最終章 第二話 再会

 

宇宙は無限に存在する




遠くにも近くにも、幾重にも存在する




その一つ一つに文明が存在して、文明が存在しない宇宙もあって




その宇宙の・・・どこかに・・・・




まだ、あなたは存在する




探すよ?ずっと、見つけるよ?必ず




仲間なのだから




皆待ってる、だから帰ってきて下さい







皆泣いていた。

消えた存在はとてつもなく大きかった。

リコ・・・ナノナノ・・・アニス・・・カルーア・・・リリィ・・・

ミルフィーユ・・・ランファ・・・フォルテ・・・ミント・・・ヴァニラ・・・ちとせ・・・

壁にもたれ掛かり、その場に蹲り、泣き出す艦員も居た。

なのに・・・

「任務完了、みんなお疲れさん。」
「今回のデータ処理、任せたわよ?」

何も変わってないかのように、皆に指示したりしていた。

不思議に思うカズヤ、同時に少し怒りも出てきた。

何故仲間が消えたのに平然としていられるのか。

「千明さん!あなた達は悲しくないんですか!?
大切な仲間が消えたのに、何とも思わないんですか!?」

「ユキさん・・・ユキさーん!!!!」

とうとう、リコは泣き出した・・・ユキに何かを問おうとしているようにも見えた。

僕は全ての怒りをぶつけたかった・・・けど阻止された。

声消魔法陣・・・テキーラだった。

「その余裕、ちょっとばかし気になるわね・・・絶華?」

キッとした目付きで睨み付ける、千明は目を逸らさずに答えた。

「別に?特にと言った裏はないよ。」
「私達がこうしていられるのも、理由があるのよ。」

言っている意味がよく分からなかった。

理由?ニャーさんが消えたのに?平然としてるのに?

手に力が入る、この爆発しそうな怒りをぶつけたかった。

その時、千明はクロノクリスタルで通信を始めた。

「エンジェル隊は全員、データ処理及び休養が済んだら
一時間後に神殿門前に集合する事。
以上。」


ピッと通信を切った。

「まぁ、詳しい話はその時にするわ。
今じゃ何も理解してもらえないはずだしね。」


そう言って、千明とユキは神殿の方向に行ってしまった。

リコは、カズヤの袖に捕まっていた。

テキーラは、声消の魔法陣を消した。

そして腕組しながらタクトの方へ行ってしまった。

カズヤは、リコを支えながらリコの部屋へ連れていった。





          φ





〜一時間後〜

カズヤ達は前にも行った事のあるあの神殿の門の前に居た。

後からタクト達も来た。

そして門の中から・・・・

「・・・皆いるね?んじゃ、入って。」
「待ちなさいよ。」

進みそうになった千明を、ランファが止めた。

「これから何をするのか・・・教えてくれませんこと?」
「少なくても、あたしらにはそれを知る権利がある。」
「秘め事は・・・いけません。」

エンジェル隊全員、強気の発言だった。

しかし千明は黙ったままだった。

「何とか仰ったらどうですか!」
「皆、ちょっと落ち着こうよ・・・ね?」

強気が怒りに変わる寸前でミルフィーユが止めた。

テキーラは相変わらず腕組しながら考え事をしていた。

他の皆は・・・完璧に沈んでいた。

「千明、君が何をしようとしてるか分からない。
が・・・だからこそ教えてくれないか?その余裕の真実を。」


皆の前にタクトがずいっと出た。

しかしそれでも千明は黙ったままだった。

「・・・・・・・。」
「・・・中に行けば、その真実がある・・・そうですね?」

カズヤは少し考えた後にそう言った。

当てずっぽうだが、どうやら的を射たらしい・・・千明の目が少し驚いていた。

そして、少しくすりと笑った後に神殿の中に入って行ってしまった。

カズヤは、一番先頭に立って神殿に入っていった。





          φ





天井から壁まで、神々しい光が包む一つの部屋に来た。

その部屋の中央には少し出っ張った床がある・・・そう、紋章機一機分の大きさの出っ張り。

「ここには、不思議な言い伝えがあってな・・・
皆を呼んだのも、ここに案内したのも、同じ理由なんだ。」



其の部屋 神の光を受けし部屋

         神々しき光、奇跡を起こさん

台座の前にて跪け、願わくば叶わん

         其の憶いの前に跪け、目を綴じねば拓かれん

異界の狭間に居出し者、今一度汝世に現れん

         高貴な魔力と哀しみを代償に・・・今一度常世に


「・・・・・ってね。」

そう言うと、台座のまわりに魔法陣が現れた。

魔法陣の一番外の円には、小さな円がぽつぽつとあった。

「さぁ、皆・・・この円、一つに一人。
一人ずつ立ってもらえる?」


円に人が一人立つ度に、円のまわりには光の壁が出来る。

そして、ルーンエンジェル隊とムーンエンジェル隊の全員が立ち終わった瞬間・・・

魔法陣の光が一層増した・・・目を開けていられない程に。

けど、目を閉じてみると不思議と皆を感じることができる。

皆の哀しみが、台座の一点に・・・皆の願いが、台座の一点に・・・集められていく。

そして、全てがユキさんの足下の円陣に集中する。

我、膨大の魔力を統べる者
       憶いの力、今此処に解放せよ
浄化の光、彼等を祝まん
       居出し不死の龍よ、此処に再び目覚めよ!





その瞬間、魔法陣の光りは爆発的に増大し、目を閉じても眩しかった。





          φ





しばらくすると、いつの間にか気を失っていたカズヤ達は目を覚ました。

視界一杯に広がる蒼空

澄んだ風が頬を撫でる

小鳥のさえずり、木々のざわめき

草の、擦れる音

心地よいと言うより、何故かほっとする気がした。

起き上がると、そこは草原のように広い場所だった。

首を傾げ、皆がいることを確認する。

「皆、大丈夫?」
「は、はい・・・」
「オイカズヤ、ここは何処なんだよ?」

全員、気はハッキリとしているらしい。

見渡す限り草原、そして雲一つない蒼空。

確かに疑問は山ほどあるかもしれない。

ここは何処なのか、さっきまでの出来事は何だったのか。

一体どのくらい気を失っていたのか、あの後どうなったのか。


ニャーさんは?


「マイヤーズ司令も見えぬが、我々以外の皆は一体何処へ・・・」
「起きた?」

ひょいっと木の陰から出てきたのはユキさんだった。

「なかなか起きてくれないから、私の亜空間に入れちゃったのよねぇ。」
「亜空間って・・・」

にこやかに笑うと解除♪と言う声とともに元の世界へと引き戻された。

そこはさっきの場所とは違い、元の神殿の広間だった。

そこにはタクトやレスター、ムーンエンジェル隊の面々も居た。

「リコ、お早う。」

ミルフィーユがリコに言った。

「やっと起きたか、お前さん達。」

フォルテは椅子に座り、紅茶を啜りながら笑っていた。

「皆さん、立てますか?」

ちとせが小走りで近寄ってきた。

窓の外を見ると、暗くなっていた。

神殿に入ったのは昼過ぎ、つまり相当な時間気絶していたことを意味している。

「さぁ、皆揃ったところで、テラスに移動移動。」

千明が指示すると、皆テラスへと向かった。





          φ





空は、雲一つなく輝く星でいっぱいだった。

満天の星空、こう言うのをそう言うのだろうとカズヤは思った。

「綺麗ですわね〜。」
「はぁ〜・・・ロマンチックです・・・」

女性陣は早くもポーっとし始めていた。

さっきのことを忘れているかのように・・・

「それにしても、雲一つない星空なんて初めてだなぁ・・・」
「この惑星じゃ、流星群の日には必ず晴れて雲が無くなるんだよ。
不思議だよなぁ・・・俺にもその理由わかんないし。」


ハハハっと笑って座っている千明、その同じテーブルにいるタクトも笑っている。

笑い声が消えると、あたりは虫の鳴声で埋まる。

宇宙鈴虫や宇宙松虫、その他の虫も・・・遠くからは夜鳥の声も聞こえる。

すっと、一つの星が流れた。

それを合図にするように、一斉に流れ星が流れた。

今まで見たことのない、綺麗な流れ星。

「さぁ皆、願事しないと終わっちゃうわよ−?」
「うにゃ!そうだったのだ!」
「俺はこう言うのは信じないけど・・・やってみるか。」
「私も〜。」

皆慌てて願事を始めた、もちろんムーンエンジェル隊も。

カズヤは、リコの傍へと行って・・・

「何をお願いするの?」

と、リコに聞いていた、それにリコは・・・

「内緒です、教えられませんよ・・・恥ずかしい・・・」

と言いつつも、頬を赤らめながら笑っている。

その時・・・





「えー?リコちゃん教えてくれないのー?」





と、わざとっぽく聞き覚えのある声が聞こえてきた。

振り向いた・・・が、誰も居なかった。

カズヤとリコはクエスチョンマークを浮かべながら前に振り返った、その時。

「やっほ♪」

と、視界全体ドアップのイクシフォスラー・ニャーセルの顔がうつった。

「ひ、やぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「う、わぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

二人の叫びにそのテラスに居た全員が驚いた。

「いや〜、満天の流れ星夜空だねぇ〜。」

それを他所目に、ニャーは近くの椅子に腰をかけた。

「ニ、ニニニ、ニャー・・・さん???!」
「ど、どどどおどどおお・・・・ドオシテココニ!!?」

リコは言葉と言うには少し変な言い方になった。

他の全員も、口が魚のようにパクパクしていた・・・真実を知っている人以外は。

そう・・・タクトと千明だ。





          φ





ニャーさんが消えた空間は、ゲートを潜った後の宇宙とはまた異なる空間に飛ばされたらしい。

そして、あの魔法は帰ってくる為の召還魔法だったらしい。

「・・・と言う訳なのさ。」

と、テラスにいる全員に説明し終えるニャ−。

無論、信じていない人も居たが、実際目の前で起こった事だ。

信じられない訳がない。

「相当な高特異魔術ですわ〜。」

おっとりとした口調でカルーアは言った。

「高特異だからこそ、皆の気持ちも必要だったんだよ。
結果的に気絶する者が多かったけどね。」

「ま、何はともあれ、無事だったんだから良いじゃねぇか!」
「親分、調子良いのだ。」


どっと笑いがテラスから響いた。

その響きが、満天の夜空に木霊するかのように・・・・

inserted by FC2 system