その戦いは果てしなく続いてきた・・・

 

混沌より生まれ混沌を生むこの世界そのものと言える創造神 因果律は神皇というインターフェースを用いてこの世の調和を保つ為に創造に匹敵する破壊を繰り返してきた。

 

元より因果律には光と闇・・・+と−があった・・・

 

しかし、その二つは二つに分かれた・・・

 

因果律が自我を持つ為には己の影を見る必要があったのだ・・・

 

光あるところに必ず闇があるように・・・

 

その闇はカルマと名乗り、己が半身が創造した世界を破壊し尽くしてきた・・・

 

そんな破壊神に立ち向かった者がいた。

 

その名はルシファー=ルシラフェル・・・

 

かの者は最も位の高い位置にいる天使ながらも創造神へ立ち向かったのだ。

 

もっとも神に寵愛されていた天使が神にたて突いたのだ・・・

 

やがて神界は

 

カルマに従属した十二傑集と

 

ルシラフェルに従属する四聖獣との勢力に別れ、それはもはや表記しがたい大きな戦争を始めた。

 

それは神界戦争と呼ばれ

 

または神々の黄昏 ラグナロクと呼ばれた・・・

 

そして幾度の時を越え、神界戦争が再び・・・

 

神と天使達の最後の戦いが幕を開ける。

 

 

 

    

 

 

終幕

 

 

 

  ラ

 

 

 

「タクト達とはまだ連絡がとれないのか!?」

 

「は・・・申し訳ございません。憶測でがありますがおそらくタクト達は閉鎖空間に閉じ込められたかと・・・」

 

「くそ・・・我々はここで見守る事すら叶わないというのか・・・」

 

シヴァは頭を抱えて己の無力を呪った。

 

一方、閉鎖空間=混沌の海では・・・

 

「何が始まるんだ・・・」

 

俺は率直にそう思った。

 

敵は未だに動かない・・・

 

まるでこちらを待ってるかのように・・・

 

敵機は人型戦闘機4機と

 

GAシリーズとRAシリーズもどき12機の

 

計16機である・・・

 

対してこちらはエンジェル隊12機とアルフェシオンとメシア隊の面々・・・

 

数では圧倒的に勝っている・・・

 

しかし、これはあくまで前哨戦だ・・・

 

この後には最後の敵が待っている・・・

 

嫌な予感がする・・・

 

まるでこの戦いは・・・

 

「時間稼ぎだな・・・おそらくこの間に奴は機体を最終形態に進化させる気だ・・・」

 

「最終形態・・・カルマのラスト・エンジェルがですか?」

 

「そうだ・・・ラスト・リヴェンジャーはいわばテストを兼ねたプロトタイプだ・・・そして、ガブリエルとの戦いを見てアイツは仕掛けてきた・・・おそらくはそれなりの勝算があるのだろう・・・」

 

「勝算・・・」

 

「おそらくアイツはどこかに潜んでいる筈だ。まずは目の前の敵をいち早く殲滅し、カルマの捜索に入り最終形態と化す前に破壊するしかない・・・」

 

「うん?」

 

エクレアはモニターの右上に20:00:00というタイムらしきものが表示されていた。

 

そして、それは他の者達も同じ事だった。

 

「なるほど・・・タイムリミットって訳か・・・」

 

「ゲームだと思っているのか・・・」

 

「おそらくはな・・・タクト、指揮はお前に任せる。」

 

「分かった・・・皆、準備はいいな?」

 

全員は無言で返事をした。

 

「よし!敵を殲滅するぞ!」

 

タイムがカウントされ始めた。

 

それと同時に敵機も動きを開始した。

 

「タクト、メシア隊はあの四機を撃墜する。お前はエンジェル隊と共にあの“もどき”を撃墜しろ。」

 

「ああ!」

 

次の瞬間、タイムカウントが始まった。

 

「芸の細かいやつだ・・・」

 

敵機が一斉にタクト達目掛けて動き始めた。

 

「皆、敵は同じ紋章機だ。相手の性能は未知数だが状況が状況だ・・・何かの罠かもしれない。」

 

タクトはスレイヤー・オブ・デステニーを構える。

 

「でも、極力早期に撃墜してラスト・エンジェルが最終形態になる前に探し出すんだ!」

 

『了解!』

 

エンジェル隊も動きだす。

 

「俺達は背後の四機を叩きにいくぞ!」

 

『了解!』

 

メシア隊も若干遅れて動きだした。

 

「・・・・・・やはり紋章機もどきはエンジェル隊へ照準を定めているか・・・」

 

「いけっ!」

 

カズヤは即座に12の紋章機に対してフライヤーを射出するが・・・

 

「な!?」

 

カズヤのフライヤーの粒子は弾かれるどころか吸収されるように消滅したのだ。

 

「フ、フライヤーが通用しない!?」

 

「・・・・・・」

 

考えろ・・・

 

わざわざこちらの紋章機に似せてきたのはどうしてだ・・・

 

興味半分のゲーム感覚?

 

いや、そうじゃない・・・

 

数をよく考えてみろ・・・

 

相手の数は12・・・こちらと数は同じ・・・

 

それは何故?

 

・・・・・・やはり、ゲーム感覚なのか?

 

もし・・・

 

本当にゲーム感覚だとしたら・・・

 

もしかしたらこの戦い・・・

 

楽に勝てるかもしれない・・・

 

フォルテ達に向かっているのはハッピートリガー、シャープシューターとイーグルゲイザー・・・

 

それで突破口が見えた。

 

「・・・皆、フュージョンを解除するんだ。」

 

「おいおいタクト、そりゃあ正気かい!?」

 

「正気さ・・・これは作戦だ。成功すればあっという間に勝負がつくさ・・・」

 

奴のど肝を抜いてやる・・・

 

おそらく機体の性能もこちらに劣ることなく互角以上にまで改造してある筈だ・・・

 

こちらは12の紋章機をフュージョンさせて半数以下にしてある・・・

 

それに対し敵はフル改造された同じ紋章機で攻めてくる・・・

 

なら、この状況はあまり好ましくない・・・

 

ならばこちらも頭数を12機に戻す・・・

 

それでトータルバランスは保たれる・・・

 

敵は何故か正攻法で攻めてくる・・・

 

ギリギリまで合わせて一気に2Vs1の図式を作りあげるように俺が皆を動かすしかない・・・

 

「ランファ、君は俺の僚機として俺の周囲を飛び回りながら敵機をひきつけてくれ!」

 

「わ、分かったわ!」

 

「アニス!君は敵を引き付けたまま逃げ回ってくれ!」

 

「に、逃げ回るだぁ〜!?」

 

「ああ!トラジャーハンターだってトラップから逃げ回るだろ?いいかい、絶対に指示を出すまで敵を撃墜しちゃ駄目だ。」

 

「わ、わぁったよ・・・」

 

「他の皆も!指示を出すまで敵に手を出すなよ!」

 

・・・あいつの性格からして逃げ回る相手を追撃する事が何よりもの楽しみの筈だ・・・

 

だが、逆に一機でも数が減れば奴も他の手をうってくる・・・

 

だから、そうなる前に一気にたたみかける!

 

そして、敵のラッキースターもどきがハイパーキャノンとはまったく別物のエネルギー砲を放射してきた。

 

「チ、やっぱり、中身は別物のように改造されてるのか!」

 

ハイパーキャノンもどきの後には小型の追尾式ミサイルが迫ってきた。

 

「カズヤ!あのミサイルはおそらく核だ!誘爆させない距離で撃墜してくれ!」

 

「はい!」

 

俺は僚機に被弾しないポイントにワープする。

 

案の定、ミサイルは軌道修正してこちらに向かってくる。

 

「きた!」

 

「・・・もう少しっ!」

 

必殺の破壊力を持つであろうミサイルは異常な速度で目の前にまで迫ってきた。

 

「そこだぁ!」

 

予め徘徊させてあったフライヤーがミサイルに攻撃をしかける直前にワープをする!

 

そして、俺もここが攻め時だと判断した!

 

そう思い、ワープさせたのはラッキースターもどきの背後・・・

 

「でぇやあ!」

 

接近戦に対応できないラッキースターもどきはあっさりと真っ二つにした。

 

ラッキースターが爆散する!

 

「ランファ!アニスの背後のレリックレイダーもどきを撃破してくれ!」

 

「了解!待ってたわよ!」

 

ランファの龍の爪がレリックレイダーもどきを攻撃するのと同時に俺はシャープシュータもどきの背後にワープして同じく真っ二つにして次のターゲットへ向かう!

 

「ちとせ!レリックレイダーもどきの動きが鈍っている!トドメを刺せ!」

 

「はい!」

 

ちとせが必ず撃墜すると確信して続いてはファーストエイダーもどきを叩き斬った!

 

「ナノナノ!君はトリックマスターもどきにニードルフレシットをかましてくれ!」

 

「了解なのだ!」

 

「アニス!ナノナノがトリックマスターもどきの注意を逸らす!だから君は半物質弾を仕掛けてその場から離脱し、ランファと共にスペルキャスターもどきを叩いてくれ!」

 

「あいよ!派手にやってやるぜ!」

 

これはフェイントだ。

 

機動性の高い二機を敢てスペルキャスターに向かわせる・・・

 

スペルキャスターもどきを選んだのはスペルキャスターもどきがランファとアニスから最も離れていたからだ。

 

おそらくアイツは一気に数を減らされて焦っている・・・

 

おそらく・・・

 

そして、予想通りアイツはランファとアニスに他のもどきを当ててきた。

 

チェックメイトだ!

 

「アニス!半物質弾セットだ!」

 

「はぁ!そんなの自爆じゃねぇかよ!」

 

「大丈夫だから!今なら一網打尽にできる!」

 

「ちくしょお!やればいいんだろ!?やれば!」

 

アニスが半物質弾をセットしたのを確認し、俺は広域INフィールドを発生させた!

 

味方僚機全機単体ごとにフィールドが展開され・・・

 

ちとせが、レリックレイダーもどきを撃墜した頃に半物質弾は大爆発を引き起こした。

 

俺の計算通り、ランファ達に固まった紋章機もどき達は爆発に巻き込まれ、この閉鎖空間の藻屑と化した。

 

「皆、フュージョンしてそのままカルマの捜索にあたってくれ!俺は残りの四機を撃墜する!」

 

一方、メシア隊は・・・

 

「ぬぅん!」

 

神界で覇王と呼ばれていたオケアノスことメベトは文字通り豪快な一撃を四機の内、白虎とラファエルをフュージョンさせた戦闘機にお見舞いした。

 

戦闘機はその巨大な剛剣を受け止めたがその剛剣を完全に受け流す事ができなかったようで腕を完全にやってしまった。

 

俺はそのタイミングを逃さずにその戦闘機を13分割に切断した。

 

「・・・お見事」

 

「よせ、お主に言われるとどうも気が落ち着かぬ。」

 

「・・・・・・」

 

俺はそのまま、ターゲットを玄武とミカエルをフュージョンさせた戦闘機へと変える。

 

「相変わらず過酷な戦いだね・・・!」

 

ヴァインも単体で強敵を相手に一撃も被弾せずにやり過ごしていた。

 

敵はミカエルじこみ光柱(こうちゅう)を射出してヴァインに仕掛けようとする。

 

「やらせん」

 

俺はDELETEと命じて光柱を消去し、そのままその戦闘機を真っ二つにする。

 

ここまでで3分・・・

 

どうせ、アイツのことだ残り10秒ぐらいでこいつらに紛れて参戦するつもりだったのだろう・・・

 

それは癪に障るので早急に終わらせる。

 

「エクレア・・・馬鹿が・・・」

 

予想通り、エクレアは朱雀とガブリエルをフュージョンさせた戦闘機相手に躊躇しているようで最後の一手が決められずに相手の自己修復機能に苦戦しているようだ。

 

それとももうそこまでの力が・・・

 

いや、まさかとは思うがな・・・

 

俺はヘル・バイスを詠唱しその戦闘機を沈黙させた。

 

「馬鹿が戸惑うな。」

 

「と、戸惑ってなんかないわよ・・・」

 

「・・・嘘つけ、隊長ありがと・・うわっ!」

 

次の瞬間、タクト達の方から閃光と衝撃波が発生した。

 

「思ったよりも早かったな・・・」

 

俺は残る一機と対峙した。

 

「エオニア、よくやった。」

 

「いえ、敵機はほとんど動かなかったので・・・」

 

「・・・・・・」

 

最後の一機は青龍とメタトロンをフュージョンさせたものだ・・・

 

正直、相手の中でもっとも手強い相手だろう・・・

 

攻撃力が高いだけならいいのだが、メタトロンは元々その鉄壁に意味があるといっていい・・・

 

タクト達がいなければラグナロクで一網打尽にしてしまうのだが・・・

 

果たして、俺の剣が通用するのだろうか・・・

 

アイツは俺と同じで他人に任せるのが嫌いだ・・・

 

タクト達をここまで生かしてきたのも自分の手でトドメを刺したかったからだしな・・・

 

その理屈で考えればこいつにセカンドガードナーは展開されてない筈なのだが・・・

 

ただ、いつまでもアイツの手の中でというのが俺には気に喰わなかった。

 

「こういうのはタクトやアイツの領分だと思っていたんだがな・・・」

 

俺は真正面から最後の戦闘機に挑む。

 

案の定、戦闘機も虹色の剣を取り出した。

 

「・・・・・・やはりか!」

 

俺はワープし、戦闘機の背後に回りこみ、斬りつけようとしたが・・・

 

「・・・・・・チッ」

 

スレイヤー・オブ・デステニーを唯一阻む絶対防御のフィールドがそこには形成されていた。

 

「搭載機だったとはな・・・」

 

俺は距離をとった。

 

「エオニアが動かないと言っていた時点で気付くべきだったな・・・」

 

俺はタクト達へ集合命令を出した。

 

“カルマを発見したと”

 

推奨BGM 自由への戦い (FF12)

 

「カルマ・・・こいつが?」

 

「厳密に言うとこいつはコアだろう。単体ではほとんど何もできん・・・」

 

『そうだ。俺がフュージョンしなければな・・・』

 

背筋に悪寒が走った・・・

 

何だ・・・今までにないこの悪寒は・・・

 

「チ、来やがったな・・・メシア隊は現時点を持って帰還しろ。」

 

「どうしてですか!?」

 

「シャイニング・スターのフィールドは展開する対象の数が多ければ多い程に効果が弱まる・・・そして、これから現れる敵の攻撃力は紛れもなく最強だ・・・俺のアルフェシオンならいざ知らずお前達の機体では持たん・・・」

 

そう言って、レイはメシア隊のメンバーを強制的にこの空間から追い出した。

 

「いいの?」

 

「構わん・・・100%犬死するだけだ・・・あれをコアにしてる時点でアレの出力がどれ程のものなのかがよく分かる・・・さあ、出て来い・・・化け物。」

 

次の瞬間、俺達の前にアイツのラスト・エンジェルが現れた。

 

『よくここまで来れたものだ・・・』

 

「・・・・・・」

 

「・・・くっくっくっ」

 

アイツは薄気味の悪い含み笑いをした。

 

「とうとう此処まで来ちまいやがったか・・・」

 

「ああ!今度こそお前を完全消滅させる!」

 

「あっはっはっ!こいつは愉快な事を言う・・・やれるものならやってみろ!」

 

「言われるまでもない!」

 

「くっくっくっ・・・馬鹿め、俺が何故このタイミングで皇国に仕掛けてたかを考えた事はあるか?」

 

「何?」

 

「何の為にお前達にラスト・リヴェンジャーや俺の人形共と戦わせてきたか・・・」

 

「あなた・・・」

 

エクレアの脳裏にガブリエルの無惨な姿が蘇る。

 

「それを今、教えてやる・・・そして、絶望のどん底に叩き落とし、木っ端微塵に解体してやる!!」

 

次の瞬間、ラスト・エンジェルの周囲に様々な残骸が集まり始める。

 

同時にさっきまで不動だった最後の戦闘機も役目を果たすかのようにコンパクトなコアユニットと化し、ラスト・エンジェルと合体を果たす。

 

「な、何だ・・・何が始まろうとしてるんだ?」

 

先程、俺達が撃破した敵機の残骸も混じっている・・・

 

「チ、全機!不用意に仕掛けるな!今仕掛ければそれも吸収されてしまうぞ!」

 

「吸収・・・」

 

「奴は最終形態になろうとしている・・・だが、こうなってはもはや戦うまで見守るしかない・・・」

 

「ええ、こうなったからには最終形態と正攻法で挑むしかないわ・・・元よりあの男の計算の内だったのよ・・・」

 

「止める事が出来ないなんて・・・」

 

「くっくっくっ・・・死ぬ前に目に焼き付けておくがいい!俺の紋章機の真の姿をな・・・」

 

「あれ・・・あの砲台はラスト・ジャッジメントの・・・」

 

「あれはガブリエルのラスト・リヴェンジャーの破片・・・」

 

「あん?ようやく気付いたのか?ラスト・ジャッジメントやラスト・リヴェンジャーはラスト・エンジェルの拡張パーツとして開発しておいたものだ・・・この日の為にな・・・」

 

ラスト・エンジェルはタクト達の見ている前で見る見る内に歪な形をした巨大な人型戦闘機へと生まれ変わっていく・・・

 

まるで動く超弩級の砲撃台のように・・・

 

至る所に武装されたその機体はもはやエンジェル・フレームというものとは別格なものと化している。

 

「これは・・・あの時の・・・」

 

レイはぼんやりと呟いた。

 

「・・・・・・そうだ、神界戦争で貴様との最終決戦で用いたアレを改良したのさ・・・俺はこれにラストの名を与え、三つのパーツへと分けた。それがラスト・リヴェンジャー、ラスト・ジャッジメント、そしてこのラストエンジェル・・・そして今、最後の捌きが最後の天使に下される・・・」

 

ラスト・エンジェル?の変態が終了する・・・

 

最も、混沌そのものであるこの機体が一定を保つ事はない。変態は完了したが、武装が事ある事に変化を遂げてある。

 

「“お前が運命の三女神という形でアイツを分裂させたように”・・・俺も三つに分けたのさ!」

 

「え・・・」

 

「・・・・・・耳を貸すな。いずれお前は知る事になる。この戦いが終わった頃に真実は明かされる。」

 

「そうよ。今はアイツを倒す事だけを考えて。」

 

「そして、それらは今再び一つとなり、封印された因果律の紋章を纏いてその姿を現世に現す・・・これが俺の紋章機“ジ・エンド”だ・・・」

 

混沌の名を冠する化け物紋章機・・・

 

それが天使達最後の敵の名前だった。

 

「ロード、EGT BLADE(Estrangement Blade)・・・」

 

乖離の剣と思われる巨大な剣が握られた。

 

その一振りでエンジェル隊を一網打尽にする事はもはや、火を見るよりも明らかだ・・・

 

それ程までに巨大なのだ。

 

と思いきや剣は収縮され、タクト達の剣と同じ寸法へと修正された。

 

「くっくっくっ、折角のラストバトルだ。すぐに終わらせては面白くない・・・たっぷりと遊び尽くし、一人ずつ殺してやる!くっくっくっ!あっはっはっはっ!」

 

遂にジ・エンドから押さえ込まれていた不吉な紫のオーラが溢れ出し、ジ・エンドの身体のあちこちに神聖文字で描かれた魔法陣が出現する。

 

その姿はまさに混沌の主・・・

 

いや、この世界の創造神と言っても過言ではない。

 

「待たせたな、さあ、来るがいい!」

 

「皆!これで最後だ!この元凶を倒せば全てが終わる!!」

 

『了解!』

 

エンジェル隊とメシア隊は一斉に攻撃を開始した。

 

「あっはっはっ!いいだろう!まずはお前達のターンという訳だな!?」

 

それに対して、カルマは何も動かない!

 

「舐めやがって!」

 

一番最初に仕掛けたのはシャイニング・スター

 

二刀流のスレイヤー・オブ・デステニーで斬り付けるも当然の如く装備されているセカンド・ガードナーに弾かれた。

 

「強くて悪りぃな!」

 

「チィッ!」

 

タクトは諦めずに何度も斬り付けるがいくらスレイヤー・オブ・デステニーを叩きつけてもジ・エンドはびくともしない。

 

「タクト、どけ!!」

 

「くそ!」

 

「お前はINフィールドを張るだけに専念しろ!攻撃は俺達でやる!」

 

「ああ!」

 

「全機、カルマを集中砲火しろ!」

 

レイの指示に従い天使達は創造神に向けてありったけの火力を集中させた。

 

「はっはっはっ!こいつは痛そうだ!!」

 

カルマはまだ動こうとしない。

 

そして、当然の如くジ・エンドは全弾被弾する・・・

 

しかし、それでもジ・エンドにダメージはない。

 

「まだだ!タクト、フィールドを張れ!」

 

レイはしょっぱから己が最強の攻撃、インフィニティ・ゼロを詠唱した。

 

「はは!やってみろ!」

 

辺り一面が真っ白になり、激しい閃光が包みこむ。

 

「くっくっくっ!眩しいじゃねぇか!」

 

やがて訪れた、全てを飲み込む闇ですらカルマを飲み込む事は叶わず消失していった・・・

 

「な、何て奴だ・・・あ、あれを平気で受けきるなんて・・・」

 

タクト達をも全滅させたレイ最強の攻撃をもジ・エンドは難なく耐え切った。

 

「この技は以前にも喰らったからなあ?」

 

「・・・チッ」

 

「どういうことだ!?」

 

「俺とコイツはなどんな攻撃でも一度受けてしまえばそいつに耐性を持つ力があるんだよ。俗にラーニングって奴だ。」

 

「まさか、あの時!?」

 

「そうだ。カズヤ、お前が撃墜したあの機体からもお前のフライヤーのデータを入手し、耐性を身につけさせてもらったぜ?もはや、俺を攻撃するだけ無駄だ、さっさと舌噛み切った方がいいんじゃねぇのか?くっくっくっ!」

 

「誰が!」

 

「まあいい、次は俺のターンだろ?」

 

そう言うと、ジ・エンドはようやく動き始めた。

 

「自分のスキルを自分で味わってみろや!」

 

そういうとジ・エンドから幾筋もの粒子状のドラゴンの顎が現れタクト達に襲い掛かる!

 

「アンカークローを少し細工してみた。どうだ、面白いだろう?おっと、避けねぇと危ねぇぜ。」

 

「切り払え!」

 

レイの掛け声の下、タクト達はドラゴンの首を切断んした。

 

「そうだ、そうだ・・・まだ始まったばかりだ・・・」

 

続いて、ジ・エンドの背後に幾筋もの細かい光の槍が出現した。

 

「もっとこの俺を楽しませろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

狂気に満ちた方向をあげ、カルマは光の槍を飛ばした!

 

無数の光の槍が流星群のようにタクト達へと襲いかかる!

 

その速さはイグザクトスナイパーのアルテミスに匹敵する速さ!

 

人間の目で捉えられるものではない。

 

しかし、幸いかこちらにも人ならざる動体視力を持った剣士が二名いる。

 

タクトとレイは次々と迫り来る音速の光の槍を切り払っていく。

 

「くっくっくっ・・・諦めが悪い・・・おもしれぇ・・・おもしれぇぞ!テメエラアアアアアアアア!!!」

 

飽きたのかカルマは次の攻撃へと移行した。

 

「シネエエエエエエエエエエエエエ!!!」

 

カルマがそういった次の瞬間、タクト達の周囲の空間が圧縮され機体が混沌そのものに押しつぶされる!

 

シャイニング・スターのINフィールドの恩恵があるとはいえ、パイロットにかかる衝撃を完全に殺しきれる訳ではない。

 

「く、くそ・・・反撃の糸口が掴めない・・・」

 

「はっはっはっ!まだまだ俺のターンだぜ!?」

 

次の瞬間、ジ・エンドそのものから無数の呻き声が漏れ出す・・・

 

「くっくっくっ・・・いいねぇ・・・こういうの好きだぜ・・・くっくっくっ・・・マジークの奴等が多くいるな・・・」

 

「マ、マジークだと・・・」

 

「ああ、ここは混沌・・・魂が帰る場所でもあるのさ・・・そして魂は混沌へ吸収され何かに生まれ変わる・・・それは人になる事もあるが純粋な力に変る事もある・・・まぁ、それは俺の考え一つで決まるんだがな・・・」

 

「お、お前・・・マジークの人達の魂を・・・」

 

「ああ、“有効に利用させてもらってるぜ”くっくっくっ!あーはっはっはっ!」

 

「このぉ!化け物ぉっ!!」

 

テキーラは魔力を最大限にまで高めて必殺の一撃ヘキサ・クロス・ブレイクを詠唱した。

 

「馬鹿!よせ!!」

 

「ああ?」

 

しかし、インフィニティ・ゼロすら弾き返した最強のフィールドを突破できる訳もなく、カルマは鬱陶しいそうにその魔方陣を叩ききって消した。

 

「ちっ・・・」

 

「お前・・・俺のターンだって言ったろうが・・・」

 

カルマの声がまるで別人のようにどす黒くなる。

 

「・・・・・・上等だ。」

 

カルマはテキーラの方へ意識を傾けた。

 

一見、ただのキチガイでも創造神・・・創造物相手へその全力を向けようとしている。

 

「このあまあああああああ!!」

 

スペル・マスターに向けて神聖文字の魔方陣が描かれ、凄まじい放電が始まった。

 

「うあああああああ!!!」

 

凄まじい電撃にテキーラは聞くに堪えない悲鳴をあげる。

 

「止めなさい!」

 

エクレアはオリジンをジ・エンドに向けて近づける。

 

「ああ!?」

 

「もう十分でしょ!止めなさい!」

 

「は!己の器を知らぬ俗物に神罰を下してるのだ!じわりじわりと電圧をあげて黒コゲになるまで感電させてやる!」

 

「お願いだから、もうやめて!!」

 

エクレアは珍しく食い下がる。

 

「・・・・・・」

 

そして、カルマは放電を止め、テキーラを開放した。

 

「ヴァニラ!」

 

「はい!」

 

ヴァニラはスペル・マスターにナノマシンを散布するが、パイロットのテキーラは既に気絶している。

 

いや、瀕死と言ってもいいだろう・・・

 

「テキーラさんの心拍数が心配です・・・」

 

「よせ!ここは混沌の中だ、コックピットから一歩出ただけで終わりだ!」

 

「そんな・・・」

 

「・・・・・・死んだ時は死んだ時だ。今は一人の命を気にかけてる場合ではない。」

 

レイの冷酷な言い方に誰も反論しようとは思わなかった・・・

 

道徳心が麻痺してるのではなく、それどころではないと理解してるからだ。

 

「マジョラムは俺が何とかする・・・いいか、全員自分の事を最優先に考えろ・・・」

 

一方、カルマとエクレアは誰にも傍聴されないようにテレパスを使って会話を続けていた。

 

「貴様、どういうつもりだ?」

 

「貴方を見ていられないのよ・・・これ以上・・・」

 

「は!人の物語を滅茶苦茶にしておいて良くそんな事がほざけたものだな!!」

 

「違う!私だって、最初は協力するつもりだった!それが私の犯した罪の償いだと思っていたから!」

 

「嘘をつくな!ならどうしてあの時、タクトを倒さなかった!?それどころか戻ってきたと思えば奴にアドバイスをし、タクトに力を与えた!」

 

「貴方だってどうせタクトをここまで引っ張るつもりでいたんでしょ!私にトドメを刺させる気なんて最初からないでしょう!あればここまでタクトを生かしておく筈がない!」

 

「もういい!黙れ!!」

 

「貴方はただ単に自分の手でタクトを倒したいだけでしょう!だから今でも手を抜いている!」

 

「黙れェ!!!」

 

「・・・っ!?」

 

ジ・エンドは左手の乖離の剣でオリジンを弾き飛ばした!

 

「エクレア!」

 

その様子を見ていたタクトは即座にジ・エンドの目の前に立ちはだかる。

 

「貴様の相手は俺だろう・・・」

 

タクトは殺気を込めたカルマを睨みつけた。

 

「は!そんなチャチな紋章機でこの最後の紋章機が倒せるとでも思っているのかよ!?」

 

カルマは手を叩いて笑いだした。

 

「機体の性能にのせられているだけの三流が偉そうに!」

 

タクトはスレイヤー・オブ・デステニーを右手にジ・エンドへ挑む!

 

「ああ〜?機体の性能に載せられてるだぁ〜?だったら試してみろ!」

 

カルマも向かってきたタクトに視点を切り替えた。

 

「この小僧があああああああああああ!!!!」

 

シャイニング・スターとジ・エンドの大きさの比率は約2倍・・・

 

故に剣の大きさの比率もそれに比例する。

 

「このおおおおおおおお!!!」

 

まず初撃はお互いに受け止め合い、二撃目より勝負にうってでた!

 

大雑把に薙ぎ払うカルマに対してタクトは素早く懐に潜り込み、レッグ部のスレイヤー・オブ・デステニーでサマーソルトを描きながら斬りつける。

 

「馬鹿が!!」

 

そして、カルマはそのサマーソルトを回避し、薙ぎ払いの返しでカウンターを狙ってくる!

 

「馬鹿はお前だ!」

 

そして、それを読んでいたタクトはその大雑把な薙ぎ払いの軌道に平行に回避してカウンターの袈裟斬りをいれた。

 

バジジジッ!!

 

と不快な衝突音を発しながらタクトの剣は弾かれた・・・しかし、タクトはめげずに2撃目、3撃目とカルマの隙を容赦なくつついていく。

 

「ああ!ウゼェ!!」

 

「うわあああ!!!」

 

次の瞬間、ジ・エンドは目の前のシャイニング・スターに向けてエネルギーの塊を当て、引き離した。

 

シャイニング・スターが吹っ飛ばされた距離を見ればその威力がよく分かる。

 

「調子に乗りやがってええええええええ!!」

 

憤慨したカルマが怒りの咆哮を上げるとジ・エンドから発せられている不気味な呻き声が一層強くなった。

 

「まずい!皆耳を塞げ!!」

 

シャイニング・スターのフィールドを展開し終えたと同時に断末魔のフルコーラスが始まった。

 

ギィエエエエエ!!

 

 

ウギギギィーー!!

 

 

ギャアアアアア!!

 

 

その脅威のブラストボイスは紋章機達に襲い掛かる!

 

第1地獄

 

 

DEAD END SCREAMER

 

「うああああ!!耳がぁ!!」

 

「くそ!どれだけデタラメなんだよ!コイツは!」

 

やがて、ブラストボイスが収まろうとしていたその時・・・いや、カルマは最初からこのタイミングで仕掛けるつもりだったのだろう。

 

「本当の地獄を見せてやる!!」

 

次の瞬間、ジ・エンドが姿を消し・・・

 

辺り一面に不細工な恒星が次々と出現していく・・・

 

「まさか!このタイミングであれを仕掛けるつもりか!」

 

声を荒げるレイに全員の緊張が一斉に高まる。

 

やがて恒星達は徐々に動き始める・・・

 

衝突する為に・・・

 

第2地獄 

 

オメガ・ノヴァ

 

「くそ!もってくれ!!」

 

情けなくも俺はシャイニング・スターに祈った。

 

「エクレア!お前も手を貸せ!シャイニング・スターだけでこれは耐えきれない!他の奴等も各個にフィールド最大出力!全て出し切る気持ちで張れ!」

 

レイが言い終わると同時に生まれたばかり恒星達は唯一の役割を果たし消滅していく・・・

 

それは脅威のエネルギー波を発生させて・・・

 

「うああああああ!!!」

 

「キャーーーー!!」

 

やがてこれまでにない爆発がこの混沌の海全体を覆いつくす・・・逃げ場所などどこにもありはしない。

 

今、混沌は閃光一色に染められている。

 

恒星達はトドメを刺さんとばかりに次々と容赦なく

衝突して大爆発を引き起こしていく。

 

やがて、いかほど、続いたか分からない爆発地獄が治まったかのように見えた次の瞬間、タクト達は信じられない光景を目にした。

 

タクト達の周囲つまりは東西南北四箇所から燃え盛る太陽が接近してきているのだ・・・

 

それはグランド・クロスを描くように・・・

 

第3地獄 

 

オメガ・サン

 

「くそ!叩き斬ってやる!」

 

「よせ!今、お前が動けばシャイニング・スターの結界は持たない!そうすれば全滅だ!」

 

「く、くそおおおお!!」

 

やがて俺達は迫り来る太陽に耐えるしかないと言う事を思い知らされた。

 

四つの灼熱の太陽も衝突し合い、先程よりも更に凄まじい閃光を発し、タクト達に追い討ちをかける!

 

「はっはっはっ!死ね!死ねぇ!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねええええええええええええええええええええええええ!!!!」

 

閃光の中で姿をくらましたカルマは呪詛を吐いた。

 

「ぐおおお・・・!!」

 

しかし、その必殺の閃光をも耐え凌ぐ・・・

 

だが、まだ地獄は終わっていなかった。

 

第4地獄

 

ULTIMEDD END

 

OR

 

GENOCIDE

         

 

「まだだ!!アルティメッド・エンドオ!!」

 

ジ・エンドの左手に虹色の槍が召還される・・・

 

「まさか!」

 

「オア・・・!」

 

ジ・エンドが投擲体勢に入る!

 

「ジェノサイドオオオオオオオオオ!!!」

 

虹色の槍は目にも止まらぬ速さでタクト達目掛けて飛んでいく。

 

「させるか!」

 

タクトが単体でその槍を叩き斬ろうとするが・・・

 

「切れない!?しまった!これは乖離の・・うわっ!?」

 

槍に擬態した乖離の剣はその膨大なエネルギーを放射し、タクト達を再び大爆発へと巻き込む!

 

「ぐあああああああああ!!!!」

 

「あっはっはっはっ!あーはっはっはっはっ!オラァ!いつまでも足掻いてないで早く死んじまえってんだよ!オラアアアアアアア!!!」

 

やがて、大爆発が収まる頃にはシャイニング・スターの限界は超えていた・・・

 

「シャイニング・スターが・・・動かない・・・」

 

しかし、カルマは容赦なく最後の仕上げに入る!

 

「こいつで・・・トドメだああああああああ!!!」

 

最終地獄

 

 

ラグナロク

 

ジ・エンドを中心に黒い霧 ダークマターが噴出しだし、タクト達を無に分解しようと襲いかかる!

 

もはや、打つ手なしの絶体絶命のその時!

 

「させない!」

 

「・・・っ!?」

 

黒い霧は辺りに散布された桜吹雪に飲まれ中和されていく・・・

 

「テ、テメェ!!!」

 

絶対なチャンスを逃したカルマの怒りが一気に噴出した。

 

「ぶ、ぶっ殺す!!」

 

凄まじい殺気を向けてくるカルマに対しエクレアも一歩も引かずに言い返した。

 

「できるものならやってみなさい!」

 

「このジ・エンドのセカンドガードナーは既にこの桜吹雪を学習済みだ!中和することなどできん!分かったら大人しく引っ込んでな!!」

 

ジ・エンドの左手に乖離の剣が召還される。

 

「シリウス・・・“アレ”を使う時よ・・・」

 

「・・・・・・ああ。」

 

シリウスも“その時”だと考えたのだろう。その目には一寸の迷いも見当たらなかった。

 

「エクレア・・・お前、何をする気だ?」

 

「貴方がしようとしてた事よ・・・」

 

「・・・っ!よせ!それは俺の役目だ!」

 

「いいえ、貴方にはまだ役目が残ってるわ・・・タクトを導いてあげないと・・・」

 

「馬鹿な事をいうな!」

 

珍しく取り乱してるレイに俺はタダならぬ事態を感じた。

 

「エクレア・・・何をする気だ。」

 

「ごめんね、タクト・・・もうこうするしかないの」

 

エクレアとシリウスはオリジンをワープさせジ・エンドの背後から羽交い絞めにする。

 

「ああ!?」

 

カルマは背後のオリジンを引き剥がそうとフライヤーで総攻撃をかける。

 

「エクレア!?くそ!動いてくれ!」

 

俺はシャイニング・スターを動かそうとするが全く言う事を聞いてくれなかった。

 

既にシャイニング・スターは息絶えているのだ・・・

 

「アルフェシオン・・・!」

 

そして、それは俺だけでなく他の皆も同じだった・・・

 

「いいから言わせて!元々、未来の世界がああなったのも貴方達がここで敗北したからなの・・・そして、その時、私達は黙って見守るしかなかった・・・」

 

被弾箇所が秒刻みで増える中で二人は続けた。

 

「だが、俺達は諦め切れなかった・・・もし昔に戻りやり直す事ができるならと・・・そして、そこの隊長が俺達をここへと誘ってくれた・・・おっと、隊長の事は悪く言わないでくれよ・・・」

 

やがて、オリジンの周囲の空間が歪みだす・・・

 

「ま、まさか!貴様!!」

 

「貴方に二度もこの世界を殺させはしないわ・・・貴方に殺された人々の強い一つの思いが強力な呪詛となってこの機体に封じ込めてある・・・これは学習のしようが無かったでしょう・・・」

 

「自爆する気か・・・貴様!よせ!やめろ!!この・・!!」

 

「シリウス君!ダメ!」

 

「ごめん・・・母さん・・・でも、俺・・・母さんの子供で良かっ・・グハアッ!?・・・ぁ・・・」

 

やがて、フライヤーがオリジンのコックピットを直撃した。

 

「シリウス君!エクレアちゃん!!」

 

「・・・もう・・時間がない・・の・・・パパ・・・ママ・・・私楽しかった・・・“私の魂は確かにあいつと同じ世界のものだけど”それ・・でも二人が私のパパとママだって・・・おも・・・ってるから・・・」

 

瀕死のエクレアは前方座席で既に息絶えているシリウスの亡骸を力弱く抱きながら弱々しく続ける。

 

「一緒にご飯も食べれたし・・・一緒のお布団で眠れた・・・・・・私・・・もう・・・未練なんてないよ・・・だって夢が叶ったんだもん・・・」

 

エクレアは笑顔のまま涙をこぼした。

 

「エクレア!」

 

泣いてるのはアプリコットだけでない、カズヤやミルフィーユ・・・そして、タクトも何もできない自分が情けなく思った・・・

 

「タクト・・・」

 

「俺は!何も!何も!!!くそおおお!!」

 

「泣かないで・・・私ね・・・本当に貴方の事が好きだったんだよ・・・だから泣かないで・・・辛いよ・・・」

 

「くそおっ!!」

 

喉が張り裂けそうだ!!

 

「タクト・・・・・・ばいばい。」

 

次の瞬間、オリジンはジ・エンドと共に姿を消した。

 

「エクレア!?」

 

「エクレア・・・?エクレアアアアア!!!」

 

それが、俺が見たエクレア達の最後の姿だった・・・

 

シリウス・桜葉及びエクレア・桜葉・・・

 

混沌の海にてカルマと交戦中・・・戦死・・・

 

 

タクト達はひたすら泣き続け、自分達の無力さを嘆いた・・・

 

唯一、泣いていないレイは明日の方向を向いて呟いた・・・

 

「・・・・・・先に逝きやがって・・・馬鹿がっ!」

 

レイは力一杯コックピット殴りつける・・・既に息絶えているアルフェシオンは何の反応も示さない・・・

 

「・・・・・・っ!?」

 

レイはある事に気が付いた。

 

タクト達は既に全滅状態にある・・・

 

だからこそ、察知できなかった・・・

 

カルマがまだ生きている事を・・・

 

「混沌の海はまだある・・・オイ!まだカルマは生きてるぞ!!」

 

いち早く気付いたレイは非常回線でこの事をパイロット達に呼びかけるがどこからも嗚咽ばかりが聞こえてくる・・・

 

「チ、このガキ共が・・・」

 

全員がレイのように割り切れる訳がない・・・

 

そうこうしている内にカルマが戻ってきた・・・

 

「あ、あの・・・小娘ぇ!!!よくも!!」

 

エクレア決死の自爆から生還してきたジ・エンドはボロボロの状態だった。

 

「セカンドガードナーの発生器がいかれちまった・・・くそぉ!!」

 

機械仕掛けの創造神・・・

 

底知れなかった敵の底が二人の幼い命の犠牲により見えたが、タクト達の機体も全て大破している・・・

 

「あの小娘・・・最後の最後まで・・・・・・ふ、ま、まぁいいさ!奴等は既に大破しているんだ・・・折角の機会だ!テメェ等一人ずつ機体から引きずりだして木っ端微塵に解体してやるぁああ!!」

 

それがタクト達の転機だった・・・

 

最初に口を開いたのはタクトだった・・・

 

「お前だけは絶対に許せない・・・」

 

「そうかよ!だが、もう貴様達に俺の相手をする事は不可能だろうがよ!ぎゃははは!!」

 

さっきまでの憤慨っぷりはどこへやら味を占めたカルマは元のテンションへと戻っていく・・・

 

「皆・・・あたしはこの手元の銃を使ってでもアイツと刺しちがえるつもりだ・・・付いてくるかい?」

 

フォルテは泣きはらした顔を決意の顔に変えて銃の用意をする。

 

「フォルテさん、野暮なこと言わないでよ・・・あたしもアイツを殴り殺すまでは死ねないわ・・・」

 

「ランファの言う通りだ・・・俺も最後の最後まで足掻く・・・この勝機を作ってくれた二人の犠牲を無駄にはできない!するぐらいなら生きる価値もない!」

 

全員の気持ちは一つとなる。

 

「・・・・・・上等だ!なら勝手に生身で出てから分解されちまいな!ぎゃははは!!!」

 

そして、最後に口を開いたのは桜葉姉妹・・・

 

「・・・・・・ない」

 

「ああ?何だよ?死に損ない共が!」

 

「・・・・・・さない!」

 

「ああ!?何ゴチャゴチャ抜かしてやがる!」

 

「許さないーーーーー!!!」

 

次の瞬間、あたり一面が桜色の羽に覆われる・・・

 

不定の景色を彩っていた混沌の雲の隙間から神々しい光が差し込んできた。

 

「な、何だ・・・これは・・・」

 

「こ、これは・・・あの時の・・・?」

 

レイの脳裏にタクトとの決戦時に起こったあの現象が蘇る・・・

 

「な、何だ・・・シャイニング・スターが・・・」

 

「く・・・どうした!?」

 

タクトとカルマの反応は対照的だった・・・

 

タクトが目にしたのはシャイニング・スターの再起動画面・・・それは復活を意味していた。

 

「まさか・・・これが奇跡という奴なのか・・・」

 

タクトだけでなく、レイを初めとした他の機体も同じ現象を起こしていた。

 

「くそ!何が起こったて言うんだよ!!」

 

カルマが目にしたのは不明のエラーコードであった・・・

 

やがて、紋章機の背中には光の翼が生えていく・・・

 

「最終リミッター解除・・・レイジ」

 

MODE RAGE

 

そのキーワードを受け、アルフェシオンのボディに神聖文字が描かれ背中には漆黒の六枚の翼が現れる・・・

 

「インフィニ出力MAXを確認・・・いけるぞ!」

 

MODE RAGE

 

シャイニング・スターに関しては虹色の翼が背中に出現した・・・

 

「な、何だと・・・!?」

 

予想外の事態にカルマは驚愕した。

 

「一つ言い忘れていたが、紋章機にはH・A・L・Oを戻しておいた・・・今、解除コードを入力する・・・」

 

レイがマスターコードを入力すると天使達の紋章機達にも黄金色のオーラが漂う。

 

「今のお前達なら逆にH・A・L・Oの方が有効だと思ったし・・・」

 

(あいつの細工が施されたアンフィニを利用するのはな・・・)

 

TRUE MODE

 

形勢は一気に逆転した・・・!

 

(推奨BGM 未来への咆哮)

 

「く、くそ!くそくそくそくそくそくそくそくそくそ!!!クソガアアアアアア!!!」

 

カルマは怒りの咆哮をあげるとジ・エンドもそれに呼応するかの如く、姿を異形なものへと変態させていく・・・

 

あちらこちらからは様々な触手が現れる・・・

 

その姿にもはや神々しさはこれっぽちもなく、まさに化け物そのものだった。

 

それはパイロットに合わせて変態したかの如く・・・

 

混沌の雲が消え去り、神々しい光と雲の世界でその姿は異様だ。

 

そんなおぞましい敵の姿を見てもタクト達の決意は揺るがない!

 

「皆・・・これが本当に本当の最後の戦いだ・・・」

 

タクトの言葉に全員が耳を貸している・・・

 

「俺は自分が情けない、それはこれからも一生続く汚名だ。だが、俺はそれを敢て被るつもりだ・・・そして皆も同じ事を思ってるだろう・・・」

 

「・・・・・・」

 

「だが、悔やむ前にやらなくてはいけない事がある・・・そうだろ?」

 

タクトの言葉に全員が頷いた。

 

「・・・タクトさん」

 

ミルフィーユがタクトの目を見て訴えた。

 

彼女の目は既に悲しみから決意のものへと変っている。

 

「最終目標!カルマの撃墜及び消滅!」

 

シャイニング・スターの右手にスレイヤー・オブ・デステニーが召還される!

 

「皆!俺に続けぇーーーーーーーーッ!!」

 

『了解!』

 

タクト達は一斉に動きだした。

 

「屑共が束になろうと同じ事だ!」

 

カルマは再び先程のラグナロクを詠唱するが・・・

 

「何!?」

 

ラグナロクは一向に起こる気配を見せない・・・

 

「まさかこれは!」

 

LUSHIFER FILED

 

「そうだ・・・俺の時と同じだ。」

 

あっという間に懐に潜り込んだレイは言うと同時にジ・エンドの右腕を切断していた。

 

「ぐおおお!?」

 

しかし、よほど生命力があるのかジ・エンドの右腕は瞬時に再生する。

 

「くっ!?」

 

カルマはそこから後方に距離をとるが・・・

 

「逃がすかい!ありったけの火力を集中させな!」

 

フォルテの号令の元、全機がカルマに向けて火力を集中させる!

 

「キ、キサマラアアアア!!!」

 

カルマは滅多撃ちにされる!

 

再生しても再生しても天使達の攻撃は止む事はない。

 

カルマも反撃に移る!

 

辺り一面に核エネルギーの塊が出現し、それを無差別に放射し始めた。

 

「は!こいつはイケるようだな!」

 

辺り一面に核爆発の連鎖が起こる・・・

 

「怯むな!」

 

しかし、天使達は強力なフィールドに守護されながらカルマへの攻撃を中断しない。

 

己の全てをかけてカルマを倒す

 

「チィ!この・・・屑共が!しぶてぇんだよ!」

 

カルマは5時の方向にいるランファ目掛けてフライヤーを射出する。

 

「させるか!」

 

しかし、それをカズヤのフライヤーが阻止する。

 

「このぉ!!」

 

そして、バトルマスターの渾身の一撃の爪がジ・エンドの右腕に直撃し、吹き飛ばした。

 

「ガッ!?こ、この・・・!!」

 

言葉が乱れる程に憤慨したカルマは全神経をランファに集中させる・・・

 

そして、その隙にタクトが懐に潜り込み、コックピット目掛けて渾身の突きを放つ!

 

「終わりだ!」

 

「ウゼェッ!!!」

 

しかし、反射神経は抜群にいいのかカルマは直ぐにタクトのスレイヤー・オブ・デステニーを弾いて、カウンターを当てようとする・・・が

 

「・・・・・・」

 

そこに合流したレイはジ・エンドを肩口からばっさりと縦に切り裂いた。

 

「クソッ!!」

 

慌てて後退しながら再生するジ・エンドに対してエンジェル隊の猛烈な追い打ちの集中攻撃が炸裂する!

 

「グアアアアアアアア!!!!」

 

どんな傷も瞬時に修復してしまう化け物・・・

 

そんな化け物を瞬時に消滅させんばかりの猛攻撃・・・

 

まさにイタチごっこである・・・

 

しかし、長引けば長引く程、状況はタクト達が不利となる・・・

 

「いい加減にしやがれっ!!」

 

ジ・エンドの右手に巨大な砲台が形成される・・・

 

それはラスト・ジャッジメントの主砲エクスキュージョンだった。

 

「マズイ!散開しろ!!」

 

ジ・エンドの周囲が荒々しくも禍々しい紫色のオーラが立ち込める!

 

「ヒャアアアアアアアアアア!!!」

 

カルマの奇声と共にその混沌を臨界点まで凝縮した究極のエネルギー砲が発射された!

 

タクト達は予め、散開し、カルマの背後へと周り込んでいた。

 

こうして回避してる間にもジ・エンドの化け物じみた再生能力はジ・エンドを完治させていく・・・

 

「マズイ!このままではセカンドガードナーまで再生されてしまう!」

 

「そんな事させてたまるか!」

 

「はい!」

 

「皆!奴を総攻撃するんだ!遠距離からで構わない!奴の意識が俺からそれればそれでいい!」

 

『了解!』

 

天使達の遠距離から総攻撃が始まり、エクスキュージョンを放射し終わったジ・エンドに直撃する。

 

「グアアア!!ちくしょう!ちくしょう!!あの雌豚共が!八つ裂きにしねぇと気がおさまらねぇ!!」

 

「それはこっちの台詞だよ!マリアの仇、そして痛みを思い知りな!」

 

フォルテは真正面から突っ込んできたカルマにフルオープン射撃をお見舞いした。

 

「マジークの痛みを思い知りなさい!」

 

魔法は返されると思ったテキーラは追加武装のハイパー・レーザーファランクスでジ・エンドに追い打ちをかけた。

 

「キサマラアアアア!!」

 

ジ・エンドはそれでも接近してくる!

 

元の性能が高かったのかその速度も尋常ではない!

 

「タダじゃおかねえええええええ!!!!」

 

憤慨しきった殺人鬼は左手に乖離の剣を召還して襲い掛かる!

 

「・・・おっと」

 

そこに割って入ったのはレイ・桜葉!

 

「キサマッ!!!」

 

カルマはターゲットをレイにへと切り替えるのだが・・・

 

「馬鹿が・・・」

 

レイは易々と回避してカウンターの薙ぎ払いを入れる!

 

「グガアアッ!?」

 

カルマは間一髪で回避するもそれでもジ・エンドの腹部を深く切り込まれた。

 

「今だっ!」

 

レイのアルフェシオンを始め、天使達もカルマから距離を離す!

 

「チッ!まさか!?」

 

カルマが気付き始める!

 

そして、俺はトドメの一撃を放つ!

 

「カルマアアアアアアアア!!!」

 

そして、ジ・エンドの周囲から最強の破壊力を秘めた衝撃波が炸裂した!

 

「グオオオオオオオオオ!!?」

 

GALAXY IMPACT

 

「まだだ!撃ち続けろ!!」

 

レイの怒声に全員が追い打ちを再開した!

 

強烈なダメージに大破寸前のジ・エンドに容赦なく火力が集中する!

 

「グオオオ・・・・き、キサマらぁ・・・」

 

カルマの血走った目が天使達をこれ以上に無い憎悪を帯びて恨めしそうに見る。

 

「死んでたまるかぁ・・・」

 

しかし、カルマはまだ諦めていない・・・

 

そう・・・紋章機はパイロットの特徴を体現する・・・

 

そして、このジ・エンドとて同じ事だった。

 

「まだ、この身体ある限り・・・」

 

ジ・エンドの周囲に黄金のオーラが立ち込める。

 

「何っ!?」

 

「しんでたまるかあああああああああ!!!!」

 

オオオオオオオオオ・・・!!!!

 

ジ・エンドが唸り声をあげた次の瞬間

 

何と、大破寸前だった筈のジ・エンドが一瞬で完治したのだ!

 

「・・・くっくっくっ、悪いな・・・俺は死なないんだよ。」

 

そう、忘れてはならないカルマは混沌の主であり、創造主なのだ。

 

「馬鹿な・・・何て執念だ・・・精神力だけで物理に影響を与えるたというのか・・・」

 

タクトはカルマの執念深さに驚愕した。

 

「あっはっはっはっ!あーはっはっはっ!!」

 

完治したカルマは狂ったように笑い続ける・・・

 

そして、カルマから発せられる殺気が益々増大していく!

 

「俺は不死身なんだよおおおおおおおお!!!」

 

殺気は更に増大していく・・・

 

「何て奴だ・・・」

 

「・・・コアに使用されてるメタトロンは元々はこの世の全てを呪いながら死んだ人間・・・故に、混沌を糧をするあの機体との相性は段違いにいい・・・」

 

「どういうことだ!?」

 

「混沌は呪いや執念・・・そして、憎悪や悲しみといった負の感情に惹かれる習性を持っている・・・故にメタトロン同様にこの世の全てを呪うカルマは混沌を自由自在に扱えるというカラクリだ・・・」

 

「くそ・・・」

 

「そういう事だ!分かったらさっさと死ねやぁッ!」

 

「!?」

 

「生ゴミ共ーーーッ!焼け死ねえええええ!!!」

 

次の瞬間、辺り一面を灼熱の閃光が覆いつくし、視界は真っ白と化す!

 

ディス・フレア

 

「ぐっ!持ってくれ!シャイニング・スター!!」

 

シャイニング・スターのフィールドが必殺の威力を受け止め、天使達を守護する。

 

そして、灼熱の閃光が収まったと同時に天使達は反撃に出た。

 

「これでも喰らいな!ファイナル・バースト!!」

 

無数の弾幕がジ・エンド目掛けて発射される!

 

「喰らうか!このアマァッ!!!」

 

対して、カルマは乖離の剣を一振りして、それらの弾幕を衝撃波でかき消し、更にその衝撃波をタクト達に向けた。

 

「甘い!」

 

タクトは追い討ちでGALAXY IMPACTを詠唱した。

 

「ぐおおおお・・・死んでたまるかあああ・・・」

 

エンジェル隊、最強の威力の威力を誇る衝撃波をカルマは気迫のみで受けきる・・・

 

「うおおおおおおおおおお!!!!!」

 

ジ・エンドの不吉な色をしたオーラは益々勢いを高めていく・・・

 

「何!?耐えきったのか!?」

 

「キサマ等に・・・のうのうと生き、幸せに溢れた生き方しか知らぬ貴様等に・・・」

 

やがて、オーラが最高潮に達した時・・・

 

「俺の味わってきた地獄が分かるかああああああああああああああああああああ!!!!」

 

ジ・エンドの両手が“何か”を掴む・・・

 

「“本当のヘル・バイス”を見せてやる!」

 

右手に掴んだのはEDENの空間・・・

 

左手に掴んだのはNEUEの空間・・・

 

「シネエエエエエエエ!!!」

 

そして、ジ・エンドが両手をクロスした瞬間、捻れた異なる空間の境目はその矛盾を消去する為に絶対無比な破壊力を込めた大爆発を引き起こした!

 

「うああああああ!!!耐えてくれーーー!!」

 

タクトはシャイニング・スターを励ます。

 

「まだまだあああああ!!!」

 

凶悪な破壊力を持つ大爆発に耐えるタクト達を見てコレを転機と判断したカルマは追い打ちにでる!

 

ジ・エンドの両手にラスト・ジャッジメントの主砲エクスキュージョンが生成される!

 

ツイン・エクスキュージョン

 

「シィィィネエエエエエエーーーーーーッ!!!!」

 

カルマは二つの究極のエネルギー砲を子供が扱うように振り回しながら発射した。

 

「マズイ!?」

 

天使達は暴れ狂う究極のエネルギー砲を間一髪で回避し、やり過ごしていく・・・

 

カルマの命中精度が致命的に低いのが不幸中の幸いではあるが、ルシファー・フィールドが展開してもこれだけの真似ができるジ・エンドの性能はタクト達の機体とは次元が違う・・・

 

まさに機体の性能にのせられている猛者である。

 

しかし、それでもカルマの目的は達成された・・・

 

「・・・ッ!?」

 

カルマの大きな隙を見たレイがスレイヤー・オブ・デステニーで奇襲を仕掛けるが・・・

 

「チッ・・・」

 

スレイヤー・オブ・デステニーはジ・エンドに展開された最強のフィールドにより弾かれた。

 

「まさか・・・」

 

嫌な予感をしたタクトに対して、カルマは心底楽しそうに言い放った。

 

「くっくっくっ・・・その通り、セカンドガードナー発生器の再生が完了したんだよ!!」

 

「しまった!?」

 

「よくもここまで調子に乗ってくれたなぁ〜・・・」

 

カルマの楽しそうな喋り方にはもの凄い殺気が漂っている。

 

天使達の頬を冷や汗が滴り落ちる。

 

「創造主様にこれだけ無礼を働いたんだ・・・テメェら・・・覚悟はできてんだろうな・・・ああっ!?」

 

「くそ!!」

 

危機を感じたタクトはGALAXY IMPACTを詠唱する

 

さっきと同じ規模の衝撃波がジ・エンドを襲うが・・・

 

「きかねぇんだよ!!」

 

再生したセカンドガードナーが易々と弾き返した。

 

「くそぉっ!!」

 

あの二人が命を懸けて与えてくれた勝機を俺は・・・いや、諦めてたまるか!!

 

「諦めてたまるかああああああ!!」

 

俺がスレイヤー・オブ・デステニーを右手に召還しようとしたその時・・・

 

「え・・・」

 

「何だと・・・」

 

驚いたのは全員・・・

 

シャイニング・スターの右手に現れていたのは光り輝く玉だった。

 

「これは・・・ラファエルの・・・」

 

以前、ラファエルが渡していた光の玉だ・・・

 

しかし、どうしてこんな時に・・・

 

待て・・・あいつは何て言っていた?

 

「・・・その光の玉は時がくればおのずとその力を発揮させ、お前に最後の剣を渡すだろう・・・作者も知らないであろう剣をな・・・」

 

作者も知らない剣・・・

 

そうだ・・・剣だ!!

 

〜神々の黄昏〜

 

(推奨BGM Eternal Love)

 

何だ・・・凄く右手が熱い・・・

 

「な、何だ・・・あれは!?」

 

自分の知らない事にカルマは呆然とした。

 

俺は直感的にその名を呼んだ!

 

「ラグナロクッ!!」

 

次の瞬間、右手に今までのような粒子状ではない剣が姿を現した。

 

その剣に様々な神聖文字が彫りこまれている・・・

 

「あの剣の文字は・・・そうか運命の三女神の力を宿しているのか・・・まったく・・・」

 

レイは小さく苦笑した。

 

「く、くそっ!!殺られる前に殺ってやる!!」

 

我に返ったカルマは先刻、タクト達を全滅まで追い詰めた己のラグナロクを詠唱し始める。

 

「行け!タクトオオオ!!」

 

レイが叫ぶと同時に俺はカルマの元へと飛び込んだ!

 

「くっ!?」

 

カルマは未知の剣を恐れているのか、ワープして逃げる!

 

「そこかっ!」

 

俺もその出現先へとワープし、初撃の薙ぎ払いを放つ!

 

「この!キサマだけには!!」

 

それを“予想通り”に回避し、反撃に移ろうとしたカルマに対して俺は・・・

 

「これで終わりだあああああああ!!!」

 

本命の面を放つ!

 

「くっ!?」

 

回避しきれないと判断したカルマは乖離の剣で受け止めようと・・

 

「ガッ!?」

 

し、乖離の剣とそして、忌々しい絶対防御ごと楯から真っ二つに斬り裂かれた!

 

「ぐ、ぐあああああ!?お、俺の身体が朽ち果てていく・・・!?」

 

カルマとその紋章機ジ・エンドは処理落ちを起こしたようにゆっくりと消失していく・・・

 

「ギギ・・・キ、キサマ・・・ヨクモ・・・・」

 

機体からアイツが俺を睨みつけている。

 

そして、俺もにらみ返し言い放った。

 

「二度と出てくるな。」

 

憎くて仕方が無い敵だからこそ、俺は多くを語らなかった・・・

 

「・・・・・・く、くっくっくっ・・・」

 

奴の下半身が消失していく最中、あいつは笑い出した。

 

「何が可笑しい。」

 

「まだ、終わりじゃない・・・俺は・・・真犯人じゃねぇんだよ・・・」

 

「何!?」

 

俺は耳を疑った。

 

「どういうことだ!?」

 

「真犯人の魂はたった今、逃げていったぜ・・・あいつらしいぜ・・・グハッ!」

 

「お前・・・操られて・・・」

 

「くっくっくっ・・・俺という・・・カルマという存在自体、元々がヤツのクローンなのさ・・・俺も所詮はそこのレイと同じ只の操り人形なんだよ・・・」

 

「・・・・・・」

 

レイは消失していくカルマを無関心に見送っている

 

「真犯人は誰だ!?」

 

「真犯人は・・・こ・・うこく・・ぐん・・・・・・」

 

「・・・・・・何だと」

 

今、確かに奴は真犯人は皇国軍と言った。

 

そして、カルマは真犯人の名前を言い終わる寸前で完全に消滅した。

 

そして、俺達を閉じ込めていた空間も消失し、俺達の目の前には白き月とトランスバール本星があった。

 

「タクト!?無事だったんだな!?」

 

「・・・・・・」

 

シヴァ様の問いに俺は答えられなかった・・・

 

歓喜に打ち震えるシヴァ様達と一緒に喜ぶなんてできない・・・

 

「無事ではありません・・・二人の尊い犠牲があり、アイツを殲滅する事ができました。」

 

「何だと!?」

 

シヴァは喜びを打ち消してタクト達の頭数を数える・・・

 

「エクレアとシリウスが・・・?」

 

「はい・・・俺達は何もできませんでした・・・」

 

「・・・・・・」

 

アプリコットは膝元で拳を握り締めて泣く・・・

 

「今回の戦いで多くの尊い仲間を失いました。」

 

アバジェス

 

ロキ

 

シリウス

 

エクレア

 

「タクト・・・お前、泣いて・・」

 

「・・・すいません」

 

「いやいい・・・エンジェル隊、任務遂行感謝する・・・ゆっくり休んでくれ・・・」

 

シヴァ様からの通信が途絶えると同時に俺はミルフィーの方を振り返り抱きしめた。

 

「タクトさん・・・タクトさん!」

 

彼女も同じ気持ちなんだろう・・・

 

俺はただひたすら

 

今更・・・今更、勝ったところで・・・

 

と最後の剣を憎んでいた・・・

 

カルマの物語は閉幕した・・・

 

しかし、まだ終わっていない・・・

 

真犯人・・・

 

必ず見つけ出して・・・

 

殺してやる!

 

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