウス」
「ああ」
足止めの役目を完遂したエクレア達はテレポートしてタクト達の方へと退却した。
そして、エネルギー砲はブラウド大艦隊をいとも簡単に飲み込んでいく。
「しまった!!」
カルマは自分の大艦隊が“塵ひとつ残らず消滅していく”のを呆然と眺めながら
「畜生が!やりやがったな!!クソがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
吼えた。
そして、5分という長期に渡る照射は役目を終えたからなのか最後はあっけなく終わりを告げた。
「やった!」
「タクトさん!あたしやりました!」
「ああ!」
「お姉ちゃん、凄い!!」
「はい!凄すぎでした!」
「ふ、二人共〜恥ずかしいからそのぐらいにしておいてよ〜」
「いや、そんな事はないよ」
「フォルテさん」
「あたしの持ち株を持っていかれた気もするけどね・・・」
「か〜!気分爽快だぜ!な!?ミントの旦那、これを気に借金を・・」
「ダメですわ」
「あ、そ・・・」
「タクト!見事であった!」
「シ、シヴァ女皇陛下!まだ戦闘中ですぞ!」
「すまぬすまぬ・・・あはは!」
タクト達はブラウド大艦隊の殲滅に大いに喜んだ。
「お待たせしたな。」
そして、そこに一つの戦闘機が姿を現した。
形は初期のGA―007そのものだ。
「その声はヴァインなのか!?」
「ああ、君に借りを作りっぱなしなのは癪に障るんでね・・・」
「もう素直じゃないんだから・・・」
「ルシャーティも!?」
「俺が呼んだ。ヴァイン、少し遅れたがよく来てくれたな・・・」
「いえ、EDENの方もブラウドの残存戦力を壊滅させたので私とルシャーティで参りました。」
「そうか」
「ところでそっちの金ピカの紋章機にいるのがシリウスさんですか?」
「ああ・・・」
シリウスは気まずそうにルシャーティを見た。
「貴方の話は聞いてます。本当にタクトさんとミルフィーさんに似てます。」
「どっちなんだよ・・・」
「両方ににて可愛いと言ってるんですよ。」
「ブッ!?」
「皆、お喋りはそこまでよ・・・」
「・・・・・・馬鹿共、喜ぶのはまだ早い」
「そうよ・・・これからが地獄の始まりよ。」
「そ、そうだ・・・カルマが残っているんだ。」
タクト達は呆然としているカルマのラスト・エンジェルを見た。
そして、天使達の緊張感も一気に高まる。
「エクレア・・・結界を張る準備を・・・」
「ええ・・・」
(これが最後の結界ね・・・)
「く・・・くっくっくっ・・・あっはっはっはっ!あーはっはっはっはっはっ!!ぎゃーはっはっはっはっ!!」
カルマはひたすら狂ったように笑い続ける。
「な、何・・・」
ミルフィーユも始め、全員がそのカルマの異様な有様に不気味さを覚えた。
「タクトさん・・・・・・」
「ああ・・・なんて殺気だ・・・ドス黒い・・・ひたすら黒い・・・こいつ・・・どうしてここまで」
「・・・・・・奴は混沌を生み、そして混沌はあいつを生んだ。」
「は、はぁ?」
「混沌と奴は表裏一体・・・どちらかが先ではない。混沌はアイツに“この世の全ての業”を飲み込ませる・・・この世に未練を残す死者の魂もな・・・混沌はアイツを持続させアイツは全てを呪う事で混沌を維持させる・・・何かを壊し、その負の力を提供する・・・無論、それだけではエネルギーはマイナスのままだ・・・そこで正の力を必要とするから何かを創造し、そこにプラスのエネルギーが蓄蔵され、そこで混沌が生まれ・・・無限に続く創造と破壊・・・」
レイは目を閉じたまま語る。
「アイツの呪いは運命の輪のように続く・・・混沌の体現者の本当の名は永遠の体現者・・・永遠に続く創造と破壊の体現者にして最後の体現者・・・文字通り俺達の最後の敵だ・・・」
「・・・・・・ああ、そうだ・・・俺は創造主なんだよな?・・・お前達からすれば俺はラスボスなんだよな?しかし、ラスボスは通常なら倒されるのがセオリーなんだろうが・・・俺は違う・・・そうだ・・・お前等如き家畜如きに・・・・・・」
カルマの周囲に呻き声をあげるオーラが発生する
「こ、怖い・・・」
「そう・・・俺が負ける事などない。俺が死ぬ事なんてあり得ない・・・俺がいてこそのこの世界だ。」
「もうお前の世界ではない!ここはこいつ等の世界だ!」
「お前達の世界だと・・・くっくっくっ・・・いいだろう、神を敬わぬ愚か者達には神罰が必要だ・・・」
次の瞬間、辺り一面が混沌に包まれた。
「・・・っ!?」
「駄目です!本部との連絡が途絶えました。」
「今いるのはエンジェル隊とメシア隊だけだ。」
「ここは混沌の海か・・・」
「結界を張る必要はなくなったけど、これはマズイわね・・・」
「どういうことだ?」
「混沌の海そのものにいる私達はその全ての起源たる恩恵を今まで以上に受ける事ができる・・・でも、その逆もあるわ・・・」
「そういえばカルマがいない・・・」
混沌は一定しない色・・・
決まった景色がない世界・・・
「・・・いや、奴はいる筈だ。」
「はい、僅かですけどアイツの気配を感じます。」
次の瞬間、前方に予想外のモノが出現してきた。
「え・・・?」
全員は目を疑った。
目の前には12機の紋章機が出現していたのだ。
それはGAシリーズとRAシリーズであった。
「クローンか・・・生体反応がある事からどうやらパイロットまでご丁寧に用意してるみたいだ。」
「悪趣味ね・・・十二傑集でも演出してるのかしら・・・」
「・・・それに、またアイツ等を引き連れてきたようだ・・・」
更にその十二傑集の背後に四機の戦闘機が出現する
形状は全て人型ではあるが今までに見た事もないような機体ばかりである。
「・・・四大天使と四聖獣をフュージョンさせたのか・・・どうやら本当にこれで最後にするつもりだな」
「ええ、このボリューム・・・もう出し惜しみはしないつもりね。」
「・・・・・・それでも俺達は戦うしかないんだ。そして、俺達は全員無事に生還して帰るんだ。」
それはこれから始まる最終決戦の前哨戦であった
神・終幕 ラグナロク へ続きます(笑)