後日談 新たな道を行く者達

 

あれから数年






数々の困難に立ち向かう者達のおかげで






幾度となくその危機を脱した






ルーンヴァイス・ムーンエンジェル・ルーンエンジェル






その星に深く名を刻む者達






そして今






新たに名を刻む者達が…










「起床ーーーーーーーーーーー!」

朝も早から寮内にけたたましい声が怒鳴り響く

ここはピロット軍教寮と呼ばれる所

ここには軍に入る為の基礎〜応用の知識をつける為に軍学校に通う生徒達が住む寮

ちなみにココは女子寮

「ふわぁ…朝から何であんなに声が出るのかなぁ…」

ショコラ・パステール一等兵

類い稀なる鋭い勘の持ち主、ぴたりと言い当てる性質がある

本人は単なる偶然としか思っていない

後に彼女は中尉となる…

「仕方ないよ、うちの教官は熱血だし。」

ムース・I・シャルロット一等兵

およそ1キロ離れた所から狙撃する事が可能な鷹目を持ち、ショコラの幼馴染み

彼女もまたショコラと同じく…

「おっはよ、二人とも♪今日も良い天気だね。」

アリレ・M・シフォン一等兵

まわりの空気お構い無しに明るく振舞う、が、反って仇になる事も

彼女は予知夢の性質があり、上に同じく…

そして…

「ほらほら、ぼーっとしてるとまた教官に飛ばされるよ、空に。」

イクシフォスラー・ニャーセル伍長(寮長)

かの伝説の黒龍の紋章機の搭乗者、今は普通の生徒として学校に通っている

紋章機を持っているが為に特別扱いされているが、本人は気に入っていない

「全員いるね、今日も寮まわりを10周!私に続け−!」

ラグ・ランフォールド教官

体育担当、常に逆らえないオーラを纏っている、が実は体育は苦手だったり…

毎日この寮周をしている、雨の日は寮内だが…

滑って怪我する者も時々出る

「ファイト−!」

「おー」「オー」「はぁ…」「オー」

これが女子寮のいつもの風景である

一方…






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「起床だーーーーーーーーーー!」

ほぼ同時刻、男子寮にも同じような言葉が怒鳴り響く

女子寮とは少し離れた所にある、男子寮である

「・・・・もう朝か、眠いな…」

アモル・カーレッジ一等兵

体力と体術に富んだ、所謂筋肉馬鹿である、けど至って冷静

彼もまた、中尉となる日が…

「やれやれ…また鬼教官の声か…」

ルイン・バニッシュ一等兵

自分よりも仲間を重んじる、優しい心を持つ

よく授業をサボって自然と触れあってる事も…

彼も…言わずもがな…

「ほらほら、朝の運動は基本だろ、行くぞ。」

ライト・Y・スティンガー一等兵

コンソールに対する知識と技術を多く身に付けている

出世したらブリッジに…とも考えていたり

男子も勿論、朝からランニングである

そして走り出す…が、途中で終了するのがいつもの事





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「はい、ランニング終了、各自部屋で着替えて食堂へ。」

女子陣の方は早くも走り終わり、各々部屋に戻っていった

が…


ドサッ…


鬼教官ことランフォールドはその場に力つきた

「あぁ…時が…見え………ぬ。」

ガクッと…





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食堂では男女の声が木霊し合っている

「今日の夢でさぁ…」 「おーい、この鮭塩ッ辛いぞー」 「お味噌汁もっと注いでー」

など…他愛もない話が聞こえてくる

「おばちゃーん、Bセットちょうだーい。」

ショコラは眠そうな声で厨房のおばさんに向かって言った

「私はCでいいや…」

シャルロットも同じような声で言う

「私はA!」「私はA!」

と、二人揃って言う人も…

「朝だから…パンかな…」

「じゃ、俺は茶漬けでいいや。」

女陣に続き、男陣も厨房に向かって注文する

厨房内では慌ただしく料理が作られている

「拉麺セットA、宜しく。」

朝から麺類が食えるのは…カーレッジと数少ない人だけだろう

朝の資本と言えるものは、一体何処へ…

などと突っ込みたい人は心の中でどうぞ

「朝からよく麺なんて食べられるわね。」

ショコラがうわー…と言った顔で箸をすすめる

「人の食生活は十人十色だよ、ショコラン。」

ニャーセルが隣の席で箸をすすめる中、シャルロットとシフォンは何やら物の取り合いをしていた

「ま、そう言う事、俺の食生活に別に片寄り過ぎはないからな。」

そう言うとシャルロットとシフォンのでこにスプーンの凸部分が直撃

無論、アモルの制裁である

ぎゃーぎゃー騒いでる間に食事も終わり、授業開始時間になりつつあった

この時は男女混同で授業をする

ちなみにこの7人は全員同じクラス所属、故にテストの競争が激しかったりもする

ちなみに、今の時間はコンソールの使い方や機械系の扱い方について

アリウム・S将校が授業中延々と語っている、一種の催眠術のように

「いいか?記入の仕方はだな…」

毎回の事であるが、同じような内容を繰り返し、完全に全員覚えるまで繰り返す

この人はいつもそうだ…

「なぁ…この授業って一体何回目だっけ?」

アモルが隣で暇そうにしているショコラに聞いた

「えーっと…確か…もう、15回目かな?」

小声で返す

既に寝ているものも多数…授業とは言えない程に…

しかし、担当のアリウム講師は…

「…で、あるからにして、コンソールの技術は発展し…」

生徒皆の顔にはまだ続くのかよと書かれているように見えた

だがアリウム講師、実は記入時の早さと計算能力はずば抜けて凄く早いのだ

誰がどんな方法で挑もうとも、負けた事はない

しかし、それとこれとは話が違う

生徒全員、飽きれるを通り越して…脱力しきっていた

そう思っていたその時…

「では、そろそろ次の段階に進もうか、もう飽きたでしょ?」

その言葉に、耳を疑うもの、飛び起きるもの、そして溜め息をつくものが…

そして授業は次の段階へ…





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次の時間、歴史の授業が待っていた

この世界【NECE】だけでなく、【EDEN】、【NEUE】の歴史も語り継がれている

授業を担当するのは、レイ・H(アッシュ)・イニス講師、階級は中尉

彼は時折、抜き打ち使命テストをしだす

「シャイン!EDENの英雄、エルシオールの艦長の名前は!?」

セルシア・シャイン、天然ボケ娘、作業の細かさだけピカイチ

「えーっと、マクト・ハイヤーズ?」

「馬鹿者!EDENの英雄は馬か!タクト・マイヤーズだ!」

熱血…その一言で片付いてしまったりもする

今日1時間は、EDENの歴史を語り、終了する予定になっている




「ねぇアリレちゃん、副艦長ってレタス・クールダウンだっけ?」

「レスター・クールダラスだよ、シア。」

苦笑いしながら隣に座っているシフォンは答えた

「くっちゃべるのは勝手だが、巻き添えはごめんだぞ。」

そうカーレッジが言うと、マシンガンの如くチョークが飛んできた

アリレは予知夢を見ていて完全回避…しかし、シャインは全弾顔面直撃、後ろのカーレッジは全弾拳で粉砕

カーレッジは一応、カナリア・ルヴァイセンの弟子

動体視力は良い方

「シャイン!しっかりしろ!シャイーン!」

近くの生徒が叫ぶも、シャインの意識は眠りの中に溶けていった

そしてその後はごたごたしてしまい、EDENのことをろくに語れず、終了した





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「そっちはどう?結構選考してたりする?」

「もち、でも彼女達の意思もあるから、任命時に断ってきたらねぇ…」

学長室と言う暗い部屋の中、二人の人陰が生徒全員の書類を机の上にばらまき、何か話していた

「エクスレイシアには増員は必要無いから…やっぱり次軍を編成しようか。」

「そうね、丁度…EDENと同じように最新鋭艦も出来そうだし。」

学長机の上には、選ばれた生徒と、見覚えのない戦艦の写真があった

「ルミリア作戦…開始しますか。」

その一言で、また、歴史が動き始めた

「みんな、聞いての通り…作戦開始だ。
夢幻とレイは選考されたクルーを頼む。
カナリア、アビスは男子寮に行って、彼等を連れてきてくれ。
そして、トエルとサクラは女子寮…彼女達を連れてきてくれ。
以上、今日は日にちの通達だけで良い。」


「了解だ。」「よっしゃ、任しとき。」
「はいなー。」「あいよ。」
「承知致しました。」「わかった。」

いつの間にかその場には6人の人陰が増えていた、そして部屋を出ていった





「さぁ…新しいエンジェル達の誕生だ。」






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午後の授業、ココからの授業はほぼ娯楽に近い

特に暑い陽気の時は…女子に

「きゃっほー!」「わーい!」「それー!」「きゃー!」

次々とプールに飛び込んでいく

無論、そのせいで被害を受けるものも…

「・・・・・・・・。」「えーっと…大丈夫?」

カーレッジの怒りは女子に向けられることはなく、水面を叩くことによって発散している

そして爆音のような音と共に水柱が立つ

「はや〜、今回も見事な水柱…」

・・・がいつまでも近くで止まっていると…

倒れてくる水柱の下敷きになる

「ぐぼぁ!・・・」

千明も偶然そこに居て、巻き込まれた

「げっ…学長・・・」

何十メートルもの水柱が、プールの横を歩いていた千明に倒れた

・・・が、そこから一気に蒸気が吹き上げた

千明は元々、魔剣士だった故、今でも魔力を持っていたりする

その魔力を使って、獄焔の壁をつくり出したのだ

「・・・アモル・カーレッジ君…ちょっと後で学長室に来なさい・・・」

無論、こんなことが今までにも何回かあったのだ

「カーレッジも懲りないねぇ。」

「まぁ、私達のせいでもあるけど…ね。」

苦笑いをするショコラ

「すぐ切れるのも、問題だとは思うがね…さーて泳ごっと。」

その日、陽は高く、絶好のプール日和だった





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〜女子寮〜

ショコラ、シフォンが女子寮に戻ってみると、トエルとサクラが待っていた

「あれ?あの人達って…」

「ルーンヴァイス隊の四姫の二人じゃない?」

「ショコラ・パステールさんと、アリレ・M・シフォンさんね?」

「貴女達に通達があります。詳しくはこれを呼んでおいて。」

サクラがそう言うと4枚の紙を手渡した

紙の表にはそれぞれ、ショコラ、アリレ、イクシフォスラー、ムースと書かれていた

これがなんなのか、聞き返そうとしたが、既にそこにトエルとサクラの姿はなかった

そう、気配を悟られず、一瞬で消えたのだ



一方男子寮の方でも、カナリアとアビスがルインとスティンガーに同じような紙を手渡していた

そして同じように消えた…





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「学長、試験終了の時間です…」

教員の一人が学長室にそう告げに来た

試験とは、定期的に行われるものとは少し違い、最新鋭艦に乗艦することが許される試験

言わば、その艦に勤務出来る唯一の試験なのだ

しかし…とある七人はその試験を受けていなかった

ショコラ、シフォン、シャルロット、ニャーセル

アモル、ルイン、スティンガー

彼等は今、神殿の最深部に向かっていた

そこは今、未踏の領域もある神域があった

そう…黒い紋章機も今はそこに眠っている

しかし、神域にあったのは黒い紋章機だけではなかった

長銃身が備え、翼の形状をした何かの発射口を持つコバルトブルーの紋章機

後方に八つの小型フライヤーを備え、前方に大型光粒子砲を持つフローラルピンクの紋章機

両翼の下に大型機銃を備え、速度を重視したブースターをもつオレンジの紋章機

火力重視の追撃弾と追撃双槍、速度重視の軽装甲、しかし高起動力を持つファイヤーレッドの紋章機

両翼と前方に大型の刃を持ち、突撃によって迎撃する、レモンイエローの紋章機

翼はなく、ただ二つの粒子砲持ち、唯一盾を備えているプラチナシルバーの紋章機

そして

後方には永く鋭い尾、両翼は鱗の様な装甲に覆われ、何人をも寄せつけぬダークブラウンの紋章機

それぞれが整然と威厳を醸し出しながら並んでいた

そして一番奥に、このピロットの最新鋭艦・ルミリレイシアの姿があった

「単刀直入に言うわ…貴方達にこの紋章機に乗ってもらいたいの。」

真剣な眼差しで見合う、しかし誰も何も言わない

ただユキの言葉を聞いてるだけだった

「あたしも鬼や悪魔じゃないから強制はしないわ、決断して。」



この紋章機に乗り、宇宙に出るか

拒否し、教師の道へ行くか



空洞内だからなのか、やけに声が響いて聞こえた

暫しの沈黙、全員が考える中、ニャーセルは

「シティアーは私の紋章機です、拒否する理由もなければ…宇宙に出ない理由もない。
私は、ルミリレイシアに乗ります。このシティアーと共に。」


一歩、前へ踏み出す

「ニャーちゃんだけずるいよ、私も宇宙に上がる。」

ショコラも前へ踏み出す

「私は…怖いけど、皆が一緒なら平気!」

ショコラに飛びつく

「やっとこの目を使う時が来た…この機を逃しはしないさ。」

シャルロットも

「紋章機…か、相手にとって不足無し!」

カーレッジも

「後方からでも、支援はできる、俺も、皆と共に。」

ルインも

「野球をやってくつもりがこんなことに巻き込まれるとは…人生って面白いな。」

スティンガーも

全員が賛成した、今ここに、ルーンヴァイス隊の後継者達が誕生した





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時は流れ・・・


「あなた、手紙が来てるわよ。」

一人の女性が手紙を持ってリビングにきた

「へぇ、誰から?」

リビングのソファーには男性が一人座っていた

「えっと…ごめん、読めない。」

てへっと言った感じの顔をして手紙を手渡す

男性は封を切り、手紙を読む

女性も後ろから覗き込む

「…懐かしい人からだね、ニャ−さんだよ、後、ユキさんと千明さんからの手紙も入ってる。」

「ホント?わぁ…懐かしいなぁ。ねぇ、読んでよ。」

「分かったよ、まったく…リコは慌てんぼだな。」

「あ、酷いですよカズヤさん…いえ、あなた♪」

お互いにクスクスと笑い合う、その傍らには一匹の犬がいた

その犬の顔が語っている

今この世界は、平和なのだと

「さてと、今日はナノナノ達もタクトさん達も来るから、パーティの準備でもしますか。」

「うん、頑張ろうね。」

チュッと微かに音が聞こえるが、犬以外誰も聞いていない









今でも二人は軍の関係者

しかし、出撃することは今はない

理由は超長期休暇、自分達の結婚式やパーティやらで、功績を利用して…

真実はタクトがわがままを言ったからなのだ

カズヤとリコ、そして自分の為に

それに現在は大きな事件はなく、エンジェル隊が出る間でもないことばかりなのだ

故に、ナノナノやカルーア、アニスやリリィも休暇のなのだ

そして今日、EDEN、NEUE、NECEのエンジェル隊を呼び、パーティを開く予定なのだ

しかし・・・

「カズヤ・シラナミ中尉、アプリコット・桜葉中尉、休暇中申し訳ありませんが、緊急任務が入りました
至急、ルクシオールまでお戻り下さい」

クロのクリスタルから通信者の声が聞こえ、溜め息をつく二人

「・・・久々に会うのが、ルクシオールか。」

「まぁいいじゃない、皆に会えるから…ね?」

そう言うと、軍服に素早く着替え…

そして

「カズヤ・シラナミ中尉!」「アプリコット・桜葉中尉!」



出撃します!





物語は、終わらない

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